病気や入院は、患者さん本人だけでなく、そのパートナーにとっても大きな試練です。
「もっとそばにいてあげたい」「何をしてあげればいいかわからない」——そんな思いを抱えながら、それでも懸命にパートナーを支えようとしている姿は、病棟でよく見られる光景です。
親密パートナー関係促進準備状態とは、北米看護診断協会が定める看護診断のひとつで、患者さんとそのパートナーの関係がすでに良好な状態にあり、さらにその関係をより深め、育てていける準備が整っている状態を指します。
問題に着目した診断ではなく、二人の関係の強みや前向きな側面に目を向けたウェルネス型の看護診断です。
この記事では、親密パートナー関係促進準備状態の看護計画について、看護目標から観察・ケア・指導の内容まで、看護学生にもわかりやすく解説していきます。
親密パートナー関係促進準備状態とはどんな状態か
ここでいう「親密なパートナー」とは、婚姻関係にある配偶者だけでなく、事実婚のパートナー、長年連れ添った交際相手など、患者さんにとって最も近しい存在である人を広く指します。
親密パートナー関係促進準備状態とは、そのパートナーとの関係が良好に機能しており、病気や入院という困難な状況をむしろ二人の絆をさらに深める機会にしていけると判断されるときに用いられる看護診断です。
たとえば、以下のような場面でこの診断を考えます。
入院中、パートナーが毎日面会に来て、患者さんの話をしっかり聴き、感情を共有している場面。
患者さんとパートナーが、退院後の生活について前向きに、具体的に話し合っている場面。
パートナーが医療スタッフの説明を一緒に聞き、患者さんへのケアに積極的に参加しようとしている場面。
患者さんがパートナーへの感謝の言葉を自然に口にしており、パートナーも患者さんへの愛情を言葉と行動で示している場面。
手術や治療による身体の変化に対して、パートナーが「一緒に乗り越えよう」と寄り添っている場面。
こうした二人の姿は、すでに大切な力を持っているサインです。
看護師はその力をさらに引き出し、二人が困難な状況をともに乗り越えていけるよう支えることが役割です。
なぜパートナー関係への看護が大切なのか
パートナーとの良好な関係は、患者さんの回復に深く関わっています。
医学的な研究においても、良好なパートナー関係が患者さんの精神的安定、治療への意欲、身体的回復の速さなどと関連することが示されています。
心疾患や脳卒中の患者さんでは、パートナーからのサポートが強いほど再発率が低くなる傾向があることも報告されています。
一方で、病気や入院はパートナー関係に大きな変化をもたらすことがあります。
役割の変化(今まで動いていた側が動けなくなるなど)、性的な関係の変化、経済的なストレス、将来への不安——こうした変化がパートナー間のコミュニケーションを難しくさせることがあります。
だからこそ、関係が良好な今のうちから、二人がこうした変化に備え、関係をさらに深めていけるよう支えることが大切です。
パートナーを支えることは、患者さんを支えることでもあるのです。
パートナー関係が良好な状態のサイン
この診断を検討するにあたって、パートナー関係が良好であることを示すサインとして以下のようなものがあります。
患者さんとパートナーが自然に手を握ったり、身体的に触れ合ったりしている。
互いの気持ちや考えを率直に話し合えている。
パートナーが患者さんの治療内容や体調変化を把握しており、医療スタッフへの質問も積極的に行っている。
患者さんがパートナーへの感謝や愛情を自然に表現している。
困難な状況でも、二人の間にユーモアや笑顔が見られる。
パートナーが自分の疲れや不安を患者さんに正直に話せている。
こうした姿を見たとき、看護師はその関係をさらに育てるかかわりをしていくことがこの診断のねらいです。
看護目標
長期目標
患者さんとパートナーが病気や治療による変化を二人で受け止め、互いへの理解と支え合いをさらに深めながら、退院後の生活をともに築いていけるようになる。
短期目標
患者さんとパートナーが病気や治療による身体的・精神的な変化について、互いの気持ちを言葉で伝え合える機会を持てるようになる。
パートナーが患者さんへの具体的なケアや支え方を理解し、自信を持って関われるようになる。
患者さんとパートナーが退院後の生活に向けた現実的な見通しを一緒に考え、二人で取り組める目標をひとつ以上見つけられるようになる。
具体的なケアの内容
観察計画(何を観察するか)
患者さんとパートナーのやりとりの様子を観察します。
会話の内容、表情、身体的な触れ合い、互いへの言葉かけのトーンなどを確認します。
パートナーが面会に来る頻度と、面会時間中の二人の様子を観察します。
患者さんがパートナーについてどのように話しているか、またパートナーが患者さんについてどのように話しているかを把握します。
病気や治療による役割の変化(家事・仕事・経済・育児など)に対して、二人がどのように対応しているかを観察します。
パートナーが疲労・不安・精神的な負担を抱えていないかを観察します。
性的な関係や身体的な親密さに関する変化について、患者さんやパートナーが悩みを口にしていないかを確認します。


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退院後の生活についての見通しを、二人がどのように話し合っているかを観察します。
コミュニケーションのすれ違いや、感情の行き違いが見られないかを観察します。
ケア計画(直接的なかかわり)
患者さんとパートナーが二人でゆっくり話せる時間と場所を意識的に整えます。
面会時間の調整や、プライバシーが守られる環境を作ることで、二人が本音を話しやすい状況を作ります。
パートナーが面会に来たとき、「いつも来てくださって、患者さんもとても安心されていますよ」と声をかけ、パートナーの存在の大切さを言葉で伝えます。
パートナーが患者さんへのケア(清拭の一部・リハビリの見学・食事の介助など)に参加できる機会を設けます。
「一緒にできることがある」という感覚が、パートナーの不安を和らげ、二人の絆をさらに深めることにつながります。
患者さんとパートナーが病気や治療についての説明を一緒に聞ける場を設けます。
同じ情報を共有することで、二人の間の認識のずれを防ぎ、一緒に考える土台を作ります。
パートナーが疲労や不安を抱えているとき、そのパートナー自身の気持ちにも目を向けてかかわります。
「患者さんを支えているあなたのことも、私たちは気にかけていますよ」という姿勢を伝えることが大切です。
手術や治療による身体の変化(外見の変化・機能の変化など)について、パートナーが戸惑いや不安を感じているときは、その気持ちを受け止める場を作ります。
必要に応じて、臨床心理士や精神科リエゾンナースへの相談・連携を検討します。
教育・指導計画(患者さん・パートナーへの説明や指導)
病気や治療によって二人の関係に変化が生じることは自然なことであり、その変化について話し合えることが大切であることを伝えます。
「変化を認めることが、二人の関係をより深くする第一歩です」という言葉が、患者さんとパートナーに前向きな視点をもたらすことがあります。
パートナーに対して、患者さんへの関わり方で心がけてほしいことを具体的に伝えます。
たとえば、患者さんの気持ちを先読みして代わりに決めてしまうのではなく、「どうしたい?」と本人の意思を確認することの大切さを伝えます。
手術や治療による身体の変化(ストーマ・乳房切除・脱毛・四肢の機能変化など)について、パートナーがどのように向き合えばいいかを、患者さんのペースに合わせて伝えます。
「変わったのは身体の一部であって、あなた自身ではない」という言葉を、患者さんとパートナーの両方に届けることが大切です。
退院後の生活における役割分担の変化について、二人で話し合える機会を作ることを勧めます。
家事・育児・仕事・介護など、役割が変わる部分を具体的に整理し、無理のない分担を一緒に考えることの大切さを伝えます。
性的な関係や身体的な親密さに関する変化については、患者さんやパートナーが話したいと思ったときに話せる場を整えることを伝えます。
必要であれば、専門的な相談窓口(カウンセリング・セクシャルヘルス相談など)についての情報を提供します。
病気の種類とパートナー関係への影響
病気の種類によって、パートナー関係に生じる変化の内容は異なります。
がん治療中の患者さんでは、治療による外見の変化(脱毛・体重変化・ストーマ造設など)や、性機能への影響がパートナー関係に影響することがあります。
脳卒中後の患者さんでは、後遺症による役割の逆転(世話をされる側になる)が、自尊感情やパートナーへの負い目感につながることがあります。
心疾患の患者さんでは、再発への不安から身体活動や性的な活動を過度に制限してしまい、パートナーとの関係が疎遠になることがあります。
精神疾患の患者さんでは、症状によるコミュニケーションの困難さが、パートナーとの関係に影響することがあります。
それぞれの病気に応じた具体的な情報と支援を提供しながら、患者さんとパートナーが二人で向き合えるよう支えることが大切です。
看護師として意識したいこと
親密パートナー関係促進準備状態のケアで最も大切なのは、患者さんとパートナーの関係を「二人だけのもの」として尊重しながら関わることです。
看護師が二人の関係に踏み込みすぎず、必要な情報と場を提供しながら、あとは二人が自分たちのペースで深めていけるよう見守る姿勢が大切です。
また、パートナーシップの形は多様です。
婚姻関係にある夫婦だけでなく、同性パートナー、事実婚、長距離恋愛など、さまざまな形の親密な関係があります。
どのような形のパートナーシップであっても、その関係を尊重し、同じ質のケアを提供することが、看護師として大切な姿勢です。
さらに、文化的背景や価値観によって、パートナーとの関係の表現の仕方は異なります。
感情を言葉にしない文化圏の患者さんであっても、行動や態度の中にパートナーへの愛情が見られることがあります。
表面的な言葉だけでなく、関係全体を丁寧に観察する目を持つことが大切です。
まとめ
親密パートナー関係促進準備状態の看護計画は、すでに良好なパートナー関係にある患者さんとそのパートナーに対して、その関係をさらに深め、病気や治療による変化を二人でともに乗り越えていけるよう支えるためのウェルネス型の看護診断です。
長期目標として患者さんとパートナーが互いへの理解と支え合いをさらに深めながら退院後の生活をともに築けることを目指し、短期目標を一歩ずつ積み上げていきます。
観察・ケア・指導の三つの視点からかかわることで、二人の絆をさらに育て、患者さんの回復とパートナーの安心を支えることができます。
臨床心理士・医療ソーシャルワーカーをはじめとした多職種と連携しながら、患者さんとパートナー双方を支えるケアを続けていくことが、看護師の大切な役割です。
看護学生のみなさんが実習や国家試験の学習でこの診断と向き合うとき、この記事が少しでも助けになれれば幸いです。








