はじめに
看護実習記録は、看護学生にとって重要な学習ツールです。日々の実習での気づきや学びを記録することで、看護の専門的な思考力を養うことができます。この記事では、実習記録の基本的な書き方から具体的な例文まで、わかりやすく解説します。
看護実習記録とは
看護実習記録は、臨地実習で経験したことを振り返り、看護過程の展開や自己の学びを記述する重要な記録です。この記録を通して、観察力、アセスメント能力、看護実践能力を向上させることができます。
実習記録の基本構成
1. 基本情報
- 実習日時
- 実習場所(病棟名など)
- 受け持ち患者情報(イニシャル、年齢、疾患名)
- 実習目標
2. 患者の全体像
- バイタルサイン
- 一般状態
- 治療内容
- ADL(日常生活動作)の状況
3. 看護過程の展開
- 情報収集
- アセスメント
- 看護問題の抽出
- 看護計画
- 実施と評価
4. 学びと反省
- 本日の学び
- 自己の課題
- 次回への目標
実習記録の書き方のポイント
ポイント1:客観的事実と主観を分ける
良い例: 「患者は『痛い』と表情をしかめながら訴えた。疼痛スケール6/10であった」
悪い例: 「患者はとても痛そうだった」
ポイント2:観察した事実を具体的に記載
時間、数値、患者の言葉をそのまま記録することが大切です。
良い例: 「10時30分、病室訪問時、血圧128/76mmHg、脈拍72回/分、体温36.8℃。『今日は少し楽になった気がします』と笑顔で話される」
ポイント3:看護の根拠を明確に
なぜその看護行為を行ったのか、理論的根拠を示します。
例: 「術後2日目で離床が進められる時期であり、早期離床により術後合併症予防が期待できるため、リハビリテーションを促した」
場面別の例文集
【例文1】バイタルサイン測定の記録
実施内容: 9時00分、バイタルサイン測定を実施した。測定前に患者に声をかけ、測定の目的を説明し同意を得た。血圧132/84mmHg、脈拍78回/分・整、体温37.2℃、呼吸数18回/分、SpO2 98%(room air)であった。
アセスメント: 体温が37.2℃とやや高めであるが、術後2日目であり、創部の炎症反応による発熱の可能性がある。その他のバイタルサインは正常範囲内である。今後も体温の推移を観察し、38℃以上の発熱や創部の発赤・腫脹などの感染徴候の有無を継続的に観察する必要がある。
【例文2】清拭の記録
実施内容: 14時00分、全身清拭を実施した。室温を25℃に調整し、プライバシーに配慮してカーテンを閉めた。患者に「これから体を拭かせていただきます」と説明し同意を得た。湯の温度は約45℃とし、患者の好みを確認しながら実施した。清拭中、患者は「気持ちいいです。ありがとうございます」と話された。
アセスメント: 清拭により皮膚の清潔保持と血行促進が図れた。患者は安楽な表情を示しており、リラクゼーション効果も得られたと考える。今後も清潔ケアを通じて、皮膚の観察と患者とのコミュニケーションの機会としたい。
【例文3】コミュニケーションの記録
場面: 10時30分、病室訪問時、患者がベッドに横になり窓の外を見ていた。「おはようございます。今日の調子はいかがですか」と声をかけると、「うーん、まあまあかな」と小さな声で答えた。「何か気になることはありますか」と尋ねると、「手術してから眠れなくて…夜中に目が覚めちゃうんです」と不安そうな表情で話された。
アセスメント: 術後の環境変化や疼痛、不安などにより睡眠が障害されている可能性がある。睡眠は身体的・精神的回復に重要であるため、睡眠状況の詳細な情報収集が必要である。また、患者の不安を傾聴し、安心できる環境を提供することが重要と考える。
【例文4】観察の記録
観察内容: 11時00分、創部の観察を実施した。腹部正中の手術創は長さ約15cm、ドレッシング材で覆われている。ドレッシング材に浸出液の付着は見られない。創部周囲の発赤・腫脹・熱感はなく、患者は「痛みは少し落ち着いてきました」と話された。
アセスメント: 創部の治癒過程は順調と考えられる。感染徴候は現時点では認められない。疼痛が軽減傾向にあることから、創部の炎症反応も落ち着いてきていると推測される。引き続き、創部の観察と疼痛コントロールを継続する必要がある。
【例文5】食事介助の記録
実施内容: 12時00分、昼食の食事介助を実施した。ベッドをギャッチアップ60度に上げ、安全な姿勢を確保した。「今日のメニューは何がよさそうですか」と声をかけながら、患者のペースに合わせて介助した。全粥とおかずを交互に口に運び、嚥下を確認しながら進めた。食事摂取量は全体の7割程度で、「もうお腹いっぱいです」と話された。
アセスメント: 食事摂取量は7割と前日の5割から改善している。嚥下状態も良好で、むせなどは見られなかった。食欲が徐々に回復してきていると考えられる。引き続き、栄養状態の改善に向けて食事摂取を促していく必要がある。
学びの記述例
【例文6】本日の学びと課題
本日の学び: 本日は、術後患者の全身管理の重要性について学ぶことができた。特に、バイタルサインの変化だけでなく、患者の表情や言葉から心理的な状態をアセスメントすることの大切さを実感した。また、清潔ケアを通じて、患者との信頼関係を構築する機会となることを学んだ。
自己の課題: アセスメントを行う際、観察した情報と既習の知識を結びつけることに時間がかかってしまった。今後は、疾患や治療に関する知識を事前学習でしっかりと理解し、臨床の場で応用できるようにしたい。また、患者とのコミュニケーションでは、もっと患者の思いを引き出せるような質問の仕方を工夫していきたい。
次回への目標:
- 創部の観察を継続し、感染徴候の早期発見に努める
- 患者の睡眠状況を詳しく情報収集し、看護計画を立案する
- 疾患に関する文献を読み、アセスメント能力を向上させる
実習記録を書く際の注意点
1. 個人情報保護の徹底
- 患者の実名は記載しない(イニシャルやアルファベットを使用)
- 部屋番号は記載しない
- 特定につながる情報は避ける
2. 医学用語の正確な使用
- 略語を使用する場合は、最初にフルスペルを記載
- 不確かな用語は使わず、調べてから記載
3. 記録の整合性
- 時系列に沿って記載
- 矛盾のない内容にする
4. 読みやすさへの配慮
- 簡潔で明確な文章
- 段落分けを適切に行う
実習記録でよくある失敗と改善策
失敗例1:主観のみの記載
❌ 「患者は元気そうだった」 ✅ 「患者は笑顔で『今日は調子がいいです』と話され、歩行も安定していた」
失敗例2:観察が不十分
❌ 「創部に問題なし」 ✅ 「創部に発赤・腫脹・熱感・浸出液なし。患者は疼痛訴えなし」
失敗例3:アセスメントがない
❌ 「バイタルサイン測定を実施した」で終わる ✅ バイタルサインのデータから患者の状態をアセスメントする
まとめ
看護実習記録は、日々の学びを深め、看護師としての基礎を築く重要なツールです。最初は書くのに時間がかかるかもしれませんが、継続することで観察力やアセスメント能力が向上します。
実習記録作成のポイント:
- 客観的事実を具体的に記載する
- 観察とアセスメントを明確に分ける
- 看護の根拠を示す
- 自己の学びと課題を振り返る
- 個人情報保護を徹底する
この記事が、皆さんの実習記録作成の助けになれば幸いです。頑張ってください!
参考文献:
- 看護学生のための臨地実習ガイド
- 看護記録の書き方マニュアル







