COPD患者の看護過程作成に悩んでいる看護学生の皆さん、こんにちは。
ゴードンの11の機能的健康パターンを使ったCOPDの看護過程は、呼吸状態の評価、活動耐性の低下、栄養管理、在宅酸素療法の管理など、多面的なアセスメントが求められるため、多くの学生が難しく感じるテーマです。
本記事では、COPDで在宅酸素療法を行っている70代男性の架空事例を用いて、ゴードンの各パターン別にアセスメントのポイントと看護問題の導き方を具体的に解説します。
この記事を読むことで、COPD患者の全体像把握から看護計画立案までの流れが理解でき、実習記録作成の参考になるはずです。
事例紹介|COPDで在宅酸素療法を行う70代男性
患者プロフィール
I氏、74歳男性、元自営業
診断名:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫
既往歴:40年以上の喫煙歴(1日30本)、5年前に禁煙
家族構成:妻(71歳)と二人暮らし、長男・次男は遠方在住
現在の状況
COPD診断から8年が経過し、現在は在宅酸素療法を実施しています。
訪問看護を週2回利用し、自宅での療養生活を送っています。
労作時の呼吸困難が強く、日常生活動作が制限されています。
現在のデータ
身長165cm、体重50kg(3か月前は54kg)、BMI 18.4
意識レベル:清明
呼吸数:安静時18回/分、労作時26回/分
SpO2:安静時93%(酸素2L/分)、労作時88%
検査データ
呼吸機能検査:%VC 68%、FEV1.0% 35%
動脈血ガス:PaO2 62mmHg、PaCO2 48mmHg、pH 7.36
Alb 3.2g/dL、TP 6.0g/dL
胸部X線:肺野透過性亢進、横隔膜平坦化
治療内容
在宅酸素療法:安静時2L/分、労作時3L/分
気管支拡張薬(吸入):1日2回
去痰剤内服
ゴードン11パターン別アセスメントのポイント
健康知覚-健康管理パターン
主観的データ(S情報)
風邪をひかないように気をつけています
タバコはもう吸えません、苦しくなりますから
薬は毎日きちんと飲んでいます、吸入も忘れません
酸素チューブをつけて外出するのは恥ずかしいです
でも、酸素がないと何もできません
先生の言う通りに酸素を使わないと苦しくなります
客観的データ(O情報)
74歳男性、COPD診断8年
40年以上の喫煙歴、5年前に禁煙成功
在宅酸素療法実施中
酸素流量の自己管理可能
服薬・吸入のアドヒアランス良好
訪問看護週2回利用
感染予防の重要性を理解
酸素チューブ使用に対する羞恥心あり
アセスメントの要点
I氏は自身の疾患を正しく理解し、適切な自己管理ができています。
風邪予防の重要性を認識し、感染症がCOPDを悪化させるリスクを理解しています。
禁煙に成功しており、喫煙がCOPDの主要原因であることを理解しています。
服薬・吸入のアドヒアランスが良好で、自己管理能力が高いです。
酸素療法の必要性を理解し、適切に使用できています。
ただし、酸素チューブ使用に対する羞恥心があり、これが外出を控える要因となっています。
訪問看護などの社会資源を適切に活用できています。
妻が機器の手入れなど一部のケアを担当しており、家族のサポートを受けています。
今後も自己管理を継続できるよう、アドヒアランスを高める支援が重要です。
栄養-代謝パターン
主観的データ(S情報)
全部食べたいけど、途中でお腹がいっぱいになります
食べている間に息が苦しくなって、もう食事はいいかなと思います
麺類が好きです
客観的データ(O情報)
身長165cm、体重50kg(3か月前54kg)、4kg減少
BMI 18.4とやせ
食事摂取量:妻が用意した食事の7割程度(約1400kcal)
推奨カロリー:約1800kcal
Alb 3.2g/dL、TP 6.0g/dLと軽度低栄養
水分摂取:約1000mL/日
皮膚の損傷なし
横隔膜平坦化あり
アセスメントの要点
3か月で4kgの体重減少があり、BMI 18.4とやせ状態です。
総蛋白とアルブミンが低値で、軽度の低栄養状態にあります。
摂取カロリーが推奨量を下回っており、栄養不足が懸念されます。
食事中の呼吸困難が食事摂取量低下の主な原因です。
低栄養は呼吸筋を含む筋力低下を招き、COPDをさらに悪化させる悪循環につながります。
横隔膜の平坦化により、食事摂取時に胃が圧迫され、満腹感を早く感じやすい状態です。
水分摂取量が不足しており、痰の粘稠化につながるリスクがあります。
少量頻回食やエネルギー密度の高い食品の摂取など、食事方法の工夫が必要です。
排泄パターン
主観的データ(S情報)
排尿は問題ありません
便秘がちで、3日に1回くらいです
排便の時に息が続かないことがあります
客観的データ(O情報)
排尿:問題なし
排便:3日に1回、便秘傾向
排便時の怒責により呼吸困難増強
食事摂取量少ない
水分摂取量少ない
活動量低下
アセスメントの要点
排尿に問題はありませんが、便秘傾向があります。
便秘の原因は、食事摂取量不足、水分摂取不足、活動量低下が考えられます。
排便時の怒責が呼吸困難を増強させ、排便行動を困難にしています。
便秘が続くと腹部膨満により横隔膜の動きがさらに制限され、呼吸困難が悪化する可能性があります。
水分摂取の促進、食物繊維の摂取、適度な活動が便秘予防に重要です。
活動-運動パターン
主観的データ(S情報)
前は近所を散歩していたけど、最近は外に出ていません
ベッドの近くに必要なものを置いて、立たなくて済むようにしています
二階にはほとんど行きません
お風呂の時に息苦しくなります
洗面時も息が続かないことがあります
客観的データ(O情報)
入院前:近所の散歩が日課だったが、現在は外出なし
階段昇降で息切れ強く、2階への移動回避
1階の1室を療養の場としている
歩行速度:同世代よりゆっくり
労作時:肩呼吸あり
呼吸筋ストレッチ体操:あまり実施していない
入浴時:酸素吸入下でも息切れ強い
呼吸機能:%VC 68%、FEV1.0% 35%と著明低下
動脈血ガス:PaO2 62mmHg、SaO2 90%と低酸素血症
酸素処方:安静時2L/分、労作時3L/分
白色粘稠痰を1日6〜7回喀出
アセスメントの要点
労作時の呼吸困難により、日常生活動作が著しく制限されています。
活動量の低下により、筋力低下と廃用症候群のリスクが高まっています。
呼吸機能検査で著明な閉塞性障害が認められます。
慢性的な低酸素状態にあり、これが活動耐性低下の主要因です。
呼吸筋ストレッチ体操の実施が不十分であり、継続的な指導が必要です。
入浴などのセルフケアも呼吸困難により制限されており、清潔保持に問題が生じやすいです。
酸素チューブ使用への羞恥心が外出を控える心理的要因となっています。
活動量を徐々に増やすための呼吸リハビリテーションが重要です。
睡眠-休息パターン
主観的データ(S情報)
夜は8時間くらい眠れています
夜中に目が覚めることはありません
疲れたら休むようにしています
客観的データ(O情報)
睡眠時間:8時間
中途覚醒なし
睡眠導入剤使用なし
労作時は活動を止めて呼吸を整えている
アセスメントの要点
睡眠時間は十分確保されており、中途覚醒もありません。
睡眠導入剤を使用せず、自然な睡眠が得られています。
労作時には適切に休息をとり、呼吸を整える対処ができています。
現時点で睡眠・休息パターンに問題はありません。
認知-知覚パターン
主観的データ(S情報)
息が苦しいです
動くと特に苦しくなります
客観的データ(O情報)
認知障害なし
感覚障害なし
コミュニケーション良好
疾患理解良好
呼吸困難感あり
アセスメントの要点
認知機能、感覚機能ともに正常です。
疾患について積極的に理解しようとしています。
呼吸困難感が主な症状ですが、適切に対処できています。
自己管理に必要な認知能力は保たれています。
自己知覚-自己概念パターン
主観的データ(S情報)
できることは自分でやりたいです
ここは代々の土地で、ずっと暮らしてきました
住み慣れた家で生活したいです
酸素チューブをつけて外出するのは恥ずかしいです
人にあまり見られたくないです
でも、酸素がないと何もできません
客観的データ(O情報)
自立への強い意志
住み慣れた家での生活継続希望
在宅療養実施中
酸素チューブ使用に対する羞恥心
外出を控える傾向
アセスメントの要点
自立した生活を重視し、できることは自分でやりたいという強い意志があります。
住み慣れた家での生活継続を強く希望しており、これがアイデンティティの維持につながっています。
酸素チューブ使用によるボディイメージの変化が外出を控える要因となっています。
羞恥心が活動制限につながり、社会的孤立や筋力低下のリスクを高めています。
患者会への参加など、同じ境遇の人との交流が羞恥心克服に有効です。
役割-関係パターン
主観的データ(S情報)
家のことは妻に任せています
仕事はもうしていません
散歩の時に知り合いに会うと挨拶していました
客観的データ(O情報)
元自営業、現在無職
家事は妻が担当
地域での役割なし
以前は散歩が日課、顔見知りと交流
現在は散歩に出ていない
長男・次男は遠方在住
アセスメントの要点
COPDの進行により、家庭内外での役割が減少しています。
妻が家事を担当し、介護負担が増加している可能性があります。
地域での役割がなく、社会的つながりが減少しています。
散歩の中断により、地域との交流が失われています。
社会的孤立感が増している可能性があり、精神的健康への影響が懸念されます。
地域活動や患者会への参加促進が必要です。
セクシュアリティ-生殖パターン
主観的データ(S情報)
特記すべき訴えなし
客観的データ(O情報)
74歳男性、既婚
2人の息子あり
特記すべき問題なし
アセスメントの要点
セクシュアリティに関する特別な問題は見られていません。
現時点で看護問題はありません。
コーピング-ストレス耐性パターン
主観的データ(S情報)
長年タバコを吸ってきたから、この病気になるのも仕方ないです
タバコをやめてから、吸いたいと思わなくなりました
タバコを吸うと息が苦しくなるから、吸いたいと思いません
腹を立てることはほとんどありません
息子に相談しています
客観的データ(O情報)
疾患の原因を理解し受容
禁煙成功、継続中
ストレス対処良好
家族に相談できる関係
アセスメントの要点
疾患の原因を理解し、受容できています。
禁煙に成功し、継続できています。
以前は喫煙がストレス対処法でしたが、現在は他の方法で対処できています。
家族に相談でき、サポートを得られています。
ストレスコーピングに問題はありません。
価値-信念パターン
主観的データ(S情報)
贅沢はしません
できることは自分でやりたいです
酸素チューブは恥ずかしいけど、必要だから使います
客観的データ(O情報)
節約志向
自立重視
現実的な判断
治療の必要性理解
アセスメントの要点
長年の自営業経験から、節約意識が強く根付いています。
自立を重視し、自分でできることは自分で行いたいという価値観があります。
羞恥心はあるものの、治療の必要性を理解し現実的な判断ができています。
価値観と信念を尊重しながら、社会的交流を維持する支援が重要です。
看護問題の優先順位と看護計画の立案
ゴードンの11パターンでアセスメントを行った結果、以下の看護問題が抽出されます。
優先度の高い看護問題
呼吸機能低下に関連した活動耐性低下
栄養摂取不足に関連した栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
酸素チューブ使用に対する羞恥心に関連した自尊感情状況的低下
看護目標の例
2週間以内に、呼吸法を習得し、呼吸筋ストレッチ体操の実施回数が増加する
1か月以内に、食事摂取量が増加し、体重減少が止まる
2週間以内に、外出の回数が増加する
看護計画(OP・TP・EP)の例
OP:呼吸状態、SpO2、呼吸困難感、活動量、バイタルサイン、体重、食事摂取量、栄養状態、呼吸筋ストレッチ体操の実施状況、外出頻度の観察
TP:呼吸法の指導と実践、活動時の介助、食事の工夫(少量頻回食)、呼吸筋ストレッチ体操の促進、達成時の支持的関わり
EP:休息の取り方の指導、エネルギー消費節約方法の指導、呼吸法の指導、水分摂取の重要性の説明、運動・呼吸筋ストレッチ体操の重要性の説明、外出の意義の説明
まとめ|COPD看護過程のポイント
COPD患者の看護過程をゴードンで展開する際は、呼吸状態と活動耐性を中心に、栄養状態、心理的側面、社会的孤立を総合的にアセスメントすることが重要です。
本事例のI氏のように、在宅酸素療法を行っている患者では、呼吸リハビリテーション、栄養管理、心理的支援、社会資源の活用が重要な看護の柱となります。
看護学生の皆さんは、このような架空事例を参考にしながら、実際の患者さんの個別性を大切にした看護過程を展開してください。
COPD看護は急性増悪の予防から慢性期の自己管理支援まで継続的な視点が必要であり、患者さんが可能な限り自立した生活を送れるよう支援することが看護の重要な役割となります。








