看護実習で病態関連図を作るとき「Wordでうまく図形が配置できない」「矢印の接続がズレてしまう」「きれいに仕上がらない」と困っていませんか?
この記事では、Wordを使った病態関連図の作成方法を、初心者でも分かるよう画面付きで詳しく解説します。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 看護実習で病態関連図作成に悩んでいる学生
- Wordの図形機能を効率的に使いたい方
- きれいで分かりやすい関連図を作りたい方
- 指導者に評価される関連図のコツを知りたい方
この記事を読めば、複雑な病態関連図も効率的に作成でき、実習での評価向上につながります。
病態関連図作成で最も重要なこと
病態関連図作成において最も重要なのは、病態生理の正確な理解と論理的な関連性の表現です。
Wordのテクニックも大切ですが、まずは疾患の病態生理を正しく理解し、症状や看護問題との因果関係を明確にすることが最優先です。見た目の美しさよりも、内容の正確性と論理性を重視しましょう。
病態関連図とは?基礎知識の確認
病態関連図の目的
病態関連図は、患者の疾患や症状、看護問題の相互関係を視覚的に表現し、看護過程の展開を支援するツールです。
病態関連図の構成要素
- 疾患・病態:主疾患と合併症
- 症状・徴候:客観的・主観的データ
- 看護問題:実際・リスク・健康増進
- 看護介入:具体的なケア内容
- 評価指標:改善の目安
作成上のルール
- 因果関係を矢印で明確に示す
- 時系列を考慮した配置
- 優先度の高い問題を強調
- 根拠に基づいた関連性
- 患者の個別性を反映
事前準備:必要なものとポイント
必要なもの
ソフトウェア:
- Microsoft Word(推奨:Word 2019以降)
- A3対応プリンター(なくても作成可能)
参考資料:
- 病態生理学の教科書
- 患者情報・検査データ
- 看護診断の参考書
- 疾患別看護の専門書
事前準備物:
- 手書き用の用紙とペン
- 付箋紙(情報整理用)
- 電卓(データ計算用)
作成前の重要ポイント
情報収集と整理
患者情報の整理:
- 基本情報(年齢、性別、職業)
- 主疾患と合併症
- 既往歴・家族歴
- 現在の症状・検査データ
- 治療内容・薬剤
手書き下書きの重要性: 手書きでの下書きは一見遠回りに思えますが、以下のメリットがあります:
- 全体の構成を把握しやすい
- 修正が簡単
- Word作業の効率化
- 論理的思考の整理
優先順位の決定
- 生命に関わる問題(呼吸、循環、意識)
- 急性期の問題(疼痛、感染、合併症)
- 慢性期の問題(ADL、セルフケア)
- 予防的問題(廃用症候群、転倒)
- 心理社会的問題(不安、家族関係)
ページ設定
wordを開き、ページ上部の「ファイル」→「ページ設定」へと進む

「用紙」のタブを開き、用紙サイズをA3サイズに指定する。
A3の用紙サイズが指定できない(A3用紙を印刷できるプリンターがない)場合は以下のようにサイズを指定する。
用紙サイズ:「幅」420mm 「高さ」297mm

次に、「余白」タブを開き、以下のように入力する。
「余白」
「上」:15mm 「下」:10mm
「右」:10mm 「左」:10mm
「印刷の向き」:「横」

「OK」を押すと以下のような表示が出るが、「無視」する。

これでページ設定は終了。
ヘッダーとフッターの設定
ページ上部の「表示」から「ヘッダーとフッター」を選択

下図のようなバーが表示されるので、「ページ設定」を指定する。

「ページ設定」の「その他」タブを開き、以下のようにそれぞれ数値を入力する。
「ヘッダー」:6mm
「フッター」:5mm

「OK」を押すとまた以下のような表示が出るが、「無視」する。

白紙の上部に「ヘッダー」の表示と点線に囲まれた枠がある。
ここに日付や所属、氏名など入力する。

下部には「フッター」の表示と点線の枠があり、同じように入力ができる。
ここでは文字の配置を右寄せにして

所属する施設名など入力する。

描画キャンパス作成と設定
次に、関連図の図形や矢印を作成・編集するための描画キャンパスを作成します。
ページ上部の「挿入」から「図」→「新しい描画オブジェクト」を選択。

四角い枠が作成されました。

この枠線の上にカーソルを合わせて右クリックし、「描画キャンパスの書式設定」を選択する。

「色と線」タブを開き、以下を指定。
「色」:塗りつぶしなし 「線」「色」:線なし
※必要に応じて「線」「色」を指定し、枠線を作っても良い。

「サイズ」タブを開き、以下を指定
「サイズと角度」
「高さ」:273mm 「幅」:400mm

「レイアウト」タブを開き、以下を指定。
「折り返しの種類と配置」
「背面」を指定

「OK」を押して戻ります。
次に、画面左下の「画像の調整」を指定します。

もし、表示がなければページ上部の「表示」から「ツールバー」→「図形描画」にチェックを入れる。

「図形の調整」から
「グリッド」を選択。

「描画オブジェクトをグリッド線に合わせる」のチェックを外す。
これにチェックがあると図形を整列させるのには便利なのだが、細かく自由に配置するのが不便になってしまう。

「OK」で戻れば終了。
関連図に使う図形の作成と設定
次に関連図に使用する図形を作成します。
↓のようなヤツ

ページ左下の「オートシェイプ」から「基本図形」→「四角形」を選択します。

適当な場所に図形を作成し、図形にカーソルを合わせて右クリック→「オートシェイプの書式設定」を選択。

「サイズ」タブを開き、「サイズと角度」に以下を入力
「高さ」:7mm 「幅」:22mm
※適当に変えてもOK

「OK」を押して戻る。
次にもう一度図形を右クリックして今度は「テキストの追加」を選択。

これで図形の中に文字を入力できるようになります。
ここでまた図形にカーソルを合わせて右クリック。
「段落」を選択する。

「インデントと行間隔」タブを開き、以下を入力する。
「間隔」の「行間」:最小値 「間隔」:0pt

「OK」で一旦戻り、また図形を右クリックして「フォント」を選択して文字サイズを8にする。
※文字サイズは適当に変更してもOK

これで設定が完了した図形ができました。
次に、図形をまた右クリックして「コピー」を選択します。

適当に3つほど貼り付けます。
貼り付けは「右クリック」→「貼り付け」でできますが、キーボードの「Ctrl」+「V」の方でもできます。こちらの方がクリックの手間が省けて楽です。

図形ごとに枠線を変えていきます。図形を右クリックして「色と線」タブを開きます。
「スタイル」で2重線など枠線の種類を変えられます。
「色」「実線/点線」「太さ」なども参考書や施設基準などに合わせて作り替えてください。

変更したら右上に並べます。

角丸四角形や楕円形の図形を使用したいときには、手順4の最初から同じように設定します。
次に「オートシェイプ」から「コネクタ」→「各種矢印コネクタ」を選択します。

この「矢印コネクタ」は↓のように図形に線を接続することができます。


接続したら、図形を動かしても矢印は固定されたままなので自由に動かせます。
2つの図形を線でつなげることもできるので関連図の矢印に最適です。
コネクタで接続したら

動かしても接続されたままになる

線にカーソルを合わせて右クリックすれば線の種類を変更したり、「オートシェイプの書式設定」を選択して点線変換や太さを変更することができます。


これですべての環境設定が終了しました。
このまっさらな白紙に関連図を作成していきます。

具体的には、
・右上の図形をコピーして必要な数を貼り付け
↓
・図形にテキストを入力
↓
・矢印コネクタで接続する
という手順を繰り返していくだけです。
次からいよいよ自分の頭を捻る作業に入ります。
関連図の配置を決める
まずは例題や対象となる患者の病状をできるだけ限定し、関連図のどこに配置するのかを決めます。
たとえば、「急性疾患」「慢性疾患1」「慢性疾患2」「患者の特徴」で分けて配置する場合は↓のような感じです。

やりにくいと感じたら配置を変えて自分がやりやすいように調整してかまいません。
配置が決まったら関連図の図形を入れていきますが、できればその前に殴り書きでもいいので白紙に手書きで下書きをしておくことをオススメします。一見遠回りのようですが、この後の作業がとても楽になるので結果的に効率は良くなります。
関連図の参考書などを元にして直接入力しても良いのですが、意外に不要な項目も多かったりするので取捨選択は必要です。
一つの疾患に対しての関連図作成であっても参考書の丸写しではなく、自分なりに必要だと思う項目に絞って作成した方が分かりやすいです。
関連図の図形を配置する
次は、各エリアへ関連図を配置していきます。例として以下を配置していきます。
「急性疾患」→気管支肺炎
「慢性疾患1」→糖尿病
「慢性疾患2」→認知症
「患者の特徴」→高齢・廃用性症候群
まず、事前に作成・設定した右上の図形をコピーして適当に貼り付ける。

コピーした図形にテキストを入力し、テキストに合わせて図形の大きさを調整。

「オートシェイプ」の「コネクタ」で適当な矢印コネクタを選択。

2つの図形をコネクタで接続します。


この作業を繰り返して各疾患ごとに配置していきます。
病態関連図の参考書などを用意できれば図形の配置で迷うことはあまりないでしょう。
色々試してみましたが、最初に図形を配置したあとで最後にコネクタで接続していった方が効率がいいように思いました。なので
・各疾患別の配置を決める
↓
・図形を作って並べる
↓
・図形をコネクタで接続する
としていった方がいいかもしれません。
各疾患・特徴毎に配置したものが↓

疾患・特徴別に分けた図形を接続する
各疾患・特徴に関連する図形同士を矢印で接続します。
途中でさらに図形を付け足して繋げても良いです。
接続していくと、線が図形にかぶったり、思うように線引きができないような場合が出てくると思います。
こんな時は”2つの矢印コネクタの間に通常の線を挟む方法”を使うと、線引きの自由度が一気に上がります。
「オートシェイプ」から「線」「直線」を選択。

適当に作成。

次にまた「オートシェイプ」から「直線コネクタ」・「矢印直線コネクタ」の2つを作成する

前に作成した線の両端にコネクタを接続する。
すると、↓のようになって自由に配置できるようになる。

私は最初この方法を思いつかなかったので四苦八苦して図形の位置を調整していました。
課題を提出した後で思いついちゃったんですよね。
接続が完了したものが↓

看護ケアなどを追加する
ここから必要と思われる看護ケアや治療を追加していきます。
後は余裕があればお好みで患者情報を追加してみたり、血液データ表を挿入してみたり色々脚色して自分だけの関連図に仕上げてみてください。
こんな感じ↓

よくある問題と解決方法
図形配置でつまずいた時
Q1. 図形が思った場所に配置できない
原因: グリッド線への自動整列機能が働いている
解決方法:
- 「図形の調整」→「グリッド」を選択
- 「描画オブジェクトをグリッド線に合わせる」のチェックを外す
- 「位置を微調整する」にチェックを入れる
Q2. 図形のサイズ調整がうまくいかない
原因: 縦横比の固定やグリッドの影響
解決方法:
- 図形を右クリック→「オートシェイプの書式設定」
- 「サイズ」タブで数値を直接入力
- 「縦横比を固定する」のチェックを外す
矢印・線の問題
Q3. 矢印の向きが変更できない
原因: 始点・終点の設定問題
解決方法:
- 矢印を右クリック→「オートシェイプの書式設定」
- 「色と線」タブで「始点」「終点」を変更
- または矢印を削除して逆方向で再作成
Q4. 線が図形に隠れて見えない
原因: 図形の重なり順序の問題
解決方法:
- 線を右クリック→「順序」→「最前面へ移動」
- または図形を「背面へ移動」
- 線の色・太さを調整して視認性向上
テキスト関連のトラブル
Q5. 文字が図形からはみ出る
原因: 図形サイズ不足またはフォントサイズ過大
解決方法:
- 図形の幅を広げる(推奨)
- フォントサイズを小さくする(7ptまで縮小可能)
- 改行を入れて複数行にする
- 略語・短縮形を使用する
Q6. 文字の位置が中央に来ない
解決方法:
- 図形を右クリック→「段落」
- 「配置」で「中央揃え」を選択
- 「インデント」「行間」を0ptに調整
効率的作成のコツ
時短テクニック
定型図形セットの活用:
- よく使う図形を画面右上にテンプレートとして配置
- 疾患用(赤枠)、症状用(青枠)、看護問題用(緑枠)など色分けして準備
- 必要な時にコピー&ペーストで使用
ショートカットキーの活用:
- Ctrl + C:コピー
- Ctrl + V:ペースト
- Ctrl + Z:元に戻す
- Ctrl + Y:やり直し
- F4:直前の操作を繰り返し
見やすさを向上させるポイント
色分けルール例:
- 赤系:疾患・病態(重篤度で濃淡調整)
- 青系:症状・徴候(客観的データは濃い青、主観的データは薄い青)
- 緑系:看護問題(実際問題は濃い緑、リスク問題は薄い緑)
- 黄系:看護介入・治療
フォント設定のコツ:
- 基本:8pt、MS明朝
- 重要項目:9pt、太字
- 数値データ:等幅フォント使用
- 統一ルール:1つの関連図内で一貫性を保つ
完成度チェックリスト
内容面のチェック
- [ ] 主疾患の病態生理が正確に記載されている
- [ ] 症状と原因の因果関係が論理的
- [ ] 看護問題が適切に抽出されている
- [ ] 看護介入が具体的で実践可能
- [ ] 患者の個別性が反映されている
- [ ] 医学用語の使用が正確
- [ ] 検査データが適切に活用されている
形式面のチェック
- [ ] 図形のサイズが統一されている
- [ ] 矢印の方向が適切で接続が正確
- [ ] 文字サイズが読みやすい(最小7pt以上)
- [ ] 色分けが効果的に使用されている
- [ ] 全体のバランスが良い
- [ ] 印刷時に文字がつぶれない
- [ ] A3用紙内に適切に収まっている
最終確認ポイント
- [ ] 誤字脱字がない
- [ ] 略語の説明が適切
- [ ] 引用・参考文献が明記されている
- [ ] 作成者情報が記載されている
- [ ] 印刷プレビューで全体を確認済み
まとめ
Word病態関連図の作成において最も重要なのは、病態生理の正確な理解と論理的な関連性の表現です。
この記事で紹介した手順をまとめると:
事前準備では、手書き下書きと情報整理により効率的な作業基盤を構築する
Word設定では、描画キャンバスとグリッド設定により自由度の高い図形配置を可能にする
図形作成では、統一されたフォーマットと効果的な色分けで見やすい関連図を作成する
配置・接続では、論理的な関係性と優先順位を視覚的に明確に表現する
病態関連図は看護過程展開の重要なツールです。最初は時間がかかるかもしれませんが、この記事のテクニックを活用することで、効率的かつ質の高い関連図が作成できるようになります。
技術的なスキルの向上と同時に、病態生理への理解を深めることで、より良い看護実践につながる関連図を作成していってください。実習での学びがより充実したものになることを願っています。
関連記事
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参考文献
- 系統看護学講座 病態生理学(医学書院)
- 看護過程展開ガイド(照林社)
- 病態関連図の書き方(メディカ出版)








