はじめに
手術を受ける患者さんの不安や緊張を和らげ、安全な手術と順調な回復をサポートする周手術期看護。この記事では、新人看護師さんや看護学生さんでも実践できる具体的なケアの方法について、詳しく解説していきます。
手術前の準備で大切なこと
手術前の準備は、手術の成功を左右する重要な段階です。患者さんへの説明は、医療用語を避け、できるだけ平易な言葉を使うように心がけましょう。例えば、「術前絶飲食」という言葉の代わりに、「手術前日の夜10時からは、水やお茶も含めて何も口にしないようにしてください」というように具体的に説明します。
また、手術前の準備として欠かせないのが、患者さんの体調管理です。手術前日までに確認すべき項目として、体温、血圧、脈拍などのバイタルサインのチェックはもちろん、服用中の薬の確認、アレルギーの有無、そして感染症の有無なども丁寧に確認していきます。
手術前日には、爪切り、入浴または清拭を行い、手術に向けて清潔な状態を保ちます。また、患者さんが普段使用している義歯や補聴器、アクセサリーなどの取り外しも忘れずに確認しましょう。
患者さんの不安を和らげる環境づくり
手術を控えた患者さんの多くは、強い不安や緊張を感じています。患者さんの心理的なサポートは、周手術期看護において非常に重要な役割を果たします。
まず大切なのは、患者さんの話にじっくりと耳を傾けることです。手術に対する不安や疑問点を遠慮なく話せる雰囲気づくりを心がけましょう。「手術って怖いですよね」「不安な気持ちはよくわかります」といった共感の言葉かけは、患者さんの心を和らげる効果があります。
また、病室の環境整備も重要です。適度な室温と湿度の管理、必要に応じてアロマセラピーやリラックスできる音楽を流すなど、心地よい環境作りを工夫しましょう。
術中の観察ポイント
手術中は、患者さんの全身状態を継続的かつ細やかに観察することが求められます。具体的な観察項目として、以下のようなものがあります。
まず、循環動態の観察です。血圧、心拍数、心電図モニターの波形などを定期的にチェックし、異常の早期発見に努めます。次に、呼吸状態の確認です。呼吸数、酸素飽和度、呼吸音などを注意深く観察します。
また、出血量や尿量のチェックも重要です。予測以上の出血や尿量の減少がないかどうかを確認し、必要に応じて医師に報告します。体温管理も忘れずに行い、低体温を予防することで手術後の回復を助けます。
術後の細やかなケアが回復のカギ
手術が終わった直後は、患者さんの状態が最も不安定な時期です。術後の合併症を予防し、早期回復を促すためには、きめ細やかな観察とケアが欠かせません。
まず重要なのが、痛みのコントロールです。患者さんの痛みを数値化してもらい（例：痛みの程度を0から10で表現）、適切な鎮痛剤の投与タイミングを判断します。痛みが強すぎると、深呼吸や早期離床の妨げになってしまうため、積極的な痛みの管理が必要です。
次に注意すべきは、呼吸管理です。手術後は麻酔の影響で呼吸が浅くなりがちです。深呼吸や頻回な体位変換を促すことで、無気肺や肺炎を予防します。必要に応じて、インセンティブスパイロメーターを使用することも効果的です。
感染予防の基本と実践
手術後の感染予防は、看護師の重要な役割の一つです。感染予防の基本は、標準予防策（スタンダードプリコーション）の徹底にあります。
具体的には、手洗いや手指消毒の徹底はもちろんのこと、創部の観察と適切な処置が重要です。創部の発赤、熱感、腫脹、疼痛、浸出液の性状などを注意深く観察し、感染の早期発見に努めます。
また、病室の環境整備も感染予防には欠かせません。定期的な換気や清掃、必要に応じて環境消毒を行い、清潔な療養環境を維持します。面会者にも手指消毒の協力を求め、院内感染の予防に努めましょう。
回復を支える栄養管理の実際
手術後の回復には、適切な栄養管理が不可欠です。術後の栄養管理は、消化器系の回復状態に合わせて段階的に進めていく必要があります。
まず、腸蠕動音の回復を確認することから始めます。腸蠕動音が聞こえ始めたら、医師の指示のもと、水分摂取から開始します。その後、流動食、三分粥、五分粥と段階的に食事形態を上げていきます。
この際に重要なのが、嘔気・嘔吐の有無や腹部症状の観察です。無理な経口摂取は術後イレウスのリスクを高めるため、患者さんの状態をよく観察しながら慎重に進めていきます。
メンタルケアの重要性と具体的アプローチ
手術を終えた患者さんの多くは、身体的な回復とともに精神的なサポートも必要としています。特に、長期の入院や予後への不安を抱える患者さんには、継続的な心理的支援が重要です。
具体的なアプローチとして、まずは患者さんの話に耳を傾け、不安や心配事を表出できる環境を作ることが大切です。また、リハビリテーションの進捗状況や回復の様子を具体的に伝えることで、患者さんの前向きな気持ちを支援します。
家族との連携も重要です。家族の支援は患者さんの心の支えとなり、回復意欲を高める効果があります。面会時間の調整や、必要に応じて家族への説明・指導も行いましょう。
まとめ～周手術期看護の実践に向けて～
周手術期看護は、手術前から術後まで、患者さんの身体的・精神的状態を総合的に支援する重要な看護実践です。この記事で解説した各ポイントを意識しながら、患者さんの個別性に合わせたケアを提供していくことが大切です。
最後に、看護師として大切なのは、常に患者さんの立場に立って考え、丁寧なケアを心がけることです。経験を重ねながら、より質の高い周手術期看護を提供できるよう、日々の実践を大切にしていきましょう。
手術看護は決して簡単ではありませんが、この記事で紹介したポイントを意識することで、新人看護師さんや看護学生さんでも自信を持って取り組むことができます。患者さんの安全と安心を第一に考え、チーム医療の一員として周手術期看護に取り組んでいきましょう。