看護師・看護学生の皆さん、リディア・ホールの看護理論をご存知ですか?
この記事では、現代の看護実践でも重要な「ケア・キュア・コアモデル」について、実例を交えながらわかりやすく解説します。
看護研究、ケーススタディや実習、現場での実践に役立つ内容をお届けします!
この記事で学べること
- リディア・ホール看護理論の基本概念
- ケア・キュア・コアの3つの円の意味と使い方
- 実際の看護場面での活用例
- 他の看護理論との違い
- 国家試験でのポイント
リディア・ホールってどんな人?【看護師なら知っておきたい基礎知識】
リディア・E・ホール(Lydia Eloise Hall、1906-1969)は、アメリカの看護師で「ケア・キュア・コアモデル」を開発した看護理論家です。医師の父を持つ彼女は、1927年に看護師になり、その後コロンビア大学で学士号と修士号を取得しました。
なぜホールが重要なの?
- 看護師の専門性を明確に定義した先駆者
- 患者中心のケアを理論化
- 実際の病院(ロイブセンター)で理論を実証
- 入院日数を従来の半分に短縮する成果を上げた
ケア・キュア・コアモデルとは?【3つの円で理解する看護】
ホールの理論は、患者ケアを「ケア(Care)」「キュア(Cure)」「コア(Core)」の3つの相互に関連する円で表現します。この3つの円は患者の状態や回復段階によって大きさが変わります。
【重要ポイント】3つの円の基本的な考え方
急性期:キュア > ケア > コア
回復期:ケア > コア > キュア
慢性期:コア > ケア > キュア
ケア(Care)【看護師だけの専門領域】
ケアとは何? ケア円は看護師のみが担当する専門領域で、患者の基本的ニーズを満たす直接的なケアを指します。
具体的な内容
- 基本的生活援助:入浴、食事、排泄、清潔ケア
- 患者教育:病気の説明、退院指導、セルフケア指導
- 心理的支援:不安の軽減、傾聴、励まし
- 環境整備:療養環境の調整、安全確保
実習で使える例
- 手術後の患者さんの清拭を行う
- 糖尿病患者さんに血糖測定を教える
- 不安を訴える患者さんの話を聞く
キュア(Cure)【医療チームとの協働領域】
キュアとは何? キュア円は医師や他の医療専門職と共有する領域で、医学的治療に関わる部分です。
具体的な内容
- 薬物療法:与薬、副作用観察、効果判定
- 医療処置:点滴管理、創傷処置、検査介助
- 医師との連携:患者情報の共有、治療方針の検討
- 他職種との協働:理学療法士、栄養士等との連携
実習で使える例
- 抗生物質投与後の患者さんの症状変化を観察
- 医師に患者さんの状態変化を報告
- リハビリテーションの進行状況を理学療法士と情報共有
コア(Core)【患者さんの内なる力を引き出す領域】
コアとは何? コア円は患者自身の内在する治癒力と成長への動機に焦点を当てる領域です。
具体的な内容
- 患者の価値観の理解:人生観、治療への希望
- 自己決定の支援:治療選択、生活スタイルの決定
- 動機づけ:回復への意欲向上、目標設定
- 心理的成長の促進:病気受容、新しい生活への適応
実習で使える例
- がん患者さんの「どう生きたいか」という思いを聞く
- 脳梗塞患者さんの退院後の生活目標を一緒に考える
- 慢性疾患患者さんの病気との向き合い方を支援
実際の看護場面での活用法【事例で学ぶ】
事例1:心筋梗塞で入院した60歳男性のケース
急性期(入院直後)
- キュア70%:心電図モニター、薬物療法、検査
- ケア20%:安静保持、清潔ケア、不安軽減
- コア10%:病気への恐怖感の受容
回復期(2週間後)
- ケア50%:リハビリ支援、退院指導、生活指導
- コア30%:生活習慣改善への動機づけ
- キュア20%:薬物療法の継続、定期検査
事例2:糖尿病の患者さんへの外来指導
初回(診断時)
- キュア60%:血糖値管理、薬物療法開始
- ケア30%:食事療法指導、インスリン注射指導
- コア10%:病気受容への支援
継続期(3ヶ月後)
- コア50%:セルフケアへの動機づけ、目標設定
- ケア30%:継続的な生活指導、問題解決支援
- キュア20%:薬物調整、合併症予防
他の看護理論との比較【国家試験対策】
ヘンダーソンの14基本的ニーズとの違い
| 項目 | ヘンダーソン | ホール |
|---|---|---|
| 焦点 | 基本的ニーズの充足 | 治療的関係性 |
| アプローチ | 段階的・線形的 | 動的・相互作用的 |
| 看護師の役割 | 補完・補足・代替者 | 専門的パートナー |
ワトソンのヒューマンケアリングとの共通点
- 治療的関係性の重視
- 全人的ケアの実践
- 患者の内なる力への着目
現代の看護実践での意義【なぜ今も重要?】
1. チーム医療での役割明確化
ホール理論は看護師固有の専門領域(ケア)を明確にしながら、他職種との協働領域も示しています。
2. 患者中心のケアの実現
現在重視されている「患者中心のケア」の理論的基盤を提供
3. 地域包括ケアシステムでの活用
在宅医療や地域医療での多職種連携に有効
実習・現場で使える実践のコツ
アセスメントでの活用法
- 患者さんの病期を判断
- 3つの円の優先順位を決定
- それぞれの領域で必要なケアを計画
看護計画立案のポイント
- ケア:看護師主導で実施可能な内容
- キュア:医師の指示に基づく内容+看護の専門的判断
- コア:患者さんの価値観や希望を反映した内容
カンファレンスでの活用
「この患者さんの現在の状況では、ケア・キュア・コアのどの部分を重視すべきでしょうか?」
国家試験でのポイント【試験対策】
よく出る問題パターン
- 3つの円の定義と内容
- 病期による円の大きさの変化
- 他理論との比較
- 実際の看護場面での適用
覚え方のコツ
- ケア:看護師の「ケア」は看護師だけ
- キュア:「キュア(治療)」は医師と協働
- コア:「コア(核心)」は患者さんの心の中
現代の課題と今後の展望
高齢化社会での活用
- 慢性疾患管理でのコア円の重要性増大
- 在宅医療でのケア円の専門性発揮
デジタル化時代の看護
- ICTを活用したケア提供
- 遠隔医療での3つの円の統合
まとめ:看護師・看護学生が知っておくべきポイント
リディア・ホールの看護理論は、現代の看護実践においても非常に有用な理論です。特に以下の点で重要です:
看護学生の皆さんへ
- 実習での患者アセスメントに活用
- 看護計画立案の理論的根拠として使用
- 国家試験対策として他理論との比較を理解
現職看護師の皆さんへ
- チーム医療での役割明確化
- 患者中心のケア実践の指針
- 専門性向上のための理論的基盤
実践での活用ポイント
- 患者の病期・回復段階を正確に把握
- 3つの円の優先順位を適切に判断
- 看護独自の専門性を意識したケア提供
- 他職種との効果的な連携
ホール理論を理解することで、より専門的で効果的な看護実践が可能になります。ぜひ日々の実践や学習に活用してください!
この記事が役に立った看護師・看護学生の皆さん、ぜひコメントや質問をお寄せください。一緒に看護の専門性を高めていきましょう!








