看護研究を進める上で、研究の種類や論文の特徴を正しく理解することは欠かせません。
自分が取り組もうとしている研究がどの種類に該当するのかを知ることで、適切な研究方法を選択できます。
また、質の高い文献を見極める力を身につけることは、信頼性の高い研究を行うための基盤となります。
本記事では、看護研究の7つの種類、論文の分類、そして良い文献を選ぶための具体的な方法について詳しく解説します。
看護研究における7つの主要な研究種類
看護研究には主に7つの種類があり、それぞれ異なる目的と方法を持っています。
歴史研究は、過去から現在までの歴史的事実を調査する研究です。
看護学の歴史や看護師の発展過程を明らかにすることで、現代の看護実践に貢献します。
フロレンス・ナイチンゲールが登場するまで、看護の仕事は社会的に確立されておらず、病人の世話は主に家族によって行われていました。
ヨーロッパでは病院は存在したものの、そこで働く看護師は教育を受けていない最下層の女性たちでした。
日本では明治政府が西洋医学を導入するまで、病院という施設自体が存在しませんでした。
このような歴史的背景を理解することは、現代の看護の価値を再認識する上で重要です。
量的研究は、質問紙を用いて統計的手法で分析する研究方法です。
自分のテーマが過去にどのように調べられ、どこまで明らかになっているかを文献から探すことから始まります。
その情報を基に質問紙の項目を作成し、データを収集して分析します。
数値化できるデータを扱うため、客観性が高く、多くのサンプルから一般化可能な知見を得ることができます。
質的研究は、面接や観察、カルテの看護記録などから臨床現場で起こっている事象を明らかにする方法です。
患者の体験や看護師の実践など、数値では表現しきれない現象を深く理解することができます。
インタビューで得られた語りを分析し、その意味を解釈していく過程が特徴です。
文献研究は、自分の研究テーマを過去にさかのぼって調査する方法です。
研究の原点を明らかにするには、10年以上遡る必要がある場合もあります。
基本となる文献が見つからなければ、さらに年代を遡って探索を続けます。
時代的背景も考慮しながら、そのテーマがどの程度研究されているか、明らかにされていない部分は何かを探ります。
実験研究は、環境条件を整えて仮説を証明していく方法です。
まずは看護師同士でプレテストとして実験内容を試みます。
看護師が臨床現場で実際の患者に使用することは倫理的に困難ですが、医学研究では広く行われています。
事例研究は、特定の事例を取り上げて分析していく方法で、ケーススタディとも呼ばれます。
1つの事例をケアの方法を通して深く丁寧に追求し、その中の要因を分析します。
特殊な事例や複雑なケースについて、詳細な検討を行うことができます。
症例研究は、ケースレポートとも呼ばれ、患者の症状や病状、検査結果などを数多く追求しながらまとめていく方法です。
診療から得られた新しい知識を普及させる手段として扱われることが多くあります。
事例研究と症例研究は似ているため混同しやすいですが、前者は看護ケアに焦点を当て、後者は医学的な症状や経過に焦点を当てる点が異なります。
論文の種類とその特徴を理解する
論文にも性質によって分類があり、それぞれ異なる役割を持っています。
総説は、特定分野のテーマにおいて関連文献や資料を多方面から集め、総括的に状況を概説した論文です。
レビューとも呼ばれ、その分野の研究動向を把握するのに役立ちます。
原著は、独創性があり、そのテーマの研究が今までになく新しい知見を提供する論文です。
研究の質が高く、その分野に大きな影響を与える可能性があります。
研究論文は、原著までは至らないものの、研究成果の意義が大きく、その分野の発展に寄与するものです。
報告は、その分野の実践報告やレポートを示すものです。
臨床現場での取り組みや新しい試みを共有する際に用いられます。
資料は、その分野における貴重なデータや情報を提供する論文です。
基礎的なデータの蓄積に貢献します。
論文の種類は、論文のタイトル近くに記載されていることが多いため、確認する習慣をつけることが大切です。
なぜ論文が重視されるのか
論文が学術的に重視される最大の理由は、査読システムが存在するからです。
査読とは、その分野の専門家による厳格な審査プロセスです。
日本における代表的な看護学会である日本看護科学学会では、査読委員会にその分野のスペシャリストや有名な研究者が在籍しています。
これらの専門家による査読を通過した論文だけが公表されるため、内容の質が担保されます。
査読プロセスでは、研究の独創性、方法論の妥当性、結果の信頼性、結論の適切性などが厳しく評価されます。
このシステムにより、学術論文は高い信頼性を持つ情報源となっています。
ただし、原著や研究論文でなくても、非常に新しく独創的なもの、読者にとって分かりやすいものも多く存在します。
論文の形式でなくても、実践に役立つ記事や報告も数多くあります。
重要なのは、幅広く文献を読み、自分の研究に役立つ情報を見極める力を養うことです。
文献の質を見極めるポイント
文献とは、活字になった全ての文章や記録を含むものです。
授業の資料、行動計画、インターネットの情報、新聞、手紙、日記、さらには漫画も広い意味では文献に含まれます。
しかし、全ての文献が研究や実践で役立つわけではありません。
文献には質があり、その質を見極めることが研究の成否を分けます。
良い文献の条件として、まず最新のものであることが挙げられます。
医療や看護の分野は日々進歩しているため、古い情報では現在の状況と合わない可能性があります。
完全な形で書かれたものを選ぶことも重要です。
抄録は研究の概要しか書かれていないため、詳細な情報を得ることができません。
はじめにから引用文献まで、完全な論文を入手する必要があります。
有名な学会や信用できる出版社によるものかどうかも確認すべきポイントです。
多くの学会で引用され、参考文献として使用されている論文は、その分野で認められている証拠です。
原著論文は、新しい知見を提供しているため、特に価値が高いとされます。
内容の信頼性と妥当性が保証されていることも必須条件です。
論文内には、信頼性と妥当性を確保するための方法が記載されているはずです。
文献検索で気をつけるべきこと
文献を探す際には、情報源の信頼性を常に確認する必要があります。
例えば、2023年の日本人の死亡原因について調べる場合を考えてみましょう。
インターネットで検索すると、様々な情報が出てきますが、それらが全て正確とは限りません。
古いデータが更新されずに残っていたり、個人のブログに誤った情報が掲載されていたりする可能性があります。
データの出所を確認することが極めて重要です。
厚生労働省などの公的機関が発表した統計データなのか、それとも個人の意見なのかを見極める必要があります。
いつのデータなのか、どこから出されているものなのかを必ず確認しましょう。
信頼できる情報源としては、政府機関の統計、学会誌に掲載された論文、専門書などが挙げられます。
個人のブログやSNSの情報は、裏付けとなる根拠が示されていない限り、研究の文献としては適切ではありません。
複数の信頼できる情報源で内容を確認し、整合性をチェックすることも大切です。
研究を始める前の準備
自分がこれから行う研究がどの種類に該当するかを見つけることは、研究の出発点です。
臨床で経験した事例を深く分析したいなら事例研究が適しているでしょう。
多くの患者や看護師にアンケートを取って傾向を知りたいなら量的研究が向いています。
患者の体験の意味を理解したいなら質的研究が適切です。
研究の種類を決めたら、次は質の高い文献を集めることです。
自分の研究テーマに関連する論文を系統的に検索し、読み込んでいきます。
先行研究を十分に理解することで、自分の研究の位置づけが明確になります。
論文は世界へ与える影響力があるものであり、あなたの研究成果も将来誰かの役に立つ可能性があります。
質の高い文献を見極める力を養い、適切な研究方法を選択することで、信頼性の高い研究を実現することができます。
看護研究を通じて、看護実践の質を向上させ、患者ケアの改善に貢献していくことが、看護師としての重要な役割のひとつです。
研究の種類と論文の質を理解し、適切な文献を活用することで、あなたの研究はより価値あるものとなります。








