看護研究を行った後、その成果を学会で発表することは研究者にとって重要なステップです。
しかし、初めて学会発表を行う看護師や看護学生にとって、どのように準備すればよいのか分からないという声をよく耳にします。
この記事では、看護研究の学会発表について、その意義から具体的な準備方法まで詳しく解説します。
看護研究における学会発表の重要性
研究は公的な場で発表することではじめて社会に還元することができるという原則があります。
どんなに優れた研究成果であっても、発表されなければその価値は十分に活かされません。
研究成果が発表されなければ、同じような疑問をもった研究者が、まったく同じテーマで同じ方法で研究を繰り返す可能性があります。
これは研究リソースの無駄遣いにもつながり、看護学の発展を妨げる要因となってしまいます。
学会発表の場は、同じ研究テーマに取り組んでいる研究者や興味をもつ研究者と直接交流でき、情報交換できる数少ない貴重な機会でもあります。
この交流を通じて、新たな研究のヒントを得たり、共同研究のきっかけを掴んだりすることができます。
学会とは何か:基本的な理解
学会とは同じ学術分野に属する研究者が知識や情報の交換、研究成果の発表を行うために組織された団体のことです。
看護分野においても、日本看護学教育学会や日本看護教育学学会など、専門性に応じた様々な学会が存在します。
これらの学会では年に数回、研究発表の機会が設けられており、看護師や看護学生が自分の研究成果を発表することができます。
学会発表までの具体的なステップ
学会発表を行うまでには、いくつかの重要なステップがあります。
発表学会の選択
まず最初に行うべきは、適切な学会の選択です。
自分の研究テーマに最も適した学会を選ぶことで、より関心の高い聴衆に向けて発表することができます。
看護分野では専門領域ごとに様々な学会があるため、研究内容と学会の専門性をよく照らし合わせて選択しましょう。
演題申し込み
学会を選択したら、次は演題申し込みを行います。
多くの学会では申し込み締切が設定されているため、早めの準備が重要です。
演題申し込みでは、研究タイトルや発表者情報、研究の概要などを提出する必要があります。
講演要旨・抄録の作成
演題が採択されたら、講演要旨・抄録の作成に取り組みます。
この要旨・抄録は学会プログラムに掲載され、参加者が発表内容を事前に把握するための重要な資料となります。
限られた文字数の中で研究の核心を伝える必要があるため、簡潔で分かりやすい文章を心がけましょう。
学会発表の準備
最後に、実際の学会発表の準備を行います。
この段階では、発表形式に応じて口演発表用の資料やポスター発表用の資料を作成します。
口演発表の効果的な準備方法
口演発表は、限られた時間内で聴衆に研究内容を伝える発表形式です。
発表原稿の作成のポイント
聴いていてわかりやすい速度は1分間で300字が目安とされています。
これは、聴衆が内容を理解しながら聞くことができる適切なペースです。
発表原稿は、論文をそのまま読むのではなく、口頭発表用に調整する必要があります。
「ですます調」にして、発表原稿を作成することで、聴衆により親しみやすい印象を与えることができます。
また、「方法」「結果」は過去形「でした。」にするなど、時制にも注意を払いましょう。
スライド作成の基本原則
効果的なスライド作成には、いくつかの重要な原則があります。
スライド1枚の説明に必要な時間は、一般的に1分程度とされています。
例えば、8分の発表時間であれば、8枚程度のスライドが適切です。
文字の大きさは24ポイント程度、1行の文字数は15~20字で8行程度にすることで、後方の席からも読みやすいスライドになります。
文字のフォントはゴシック体がよいとされており、これは視認性の高さからです。
文字の色は3色以内とすることで、統一感のある見やすいスライドを作成できます。
アニメーションの使用は適度に留めることも重要です。
過度なアニメーションは聴衆の注意を内容から逸らしてしまう可能性があります。
図や写真の活用も効果的なプレゼンテーションには欠かせません。
視覚的な要素を適切に組み込むことで、聴衆の理解を深めることができます。
プレゼンテーションの本質
どのような形でもよいが、相手の心に内容が伝わったかどうかが最も重要です。
プレゼンテーションの形式にとらわれすぎて、この本質を見失わないことが大切です。
技術的な完璧さよりも、研究の価値や意義を聴衆に伝えることを最優先に考えましょう。
示説発表(ポスター発表)の特徴と利点
示説発表はポスターを用いて発表する方法で、口演発表とは異なる特徴があります。
自由な交流形式
一つの形式では、発表形式はとらず、発表者は定められた一定時間、ポスターの前に待機し、ポスターを閲覧しに訪れた参加者に随時説明を行ったり、質問に答える方法があります。
この形式の利点は、参加者と個別に深い議論ができることです。
構造化された発表形式
もう一つの形式では、口頭発表と同様に発表形式をとって、1つのセッションに数名が割り当てられ、座長の進行に従ってポスターの前に立ち、1人ずつ順番に口頭で研究発表する方法があります。
この形式では、より多くの参加者に向けて効率的に発表することができます。
成功する学会発表のための追加のアドバイス
学会発表を成功させるためには、事前の準備が何よりも重要です。
発表内容を十分に理解し、想定される質問への回答も準備しておきましょう。
また、発表当日は時間管理を徹底し、聴衆との良好なコミュニケーションを心がけることが大切です。
緊張することは自然なことですが、十分な準備をしていれば自信を持って発表することができるでしょう。
まとめ
看護研究の学会発表は、研究成果を社会に還元し、看護学の発展に貢献する重要な活動です。
適切な準備と心構えがあれば、初心者でも効果的な発表を行うことができます。
この記事で紹介したポイントを参考に、ぜひ積極的に学会発表にチャレンジしてみてください。
あなたの研究が多くの看護師や研究者にとって有益な情報となることを願っています。








