呼吸パターン不良は、患者さんの生命維持に直接関わる重要な看護問題です。
呼吸のリズムや深さ、頻度が正常な状態から逸脱することで、体内の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、さまざまな健康上のリスクが生じます。
看護師として、呼吸パターンの異常を早期に発見し、適切な看護介入を行うことが患者さんの予後を大きく左右します。
呼吸パターン不良とは何か
呼吸パターン不良とは、正常な呼吸のリズム、深さ、頻度が乱れている状態を指します。
健康な成人の呼吸数は1分間に12~20回程度ですが、呼吸パターン不良の患者さんでは、この範囲を大きく外れることがよくあります。
呼吸が浅くなったり、逆に深くなりすぎたり、不規則になったりすることで、身体に十分な酸素を供給できなくなります。
呼吸パターンの異常には、頻呼吸、徐呼吸、過呼吸、無呼吸などさまざまなタイプがあり、それぞれ原因や対処方法が異なります。
頻呼吸は1分間に24回以上の呼吸数を示す状態で、発熱や痛み、不安などで起こります。
徐呼吸は1分間に10回以下の呼吸数となる状態で、中枢神経系の障害や薬剤の影響で見られます。
過呼吸は呼吸が深く速くなり、二酸化炭素が過剰に排出される状態です。
無呼吸は一時的に呼吸が停止する状態で、睡眠時無呼吸症候群などで認められます。
呼吸パターン不良の主な原因
呼吸パターン不良を引き起こす原因は多岐にわたります。
呼吸器系の疾患が最も代表的な原因です。
慢性閉塞性肺疾患、肺炎、気管支喘息、肺線維症などの疾患では、肺の機能が低下し、正常な呼吸パターンを維持できなくなります。
肺胞での酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかず、身体が酸素不足を補おうとして呼吸パターンが変化します。
心臓の機能低下も呼吸パターンに大きな影響を与えます。
心不全の患者さんでは、肺に水分が貯留することで呼吸困難が生じ、呼吸パターンが乱れます。
チェーンストークス呼吸と呼ばれる特徴的な呼吸パターンが現れることもあります。
神経系の障害も呼吸パターン不良の原因となります。
脳卒中や頭部外傷、脳腫瘍などで呼吸中枢がダメージを受けると、呼吸のコントロールができなくなります。
脊髄損傷では呼吸筋の麻痺により、正常な呼吸運動が困難になります。
代謝性の異常も呼吸パターンに影響します。
糖尿病性ケトアシドーシスでは、体内の酸性度が高まり、それを補正しようとしてクスマウル呼吸という深く速い呼吸パターンが出現します。
腎不全による尿毒症でも、同様の呼吸パターンの変化が起こります。
心理的要因も見逃せません。
不安やパニック発作により過呼吸が引き起こされることがあります。
精神的ストレスが身体症状として呼吸パターンの異常に現れるケースも少なくありません。
薬剤の影響も考慮する必要があります。
麻薬性鎮痛薬や鎮静薬は呼吸中枢を抑制し、呼吸数の減少や呼吸が浅くなる原因となります。
適切な投与量の管理が求められます。
呼吸パターン不良のアセスメント
呼吸パターン不良のアセスメントでは、視診、聴診、触診を総合的に行います。
視診では呼吸数、呼吸のリズム、胸郭の動きを観察します。
正常な呼吸では胸郭が対称的に動きますが、片側だけ動きが悪い場合は気胸や無気肺などの可能性を考えます。
呼吸の深さや努力の程度も重要な観察ポイントです。
補助呼吸筋を使っているか、鼻翼呼吸があるか、陥没呼吸があるかなどをチェックします。
チアノーゼの有無も確認します。
口唇や爪床が青紫色になっている場合、酸素化が不十分であることを示します。
中心性チアノーゼと末梢性チアノーゼを区別することも大切です。
聴診では呼吸音の性質を確認します。
正常な呼吸音、異常呼吸音、副雑音の有無を聴き取ります。
喘鳴、水泡音、捻髪音、摩擦音など、それぞれの音が何を意味するのかを理解しておく必要があります。
パルスオキシメーターによる酸素飽和度の測定は客観的な評価に役立ちます。
SpO2が95%以上あれば正常範囲ですが、90%を下回る場合は酸素化が不十分と判断します。
ただし、慢性閉塞性肺疾患の患者さんでは平常時からSpO2が低めのこともあります。
動脈血液ガス分析は呼吸状態を詳しく評価するために重要です。
pH、PaCO2、PaO2、HCO3-などの値から、呼吸性アシドーシスや代謝性アルカローシスなどの状態を判断します。
患者さんの自覚症状も丁寧に聞き取ります。
息苦しさの程度、いつから症状が始まったか、どんな時に悪化するかなどの情報が診断や看護計画の立案に役立ちます。
看護目標の設定
呼吸パターン不良の患者さんに対する看護目標を明確に設定することが、効果的な看護介入につながります。
長期目標
患者さんが1週間以内に正常な呼吸パターンを取り戻し、SpO2が95%以上を維持できる
短期目標
患者さんが24時間以内に呼吸困難感の軽減を訴え、呼吸数が正常範囲内に近づく
患者さんが48時間以内に効果的な呼吸法を実践でき、補助呼吸筋の使用が減少する
患者さんが72時間以内に十分な休息をとることができ、疲労感が軽減する
看護介入の具体的な方法
呼吸パターン不良の患者さんに対する看護介入は、観察項目、実施するケア、指導内容の3つの側面から行います。
観察項目
呼吸数、呼吸のリズム、呼吸の深さを定期的に観察します。
1時間ごと、または2時間ごとなど、患者さんの状態に応じて観察の頻度を調整します。
呼吸数の変化だけでなく、呼吸パターン全体の質的な変化にも注意を払います。
チアノーゼの出現や増悪の有無を確認します。
口唇、爪床、舌などの色調を観察し、酸素化の状態を評価します。
末梢循環の状態も合わせて確認します。
SpO2の値を継続的にモニタリングします。
パルスオキシメーターを装着し、数値の変動を記録します。
SpO2が低下した場合は、その原因を速やかに特定し対処します。
胸郭の動きや呼吸様式を観察します。
左右対称性、陥没呼吸の有無、補助呼吸筋の使用状況などをチェックします。
腹式呼吸と胸式呼吸のバランスも評価します。
呼吸音の変化を聴診で確認します。
喘鳴や水泡音などの異常呼吸音の出現や消失を記録します。
聴診の位置は肺野全体をカバーするように複数のポイントで行います。
意識レベルや精神状態の変化を観察します。
呼吸パターン不良により酸素化が低下すると、意識障害や不穏状態が現れることがあります。
見当識や応答の適切性なども評価します。
咳嗽の有無や痰の性状を確認します。
痰の色、量、粘稠度などを観察し、感染症の兆候がないかチェックします。
痰の喀出が困難な場合は、その原因を考えます。
バイタルサインの変動を確認します。
血圧、脈拍、体温などを定期的に測定し、全身状態を把握します。
頻脈や血圧の変動は呼吸困難の指標となります。
実施するケア
適切な体位を保持します。
ファーラー位やセミファーラー位など、呼吸しやすい姿勢を取ってもらいます。
横隔膜が下がりやすく、肺の拡張が妨げられない体位を選択します。
枕やクッションを使って安楽な姿勢を維持できるよう工夫します。
酸素投与を適切に行います。
医師の指示に基づき、必要な酸素流量と投与方法を選択します。
鼻カニューラ、酸素マスク、ベンチュリーマスクなど、患者さんの状態に合わせた器具を使用します。
酸素流量は定期的に確認し、過剰投与や不足がないようにします。
気道の清浄化を支援します。
咳嗽を促したり、体位ドレナージを行ったりして、痰の喀出を助けます。
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吸引が必要な場合は、適切な手技で行い、粘膜損傷を防ぎます。
ネブライザーを使用して気道を加湿し、痰の粘稠度を下げることも有効です。
環境を整備します。
室温は適切に保ち、暑すぎたり寒すぎたりしないようにします。
換気を行い、新鮮な空気を取り入れます。
刺激物や煙、強い臭いなどを避け、呼吸しやすい環境を作ります。
水分摂取を促進します。
脱水は痰を粘稠にし、喀出を困難にします。
経口摂取が可能な場合は、十分な水分を摂るよう勧めます。
1日の摂取量を記録し、脱水や過剰摂取を防ぎます。
リラクゼーション技法を取り入れます。
呼吸困難は不安を引き起こし、不安がさらに呼吸を悪化させる悪循環があります。
深呼吸やゆっくりとした呼吸を一緒に行い、落ち着きを取り戻せるよう支援します。
音楽療法やアロマセラピーなども状況に応じて活用します。
適度な活動と休息のバランスを保つよう支援します。
過度の安静は筋力低下を招きますが、無理な活動は呼吸困難を悪化させます。
患者さんの体力や呼吸状態に応じて、適切な活動レベルを提案します。
疲労のサインが見られたら、すぐに休息を取れるよう配慮します。
薬剤投与を確実に実施します。
気管支拡張薬、ステロイド薬、抗生物質など、処方された薬剤を正確に投与します。
投与後の効果や副作用を観察し、記録します。
吸入薬の場合は、正しい手技で使用できているか確認します。
患者さんへの説明と指導
呼吸法を指導します。
口すぼめ呼吸や腹式呼吸など、効果的な呼吸方法を具体的に教えます。
実際にやってみせて、患者さんにも練習してもらいます。
日常生活の中で意識的に行えるよう繰り返し練習します。
症状の悪化時の対処法を説明します。
息苦しさが強くなった時にどのような体位を取ればよいか、どう呼吸すればよいかを伝えます。
すぐにナースコールを押すべき症状についても明確に説明します。
パニックにならず、落ち着いて対処できるよう心理的な支援も行います。
喫煙の害について説明します。
喫煙が呼吸器系に与える影響を具体的に伝えます。
禁煙の重要性を理解してもらい、必要に応じて禁煙外来などの情報を提供します。
家族にも協力してもらい、禁煙しやすい環境を整えます。
感染予防の方法を指導します。
手洗いやうがいの励行、マスクの着用など、基本的な感染予防策を伝えます。
人混みを避けることや、インフルエンザワクチンの接種なども勧めます。
呼吸器感染症は呼吸状態を大きく悪化させるため、予防が重要です。
栄養の重要性を説明します。
呼吸筋の維持にはタンパク質が必要であることを伝えます。
バランスの取れた食事を心がけるよう指導します。
食事摂取が困難な場合は、栄養補助食品の活用も検討します。
服薬の重要性を説明します。
処方された薬を正確に服用することの大切さを伝えます。
自己判断で中止したり、量を変えたりしないよう注意します。
副作用が現れた場合は、すぐに医療者に相談するよう促します。
ストレス管理の方法を提案します。
ストレスが呼吸パターンに与える影響について説明します。
リラクゼーション技法やストレス対処法を一緒に考えます。
趣味や楽しみを持つことの大切さも伝えます。
呼吸パターン不良と日常生活
呼吸パターン不良は患者さんの日常生活に大きな影響を与えます。
入浴や着替えなどの日常動作が困難になることがあります。
息切れが強いと、これらの活動を行うだけで疲れてしまいます。
動作を小分けにしたり、休憩を挟んだりする工夫が必要です。
シャワーチェアを使用したり、着替えやすい衣服を選んだりすることも役立ちます。
食事の摂取にも影響が出ます。
呼吸困難があると、食事中に息が苦しくなり、十分な量を食べられないことがあります。
少量ずつ頻回に食べる、柔らかく消化の良いものを選ぶなどの工夫が有効です。
食事の姿勢も工夫し、誤嚥を防ぎます。
睡眠の質も低下しやすくなります。
横になると呼吸困難が悪化する起座呼吸の状態になることがあります。
枕を高くしたり、リクライニングベッドを使用したりして、楽な姿勢で眠れるようにします。
夜間の酸素投与が必要な場合もあります。
外出や社会活動が制限されることもあります。
息切れや疲労感により、外出するのが億劫になる患者さんもいます。
しかし、適度な活動は心身の健康維持に重要です。
無理のない範囲で社会とのつながりを保てるよう支援します。
家族への支援
呼吸パターン不良の患者さんを支える家族への支援も看護の重要な役割です。
家族の不安や心配を傾聴します。
呼吸状態の変化は家族にとっても大きなストレスです。
気持ちを受け止め、疑問や不安に丁寧に答えます。
緊急時の対応方法を指導します。
呼吸困難が急に悪化した時の対処法を具体的に説明します。
救急車を呼ぶべき状況についても明確に伝えます。
家族が落ち着いて対応できるよう、練習やシミュレーションも行います。
在宅での観察ポイントを伝えます。
日常的にどのような点に注意して観察すればよいか説明します。
記録の取り方なども指導し、医療者との情報共有をスムーズにします。
介護負担の軽減策を一緒に考えます。
家族だけで抱え込まず、利用できる社会資源を紹介します。
訪問看護やデイサービスなどの活用も検討します。
家族自身の健康やメンタルヘルスにも配慮します。
まとめ
呼吸パターン不良は生命に直結する重要な看護問題であり、早期発見と適切な介入が患者さんの予後を左右します。
呼吸数、呼吸のリズム、深さなどを丁寧に観察し、異常を見逃さないことが大切です。
酸素投与、体位の工夫、気道の清浄化、環境整備など、多角的な看護介入を行います。
患者さんへの効果的な呼吸法の指導や、症状悪化時の対処法の説明も重要な役割です。
家族への支援も含めた総合的なケアにより、患者さんが安心して療養生活を送れるよう支えていきます。
呼吸パターン不良の患者さん一人ひとりの状態をしっかりとアセスメントし、個別性のある看護計画を立案し実施することで、質の高いケアを提供していきましょう。








