看護過程において、関連図は患者さまの複雑な病態を整理し、看護問題を導き出すための重要なツールです。
特に胃がん患者さまの場合、疾患そのものの影響だけでなく、手術侵襲や生活背景など多岐にわたる要因が絡み合います。
関連図を作成することで患者さまの全体像を把握し、個別性のある看護計画を立案できます。
本記事では、実際の症例を用いて胃がん患者さまの関連図の書き方を詳しく解説します。
看護学生の方から臨床経験の浅い看護師まで、すぐに実践できる内容となっています。
関連図作成の基本的な考え方
関連図は患者さまの情報を視覚的に整理するためのマップです。
中心に患者さまの基本情報を配置し、そこから病態生理、症状、看護問題へと展開していきます。
矢印で因果関係を示すことで、どの要因が何に影響しているかを明確にします。
関連図の目的は、複雑な情報を整理して看護問題を抽出することです。
丸暗記ではなく、病態生理を理解しながら論理的に作成することが重要です。
症例紹介:A氏の基本情報
まず、症例の基本情報から整理していきましょう。
A氏は55歳の男性で、胃がんステージⅢと診断されています。
TNM分類ではT3N2M0であり、胃全摘術が予定されています。
身長175cm、体重70kgでBMIは22.6ですが、半年前は体重78kgでBMI25.1でした。
つまり半年で8kgの体重減少があり、これは胃がんによる影響と考えられます。
家族構成は妻51歳、大学生の息子、受験生の高校生の娘との4人暮らしです。
職業は会社員で部長職を務めており、一家の大黒柱として家族を支えています。
胃がん発症の背景要因
関連図の左側には、胃がん発症に至った背景要因を配置します。
A氏の生活習慣には、いくつかの危険因子が認められます。
喫煙習慣は1日40本を30年間続けており、ブリンクマン指数は1200と非常に高値です。
飲酒習慣も毎日ビール500mlと、アルコール摂取量が多い状態です。
不規則な食生活も大きなリスク因子でした。
外食中心で大食い、早食いの傾向があり、胃への負担が大きかったと考えられます。
これらの生活習慣が胃粘膜への慢性的な刺激や損傷をもたらしました。
また、仕事中心の生活でストレスが増大していたことも要因の一つです。
半年前から心窩部痛を自覚していましたが、仕事が忙しく受診できませんでした。
年齢によるものかと軽視していたことが、診断の遅れにつながりました。
胃がんの病態生理
関連図の中心部分には、胃がんそのものの病態を配置します。
A氏の場合、胃幽門側に5cmの腫瘤が認められています。
腫瘍の増大により、胃の機能障害が生じています。
胃貯留機能の低下により、食物を十分に貯留できなくなりました。
慢性的な出血により貧血が進行し、ヘモグロビン値が低下しています。
貧血により酸素運搬能力が低下し、組織への酸素供給が不足します。
その結果、倦怠感や疲労感といった症状が出現しています。
また、低蛋白血症も認められ、総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.9g/dLと低値です。
栄養状態の悪化により、体重減少や筋力低下が生じています。
手術侵襲による影響
A氏には胃全摘術とR-Y吻合法が予定されており、手術時間は約4時間です。
手術侵襲による影響を関連図に組み込む必要があります。
全身麻酔と気管内挿管により、呼吸機能への影響が予測されます。
気管内分泌物が増加し、咳嗽力の低下や痰の喀出困難が生じる可能性があります。
A氏はもともと呼吸機能の低下があり、1秒率72パーセント、肺活量82パーセントです。
閉塞性換気障害の傾向があり、喫煙による気道の炎症や狭窄が考えられます。
線毛運動の障害もあり、術後の無気肺や誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
組織の損傷や炎症により、術後疼痛が出現します。
疼痛により体動が困難になり、ADLが低下します。
同一体位が続くことで循環障害が生じ、肺塞栓症や褥瘡のリスクが高まります。
ドレーン挿入部位は感染のリスクがあり、創治癒遅延の可能性もあります。
術中出血により、さらに貧血が進行する恐れがあります。
胃全摘術後の消化器症状
胃全摘術により、胃の容量が減少します。
これにより、食事摂取量が減少し、栄養摂取が困難になります。
胃貯留機能がなくなることで、ダンピング症候群のリスクが高まります。
早期ダンピング症候群は、高張な食物が急速に小腸へ流入することで起こります。
循環血漿量が減少し、動悸、冷汗、めまいなどの症状が出現します。
後期ダンピング症候群は、インスリンの過剰分泌により低血糖が生じます。
食後2時間から3時間後に脱力感や冷汗などの症状が現れます。
消化管運動機能の障害により、下痢や便秘などの排便異常も起こり得ます。
看護問題の抽出
関連図から導き出される看護問題を明確にします。
栄養摂取バランス異常:必要量以下は最も重要な看護問題です。
体重減少、低蛋白血症、術後の摂取量減少などが根拠となります。
非効果的気道浄化も重要な問題です。
喫煙歴、呼吸機能低下、気管内挿管による分泌物増加が根拠です。
血栓症リスク状態は、術後の活動低下や循環障害から導かれます。
急性疼痛は手術侵襲による組織損傷から生じます。
消化管運動機能障害リスク状態は、胃全摘術後の生理的変化により起こります。
非効果的健康自主管理は、知識不足が原因です。
A氏は疾患や治療について十分な理解ができていない状況です。
不安も重要な心理的問題です。
手術への不安、家族への心配、仕事への復帰不安などが認められます。
非効果的コーピングは、入院により従来のストレス対処法が使えないことが原因です。
非効果的役割遂行は、入院により家庭と職場での役割が果たせないことから生じます。
心理社会的側面の関連
A氏の発言からは、さまざまな心理的葛藤が読み取れます。
仕事を休むことで周囲に迷惑をかけてしまうという責任感があります。
手術がうまくいくのか心配という不安も抱えています。
家族のためにも頑張りたいし、仕事にも早く復帰したいという強い思いがあります。
わからないことが多く不安だらけという発言は、情報不足による不安を示しています。
一家の大黒柱としての責任感と、病気による役割遂行の困難さの間で葛藤しています。
趣味の週末の散策や美術館巡りも、入院により制限されています。
これらの心理社会的側面も関連図に組み込むことで、より包括的なケアが可能になります。
関連図作成のポイント
関連図を作成する際は、いくつかの重要なポイントがあります。
病態生理を正確に理解し、論理的に展開することが基本です。
矢印の向きは因果関係を明確に示すようにします。
情報の重複を避け、簡潔に整理することも大切です。
色分けやボックスの形を変えることで、視覚的に分かりやすくなります。
例えば、疾患を赤、症状を青、看護問題を緑で色分けするなどの工夫ができます。
患者さまの主観的データである発言も、適切な位置に配置します。
検査データや客観的情報も、関連する部分に記載します。
関連図から看護計画へ
完成した関連図は、看護計画立案の基盤となります。
抽出された看護問題に対して、具体的な目標と介入を設定します。
栄養摂取バランス異常に対しては、段階的な食事指導や栄養補助が必要です。
非効果的気道浄化には、体位ドレナージや排痰指導を計画します。
不安に対しては、十分な説明と傾聴、心理的支援が重要です。
関連図を定期的に見直し、患者さまの状態変化に応じて更新していきます。
まとめ
胃がん患者さまの関連図作成は、複雑な病態を整理する有効な方法です。
疾患の背景、病態生理、手術侵襲、心理社会的側面を包括的に捉えることが重要です。
論理的に因果関係を示すことで、適切な看護問題を抽出できます。
関連図は看護過程の基盤となり、個別性のあるケアを提供するために不可欠です。
本記事で紹介した方法を参考に、患者さまに合わせた関連図を作成してください。
実践を重ねることで、関連図作成のスキルは確実に向上していきます。
患者さまの全体像を把握し、質の高い看護を提供するために、関連図を活用していきましょう。








