目的
大血管や心臓内へカテーテルを挿入し、血行動態検査と造影により心機能の評価と機能的異常、解剖学的変化を確認し、確定診断及び手術適応などを決定する。
対象
狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、心不全
禁忌
- ヨード過敏症、出血性素因、重症の肝、腎疾患
- 非代償性心不全
- 精神病患者や本人の協力が得られない患者
- 重症感染症患者
- 高齢者
予測される危険性または合併症
- 心筋梗塞(急性冠動脈閉塞)
- 動脈塞栓症:形成された血栓が、下肢塞栓症、脳梗塞、などを引き起こす可能性がある
- 心臓の穿孔:心腔内でカテーテル操作中に先端を心筋に押し込んでしまうような場 合に起こる。 心タンポナーデによる胸痛、背部痛、頻脈、血圧低下、心拍出量低下、心停止などを生じる。
- 不整脈:心房細動、心室細動、心室頻拍、房室ブロック、徐脈など、カテーテルの心房、心室、刺激伝導系への刺激のために起こる。
- ショック:出血、薬剤アレルギー(造影剤、抗生剤、麻酔剤)、迷走神経反射などによるショックを引き起こす可能性がある。
- 発熱、感染
- カテーテル穿刺部の出血
必要物品(カテ室持参物品)
入院カルテ、外来カルテ、IDカード、三測表、レントゲン、心電図、放射線伝票、指示書、1kg砂嚢、指示書記載薬品(指示されている抗生剤1回分)、酸素マスク、酸素ボンベ、血管造影室連絡用紙(必要事項記入)、ニトログリセリン、アダラート
方法
事前の準備
- 前日に両鼠径部あるいは、両側肘関節部などの剃毛を行う。剃毛後、可能なら入浴またはシャワー浴をしてもらう。
- 患者が安静中安楽に過ごすことができるように前日にケア計画を立てておく(おにぎり入力の有無、腰痛対策方法、床上排泄の方法など)。
- 吐気、嘔吐を引き起こす可能性があるため、治療前の一食を禁食とし、絶飲とする。内服は医師の指示に従う。
- 当日治療前に排便を済ませておく(治療中、床上安静中に便が出ないようにするためあらかじめ済ませておくことが望ましい)。排便がない場合は、浣腸やレシカルボン坐薬で対処する。
- 術前血管確保が必要な場合は医師に行ってもらう。
- 床上排泄ができない場合、患者が希望する場合などは状況に応じてバルーンカテーテルを挿入する。
- 病棟名、患者氏名を記載した名札を用意しておき、ストレッチャー、毛布に付けておく。寒い時などは状況に応じて、湯たんぽを準備しておく。
- 術衣に着替えてもらい(下着を付けずに)、義歯、指輪、眼鏡、時計などははずしてもらい、リストバンドを装着する。
- 両足背動脈または内果動脈の触れる部位にマーキングしておく
- 検査予定時間までに、カテーテル検査室に患者をストレッチャーで担送する。
- 検査介助看護者に、血管造影室連絡用紙の内容を申し送る。
- 腰痛の出現が予測される場合は、エアーマットを準備しておく。
検査終了後
1. バイタルサインの観察
- 検査中、造影剤等の刺激や、負荷により、循環動態の変調や異常をきたすことがある。また、迷走神経反射を起こすことがあるので、帰室後、帰室1時間後に血圧の推移、脈拍を中心に悪心、嘔吐などの有無を観察する。
- 水分バランスの観察(造影剤を使用するため、腎機能の低下を認める場合は特に注意する)
2. 穿刺部出血の有無の観察
- 抗凝固剤を使用するため出血しやすい。穿刺した下肢を曲げないように注意を促すとともに穿刺部の観察を行う。
- 血腫ができている場合は、マーキングし広がりがないか観察する。
- ワーファリン内服中の患者や血圧の高い場合は特に、出血に注意する。
3. 動脈触知の確認
- 下肢の動脈塞栓や圧迫帯による血行不良がないかを観察する(患肢足背動脈の触知確認、下肢の皮膚温、しびれ感、浮腫などの有無確認)。
4. 感染予防
- 創部を清潔に保ち、感染予防に努める。 5)疼痛、苦痛の緩和
- 腰痛緩和のためにエアーマットを適宜使用する。
- 安静範囲内で安楽な体位の工夫をする(腰枕や腰部へのバスタオル挿入など)。
- 圧迫帯による強い痛みのある時は、腸骨部にタオルを挿入する。
- 痛みによる苦痛が強い場合は、医師に報告し薬剤による鎮痛対処も考慮する(ボルタレン坐薬など)。
治療後の安静
- 6時間臥位安静後、圧迫帯除去、歩行開始となる。(検査過程、出血状況、バイタルサインを中心に全身状態により、変化することがある)
- 第一回目の歩行後、穿刺部の出血がなくても、皮下血腫の形成の有無を観察する。