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看護計画

道具使用セルフケア不足の看護計画とは?患者さんを支える関わり方を詳しく解説

この記事は約10分で読めます。

看護学生のみなさん、「道具使用セルフケア不足」という看護診断を聞いたとき、最初はちょっと難しそうに感じませんでしたか?

私も最初は「道具って何?」「セルフケアってどこまで?」って正直よく分からなかったです。

でも実習を重ねていくうちに、この診断は食事や入浴だけじゃなくて、患者さんが自分で調理器具・食器・ハサミ・歯ブラシ・爪切りなどを使って日常生活をこなす力が落ちている状態を指すんだって分かってきました。

今回は道具使用セルフケア不足の看護計画について、看護目標から観察項目・援助内容・患者さんへの指導まで、できるだけ分かりやすく書いていきます。

実習の記録や国試対策にも役立ててもらえたら嬉しいです。


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道具使用セルフケア不足とはどういう状態か

NANDAの看護診断では、道具使用セルフケア不足(Self-Care Deficit: Instrumental Activities of Daily Living)は、道具や器具を使う日常生活動作(いわゆるIADL)を自力でこなすことが難しくなっている状態として位置づけられています。

具体的にどんな場面かというと、たとえば——

食事の際に箸やスプーンをうまく操作できない、食器を持つ力が弱くなってしまった、調理器具を安全に扱えなくなった、といったケースが代表的です。

また、整容でいえば歯ブラシを正しく持って磨けない、爪切りがうまく使えない、ドライヤーやシェーバーの操作が難しい、なんていう場面も当てはまります。

さらに上肢の麻痺や関節リウマチ、神経筋疾患、認知症などがある患者さんでは、道具の使い方そのものを忘れてしまう(失行症)という状態も出てきます。

こうした状態を放置すると、栄養摂取が滞ったり、口腔内の衛生状態が悪化したり、創傷リスクが高まったりと、二次的な合併症につながる可能性があります。

だからこそ早めにアセスメントして、適切な看護計画を組み立てることがとても大切です。


道具使用セルフケア不足が起こる主な原因と関連因子

この状態がどんな原因で起きるのかを整理しておくと、アセスメントが格段にやりやすくなります。

神経・筋肉系の問題としては、脳血管疾患(脳梗塞・脳出血)による片麻痺や上肢の運動障害、パーキンソン病による振戦(手のふるえ)・固縮・動作の緩慢化、筋萎縮性側索硬化症などの神経筋疾患があります。

骨・関節・整形外科的な問題としては、関節リウマチによる関節変形と疼痛、上肢の骨折後固定・術後の可動域制限、変形性関節症による握力低下などが挙げられます。

認知機能の問題としては、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症での失行症・失認、高次脳機能障害による道具の操作方法が分からなくなる状態(観念運動失行・観念失行)があります。

視覚・感覚の問題としては、糖尿病性網膜症や緑内障による視力低下・視野狭窄、末梢神経障害による手指の感覚鈍麻なども関連します。

精神的・心理的な問題としては、うつ病による意欲の低下・活動性の減退、不安障害による行動抑制なども道具使用セルフケア不足の背景になり得ます。

原因をしっかり押さえておくと、看護目標や具体的なケアが自然と絞り込めてきます。


アセスメントのポイント:何をどう評価するか

道具使用セルフケア不足の看護計画を立てるうえで、まずアセスメントが土台になります。

機能評価スケールとして代表的なのは、バーセルインデックスとFIM(機能的自立度評価表)です。

バーセルインデックスは食事・移動・整容・排泄など10項目で自立度を点数化するもの、FIMはADL全般を18項目で評価するものです。

どちらも病院の実習記録でよく使いますよね。

評価する際は、ただスコアをつけるだけでなく、患者さんが実際に道具を使う場面を観察して、どの動作のどのステップでつまずいているのかを具体的に把握することが大切です。

たとえばスプーンを持つのは問題なくできても、口まで運ぶ途中でこぼれてしまうのか、それとも最初の把持(握ること)自体が難しいのかによって、対応の方法がまったく変わってきます。

また、患者さん自身や家族からの情報収集も欠かせません。

「いつごろから難しくなりましたか?」「自宅ではどうやって工夫していましたか?」といった問いかけで、その人の生活背景や本人の工夫を知ることができます。


看護目標:長期目標と短期目標

以下は道具使用セルフケア不足に対する看護目標の一例です。

患者さんの状態や疾患の経過、回復見込みなどに合わせて個別に調整してください。

長期目標

退院までに、自助具・補助具を活用しながら、食事・整容・更衣などの日常生活動作を安全かつ自立して行うことができる。

短期目標

短期目標は入院後2週間を目安に設定しています。

短期目標① 担当看護師のそばで、食事場面において自助具(太柄スプーン・すべり止めマットなど)を使った食事動作を3回以上安全に行うことができる。

短期目標② 整容場面において、口腔ケアに必要な歯ブラシ・コップの扱い方を看護師の声掛けのもとで実施できる。

短期目標③ 患者さん自身が、道具を使う際に困ったときに「助けてほしい」「難しい」と言語・表情・ジェスチャーで看護師に伝えることができる。


具体的な看護ケア:観察項目・援助内容・指導内容

ここからは観察項目(観察計画)・援助内容(援助計画)・指導内容(教育計画)の3つに分けて詳しく書いていきます。

観察計画

まず患者さんの状態を正確に把握するための観察項目です。

上肢の運動機能については、筋力(MMT:徒手筋力テストのスコア)、握力測定値、関節可動域(ROM)を定期的に評価します。

道具操作の実際については、食事・整容・更衣の各場面で道具を使う際の巧緻性(細かな動きの精度)、道具の把持パターン(どう握っているか)、動作中の代償動作(本来の動き方ではなく体の別の部分で補おうとしている動き)を観察します。

認知・高次脳機能については、道具の使い方への理解(言葉の説明で分かるか・実物を見て分かるか)、失行症の有無と種類(観念失行・観念運動失行・肢節運動失行)、注意力・集中力の持続時間を評価します。

感覚機能については、手指の触覚・位置覚・温痛覚の状態、視力・視野の問題の有無を確認します。

心理・意欲面については、セルフケアへの意欲の程度、援助に対する受け入れの様子、「できない」という焦りや羞恥心の有無も観察します。

安全面については、道具を扱う際の転倒リスク・受傷リスク(刃物・熱いもの・割れ物など)も評価項目に入れましょう。

援助計画

観察の結果をふまえて、実際に行う援助の内容です。

まず環境整備として、食事や整容を行う場所に適した高さの台・椅子・照明を整えます。

使う道具は手の届きやすい位置に置き、不必要なものは片づけてシンプルな環境にします。

次に自助具・補助具の選定と導入です。

握力が弱い患者さんには太柄・軽量のカトラリー(スプーン・フォーク・箸)、皿が動かないようにするすべり止めマット、食器が倒れないようにする吸盤付きボウルなどを用意します。

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整容では電動歯ブラシ・電動シェーバー・ユニバーサルカフ(手首に巻いて道具を固定するもの)などが役立つことがあります。

これらは作業療法士(OT)と連携して選定するのが最善です。

援助の程度については、患者さんができることは自分でやってもらい、どうしてもできない部分だけサポートする、という「できる力を最大限に活かす援助」が基本です。

最初から全介助にならないよう、「ここまでは自分でやってみましょう」という言葉がけとともに、一部介助・声掛け介助のレベルを意識しましょう。

段階的なリハビリ的アプローチとして、はじめは看護師が道具の使い方をゆっくり実演して見せ(デモンストレーション)、次に患者さんにやってもらいながら手を添えて補助し(ハンドオーバーハンド)、最終的に自力でできるよう段階を踏みます。

安全確保については、刃物(爪切り・カミソリ)や熱い飲み物・食べ物を扱う際は必ず傍らで見守り、受傷・熱傷リスクを最小限にします。

麻痺側の感覚鈍麻がある場合は、患者さん自身も気づかずに怪我をするリスクがあるため、日頃から皮膚状態の確認も合わせて行います。

教育計画

患者さんご本人と、必要に応じてご家族にも行う指導内容です。

まず自助具の正しい使い方の説明です。

道具の名前・使う目的・実際の使い方を、実物を見せながら説明します。

認知機能に低下がある場合は、毎回一定の手順で見せることで手続き記憶(体で覚える記憶)に働きかけることができます。

次に安全な道具の使い方・危険回避の方法を伝えます。

たとえば「刃物を使う時は利き手でしっかり握り、体の正中線に近い場所で使う」「熱い食べ物は一口ずつ確認してから口に入れる」といった具体的なポイントを伝えましょう。

また、「困ったときは遠慮なく声をかけてください」という伝え方もとても大切です。

セルフケアが難しい患者さんは、「迷惑をかけたくない」「情けない」という気持ちを抱えていることが多いです。

援助を求めることは恥ずかしいことではなく、安全に生活するための賢い選択であることを伝えましょう。

家族への指導については、退院後の生活を見据えて、自助具の購入方法・使い方・介護保険の福祉用具貸与制度についても情報提供できると理想的です。


多職種との連携が回復を後押しする

道具使用セルフケア不足の患者さんのケアは、看護師だけで完結するものではありません。

作業療法士(OT)は上肢機能の回復訓練・自助具の選定・日常生活動作訓練を専門的に担当します。

看護師は病棟での日々のケアのなかで観察した内容(どの動作で困っているか・何がうまくいったか)をOTに情報共有し、リハビリと病棟ケアの方向性を一致させることが大切です。

理学療法士(PT)は体幹バランスや立位・移乗など、道具を使う前提となる基本的な姿勢保持能力を高める訓練を担います。

座位が不安定な患者さんは道具を使う以前に体が安定しないので、PTとの連携も欠かせません。

言語聴覚士(ST)は嚥下機能の評価・食事形態の調整とともに、失語症や認知機能の評価・訓練も行います。

道具の使い方に関する理解や言語的なやりとりが難しい場合はSTとの情報共有が有効です。

医療ソーシャルワーカー(MSW)は退院後の生活環境の調整や、福祉用具の利用手続き・介護保険の申請など、社会資源につなぐ役割を担います。

こうした多職種チームで情報を共有し、患者さんの目標に向けてそれぞれの専門性を活かすことが、回復を後押しする力になります。


実習で困らないためのポイント:記録に書く際の注意点

看護学生として実習記録を書くとき、道具使用セルフケア不足の看護計画をまとめる際に気をつけてほしい点をいくつか書いておきます。

アセスメントは「なぜその診断になったか」を具体的な根拠と結びつけて書くことが大切です。

たとえば「右上肢の筋力がMMT3であり、スプーンを把持することはできるが途中でこぼれてしまうことが観察された。これは道具使用セルフケア不足に関連する上肢機能低下がある状態と考えられる」といった形で、観察事実→解釈→診断という流れで記述します。

目標は「測定可能な表現」で書くことも重要です。

「食事が上手にできる」ではなく「太柄スプーンを使い、こぼさずに3口以上自力で口に運ぶことができる」のように、何を・どの程度・どんな条件で達成するかを明記しましょう。

介入後の評価を記録に残すことも忘れずに。

実施したケアの内容、患者さんの反応・発言・表情・行動、目標の達成度、次の計画修正の方向性を毎回記録します。

この評価の積み重ねが、看護過程の醍醐味でもあります。


患者さんの気持ちに寄り添うことが最初の一歩

道具がうまく使えなくなるという体験は、患者さんにとってとても辛いものです。

昨日まで当たり前にできていたことが、ある日突然できなくなる——その喪失感・焦り・情けなさは、側にいる人間にしか分かり合えない部分もあります。

看護師として大切なのは、ケア技術だけでなく、患者さんがどんな気持ちでいるかに気づき、「あなたのペースで一緒にやっていきましょう」と伝えられる関係性を作ることだと私は思っています。

患者さんの「できた!」という瞬間は、看護師にとってもとても嬉しい瞬間です。

そのために観察・評価・計画・実施・評価というサイクルを丁寧に回し続けることが、道具使用セルフケア不足の看護計画の本質なのではないでしょうか。


まとめ:道具使用セルフケア不足の看護計画の要点

最後に今回の内容を振り返ります。

道具使用セルフケア不足は、神経・筋肉・関節・認知・感覚など多様な原因で生じる看護診断です。

アセスメントでは患者さんが実際に道具を使う場面を観察し、どのステップでつまずいているかを具体的に把握することが土台になります。

看護目標は長期目標1つと短期目標3つを設定し、測定可能な表現で記述します。

具体的なケアは観察計画・援助計画・教育計画の3つに整理し、患者さんの残存能力を最大限に活かす援助を意識します。

多職種チームとの情報共有や連携が回復を後押しし、退院後の生活を視野に入れた家族指導も大切な視点です。

この記事が実習中の看護学生さんの役に立てば嬉しいです。

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