脳梗塞や脳出血などで脳への血流が低下すると、意識障害や麻痺の悪化、再梗塞などが起こりやすくなります。この記事では、脳の組織循環が保たれにくい患者を想定した看護計画を、観察・援助・教育の根拠とあわせて解説します。
なお、NANDA-Iの分類では版によって名称が異なり、近年の版では「非効果的脳組織循環リスク状態」という診断名が使われています。学校で指定されている版の名称を確認して使いましょう。
この看護問題が当てはまる状態
脳への血液の供給が不十分になり、脳の機能が保たれにくくなっている、またはそのおそれがある状態です。次のような患者で多くみられます。
- 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の急性期
- 頭部外傷、脳腫瘍、脳浮腫がある
- 心房細動などで脳塞栓を起こしやすい
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症など動脈硬化の危険因子がある
看護目標
長期目標:脳循環が保たれ、神経症状が悪化することなく急性期を脱することができる
短期目標
- 意識レベルや麻痺の程度が入院時より悪化しない
- 血圧が医師の指示範囲内で経過する
- 誤嚥や窒息を起こさない
- 頭痛や嘔気などの異常を感じたときに看護師に伝えられる
観察計画(OP)
| 観察項目 | 根拠 |
|---|---|
| 意識レベル(JCS・GCS) | 意識の低下は、脳浮腫や再梗塞・再出血など病状悪化の最も早いサインになるため。眠っているのか意識が低下しているのかを、刺激への反応で区別する |
| 瞳孔の大きさ・左右差・対光反射 | 瞳孔不同や対光反射の消失は、頭蓋内圧亢進や脳ヘルニアのサインであるため |
| バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、体温、SpO2) | 血圧の急な上昇や徐脈、呼吸パターンの変化(クッシング徴候)は頭蓋内圧亢進を示すため。低酸素や発熱は脳の障害を悪化させる |
| 麻痺の程度(NIHSSなど)、言語障害、嚥下障害 | 神経症状の進行を客観的に比較するため |
| 頭痛、嘔気・嘔吐 | 頭蓋内圧亢進の症状であるため |
| 痙攣の有無 | 痙攣は脳の酸素消費を増やし、障害を悪化させるため |
| 不整脈(心電図モニター) | 心房細動は脳塞栓の原因となるため |
| 検査データ(血算、凝固系、電解質、血糖) | 抗血栓療法中の出血傾向や、高血糖・低ナトリウムによる脳への影響を確認するため |
| 水分出納(IN/OUT)、尿量 | 脱水は血液の粘稠度を上げ、脳血流を悪化させるため |
援助計画(TP)
- 医師の指示に従い、血圧を管理する(脳梗塞の急性期は、急激な降圧によって脳血流が低下することがあるため、指示範囲を必ず確認する)
- 指示された安静度を守り、頭部の挙上角度を指示どおりに保つ
- 気道を確保し、必要に応じて吸引を行う。舌根沈下や誤嚥を防ぐため、体位を工夫する
- 指示に基づき酸素吸入を行い、SpO2を保つ
- 輸液を指示どおりに管理し、脱水を防ぐ
- 2時間ごとを目安に体位変換を行い、良肢位を保持して褥瘡や拘縮を防ぐ
- 嚥下評価の結果に応じて、食事の形態や姿勢を調整する
- 口腔ケアを行い、誤嚥性肺炎を予防する
- 排便時のいきみは血圧を上げるため、便秘を予防する
- ベッド柵の使用、ナースコールの位置の工夫などで転倒・転落を防ぐ
教育計画(EP)
- 安静が必要な理由と、守ってほしい具体的な内容を本人と家族に説明する
- 頭痛の悪化、気分不快、手足の動かしにくさなどを感じたら、すぐにナースコールで知らせるよう説明する
- 排便時に強くいきまないよう説明し、便秘時は伝えてもらう
- 回復期に向けて、再発予防(血圧管理、服薬継続、生活習慣の改善)の必要性を家族も含めて説明する
評価の視点
- 意識レベル、瞳孔所見、麻痺の程度が入院時と比べて維持・改善しているか
- 血圧が指示範囲内で経過しているか
- 誤嚥や肺炎の徴候がないか
- 患者・家族が異常時の連絡方法を理解しているか
脳の血流に影響する要因
脳の血流(脳灌流)は、血圧と頭蓋内圧のバランスによって保たれています。看護では、次の要因に注意して観察と援助を行います。
| 要因 | 脳循環への影響 | 看護での注意点 |
|---|---|---|
| 血圧 | 低すぎると脳への血流が減り、高すぎると出血や脳浮腫の悪化につながる | 指示された血圧の範囲を確認し、範囲から外れたらすぐに報告する |
| 頭蓋内圧 | 脳浮腫などで上昇すると、脳への血流が妨げられる | 意識レベル、瞳孔、頭痛、嘔吐の変化を観察する |
| 体位 | 頸部が曲がったりねじれたりすると、頭からの血液の戻りが悪くなる | 頸部をまっすぐに保ち、頭部の挙上の角度は指示に従う |
| 呼吸・酸素 | 低酸素や二酸化炭素の蓄積は、脳の障害を悪化させる | SpO2と呼吸パターンを観察し、気道を確保する |
| 体温 | 発熱は脳の代謝を高め、障害を広げるおそれがある | 体温を定期的に測定し、発熱時は指示に沿って解熱を図る |
| 血糖 | 高血糖・低血糖のどちらも脳の障害を悪化させる | 血糖値の推移を確認する |
▶ あわせて読みたい:非効果的脳組織灌流リスク状態の看護計画|脳への血流が脅かされる患者さんへの支援と関わり方
ねこ先生
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疾患による血圧管理の違い
脳梗塞の急性期は、血流が途絶えかけた部分(ペナンブラ)に血液を届けるため、極端に高い場合を除いて積極的に血圧を下げないことが多くあります。一方、脳出血では血腫が大きくなるのを防ぐため、早い段階から血圧を下げる治療が行われます。同じ「脳の病気」でも目標とする血圧が異なるため、受け持ち患者の指示を必ず確認しましょう。
急変のサインと報告の仕方
次のような変化は、脳の状態が悪化しているサインの可能性があります。
- 意識レベルの低下(呼びかけへの反応が鈍くなる、JCSやGCSの点数が下がる)
- 瞳孔の左右差、対光反射の低下
- 麻痺の悪化、新たな言語障害の出現
- 血圧の上昇と脈拍の低下、呼吸パターンの変化(頭蓋内圧亢進のサイン)
- 激しい頭痛や噴出するような嘔吐
変化に気づいたら、「いつから」「何が」「どのように変わったか」を、前回の観察結果と比べて具体的に報告します。たとえば「10時の観察ではJCS I-1でしたが、現在はJCS II-10で、右上肢の筋力が低下しています」のように伝えると、医師や指導者が状況を判断しやすくなります。
報告のあとは、観察の間隔を短くするなど、指示に沿って観察を続けます。変化に気づいた時刻と報告した内容は、記録にも残しておきましょう。
実習でのポイント
急性期の患者では、観察の「回数」と「比較」が重要です。前回の観察結果と比べて変化があるかを必ず確認し、悪化のサインに気づいたらすぐに指導者に報告しましょう。
組織循環に関する看護計画の全体像は、次の記事でも詳しく解説しています。
非効果的組織循環の看護計画|原因・アセスメントから目標・介入まで詳しく解説
※この看護計画は一例です。受け持ち患者の情報に合わせて、目標や計画を個別に考えましょう。

