看護研究を進める上で、文献レビューは研究の基盤となる重要なステップです。
今回は文献検討の具体的な方法と、研究計画書の作成について詳しく解説します。
研究の出発点:関心ある現象の発見
看護実践の中で疑問や興味を持った現象が、研究のスタート地点となります。
臨床場面で経験した事例や、患者ケアにおける課題が研究テーマにつながります。
日常の看護実践の中から生まれる素朴な疑問こそが、価値ある研究の種となります。
例えば、高齢患者の転倒予防、終末期ケアにおけるコミュニケーション、慢性疾患患者のセルフケア支援など、実践的なテーマが考えられます。
疑問の明確化とリサーチクエスチョンの形成
漠然とした関心を具体的な研究疑問へと絞り込むプロセスが必要です。
何を明らかにしたいのか、どのような対象について調べたいのかを明確にします。
疑問が明確になることで、適切な文献検索が可能になります。
リサーチクエスチョンは、答えを見つけられる形で表現することが重要です。
効果的な文献検索の実践
検索データベースの選択
医学中央雑誌Web版は日本の医学・看護文献の検索に最適なデータベースです。
PubMedやCINAHLなどの国際的なデータベースも、英語文献の検索に有用です。
CiNii Articlesは日本の学術論文全般を検索できます。
研究テーマに応じて、適切なデータベースを選択することが効率的な文献収集につながります。
検索式の構築
キーワードを組み合わせて検索式を作成します。
ANDで複数のキーワードをつなぐと、両方を含む文献に絞り込めます。
ORで類義語をつなぐと、検索範囲を広げることができます。
NOTで不要なキーワードを除外することも可能です。
検索日時、使用したデータベース名、検索式、検索結果の件数を記録しておきます。
検索対象期間の設定
過去10年から15年程度の文献を対象とすることが一般的です。
テーマによっては、より長期間または短期間の設定が適切な場合もあります。
最新の知見を得るため、できるだけ新しい文献を含めることが重要です。
文献の選定基準
適用基準の設定
研究目的に合致する文献を抽出するための基準を明確にします。
明らかにしたいことの構成要素が含まれているかを確認します。
例えば、高齢者のフレイルについて調べる場合、高齢者に関する内容とフレイルに関する内容の両方が含まれることが条件となります。
原著論文や研究論文を中心に選定することが望ましいです。
除外基準の設定
抄録のみで本文が入手できない文献は除外します。
タイトルから明らかに適用基準に合致しない文献を除外します。
抄録を読んで適用基準に合わない文献を除外します。
本文を精読して適用基準に合わない文献を最終的に除外します。
段階的に文献を絞り込むことで、効率的かつ適切な文献選定が可能になります。
研究背景の構築方法
研究背景は、一般的なことから個別的なことへと焦点化していく構成が基本です。
研究テーマの一般的紹介
まず、研究テーマに関する社会的背景や重要性を述べます。
例えば、高齢化社会における健康課題や、医療現場での具体的な問題などを提示します。
統計データや疫学的情報を用いて、テーマの重要性を裏付けます。
先行研究の整理
これまでに明らかになっていることを整理します。
先行研究で述べられている知見を体系的にまとめます。
明らかになっていることと、まだ明らかになっていないことを明確に区別することが重要です。
研究の関連性を明確化し、自分の研究がどの位置づけにあるかを示します。
研究の意義の提示
先行研究の限界や不足している点を指摘します。
本研究で調査することの意味や価値を説明します。
研究によって得られる知見が、看護実践にどのように貢献できるかを述べます。
研究目的の明確化
本研究は、国内の文献検討により、研究の動向を明らかにすることであるという形で記述します。
何を、どのような方法で、どこまで明らかにするのかを簡潔に示します。
研究目的は、研究背景で述べた問題意識から自然に導かれる形が理想的です。
用語の定義の重要性
定義が必要な理由
明らかにしたいことを構成する用語が、文献によって表現や意味が異なる場合があります。
抽象的なままでは、明らかにしたいことに結びつきません。
文献を参考にし、本研究における用語の定義を明確にする必要があります。
定義の例
高齢者という用語について、2017年に日本老年学会と日本老年医学会が見直しの提言を行いました。
運動機能、認知機能、病気の発症率など様々な検討により、75歳以上が従来の65歳以上に匹敵するとされています。
65歳から74歳は高齢者の準備期にあたる状態とされています。
身体機能の衰退に着目する研究では、高齢者を75歳以上と定義することが適切です。
研究テーマに応じて、少なくとも主要な概念については用語の定義を行います。
研究方法の詳細な記述
文献検索方法の明記
検索日時を具体的に記載します。
使用した検索データベース名を明示します。
検索対象文献の期間を設定します。
適用基準と除外基準を明確に記述します。
文献抽出の具体的な方法を説明します。
例として、2023年10月中旬に医学中央雑誌Web版で2000年から2023年の文献を検索する、などと記載します。
分析方法の説明
該当した文献をどのように整理するのかを説明します。
研究目的、研究対象者、研究方法、結果、考察を整理する項目として挙げます。
テーマに沿って得られた知見を抽出する方法を示します。
質的研究か量的研究か、分析方法を明記することが重要です。
質的帰納的に分析する場合は、その旨を記載します。
内容分析やカテゴリー化の方法について具体的に述べます。
妥当性と信頼性の確保
データ収集と分析が妥当で信頼できるものになるよう配慮します。
文献検索と分析は、看護に精通した看護教員と合意を得ながら行うことが望ましいです。
複数の研究者で文献を読み、解釈の一致を確認することも有効です。
客観性を保つために、第三者のチェックを受けることが重要です。
分析過程を記録し、後から検証可能な状態にしておきます。
倫理的配慮の記述
研究対象者の人権擁護など、研究者として正しく研究を進めるための倫理を説明します。
文献検討に際して、著作権を保護するため出典を明示します。
盗用や剽窃とならないように十分に配慮します。
引用と参考の区別を明確にし、適切な引用方法を用います。
個人情報や機密情報が含まれる文献の取り扱いにも注意が必要です。
引用・参考文献の記載方法
文献リストは、本文中で引用した順番、または著者名のアルファベット順で記載します。
文献の種類によって記載方法が異なるため、統一した様式を用います。
雑誌論文の場合、著者名、論文タイトル、雑誌名、巻号、ページ、発行年を記載します。
書籍の場合、著者名、書籍名、出版社名、発行年、参照ページを記載します。
電子文献の場合、URL、アクセス日も含めて記載します。
文献整理の実際
文献カードの作成
各文献について、重要な情報を整理したカードを作成します。
書誌情報、研究目的、対象、方法、主な結果、考察のポイントを記録します。
自分の研究との関連性や、引用したい箇所をメモしておきます。
文献マトリックスの作成
複数の文献を比較しやすいように、表形式で整理します。
縦軸に文献、横軸に比較したい項目を配置します。
研究対象、研究デザイン、主な知見などを一覧できるようにします。
視覚的に整理することで、研究の動向や傾向が把握しやすくなります。
批判的吟味の重要性
文献を読む際は、内容を鵜呑みにせず批判的に吟味します。
研究デザインが適切か、サンプルサイズは十分か、結果の解釈は妥当かを検討します。
研究の限界や課題についても注目します。
複数の文献で一致している知見と、相反する知見を区別します。
文献レビューから得られる示唆
先行研究の成果と限界を把握することで、自分の研究の位置づけが明確になります。
研究方法や測定尺度の選択に関するヒントが得られます。
予想される結果や、考察の際の視点についての示唆が得られます。
文献レビューは単なる情報収集ではなく、研究の質を高める重要なプロセスです。
まとめ:効果的な文献レビューの実践
文献レビューは、研究の基盤を築く重要な作業です。
系統的な検索と選定により、質の高い文献を収集できます。
批判的に文献を読み解くことで、研究の深みが増します。
適切な方法論と倫理的配慮に基づいて進めることが、信頼性の高い研究につながります。
文献から得られた知見を統合し、自分の研究の独自性を明確にすることで、価値ある研究成果が期待できます。
看護実践の向上に貢献する研究を目指し、丁寧な文献レビューを心がけることが重要です。








