脳梗塞のリハビリ期は、急性期を乗り越えた患者さんがいよいよ日常生活への復帰を目指す、とても重要な時期です。
この時期の看護師の役割は、残存機能を最大限に活かしながら、患者さんが少しずつ自立した生活を取り戻せるよう支援していくことにあります。
今回は、リハビリ期にある脳梗塞患者さんの看護計画について、看護問題・目標・具体的な対策までを整理してお伝えします。
脳梗塞リハビリ期の看護目標
リハビリ期における看護の大きな目標は、次の2つです。
リハビリテーションの必要性を理解したうえで、ADL(日常生活動作)を拡大できること。
日常生活の自立を図りながら、退院後の生活設計を患者さん自身が立てられるようになること。
脳梗塞後の患者さんは、麻痺・認知障害・視覚障害など、さまざまな後遺症を抱えています。
そのため、看護師は身体的な側面だけでなく、心理的・社会的な側面にも目を向けながら、個別性のある看護計画を組み立てていくことが大切です。
看護問題 #1|身体可動性の障害によるADLのセルフケア不足
関連因子
脳梗塞後に生じるADLのセルフケア不足には、主に以下の要因が関わっています。
麻痺による運動障害は、日常生活の多くの場面で直接的な妨げになります。
認知障害による認知力の低下は、自己管理や動作の順序理解を難しくします。
視覚障害は、空間認識の乱れや転倒リスクの上昇につながります。
これらの要因が重なることで、食事・清潔・更衣・排泄といった基本的な生活行動が自力では難しくなり、看護師による細やかなアセスメントと支援が必要になります。
看護目標(短期・具体的な達成指標)
リハビリ期の目標は、患者さんの状態に合わせて段階的に設定することが大切です。
以下は、具体的な行動目標の例です。
食事:スプーンを使って自力で食事を摂ることができる。
清潔:上半身の清拭を自力で行うことができる。
更衣:ボタンかけを自分で行うことができる。
排泄:ベッドサイドのポータブルトイレを使用することができる。
試験外泊:退院に向けた試験外泊を実施することができる。
これらの目標は、患者さん・家族・リハビリスタッフと共有しながら設定することで、チーム全体で同じゴールを目指す土台になります。
観察計画(O-P)
まず大切なのは、患者さんの現状を正確に把握することです。
残存機能の確認として、麻痺の範囲・運動障害の程度・使える筋力の状態を細かく観察します。
安静度の確認として、リハビリテーションの進行状況に合わせて、どこまで動けるかを把握しておきます。
ADLの自立度については、食事・清潔・更衣・整容・排泄のそれぞれについて、どの程度自力で行えているかを確認します。
視力障害の有無と程度も重要な観察項目です。 視力低下や視野欠損は転倒リスクや食事動作に大きく影響するため、日常的に観察することが必要です。
認知障害の有無と程度については、会話の内容・記憶力・理解力・指示への反応などから総合的に判断します。
疾患や治療に対する理解度を確認することで、患者さんがリハビリの意義をどの程度理解しているかを知ることができます。
意欲・依存心・ストレス・不安の有無は、リハビリへの取り組み姿勢を左右するため、日ごろから観察が必要です。
固定器具やドレーン類の状況についても、動作への制限につながるため確認が欠かせません。
家族のサポート状況は、入院中だけでなく退院後の生活を見越して把握しておきます。
思考や感情の障害がある場合は、コミュニケーション方法を工夫する必要があります。
生活習慣・家庭での生活様式(トイレ・洗面所・浴室・食堂・寝室の環境)を確認することで、退院後の住環境整備に向けた支援につなげます。
合併症や検査データも、ADL拡大を進めるうえでの安全性判断に活用します。
ケア計画(T-P)
セルフケア不足の原因をアセスメントする
ADLが自立できていない原因が麻痺によるものなのか、認知障害によるものなのか、それとも意欲の低下によるものなのかを見極めることが、具体的な支援の出発点になります。


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原因を正確に把握することで、その患者さんに合った支援方法を選ぶことができます。
患者さんのペースに合わせた関わり
無理に急がせず、患者さんの状態に合わせた計画のもとで関わることが大切です。
努力の過程や小さな達成に対しては、積極的に励ましや賞賛の言葉をかけるようにします。
患者さんの自尊心を傷つけないよう、できる限り見守りを優先し、必要なときだけ介助する姿勢を持つことが重要です。
ベッドサイドの整理整頓と安全確認も、セルフケアを支える環境整備として日常的に行います。
食事の支援
食事の支援は、患者さんの自立度に応じて段階的に行います。
全面介助が必要な場合は、誤嚥に注意しながら安全に食事を摂れるよう支援します。
一部介助の場合は、配膳・セッティング・食堂への誘導など、できることとできないことを見極めながら関わります。
食事形態については、おにぎりなど持ちやすい形状に工夫することも有効です。
スプーンやフォークの使用を勧めるとともに、柄の太いものや握りやすい形状のものを選ぶことで、自力で食べやすくなります。
容器の蓋を開ける・袋の開封など、細かい動作への介助も忘れずに行います。
清潔の支援
入浴・清拭についても、自立度に合わせて対応します。
全介助が必要な場合は、全身の清拭を安全に行います。
一部介助の場合は、シャンプーや背部・健側の洗浄を介助しながら、可能な部位は患者さんに行ってもらいます。
洗面については、全介助では歯ブラシや蒸しタオルを活用し、一部介助では洗面台への誘導・洗面用具のセッティング・ブラッシングのサポートを行います。
更衣・整容の支援
更衣・整容についても、全面介助から一部介助まで段階的な関わりが必要です。
ボタンかけ・結髪・ひげそりなどの細かい動作は、麻痺側の機能訓練としても意義があります。
前あきのパジャマを着用することで、更衣動作を大きく簡略化できます。
排泄の支援
排泄は、患者さんの尊厳に深く関わるデリケートな場面です。
全面介助・尿器や便器の使用・紙おむつ使用など、患者さんの状態に応じた対応を行います。
可能であれば、徒歩や車椅子でトイレへ誘導し、できる限りトイレでの排泄を維持することが自立への近道になります。
夜間はベッドサイドにポータブルトイレを設置することで、安全に排泄できる環境を整えます。
教育計画(E-P)
患者さんへの説明
時間がかかっても自分で行うことの大切さを、患者さんにわかりやすく伝えます。
自力でやり遂げることが、脳や神経の回復を促し、ADL拡大につながるということを根気強く説明することが大切です。
家族への指導
家族には、見守ることの重要性を伝えます。
すぐに手を出すのではなく、患者さんが自分でやろうとしている姿を見守り、達成できたときに一緒に喜ぶことが、患者さんの意欲向上につながることを説明します。
努力の過程を認め、励ましや賞賛を伝えることの大切さも、家族と共有しておきましょう。
社会資源の活用と住環境整備
訪問リハビリ・デイサービス・介護保険サービスなど、退院後に活用できる社会資源を紹介します。
残存機能に合わせた住宅改修(手すりの設置・段差の解消・トイレ環境の整備など)についても、退院前から具体的に指導しておくことが重要です。
再発防止に向けた指導
脳梗塞の再発防止のため、患者さん・家族に対して薬剤指導・栄養指導を行います。
抗血栓薬の内服管理・塩分制限・水分摂取・禁煙などについて、生活の中で無理なく継続できるよう、具体的でわかりやすい説明を心がけます。
まとめ
脳梗塞リハビリ期の看護計画は、患者さんの残存機能を最大限に活かしながら、ADLの自立を段階的に支援していくことを目的としています。
観察・ケア・教育の各側面から総合的に関わることで、患者さんが退院後も安心して生活できる力を育てることができます。
看護師として、患者さんの小さな変化を丁寧に拾い上げ、その人らしい生活の回復を一緒に目指していきましょう。








