基本的欲求の充足力と限界に対する看護師の援助の様式
ヘンダーソンの看護観において、看護師は患者が健康を維持し、回復し、必要に応じて平和に死を迎えるための行動を援助する役割を担っています。この援助の様式は、患者の状態や基本的欲求の充足力に応じて、以下の5つのレベルに分類されます。
1. 発病前より自立している
発病前よりも自立している状態とは、日常生活の管理が発病前よりも安定していることを意味します。このレベルの患者は、日常活動を自己の意志力に基づいて行い、看護師からの手助けをほとんど必要としません。
2. 自立できているが見守りを必要とする
このレベルの患者は、指導や手助けをしてくれる人がいないと安心して行動できない状態にあります。意志力に基づいた行為や行動が希薄であり、自ら基本的欲求を満たすことができるが、必要に応じて助言や声かけが求められます。
3. 必要に応じて手助けを必要とする
助言や指導により自力で基本的欲求を満たすことはできるものの、自己判断による行動が不完全な状態です。このため、時折誤った基本的欲求の充足が見られることがあり、必要な時には手助けが必要です。
4. 不足の部分だけ手助けする
病的体験などにより生活障害がある場合、自力で基本的欲求を満たすことができない部分が存在します。看護師の手助け（積極的な促し）があれば基本的欲求を満たすことができる状態で、自力でできない部分に対しては働きかけが必要です。
5. 全面的に手助けする
自分の意思で健康的な基本的欲求を充足できない状態にある患者です。この場合、全般的に看護師の手助けが必要とされます。
看護過程の構造と援助の目標
看護過程の構造を理解することは重要です。患者の入院前の状態を評価し、どのレベルにあるかをアセスメントします。そして、退院時には入院前のレベルに到達もしくはそれを上回るように援助を行います。これにより、患者ができる限り自立した生活を送ることができるように支援します。
看護師の援助の方法
看護師の援助の方法は、患者の基本的欲求の充足力と限界に応じて次のように分類されます。
- 弱っている意志力や体力を強化するための手助け
- 患者の意志力や体力が弱っている場合、それを強化するための援助を行います。
- 誤った知識や薄れつつある健康学習を補う手助け
- 患者が誤った知識を持っている場合や、健康に関する学習が不足している場合、その補填を行います。
- 回復しつつある生活障害や健康的な生活の維持・増進を助ける手助け
- 患者が回復しつつある生活障害を持っている場合、それを支援し、健康的な生活の維持・増進を図ります。
手助けに必要な資源
興奮状態にある患者には、物理的・科学的資源として行動の制限や鎮静剤の使用が必要です。また、心理的・社会的・福祉的資源として、家族のサポートや地域住民の受け入れ、相談業務などが考えられます。さらに、自助具の加工や応用など、患者の健康状態に応じたリハビリテーション用具の利用も重要です。
基本的欲求の充足力と限界のある精神障がい者への対応
精神障がい者に対しても、基本的欲求の充足力と限界に応じた看護が必要です。医学的治療によって精神機能を回復できる場合もあれば、病気が残存している場合でも基本的欲求の充足により満足のいく生活を送ることができる人もいます。適切な援助・働きかけを行うためには、患者の病状に合わせた判断や意志決定が求められます。
まとめ
ヘンダーソンの看護観に基づく看護師の援助の様式は、患者の自立を促し、健康的な生活を支援するための重要な指針です。患者の状態に応じた適切な援助を行うことで、患者がより良い生活を送ることができるよう支援することが看護師の役割です。
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