肺炎患者さまの看護において、ゴードンの11項目機能的健康パターンを用いた包括的アセスメントは極めて重要です。
特に高齢者の誤嚥性肺炎では、呼吸器症状だけでなく全身状態への影響が大きく、多角的な評価が必要となります。
本記事では実際の症例を基に肺炎患者さまに対するゴードン11項目アセスメントの具体的な書き方を詳しく解説します。
看護学生の方から臨床経験の浅い看護師まで、すぐに実践できる内容となっています。
観察のポイントから情報の解釈、看護問題の抽出まで、実例を交えながら分かりやすく説明します。
肺炎患者さまの全体像を把握し、個別性のある看護計画を立案する力を身につけましょう。
肺炎患者のアセスメントにおける特徴
肺炎は細菌やウイルスなどの病原体が肺に感染し、炎症を起こす疾患です。
発熱、咳嗽、喀痰、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状が特徴的です。
高齢者では誤嚥性肺炎が多く脳血管疾患の既往がある方は特にリスクが高くなります。
肺炎により換気血流比の不均衡が生じ、ガス交換が障害されます。
全身状態への影響も大きく、食欲低下、倦怠感、活動耐性の低下などが見られます。
そのため、呼吸状態だけでなく栄養状態、活動能力、心理状態なども含めた全人的評価が必要です。
症例紹介:A氏の基本情報
今回は83歳男性のA氏を例に解説します。
脳梗塞の既往により右上下肢不全麻痺、嚥下障害、軽度の関節拘縮があります。
妻と二人暮らしで子供はいません。
過去に3回ほど誤嚥性肺炎で入院経験があり今回も誤嚥性肺炎で入院となりました。
要介護3で、介護保険で訪問看護を週1回、デイサービスを週2回利用しています。
入院時の体温は38.2度、呼吸数32回/分、SpO2は93パーセントでした。
湿性の咳嗽があり、胸が痛いという訴えがあります。
健康知覚-健康管理パターン
入院前の生活習慣
A氏は60歳で43年間勤めていた採石場の作業員を辞め、自宅で妻と年金生活を送っていました。
63歳で高血圧とラクナ梗塞を指摘されましたが、自覚症状がなく治療せず放置していました。
煙草を1日に20本、日本酒を1日2合飲んでいました。
食習慣は3食規則的に食べていましたが若い頃から塩辛い味付けが好きで肉や揚げ物を好んでいました。
これらの生活習慣は動脈硬化や血栓の危険因子であり、脳梗塞発症の要因となったと考えられます。
アルコールの節度ある適度な飲酒量は1日平均純アルコールで約20g程度とされています。
これは日本酒1合に相当しますが、A氏は2合飲んでいたことから1日にアルコール約40gを摂取していました。
1日当たりのアルコール摂取量が男性で約40g以上になると生活習慣病のリスクを高めます。
常習的に塩辛い物や揚げ物を摂取しており、それらは動脈硬化の要因となり高血圧を引き起こします。
疾患の経過
68歳で脳梗塞となり、右上下肢不全麻痺、嚥下障害が見られました。
1週間後にはリハビリ室でのリハビリテーションが開始され、2ヵ月後に自宅退院となりました。
脳梗塞を発症すると、明らかな身体症状がなくても神経伝達物質の欠乏により咳反射や嚥下反射の神経活動が低下します。
そのため不顕性誤嚥による誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。
過去に3回ほど誤嚥性肺炎で入院経験があることから退院後も引き続き誤嚥性肺炎の再発に注意していく必要があります。
しかし、A氏は83歳であり、後遺症による障害も残っていることから自己による健康管理は今後も難しいと予測できます。
うちは二人暮らしで家内も無理はできないからという発言もあり、家庭でも十分なサポートは得られない状況です。
看護問題
自己による健康管理が困難である、不十分なサポート体制が主要な問題です。
栄養-代謝パターン
入院前の栄養状態
身長172cm、体重78kgでBMIは26.37と軽度の肥満Ⅰとなっています。
しかし、血清総蛋白6.0g/dL、アルブミン3.0g/dLとやや低めです。
数日前からの発熱と食欲低下も見られており、肺炎による影響で食欲や栄養状態を示す数値がやや低下しています。
食事以外の水分摂取も少なく訪問看護でも時折看護師から指導を受けています。
甘いものは嫌い、お粥は味もしないし力もでん、白米がいいという発言があります。
入院後の食事摂取状況
セッティング介助が必要ですが、利き手交換を行い食事は自立摂取できます。
しかし、水分の多いものでは咳き込みが見られ、むせが多い状態です。
おかゆ2口と副食1口を摂取し、みそ汁を飲んだところでむせがあり、そのあとは食べようとしません。
すすめても、ご飯はもういらないと言い、おかゆ5口と副食2口のみ摂取します。
食欲がなく経口摂取も少ないことから考えると、咳嗽や呼吸苦などの症状がある中で食事を摂取することは誤嚥を助長します。
状態の悪化を招くおそれがあるため、食事摂取時の観察と評価は必須です。
必要時、食事形態の変更として普通食からとろみ食やペースト食、あるいは非経口食への切り替えが必要です。
感染徴候と代謝
肺炎により炎症反応があり、CRPは4.0mg/dL、白血球数は10800/μLと感染徴候が認められます。
発熱は代謝を亢進させ、エネルギーの消費を増大させます。
解熱をはかり、必要なエネルギー量が摂取できるよう援助が必要です。
口腔内の状態
安静により口唇乾燥や含嗽も介助が必要な状況となっています。
口腔内の衛生が保てていないと思われます。
口腔洗浄不十分以外に唾液量不足が強い口臭を起こしていると考えられます。
口渇に対する明らかな自覚がなく、訴えたり飲水行動を起こすことができていません。
高齢者は身体活動低下に合わせて体内水分量も減少傾向にあります。
そのため脱水の危険性が高く、脱水は電解質バランスを狂わせ精神機能や筋活動の低下、生命危機を招くリスクがあります。
看護問題
感染リスク状態、栄養不良、食欲低下が主要な看護問題です。
排泄パターン
排尿状況
入院時の検査データではBUN、Cr、Na、Cl、K、Caは正常値であることから電解質異常はなく腎機能も正常です。
しかし、発熱により体温が上昇しており、発汗や不感蒸泄の増加が見られます。


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濃縮尿が見られており、これは食事摂取量の低下、水分摂取不足、大量発汗により全身の濾過量が減少することが原因です。
腎血流量が低下し糸球体濾過量が減少していることが考えられます。
それに伴い尿量も普段より少なくなっていると考えられます。
現在は1日に輸液が1000ml行われているため、水分補給は問題ありません。
16時に点滴の滴下状態を確認するために看護師が訪室すると尿失禁していました。
やや濃縮した尿で、おしっこが出たのがわからなかったとA氏は言いました。
尿器を介助するのでナースコールを使うように説明しますが、倦怠感があり許可を得て紙おむつを使用しました。
排便状況
入院前は排便は1回/2日で、腹部膨満感は見られていません。
しかし、水分摂取量が少ないと便が硬くなり、量が少なくなって腸内を移動しにくくなります。
現在輸液によって必要な水分を補うことができていますが、発熱からの不感蒸泄により腸管を通して水分が排泄されていません。
そのため便秘が生じていると考えられます。
運動量が入院前に比べて格段に減っているので腸内の血液循環が停滞しており腸蠕動運動が弱くなっています。
必要時は下剤を使用するなどの援助が必要です。
おむつ交換時に仙骨部の皮膚に浸軟が見られています。
看護問題
尿失禁、便秘リスク、水分摂取量の不足が主要な問題です。
活動-運動パターン
移動能力
ベッドからの起き上がり動作は何とか自力でできます。
移動動作は左上肢で柵などにつかまっての立位や杖歩行はできますが、時折バランスが悪くふらつきがあります。
トイレは手すりを使ってゆっくりと歩行できますが、排泄時は便座への移動動作の見守りが必要です。
ズボンや下着の上げ下げの介助、排便時はトイレットペーパーを使用分切ることはできないので介助を行っています。
呼吸循環機能
肺炎は炎症により換気血流比の不均衡が生じ、肺胞と血液間のガス交換が障害されます。
治療により酸素化能は改善していますが、労作時の呼吸苦を認めています。
労作に伴って呼吸仕事量がさらに増大しており、症状の変化を捉え対処する必要があります。
肺炎により気道内分泌物が増加しているため咳嗽により喀痰を促して無気肺を予防し酸素化を維持することが必要です。
ギャッチアップし含嗽を介助するとうなだれた姿勢になってしまうなど体動に対する明らかな呼吸困難はありません。
しかし、頭部を起こすとすぐに疲労感を訴えるなどしていることから十分な酸素供給が行えていません。
深呼吸してもらうと覚醒状態も改善すると考えられます。
ADLの低下
十分な酸素が供給されないために、左上肢で柵などにつかまっての立位や杖歩行はできますが時折バランスが悪くふらつきがあります。
ADLが低下しています。
発熱は代謝を亢進させエネルギーの消費を増大させるので、体力の消耗と倦怠感につながっています。
現在発熱と倦怠感があり点滴治療中のため、日常生活動作の自立度が低下によりセルフケアが妨げられています。
仙骨部の皮膚に浸軟が見られることからも、今後は廃用症候群予防に努め早期にリハビリが開始できるように援助していく必要があります。
看護問題
活動耐性低下、ガス交換障害が主要な看護問題です。
睡眠-休息パターン
入院前は毎日晩酌し22時には就寝し翌朝5時までの睡眠をとっていました。
しかし、アルコールは睡眠の質も量も低下させるため、もともと睡眠には問題があったと推測されます。
入院後は夜間、胸の痛みと倦怠感で断続的な睡眠しか取れていません。
入院による環境変化への不適合も入眠障害につながっている可能性があります。
睡眠障害は疲労の回復遅延につながるため、安眠への支援が必要です。
妻に足をさすってもらううちに入眠したという情報から、妻が足をさするという関りが効果的であると考えられます。
妻に説明しケアに取り入れることが有効です。
看護問題
睡眠障害が主要な問題です。
認知-知覚パターン
入院時は体温38.2度で意識レベルはJCSⅠ-1であり、問いかけへの返答はやや遅い状態でした。
発熱時に見られる随伴症状として頭重感、頭痛、めまい、倦怠感、意識障害などの中枢神経系症状があります。
発熱時に伴う体力消耗や中枢神経症状としてのめまいや倦怠感が強く、軽度の意識障害が生じたものと考えられます。
現在も肺炎の症状である咳嗽や喀痰が胸郭や呼吸筋などの正常な動きを妨げています。
換気量が低下し呼吸仕事量が増加しているため、会話時に呼吸困難が生じている可能性があります。
咳嗽は生理的防御反応ですが自然な呼吸リズムを妨げ換気量に影響を与えます。
咳嗽時には呼吸筋を過剰に動かすので体力を消耗し安楽を阻害します。
加えて胸痛と倦怠感によって睡眠も障害されています。
おしっこが出たのがわからなかったと発言しており、感覚障害や構音障害はあるものの言語能力に影響を及ぼす症状はありません。
自覚症状を述べることができています。
味がわからない、おいしくない、早くベッド下げてと話されています。
うちは二人暮らしで家内も無理はできないからと話されていることから、自分がおかれている状況を認知し理解したうえで問題を解決しようとする行動をとることができています。
自己や他者の状況を認知し理解し問題解決や意思決定を行うことが可能な状況です。
看護問題
安楽障害が主要な問題です。
まとめ
肺炎患者さまのゴードンアセスメントでは、呼吸状態を中心とした全身状態の評価が重要です。
特に高齢者の誤嚥性肺炎では、既往症や生活習慣、サポート体制なども含めた包括的な評価が必要です。
感染徴候、栄養状態、活動耐性、睡眠状態など多角的に評価します。
患者さまの残存機能を活かしながら、安全で効果的なケアを提供することが大切です。
家族のサポート能力や社会資源の活用についても早期から検討する必要があります。
本記事で紹介した実例を参考に、個別性のあるアセスメントを実践してください。
継続的な評価と計画の見直しにより、質の高い肺炎看護を提供していきましょう。








