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ヘンダーソンの考えによる看護の展開看護過程

大腸がん患者の術後管理:ヘンダーソンアセスメントを用いた看護過程と早期離床の重要性

この記事は約6分で読めます。

こんにちは、看護学生の皆さん。今回は、大腸がん患者の術後管理について、ヘンダーソンのアセスメントを用いた看護過程を詳しく解説します。手術後の痛みや活動制限が患者に与える影響を理解し、効果的なケアを提供するためのポイントを学んでいきましょう。

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大腸の解剖生理と直腸がんの病態

大腸の解剖生理

大腸は消化管の最終部分であり、以下の3つの主要な部分から構成されています:

  1. 盲腸:小腸と大腸の接合部にある袋状の構造
  2. 結腸:上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸の4つの部分からなる
  3. 直腸:S状結腸の末端から肛門につながる部分

大腸の主な機能は以下の通りです:

  • 水分の吸収:残渣から水分を吸収し、便を形成する
  • 電解質の吸収:ナトリウムやカリウムなどの電解質を吸収する
  • 便の貯蔵:直腸に便を貯め、適切なタイミングで排泄する
  • 腸内細菌の維持:有益な腸内細菌を育成し、免疫機能をサポートする

直腸がんの病態

直腸がんは、直腸の粘膜から発生する悪性腫瘍です。初期段階では症状がほとんどないため、発見が遅れることがあります。進行すると以下のような症状が現れます:

  • 便通の異常(下痢や便秘の繰り返し)
  • 血便や粘液便
  • 排便時の痛み
  • 腹痛や腹部膨満感
  • 体重減少や倦怠感

直腸がんの治療は、主に手術による腫瘍の切除が行われます。進行度によっては、人工肛門(ストーマ)の造設が必要になることもあります。

看護過程の事例紹介

患者紹介

  • 患者名:Aさん(55歳、男性)
  • 職業:会社員(管理職)
  • 家族構成:妻(48歳)、息子(16歳)の3人家族

現病歴と術後の経過

Aさんは3ヶ月前に血便を主訴に受診し、精密検査の結果、直腸がんと診断されました。術前検査で他臓器への転移は認められず、根治的手術の適応と判断されました。

手術内容:低位前方切除術+一時的回腸ストーマ造設術

術後経過:

  • 術後1日目:ドレーン留置中、安静臥床
  • 術後2日目:疼痛コントロール不良のため、離床に消極的
  • 術後3日目:現在の状態

ヘンダーソンのアセスメントと看護過程

ヘンダーソンの14の基本的ニーズに基づいて、Aさんの状態をアセスメントします。今回は特に「正常に呼吸する」「動く・姿勢を保つ」「睡眠・休息」「痛みを避ける」の4つのニーズに焦点を当てます。

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呼吸のアセスメント

  • 現在の状態:
  • 呼吸数:18回/分、SpO2:96%(室内気)
  • 浅い呼吸傾向あり、深呼吸や咳嗽を痛みのため避けている
  • 問題点:
  • 創部痛により深呼吸が制限され、肺の換気が不十分
  • 痰の貯留リスクが高く、無気肺や肺炎の危険性がある

活動・運動のアセスメント

  • 現在の状態:
  • 術後2日目だが、ほぼ終日臥床状態
  • 痛みや点滴、ドレーンの存在により、体動に不安を感じている
  • 問題点:
  • 早期離床が遅れることで、筋力低下や循環障害のリスクが高まる
  • 深部静脈血栓症(DVT)の危険性が増加

睡眠・休息のアセスメント

  • 現在の状態:
  • 夜間の疼痛や環境の変化により、睡眠が断続的
  • 日中も疲労感が強く、活動意欲が低下している
  • 問題点:
  • 睡眠不足による回復の遅延
  • 日中の活動性低下が夜間の不眠につながる悪循環

痛みのアセスメント

  • 現在の状態:
  • 安静時のNRS(Numerical Rating Scale):4/10
  • 体動時のNRS:7/10
  • 鎮痛薬(オピオイド)を使用中だが、効果が不十分
  • 問題点:
  • 疼痛コントロール不良により、早期離床や呼吸機能の改善が妨げられている
  • 痛みへの不安から、活動に対して消極的になっている

看護計画と介入

上記のアセスメントに基づき、以下の看護計画を立案します。

看護診断

  1. 急性疼痛
  2. 非効果的呼吸パターン
  3. 活動耐性低下

看護目標

長期目標:

  • Aさんが術後合併症なく回復し、日常生活動作(ADL)が術前レベルに戻る

短期目標:

  1. Aさんの疼痛がNRS 3以下に軽減し、深呼吸や体動が可能になる
  2. Aさんが1日3回以上、病棟内を歩行できるようになる
  3. Aさんの呼吸状態が改善し、SpO2が98%以上を維持できる

看護介入

疼痛管理

  1. 定期的な疼痛評価:
  • NRSを用いて、4時間ごとに痛みの程度を評価
  • 体動時や処置前後の痛みも評価し、記録
  1. 適切な薬物療法:
  • 医師と相談し、鎮痛薬の種類や投与量、タイミングを調整
  • レスキュー薬の使用方法をAさんに説明し、積極的な使用を促す
  1. 非薬物療法の導入:
  • リラクゼーション技法(深呼吸法、漸進的筋弛緩法)を指導
  • 創部を保護しながら、温罨法や冷罨法を適用
  1. 心理的サポート:
  • 痛みに対する不安や懸念を傾聴し、共感的態度で接する
  • 痛みの経過や治療効果について、適切な情報提供を行う

早期離床の促進

  1. 段階的な離床プログラム:
  • 術後2日目:ベッド上での座位保持から開始(1日3回、各15分)
  • 術後3日目:端座位と立位訓練(1日3回、各10分)
  • 術後4日目以降:病室内歩行から病棟内歩行へ段階的に拡大
  1. 離床時のサポート:
  • 初回離床時は2人以上のスタッフで介助し、安全を確保
  • ドレーンや点滴ラインの管理に注意しながら介助
  1. 動機付けと教育:
  • 早期離床の利点(合併症予防、回復促進)をAさんに説明
  • 離床の進捗を可視化し、達成感を感じられるよう支援
  1. 環境整備:
  • ベッドサイドに立位バーを設置し、自立した動作を促進
  • 転倒リスクを評価し、必要に応じて転倒予防策を講じる

呼吸機能のサポート

  1. 効果的な呼吸法の指導:
  • 腹式呼吸や胸式呼吸の方法を説明し、実践をサポート
  • 創部を保護しながら深呼吸を行う方法を指導
  1. 排痰ケア:
  • ハフィングやバイブレーション排痰法を指導
  • 必要に応じて、ネブライザー療法を実施
  1. 体位ドレナージ:
  • 適切な体位変換を行い、肺の換気を促進
  • 側臥位や半座位など、Aさんの痛みに配慮しながら実施
  1. モニタリングと評価:
  • 呼吸数、SpO2、呼吸音を定期的に評価し、記録
  • 異常の早期発見に努め、必要時は医師に報告

評価と修正

看護計画の実施後、以下の点について評価を行い、必要に応じて計画を修正します:

  1. 疼痛の程度と性質の変化
  2. 離床の進捗状況と活動耐性の向上
  3. 呼吸機能の改善(SpO2、呼吸数、呼吸音の変化)
  4. 合併症(肺炎、DVTなど)の有無
  5. Aさんの主観的な感想や満足度

評価結果に基づき、看護計画を適宜調整し、Aさんの回復を最大限サポートします。

まとめ

大腸がん術後の患者ケアでは、疼痛管理と早期離床の両立が非常に重要です。適切な疼痛コントロールにより、患者の不安を軽減し、積極的な離床を促すことができます。同時に、早期離床は術後合併症の予防に大きく貢献します。

看護師として、患者の個別性を考慮しながら、エビデンスに基づいたケアを提供することが求められます。Aさんの事例を通じて学んだポイントを、今後の臨床実践に活かしていってください。

患者一人ひとりの回復過程は異なりますが、適切なアセスメントと個別化された看護計画により、最適なケアを提供することができます。これからも患者さんの笑顔のために、知識と技術を磨き続けていきましょう。

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