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小児科看護師のための完全ガイド:小児脳腫瘍の看護ケア徹底解説

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はじめに

小児科の看護師として働く中で、脳腫瘍の患者さんのケアは特に難しいと感じることが多いのではないでしょうか。小児の脳腫瘍は、治療が長期にわたり、患者さんと家族へのケアも複雑になりがちです。この記事では、基礎知識から実践的なケアの方法まで、現場ですぐに活かせる内容をわかりやすく解説していきます。

小児脳腫瘍の基礎知識

脳腫瘍とは

脳腫瘍は、頭の中の細胞が異常に増殖して塊になってしまう病気です。成人の脳腫瘍とは異なり、小児の脳腫瘍には特徴的な種類があります。WHOという世界的な機関では、脳腫瘍を4段階のグレードに分類しています。グレードⅠとⅡは「良性」で、比較的ゆっくりと成長する腫瘍です。一方、グレードⅢとⅣは「悪性」で、急速に成長する可能性が高い腫瘍となります。

小児の脳腫瘍は、発生する場所によって症状が異なります。また、子どもの脳は発達途中であるため、腫瘍による影響が大人よりも大きくなることがあります。特に重要なのは、脳腫瘍が脳の発達に与える影響と、治療による長期的な影響を考慮しながらケアを行うことです。

小児に多い脳腫瘍の種類

最も多いのは、グリオーマと呼ばれる種類の腫瘍です。グリオーマは、脳の中の支持細胞(グリア細胞)から発生する腫瘍です。特に「星細胞腫」というタイプは小児に多く見られ、手術による完全摘出が可能な場合も多いです。グリオーマの中でも、「毛様細胞性星細胞腫」は小児に特徴的で、比較的予後が良好とされています。

次に多いのは、髄芽腫です。髄芽腫は小脳という、体のバランスを取る部分にできやすい腫瘍で、急速に成長する傾向があります。早期発見と適切な治療が重要で、手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)を組み合わせた集学的治療が必要となります。

また、上衣腫という種類の腫瘍も小児では比較的多く見られます。これは脳室という、脳脊髄液が流れる場所の壁から発生する腫瘍です。特に第四脳室という場所に多く発生し、水頭症を引き起こすことがあります。

主な症状と観察のポイント

脳腫瘍の症状は、腫瘍の場所や大きさによって様々です。以下のような症状に特に注意が必要です。

朝一番の嘔吐は、頭蓋内圧亢進を示す重要な症状です。この嘔吐は、食事とは関係なく起こり、嘔吐後も気分が悪くならないことが特徴です。また、頭痛も重要な症状で、特に朝方に強くなる傾向があります。

乳幼児では、頭囲の急激な増大に注意が必要です。定期的に頭囲を測定し、成長曲線から逸脱していないかチェックすることが重要です。

また、歩行時のふらつきや、手足の動きが不自然になるなどの運動機能の変化も見られることがあります。小さな子どもでは、これまでできていた動作ができなくなる(退行)こともあります。

脳腫瘍の診断方法

小児脳腫瘍の診断では、様々な検査が行われます。最も重要なのは画像検査です。MRIとCTスキャンが主な検査方法となりますが、それぞれに特徴があります。

MRIは放射線被曝がなく、軟部組織のコントラストに優れているため、腫瘍の詳細な位置や性状を確認するのに適しています。ただし、検査時間が長く、小さな子どもでは静止していられないことがあるため、鎮静や全身麻酔が必要になることもあります。

CTスキャンは短時間で撮影が可能で、特に出血や石灰化の有無を確認するのに適しています。緊急時の検査としても使用されます。

治療方法の実際

小児脳腫瘍の治療は、主に以下の3つを組み合わせて行います:

手術療法は、可能な限り腫瘍を摘出することを目的とします。ただし、腫瘍の場所や大きさによっては、完全摘出が難しい場合もあります。特に脳幹部(生命維持に重要な部分)近くの腫瘍では、慎重な判断が必要です。

放射線療法は、残存腫瘍の制御や再発予防に使用されます。ただし、3歳未満の小児では、脳の発達への影響を考慮して、できるだけ避けるか、照射範囲を限定するなどの工夫が必要です。

化学療法は、特に悪性度の高い腫瘍で重要な役割を果たします。髄芽腫などでは、標準的な治療として確立されています。年齢や腫瘍の種類によって、様々なプロトコールが使用されます。

具体的な看護ケアのポイント

術前看護

手術前の看護では、患児と家族の心理的サポートが最も重要です。年齢に応じた説明と、家族への十分な情報提供が必要です。

プレパレーションは、子どもの年齢や理解力に合わせて行います。人形や絵本を使って説明したり、実際に使用する医療器具に触れる機会を設けたりします。また、手術室の見学なども効果的です。

手術前の身体的な準備も重要です。バイタルサインの測定、身長・体重の確認、必要な検査の実施などを行います。特に、意識レベルの変化には注意が必要です。

術後看護

手術直後は、意識レベルと神経症状の観察が最も重要です。瞳孔の大きさや対光反射、四肢の動き、言語反応などを定期的にチェックします。

また、創部の観察や疼痛管理も重要です。小児は痛みを適切に表現できないことがあるため、表情や体動などから判断する必要があります。

脳室ドレナージが挿入されている場合は、排液量や性状、閉塞の有無などを注意深く観察します。また、髄液漏れの予防のため、体位の管理も重要です。

化学療法中の看護

抗がん剤治療中は、副作用の観察と対策が中心となります。特に重要なのが感染予防です。白血球減少時は厳重な感染予防策が必要となります。

悪心・嘔吐への対策として、制吐剤の使用に加えて、食事の工夫も必要です。また、口内炎予防のため、こまめな口腔ケアも重要です。

放射線療法中の看護

放射線治療を受ける子どもへのケアでは、治療に対する不安の軽減が重要です。大きな機械や一人になることへの恐怖を和らげるため、年齢に応じた説明と支援が必要です。

また、皮膚炎などの副作用への対策も重要です。照射部位のスキンケアや、食事の工夫なども必要になります。

家族支援のポイント

両親への支援

両親、特に母親への支援は非常に重要です。長期入院による心身の疲労は大きな負担となります。定期的な面談の機会を設け、思いを傾聴することが大切です。

また、医療費や仕事の調整など、様々な社会的問題も生じやすいため、医療ソーシャルワーカーと連携した支援も必要です。

きょうだい支援

入院中の患児にばかり注目が集まり、きょうだいが寂しい思いをすることも多いです。きょうだいの気持ちにも配慮し、面会時には積極的に関わるようにします。

まとめ

小児脳腫瘍の看護は、医学的な知識と技術に加えて、子どもと家族全体を視野に入れた包括的な支援が必要です。一人一人の子どもに合わせた細やかなケアを提供することで、治療の成功率を高め、QOLの向上につなげることができます。

この記事で学んだ知識を、明日からの看護実践に活かしていただければ幸いです。子どもたちの笑顔のために、私たちにできることを一つずつ実践していきましょう。

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