看護学を学ぶ上で避けて通れないのが、マーサ・ロジャーズの看護理論です。
ロジャーズの看護理論は、人間を統一体として捉える革新的な概念で、現代看護の基盤となっています。
本記事では、看護学生や新人看護師が理解しておくべきロジャーズ理論の核心について、わかりやすく解説します。
ロジャーズ看護理論とは
マーサ・E・ロジャーズは、1914年から1994年まで生きたアメリカの看護理論家です。
彼女が提唱した理論の中心概念は、ユニタリ・ヒューマン・ビーイングズという考え方です。
これは人間を統一体として捉え、部分の総和ではなくそれ以上の存在として位置づける革新的な理論でした。
ロジャーズは社会学、文化人類学、心理学、哲学、数学、天文学、生物学など幅広い知識を基に、看護独自の理論を構築しました。
この理論は看護を科学として位置づける際の重要な基盤となっています。
ロジャーズ理論の4つの基本概念
ロジャーズの看護理論を理解するためには、4つの基本概念を押さえる必要があります。
エネルギーの場
エネルギーの場とは、生命体と無生命体の基本的な単位のことです。
エネルギーは無限に広がっており、動的な性質を持っています。
人間の場と環境の場の2つに分けられ、これらが汎次元的に連続して宇宙を形成しています。
重要なのは、人間と環境はエネルギーの場そのものであり、エネルギーを保有しているのではないという点です。
開放系の宇宙
開放系の宇宙では、エネルギーの場が無限に広がり、他の場と補完し合っています。
人間の場も環境の場も、連続的な過程の中にあって開放されています。
この概念により、人間と環境の相互作用が絶えず行われていることが説明されます。
パターン
パターンは、エネルギーの場の際立った特性であり、単一波として知覚されます。
パターンは抽象的なもので、連続的で革新的な変化をします。
個々の人間の場のパターンは独自性があり、環境の場のパターンと統合されています。
このパターンによって、人間と環境を識別することができます。
汎次元性
汎次元性とは、空間や時間の属性を持たない非線形の領域です。
これは限界のない無限の領域であり、統一的な全体を表現するのに適した概念です。
当初は4次元性と表現されていましたが、概念の明確化とともに汎次元性に変更されました。
ホメオダイナミクスの3つの原理
ロジャーズ理論の核心となるのが、ホメオダイナミクスの原理です。
これは生命および生命に影響するメカニズムを理解する手段として位置づけられています。
共鳴性の原理
共鳴性の原理は、低い周波のパターンから高い周波のパターンへ向かう連続的な変化を説明します。
人間の生命過程は、様々な周波で揺れ動くリズミカルな波動のシンフォニーと表現されます。
この波は、人間の場と環境の場の間に発生する変化の性質を表しています。
音楽の調べのように、動的な波のパターンとパターン化の中で絶えず多様性と変化を続けます。
らせん運動性の原理
らせん運動性の原理は、同じ反復をしないリズム性を特徴とする多様性の増大を表します。
生命過程は、らせん性の曲線を持った連続的段階を一方向性に向かって進化します。
この進化は不可逆性を持ち、人間の場と環境の場はパターン化されていきます。
決して後戻りすることのない、前進し続ける生命の特性を説明しています。
統合性の原理
統合性の原理は、人間の場と環境の場の持続的な相互作用の過程を表します。
人間の場と環境の場は分けることができないほど固く結びついています。
そのため、生命過程で起こる現象は相互的・連続的な相互作用として理解されます。
看護実践への応用
ロジャーズ理論を看護実践に活用する際は、ホメオダイナミクスの原理が重要な指針となります。
看護師は対象者の一部分やニードに注目するのではなく、統一的な全体として対象者を捉える必要があります。
アセスメントのポイント
共鳴性の原理に基づくアセスメントでは、対象者の人生の軌跡や環境との関係性を把握します。
人生の岐路での多様性の変化や、生命過程での発達について情報収集を行います。
らせん運動性の原理では、人間と環境の周期的なリズム性やパターンを観察します。
新しい環境でのリズム性の変化や、特徴的なパターンの形成について評価します。
統合性の原理においては、人間と環境の相互作用の質を明らかにします。
相互支援や共働の状態、連続性や多様性について詳細にアセスメントします。
看護介入の考え方
ロジャーズ理論に基づく看護介入では、対象者と環境の両方への働きかけが重要です。
一つの変化が他の領域にも連続的に多様な変化をもたらすことを理解して介入します。
看護師自身も対象者の環境の一部として認識し、相互作用の中で共に行動します。
臨床事例での活用例
高齢患者の認知機能低下のケースを例に、ロジャーズ理論の活用を考えてみましょう。
入院により環境が変化した患者は、新しい環境とのパターン化に困難を示すことがあります。
看護師は患者の不安感を受け入れ、環境との相互作用を促進するアプローチを取ります。
患者の言動を否定せず、一緒に環境を探索し、安全で安心できる環境づくりを支援します。
時間の経過とともに、患者は新しい環境パターンを獲得し、適応していくことができます。
ロジャーズ理論の特徴と意義
ロジャーズの看護理論は、抽象度が高く理解が困難な部分もあります。
しかし、人間を統一体として捉える視点は、看護に欠かせない基本的概念です。
この理論は看護の独自性を示し、看護学の方向性や哲学を明確にした画期的な理論でした。
看護教育での重要性
看護学生にとって、ロジャーズ理論は人間理解の基礎となる重要な理論です。
人間を部分的に捉えるのではなく、全体性を重視する看護の本質を学ぶことができます。
理論の抽象性に戸惑うかもしれませんが、看護実践の根幹を成す考え方として習得が必要です。
現代看護への影響
ロジャーズ理論は多くの看護理論家や臨床家に影響を与え、現代看護の発展に貢献しました。
ホリスティックな人間観や環境との相互作用を重視する現代の看護アプローチの基盤となっています。
エビデンスベースドプラクティスが重視される現代においても、その哲学的基盤として価値を持ち続けています。
学習のポイント
ロジャーズ理論を効果的に学習するためには、まず基本概念の理解から始めましょう。
4つの基本概念とホメオダイナミクスの3つの原理を確実に覚えることが重要です。
抽象的な概念が多いため、具体的な事例と結びつけて理解を深めることをお勧めします。
まとめ
ロジャーズの看護理論は、人間を統一体として捉える革新的な理論です。
エネルギーの場、開放系の宇宙、パターン、汎次元性の4つの基本概念を理解することが重要です。
ホメオダイナミクスの3つの原理は、看護実践における重要な指針となります。
看護学生や新人看護師にとって、この理論は看護の本質を理解する上で欠かせない知識です。
抽象的で難解な部分もありますが、現代看護の基盤となる重要な理論として、しっかりと学習することをお勧めします。











