種の育成とギャップの検討
研究のプロセスは、種から始まります。種は、アイデアや疑問といった研究の起点となるもので、それが芽を出し、やがて木に成長するには栄養、太陽、水といった要素が必要です。しかし、種がないところにどれだけ良い土や栄養があっても木は育ちません。
次に必要なのは、種に何がわかっていて、何がわかっていないのか、その差(ギャップ)を検討することです。これにより、研究の方向性やテーマが具体化されます。
現実と理想のギャップを埋める
現実の状況をよく調べ、何がわかっているのかを確認することから始めます。伝統、権威、直観、研究などの方法で現状を分析し、その中から課題を見つけ出します。例えば、伝統的な看護ケアが本当に最良の方法かを再検討することが研究の一歩です。
- 伝統: 慣習的に行われてきた方法が本当に最良か?
- 権威: 権威者の言うことを盲信していないか?
- 直観: 自分の直感や経験をどのように説明できるか?
- 研究: 研究結果に基づいて看護計画を立てているか?
自分を信じて研究を進める
自分の実践経験から得られた感覚を信じることも重要です。他人の意見や文献に頼るだけでなく、自分の納得できない感覚を大切にし、それを研究で確かめることが価値ある研究に繋がります。こうして芽生えた種は、適切な方法で育てることで、やがてしっかりとした研究計画に成長します。
ケーススタディの位置付け
研究の中でも、ケーススタディは特に現場での実践に基づいた具体的な事例を取り上げる方法です。研究の分け方は様々で、目的別、アプローチ別、活用度別、場所別、時間的視点別などがあります。研究の目的によって「本当はどうなっているか」を調べる研究と「本当はどうあるべきか」を調べる研究に大別できます。
「本当はどうなっているか」を調べる研究
このタイプの研究は、現実の状態や事実の関係性を探ることに焦点を当てています。例えば、特定の看護ケアがどのように影響を与えるかを明らかにする研究です。
「本当はどうあるべきか」を調べる研究
このタイプの研究は、理想的な状況を実現するための方法を探ります。例えば、終末期ケアにおいて患者と家族がどのように最良の形で過ごせるかを探る研究です。
研究の知識源とその検討
研究を進めるにあたっては、過去の知識を再検討し、どのような知識が有効かを見極めることが重要です。伝統、権威、借用、試行錯誤、個人的経験、ロールモデルとメンターシップ、直観、推論、研究といった多様な知識源を活用し、現状に適応する知識を見つけ出します。
- 伝統: 過去の習慣や傾向に基づく知識。
- 権威: 専門能力と力を持つ人の知識。
- 借用: 他の学問領域からの知識の借用。
- 試行錯誤: 実際に試してみることで得られる知識。
- 個人的経験: 個人の経験から得られる知識。
- ロールモデルとメンターシップ: お手本となる行動や指導を通じて得られる知識。
- 直観: 深い知識に基づく直感的な理解。
- 推論: 論理的に考えを組み立てることで得られる知識。
- 研究: 系統的な探求と検証を通じて得られる知識。
研究テーマの見つけ方
研究テーマは、現実と理想のギャップから生まれます。実習や日常の看護ケアで気づいた疑問や課題をノートに書き留め、それを具体的な研究テーマとして育てていきます。
- 種の発見: 実習やケア中に気になったことを記録する。
- ギャップの検討: 現実と理想の間のギャップを分析する。
研究の種類
研究の種類は多岐にわたりますが、大きく分けて「本当はどうなっているか」を調べる研究と「本当はどうあるべきか」を調べる研究があります。
- 状態を調べる研究: 事実や関係性を明らかにする。
- 理想を追求する研究: 理想的な状態を実現するための方法を探る。
研究のステップ
研究を進める際の基本的なステップは以下の通りです。
- 問題の発見とテーマの設定: 日常の実践で気づいた疑問や課題をテーマとして設定する。
- 文献レビュー: 過去の研究や文献を調査し、現状の知識を確認する。
- 研究計画の立案: 研究の目的、方法、対象などを詳細に計画する。
- データ収集と分析: 実際にデータを収集し、分析する。
- 結果の報告と共有: 得られた結果を報告し、他の看護師や医療従事者と共有する。
看護研究の重要性
看護研究は、以下の点で重要です。
- 患者ケアの質の向上: 新しい知識や技術は、患者ケアの質を向上させます。
- エビデンスに基づく実践: 科学的根拠に基づいた看護実践を行うことで、最適なケアを提供します。
- 問題解決能力の向上: 研究を通じて問題解決能力が向上し、看護師としてのスキルが高まります。
- プロフェッショナルの成長: 研究に取り組むことで、看護師としての専門性が高まり、成長します。
未来の看護研究
現代の看護研究は、複雑な問題に対処するために、各学問分野の協力が必要とされています。地球環境問題や生命倫理の問題など、単一の学問分野だけでは解決できない課題に対して、学問のネットワークが形成されつつあります。
研究は人類の探求心に根ざし、過去と現在、未来を通じたコミュニケーションによって発展してきました。看護師や看護学生として、研究の重要性を理解し、積極的に研究活動に取り組むことが求められます。
結論
看護研究は、看護の発展と患者ケアの質の向上に不可欠な活動です。研究を通じて得られる新しい知識や技術は、看護実践において重要な役割を果たします。看護師や看護学生として、研究の意義を理解し、積極的に研究活動に取り組むことで、より質の高い看護ケアを提供し、人々の健康と福祉に貢献することができるでしょう。
皆さんも、日常の看護実践で感じた疑問や課題を大切にし、研究の「種」を見つけて育てていきましょう。そして、未来の看護を共に創造していくために、研究活動に積極的に参加してください。