心不全の看護過程は、看護学生が実習やレポート課題で最も手こずる分野のひとつです。
慢性心不全の急性増悪という複雑な病態に対して、ゴードンの11の機能的健康パターンを使ってアセスメントし、看護診断・看護計画まで一貫して書き上げるのは、初めてだとどこから手をつければいいかわからなくなります。
この記事では、心不全患者(60歳代男性・慢性心不全急性増悪)の事例をもとに、ゴードン11項目のアセスメントの書き方から看護診断・看護計画の立て方まで詳しく解説します。
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今回ご紹介する模範解答PDFの内容
- 詳細な事例紹介(実際の臨床に近い具体的な事例)
- S・O情報の整理
- ゴードン11項目のアセスメント(分析・解釈)全項目
- 看護診断・優先順位第1位の選定理由
- 個別性に基づいた看護計画(OP・TP・EP)
心不全の看護過程がなぜ難しいのか
心不全の看護過程が難しいと感じる理由のひとつは、慢性心不全と急性増悪が同時に絡み合っている複雑な病態にあります。
慢性期には服薬管理・塩分制限・禁煙といったセルフケアの問題が前景に出ます。
一方で急性増悪時は、呼吸困難・浮腫・SpO2低下・安静保持・利尿薬管理など、身体的な問題が一気に複数出現します。
ゴードンの11の機能的健康パターンを使う場合、この両方の視点をパターンに当てはめながらアセスメントを書き、看護診断まで導く必要があります。
さらに、看護診断の優先順位の選定と、その理由を論理的に説明する部分でつまずく学生がとても多いです。
事例紹介(簡略版)
○○さん 60歳代 男性
妻と2人暮らし キーパーソン:妻
嗜好品:喫煙歴40年(20本/日) 飲酒:焼酎1〜2合/日、友人と飲む際は3〜4合/回
入院までの経過
数年前から高血圧・脂質異常症と診断され、内服していました。
2年前に急性心不全で入院し治療を受けましたが、退院後しばらくは自己管理できていたものの、徐々に服薬の飲み忘れ・喫煙・飲酒が増え、以前と変わらない生活スタイルに戻っていきました。
1か月前から、犬の散歩や階段昇降時の軽い息切れ、夕方以降の下肢浮腫、夜間咳嗽、身体の重怠感が出現していましたが、運動不足や肥満が原因だと考えて放置していました。
3日前から咳嗽・動作時の呼吸困難が増強し、食欲不振も出現。
前日の就寝後に呼吸困難感が出現して救急搬送され、慢性心不全の急性増悪と診断されました。
急性増悪症状の改善と心臓への負荷軽減を目的として入院となっています。


PDFをダウンロードすることで、より詳細な事例と全項目のアセスメントを閲覧できます。


心不全でゴードン11項目を使うときのポイント
心不全患者のアセスメントでは、11パターンのうち以下の項目が特に情報量が多くなります。
健康知覚-健康管理パターン
今回の事例では、セルフケア不足がそのまま急性増悪につながった経緯がはっきりしています。
服薬の飲み忘れ・喫煙の継続・飲酒量の増加・症状の放置という4つの問題が重なり、再入院に至っています。
このパターンでは、患者さん自身が病気をどう認識しているか、自己管理の実態、過去の入院歴との比較を軸にアセスメントを記述します。
栄養-代謝パターン
心不全では水分と塩分の摂取管理が治療の中心のひとつです。
浮腫の出現状況、体重変化、水分出納バランス、食欲不振による栄養状態の変化をアセスメントに盛り込みます。
血液データ(BNP・NT-proBNP・Alb・Na・Kなど)と照らし合わせながら、心不全と栄養状態の相互影響を記述することがポイントです。
活動-運動パターン
心不全の急性増悪時は安静度に制限が設けられます。
動作時の呼吸困難感・NYHAの心機能分類・SpO2値・酸素療法の有無などをもとに、活動耐性の低下を評価します。
「以前は犬の散歩ができていたが今は困難」という具体的な変化を記述すると、患者の個別性が出たアセスメントになります。


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排泄パターン
利尿薬の使用による尿量変化、浮腫の改善状況を評価します。
IN/OUTバランスの記録と体重の推移を組み合わせて記述することで、体液量過剰の改善過程をアセスメントに落とし込めます。
コーピング-ストレス耐性パターン
今回の事例では、退院後に自己管理が崩れていった背景に、ストレスや友人関係による飲酒・喫煙の再開が関わっています。
患者さんがストレスをどう対処してきたか、サポートしてくれる人間関係はあるかをアセスメントします。
ゴードン11項目のアセスメント(抜粋)


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看護診断と優先順位第1位の選定理由
心不全の看護過程では、複数の看護診断が挙がってきます。
今回の事例で挙がりやすい看護診断には以下のものがあります。
- 体液量過剰(浮腫・肺うっ血)
- 活動耐性低下(動作時呼吸困難・易疲労感)
- 非効果的健康自主管理(服薬・禁煙・飲酒管理の崩れ)
- 不安(再発・予後への不安)
- 非効果的呼吸パターン(急性増悪による呼吸困難)
このうち優先順位第1位を選定する際は、マズローの欲求階層説や生命の危機に直結する問題かどうかを軸に理由を記述します。
急性増悪期であれば、体液量過剰や非効果的呼吸パターンが第1位になることが多いです。
一方で、回復期・退院前であれば非効果的健康自主管理が前景に出てきます。
「今、この患者さんにとって最も解決すべき問題は何か」という視点で優先順位の理由を記述することが大切です。


心不全の看護計画(OP・TP・EP)の書き方
看護計画はOP・TP・EPの3つで構成します。
OP(観察計画)
心不全の場合、以下を軸に観察項目を記述します。
- バイタルサイン(血圧・脈拍・SpO2・呼吸数)
- 浮腫の程度・部位・左右差
- 体重の変化(毎日同じ条件で測定)
- 水分出納バランス(IN/OUT)
- 呼吸音(水泡音・cracklesの有無)
- 血液データ(BNP・NT-proBNP・電解質・腎機能)
- 動作時の呼吸困難感・疲労感の程度
- 服薬状況と自己管理への意識
TP(ケア計画)
- 安静度に応じた活動量の調整と介助
- 酸素療法の管理とSpO2の維持
- 利尿薬投与後の尿量・体重変化の記録
- 塩分・水分制限食の提供と摂取量の確認
- 体位調整(ファウラー位・起座位による呼吸楽化)
- 浮腫部位の皮膚保護と清潔保持
EP(教育計画)
- 服薬の必要性と飲み忘れ防止方法の指導
- 塩分・水分制限の具体的な方法の説明
- 禁煙・節酒の重要性と支援方法の説明
- 体重・浮腫・息切れなど増悪サインの早期受診指導
- 妻(キーパーソン)への自己管理支援の協力依頼


心不全看護で押さえておくべき病態の知識
看護過程を書くうえで、病態の理解は欠かせません。
慢性心不全とは
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な血液を送り出せなくなった状態です。
慢性心不全では、代償機構がはたらいているうちは症状が軽微でも、何らかのきっかけで急速に悪化します(急性増悪)。
今回の事例では、服薬中断・喫煙・過度の飲酒が重なり急性増悪を招いたと考えられます。
左心不全と右心不全の違い
左心不全では肺うっ血が前景に出るため、呼吸困難・起坐呼吸・夜間発作性呼吸困難などが出現します。
右心不全では体循環のうっ血が前景に出るため、下肢浮腫・頸静脈怒張・腹水・肝腫大などが出現します。
今回の事例では下肢浮腫・夜間咳嗽・呼吸困難が同時に出現しており、両心不全の状態と考えられます。
BNPとは何か
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は、心臓に負荷がかかったときに分泌されるホルモンです。
心不全の重症度評価や治療効果の判定に用いられ、100pg/mL以上で心不全が疑われ、400pg/mL以上では重症とされています。
アセスメントでBNPの値を記述する際は、正常値との比較と、治療後の変化を合わせて記述するとより説得力が出ます。
PDFをダウンロードして学習に活かそう
今回ご紹介した模範解答PDFには、この記事で解説した内容をさらに詳しく、全項目にわたってまとめています。
アセスメントの文章の書き方・看護診断の選定理由・個別性に基づいた看護計画まで一貫した流れで確認できます。
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