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現場で使える!熱傷(やけど)の看護ケア完全マニュアル

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はじめに

こんにちは。救急外来と熱傷センターで10年以上の経験を持つ看護師です。熱傷(やけど)の看護は、初期対応から長期的なケアまで、幅広い知識と技術が必要です。今回は、特に新人看護師さんや看護学生さんに向けて, 現場で使えるケアのポイントを具体的に説明していきます。

熱傷って何?基礎知識を押さえよう

熱傷は、熱や化学物質によって皮膚や組織が傷つくことです。深さによって1度、2度、3度に分類され、治療方法が大きく変わってきます。

まず1度の熱傷は、皮膚の表面だけが赤くなる状態です。日焼けのような状態をイメージしてください。痛みはありますが、通常1週間程度で治ります。

2度の熱傷は、皮膚の深い層まで傷ついた状態です。水疱(水ぶくれ)ができるのが特徴で、とても痛みが強いです。

3度の熱傷は最も重症で、皮膚の全層が壊死した状態です。見た目は白っぽくなったり、黒く焦げたりします。実は、3度熱傷は痛みがないことが多いです。これは、痛みを感じる神経まで破壊されているからです。

重症度の評価 – パッと見て判断するポイント

熱傷の重症度は、深さと範囲で判断します。範囲は体表面積に対する割合(%)で表します。簡単な計算方法として「9の法則」があります。

例えば:

  • 頭部:9%
  • 上肢(片方):9%
  • 前胸部:9%
  • 下肢(片方):18%

成人の手のひら1枚分が体表面積の1%と覚えておくと、ざっとした範囲を計算できます。

初期対応 – 最初の3時間が勝負!

熱傷の初期対応は、患者さんの予後を大きく左右します。特に受傷後3時間は「黄金時間」と呼ばれ、この時間帯の対応が重要です。

まず、バイタルサインのチェックから始めます。特に呼吸に注意が必要で、顔面や頚部の熱傷がある場合は気道熱傷の可能性があります。気道熱傷があると、急激な呼吸困難を起こすことがあるので、慎重な観察が必要です。

次に、できるだけ早く冷却を開始します。受傷後すぐなら、水道水で15-20分程度冷やすことが基本です。ただし、広範囲の熱傷の場合は、体温低下に注意が必要です。特に高齢者や小児は、体温が下がりやすいので要注意です。

また、熱傷部位の処置も重要です。衣服は無理に剥がさず、周囲から切って除去します。指輪やアクセサリーは必ず外すようにします。これは、後から浮腫で腫れてきた時に、血流障害を起こす可能性があるからです。

輸液管理 – 命をつなぐ水分管理

広範囲の熱傷では、大量の水分が失われます。そのため、適切な輸液管理が生命維持に重要です。

輸液量は、パークランドの公式というものを使って計算します。これは、熱傷の範囲(%)×体重(kg)×4mlという公式です。例えば、体重60kgの人が体表面積の20%の熱傷を負った場合、24時間の必要輸液量は4,800mlとなります。

ただし、この量はあくまで目安です。実際の輸液速度は、尿量や血圧、脈拍などを見ながら調整していきます。尿量は0.5ml/kg/時間以上を目標にします。

創傷管理 – 感染を防いで早期治癒を目指す

熱傷の創傷管理は、感染予防と早期治癒を目的に行います。処置の方法は、熱傷の深さによって大きく異なります。

2度熱傷の場合、水疱の処置が重要になります。小さな水疱はそのまま保存的に治療しますが、大きな水疱は医師の指示のもと切除します。水疱を切除する理由は、中の液体が細菌の培地になりやすいからです。ただし、水疱の処置は必ず清潔操作で行います。

処置の際は、患者さんの痛みにも十分な配慮が必要です。処置の前には必ず鎮痛剤を使用し、痛みをコントロールします。痛みが強いと、処置に対する恐怖心が強くなり、その後の治療にも影響を与えかねません。

創部の消毒には、生理食塩水や滅菌水を使用します。ゴシゴシこすらないように注意し、やさしく洗浄します。その後、医師の指示に従って軟膏を塗布し、ガーゼで保護します。

感染管理 – 要注意の合併症

熱傷では感染の予防が非常に重要です。なぜなら、熱傷によって皮膚のバリア機能が失われ、細菌が侵入しやすい状態になるからです。

感染の早期発見のために、以下のような症状に注意します:

  • 創部の発赤や腫脹が増強する
  • 悪臭がする
  • 発熱が続く
  • 創部周囲の熱感が強くなる

これらの症状が見られたら、すぐに医師に報告します。

また、毎日の処置は必ず清潔操作で行うことが基本です。処置室は清潔に保ち、必要な物品は事前に準備します。処置を行う看護師は、手洗いを徹底し、必要に応じて滅菌手袋やマスク、ガウンを着用します。

リハビリテーション – 早期からの介入が大切

熱傷のリハビリは、拘縮(関節が固まってしまうこと)を予防するために、早期から始める必要があります。特に関節部の熱傷では、痛みのために動かさないでいると、関節が固まってしまう危険があります。

ポジショニングは24時間気を配る必要があります。例えば、頚部の熱傷では、首を後ろに反らせた状態を保ちます。これは、前を向いたままだと、皮膚が収縮して首が下を向いてしまう(屈曲拘縮)のを防ぐためです。

同様に、腋窩(わきの下)の熱傷では、腕を横に開いた状態(外転位)を保ちます。これは、腕が体に密着した状態で固まってしまうのを防ぐためです。

栄養管理 – 回復に必要な栄養を確保

熱傷の治癒には、通常の1.5~2倍のカロリーが必要です。特にタンパク質は、組織の修復に欠かせません。

具体的な必要カロリーは、体重1kgあたり35~40kcalが目安です。例えば、体重60kgの患者さんなら、1日2100~2400kcalが必要になります。

また、ビタミンCやビタミンA、亜鉛なども創傷治癒に重要です。食事だけで十分な栄養が取れない場合は、経管栄養や高カロリー輸液を使用することもあります。

精神的ケア – 心のケアも忘れずに

熱傷の患者さんは、強い痛みだけでなく、見た目の変化による精神的なストレスも抱えています。特に顔面や手などの露出部の熱傷では、社会復帰への不安が強くなります。

看護師は、患者さんの気持ちに寄り添い、話を聴く時間を大切にします。必要に応じて、心理カウンセラーや医療ソーシャルワーカーとも連携します。

また、同じような経験をした先輩患者さんの体験談を聞く機会を設けることも、希望につながることがあります。

退院指導 – 自宅でのケアに向けて

退院後の生活に向けて、患者さんとご家族への指導は非常に重要です。特に以下のような点について、具体的に説明していきます。

まず、スキンケアについての指導です。新しい皮膚は非常にデリケートで、日光に当たると色素沈着を起こしやすいため、外出時は必ず日焼け止めを使用するよう伝えます。また、保湿クリームを使用して乾燥を防ぐことも大切です。

入浴方法についても具体的に説明します。熱傷後の皮膚は温度に敏感なので、湯温は38-40度くらいにするよう指導します。また、ゴシゴシこすらないよう注意を促し、やさしく洗うことの大切さを伝えます。

圧迫療法も重要です。ケロイドや肥厚性瘢痕を予防するために、弾性包帯や圧迫着を使用することがあります。正しい装着方法を、実際に見せながら説明します。

長期的なフォローアップ

熱傷の治療は、退院で終わりではありません。定期的な外来受診を通じて、経過を観察していく必要があります。

特に成長期の子どもの場合、瘢痕が成長に伴って引っ張られ、関節の動きを制限することがあります。そのため、早期発見と対応が重要です。

また、社会復帰に向けての支援も必要です。職場や学校への復帰時期、注意点などについて、医師と相談しながら計画を立てていきます。

まとめ – より良いケアを目指して

熱傷の看護は、急性期から慢性期まで、長期的な関わりが必要です。患者さんの状態は日々変化するので、観察力と判断力が求められます。

また、患者さんやご家族の不安に寄り添い、精神的なサポートを行うことも重要です。この記事で学んだ知識を活かして、より良い看護を提供していきましょう。

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。実際の看護ケアは、必ず各施設のガイドラインや主治医の指示に従って行ってください。

参考文献:

  • 日本熱傷学会『熱傷診療ガイドライン』
  • 日本皮膚科学会『熱傷治療ガイドライン』
  • 日本看護協会『熱傷看護ケアガイド』
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