はじめに
看護実習中、患者さんの呼吸状態を把握することは非常に重要です。
今回は、ヘンダーソンの14項目の中から「正常に呼吸する」に関する質問例をまとめました。
この質問集を活用して、効率的に情報を収集し、患者さんの呼吸機能をサポートしましょう。
呼吸に関する適切な質問は、患者さんの全身状態を把握する重要な手がかりとなります。
実習生にとって、どのような質問をすれば良いか迷うことも多いため、具体的な質問例を参考にして自信を持って患者さんとコミュニケーションを取ることができます。
📋 正常に呼吸するにおける質問例
🫁 呼吸数と肺雑音の確認
呼吸パターンの変化について
「最近、呼吸のリズムや速さに変化を感じることはありますか?」
この質問により、患者さん自身が感じている呼吸状態の変化を把握できます。
「普段と比べて呼吸が早くなったり、遅くなったりすることはありませんか?」
日常生活での変化を具体的に聞き取ることで、病状の進行や改善を評価できます。
呼吸音の異常について
「呼吸時に音がすることがありますか?その音はどのような感じですか?」
ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴や、ゴロゴロといった湿性ラ音の有無を確認できます。
「息を吸う時と吐く時、どちらで音がしますか?」
吸気時と呼気時の音の違いにより、呼吸器疾患の種類を推測することができます。
💨 呼吸機能と経皮的酸素飽和度
呼吸困難感の評価
「息切れや呼吸が苦しいと感じることがありますか?その頻度はどのくらいですか?」
呼吸困難の程度や頻度を把握し、日常生活への影響を評価します。
「階段を上がる時や、歩く時に息切れを感じますか?」
労作時呼吸困難の有無により、心肺機能の状態を評価できます。
「安静にしている時でも呼吸が苦しくなることはありますか?」
安静時呼吸困難は重篤な状態を示唆するため、詳細な確認が必要です。
酸素飽和度の把握
「最近の経皮的酸素飽和度(SpO2)の測定結果を教えてください。」
客観的なデータとして酸素化状態を把握し、呼吸機能の評価に活用します。
「酸素吸入を行っている場合、その流量や時間について教えてください。」
酸素療法の詳細を確認し、治療効果や必要性を評価します。
🩻 胸部レントゲンと検査結果
画像検査の確認
「最近、胸部レントゲン検査を受けましたか?その結果について教えてください。」
画像所見により肺炎、胸水、気胸などの病変を確認できます。
「CTや肺機能検査などの詳しい検査を受けたことはありますか?」
より詳細な検査結果により、呼吸器疾患の診断や重症度を把握します。
「検査結果について医師から説明を受けましたか?その内容を教えてください。」
患者さんの病状理解度を確認し、必要に応じて追加説明を行います。
😤 呼吸苦と息切れの詳細評価
症状の具体的確認
「日常生活で呼吸が苦しくなることはありますか?どのような状況で起こりますか?」
特定の状況や活動との関連性を把握し、生活指導に活用します。
「夜間や横になった時に呼吸が苦しくなることはありますか?」
起座呼吸や夜間発作性呼吸困難の有無を確認し、心不全の可能性を評価します。
「息切れを感じることがありますか?その頻度や状況について教えてください。」
息切れの程度や誘因を詳しく聞き取り、適切な看護計画を立案します。
活動制限の評価
「普段できていた活動で、息切れのためにできなくなったことはありますか?」
ADL(日常生活動作)への影響を評価し、リハビリテーションの必要性を検討します。
「お風呂に入る時や、着替えの時に息切れを感じますか?」
基本的な生活動作での制限を確認し、介護の必要性を評価します。
🤧 咳と痰の詳細確認
咳の性状と頻度
「最近、咳が出ることがありますか?その頻度や状況について教えてください。」
咳の性状(乾性・湿性)や頻度により、呼吸器疾患の種類や重症度を評価します。
「咳は日中と夜間、どちらに多く出ますか?」
咳の出現パターンにより、喘息や心不全などの鑑別に役立ちます。
「咳と一緒に痰が出ますか?それとも空咳ですか?」
痰を伴う咳と乾性咳嗽では、原因疾患や治療方針が異なります。
痰の性状評価
「痰が出ることがありますか?痰の色や量について教えてください。」
痰の色(白色・黄色・緑色・血性)により感染の有無や重症度を評価します。
「1日にどのくらいの量の痰が出ますか?」
痰の量により気道分泌物の状態や排痰能力を評価します。
「痰に血が混じることはありますか?」
血痰や喀血は重篤な病変を示唆するため、詳細な確認が必要です。
🚬 喫煙歴とアレルギーの確認
喫煙歴の詳細聴取
「喫煙の経験がありますか?もしある場合、どのくらいの期間喫煙していましたか?」
喫煙歴はCOPDや肺癌のリスクファクターとして重要な情報です。
「1日に何本くらい吸っていましたか?いつ頃から禁煙されましたか?」
Brinkman指数(1日本数×年数)を計算し、呼吸器疾患のリスクを評価します。
「受動喫煙の環境にいることはありますか?」
家族の喫煙や職場環境による受動喫煙も呼吸器に影響します。
アレルギー歴の確認
「アレルギーがある場合、その詳細を教えてください。」
花粉症、食物アレルギー、薬物アレルギーなど、呼吸器症状に関連するアレルギーを確認します。
「季節によって呼吸器症状が悪化することはありますか?」
季節性アレルギーによる喘息症状の悪化を評価します。
「ペットを飼っていますか?ハウスダストに対するアレルギーはありますか?」
環境アレルゲンへの暴露状況を確認し、生活環境の改善を検討します。
🏠 自宅周辺の大気環境
環境因子の評価
「自宅周辺の大気環境について教えてください。特に空気の質や汚染について気になる点はありますか?」
大気汚染や工場からの排煙など、環境因子による呼吸器への影響を評価します。
「交通量の多い道路の近くにお住まいですか?」
自動車の排気ガスによる大気汚染が呼吸器疾患を悪化させる可能性があります。
「お住まいの地域で、PM2.5や黄砂の影響を感じることはありますか?」
微細粒子状物質による呼吸器症状の悪化を確認します。
住環境の確認
「ご自宅の換気状況はいかがですか?湿度管理はされていますか?」
適切な室内環境は呼吸器疾患の管理に重要です。
「カビや結露などの問題はありませんか?」
真菌による呼吸器症状やアレルギー反応の可能性を評価します。
💡 質問時のポイントとコツ
患者さんとの関係性構築
質問をする前に、まず患者さんとの信頼関係を築くことが大切です。
「お疲れ様でございます。呼吸の状態について少しお聞かせいただけますでしょうか?」
丁寧な言葉遣いと配慮ある態度で接することで、患者さんも安心して答えてくださいます。
質問の順序と流れ
一般的な質問から具体的な質問へと段階的に進めることで、患者さんも答えやすくなります。
症状の有無を確認してから、その詳細(頻度、程度、誘因など)について深く掘り下げます。
患者さんの理解に合わせた説明
医学用語を使用する場合は、患者さんにも分かりやすい言葉で説明を加えます。
「SpO2」を「血液中の酸素の量を表す数値」として説明するなど、配慮が必要です。
まとめ
この質問集を活用して、患者さんの呼吸状態に関する情報を的確に収集し、看護実習をスムーズに進めましょう。
質問を通じて得られた情報は、患者さんの呼吸機能をサポートするための貴重なデータとなります。
実習を通して、患者さんとの信頼関係を築き、より良い看護を提供できるよう心がけましょう。
呼吸は生命維持に不可欠な機能であり、その評価は看護師にとって最も重要なスキルの一つです。
これらの質問例を参考にしながら、患者さん一人ひとりに合わせたアセスメントを行い、個別性のある看護を実践してください。
継続的な観察と適切な質問により、患者さんの呼吸状態の変化を早期に発見し、迅速な対応につなげることができます。







