はじめに
看護過程の中で「ウェルネス看護問題」という言葉を初めて聞いたとき、「普通の看護問題と何が違うの?」と戸惑う学生は多いです。病気や症状がある患者の問題を扱うのはイメージしやすいですが、ウェルネス(wellness)は「健康」や「より良い状態」を意味し、必ずしも「病気のある人」だけを対象とするわけではありません。
しかし、ウェルネス看護問題は臨床でも実習でも重要な位置を占めており、「病気がないから看護することがない」と考えると大きな誤りです。この記事では、ウェルネス看護問題の基本から、実際の書き方、学生がつまずきやすいポイントまで丁寧に解説します。
ウェルネス看護問題とは何か
健康を「維持・促進・発展させる」ための看護
ウェルネス看護問題とは、「現時点で健康上の問題はない、あるいは安定しているが、さらに良い状態へ向かうために看護が必要な領域」を指します。
たとえば、以下のようなケースです。
- 高齢者が「自分の足で歩き続けたい」と話している → 運動習慣維持への支援
- 糖尿病患者が「これ以上悪化させたくない」と考えている → 自己管理能力の強化
- 妊婦が「出産に向けて心身の準備をしたい」と話す → 健康教育とセルフケアの支援
病気の治療や症状の軽減を目的とする看護問題とは異なり、「より良く生きるための支援」が中心になる点が特徴です。
通常の看護問題との違い
| 比較項目 | 通常の看護問題 | ウェルネス看護問題 |
|---|---|---|
| 対象 | 健康状態に問題がある人 | 健康状態が良好または安定している人 |
| 目的 | 問題の解決・改善 | 健康の維持・増進・発展 |
| 看護の方向性 | 病状悪化の防止、合併症予防など | 生活の質向上、自己効力感の向上など |
| 例 | 転倒リスク状態、不眠、不安 | 自立した生活の継続、健康的な生活習慣の確立 |
「問題を解決する」のではなく「より良くする」という発想が重要です。
ウェルネス看護問題の書き方ステップ
① 評価・アセスメントから出発する
まずは対象者の健康状態や生活背景を丁寧に把握します。健康状態が良好でも、「何を大切にしているのか」「何を目標にしているのか」を聞き取ることがポイントです。
例)
- 「これからも孫と散歩できるように足腰を鍛えたい」
- 「退院後も一人暮らしを続けたい」
- 「糖尿病を悪化させずに趣味の旅行を続けたい」
このような言葉が看護問題の方向性を示すヒントになります。
② 看護問題として文章化する
看護問題は「〜したいという意欲がある」「〜を維持するための支援が必要」という形で表現します。
よく使われる表現例:
- 健康状態を維持・増進するための知識・技術の習得が必要
- 望む生活を継続するための生活習慣の確立が必要
- 身体機能を維持し、自立した生活を継続するための支援が必要
【例】
「身体機能を維持し、今後も自立した生活を継続するための支援が必要」
③ 目標設定を「ポジティブ」にする
ウェルネス看護問題では、目標も「〜できるようになる」「〜を続けられる」といった前向きな表現を使います。
【短期目標の例】
- 自宅での運動を週3回継続できる
- 食事記録を1週間続けられる
【長期目標の例】
- 退院後も自立して生活し、社会参加が継続できる
- 健康的な生活習慣が定着し、疾患の悪化を防げる
④ 看護計画を立てる
ウェルネス看護では、指導や支援の内容が中心になります。
例:
- 生活リズム・食事・運動習慣について一緒に計画を立てる
- 本人の価値観や希望を聞き取り、目標設定を共に行う
- 行動変容を促すために小さな成功体験を積み重ねる支援を行う
- 社会資源(地域活動・デイサービスなど)を活用する
ここでは「指導する」だけでなく、「本人と一緒に考える」という姿勢が大切です。
よくある失敗と注意点
① 「問題がないから書けない」と考える
「元気だから看護問題にならない」と思ってしまう学生は多いですが、それは大きな誤解です。「現状維持」や「さらに良くする」ことも立派な看護の対象です。
② ただの生活指導になってしまう
「バランスのよい食事をとるように指導する」といった表現だけでは看護問題にはなりません。「なぜそれが必要か」「どうなりたいのか」という意図と方向性が重要です。
③ 本人の意欲や価値観を無視する
ウェルネス看護では「患者中心の看護」が特に重要です。看護師が一方的に「健康的な生活を」と押しつけても、本人が望んでいなければ意味がありません。本人の言葉を基盤に考えることが大切です。
看護問題の書き方テンプレート
以下のような流れで書くと、実習記録やレポートでも評価されやすくなります。
看護問題
「〜を維持・向上するための支援が必要」
短期目標
「〜できるようになる」「〜を継続できる」
長期目標
「〜を維持できる」「〜を通して生活の質が向上する」
看護計画
- 生活習慣・運動・食事などについて本人と共に計画を立てる
- 本人の意欲を引き出す声かけやサポートを行う
- 成功体験を共有し、行動の継続を支える
まとめ
ウェルネス看護問題は、「病気を治す」ための看護ではなく、「よりよく生きる」ための看護です。現状が良好であっても、健康の維持・増進のために看護師ができることはたくさんあります。
- 本人の価値観や希望を丁寧に聴き取る
- 現状の生活をアセスメントし、支援の方向性を考える
- ポジティブな看護問題・目標・計画を立てる
この3つのステップを押さえれば、実習やレポートでも質の高い内容が書けるようになります。「問題がないから終わり」ではなく、「より良い未来へ向けて何ができるか」を考える姿勢が、ウェルネス看護の本質です。








