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看護計画

非自殺性自傷行動の看護計画|自分を傷つけてしまう患者さんに寄り添うために

この記事は約9分で読めます。

「死にたいわけじゃない。ただ、この痛みで頭の中が静かになる」

「傷をつけることで、やっと息ができる気がする」

「自分でもなぜやってしまうのかわからない」

自分の身体を傷つけることで、心の苦しさを乗り越えようとしている患者さんは、精神科病棟だけでなく、一般病棟・救急外来・外来診療の中でも出会うことがあります。

非自殺性自傷行動は、死ぬことを目的とせず、心理的な苦痛を和らげることや感情を調整することを目的として、自分の身体を意図的に傷つける行動のことを指します。

この行動を「かまってほしいだけ」「意志が弱い」と片づけてしまうことは、患者さんの苦しさをさらに深め、支援の機会を失うことにつながります。

非自殺性自傷行動の背景には、言葉にできないほどの感情的な苦痛があります。

看護師がその苦しさに正面から向き合い、患者さんが自傷以外の方法で感情と向き合えるよう支えることが、この看護診断に関わる大切な役割です。

この記事では、非自殺性自傷行動の看護計画について、看護目標から観察項目・ケア・教育まで幅広くまとめていきます。


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非自殺性自傷行動とは

非自殺性自傷行動とは、自死の意図なしに、自分の身体の組織を意図的に傷つける行動のことです。

代表的なものとして、皮膚を切る・刺す・打つ・やける・引っかくといった行動が挙げられます。

NANDA-I看護診断では、死ぬことを目的とせず、感情の調整・自己罰・現実感の回復・解離状態からの回復などを目的として繰り返し行われる自傷行動として定義されています。

非自殺性自傷行動は、自殺企図とは区別されますが、長期的には自殺リスクと関連することがあるため、慎重な評価と継続的な支援が必要です。

思春期・青年期に多く見られますが、成人・高齢者にも生じることがあります。

背景にある精神疾患として、境界性パーソナリティ障害・うつ病・摂食障害・外傷後ストレス障害・解離性障害などが関連していることが多いですが、明確な診断がない場合にも生じます。

非自殺性自傷行動は、その患者さんにとって機能している対処行動のひとつであることを理解することが、関わりの出発点になります。


この看護診断が適用されやすい状況

非自殺性自傷行動が適用されやすいのは、次のような状況です。

思春期・青年期の患者さんで、強い感情的苦痛や対人関係の困難を背景に自傷行動が見られる場合に多く見られます。

境界性パーソナリティ障害の患者さんで、感情の波が激しく、自傷行動が感情調整の手段になっている場合にも当てはまります。

うつ病・不安障害・外傷後ストレス障害などの精神疾患を持つ患者さんで、感情の苦痛が自傷行動として表れている場合にも適用されます。

摂食障害を持つ患者さんで、身体への自傷行動が食行動異常と並行して見られる場合にも見られます。

虐待・ネグレクト・性的外傷などのトラウマ体験を持つ患者さんで、自傷行動が解離や感情調整の手段になっている場合にも適用されます。


非自殺性自傷行動に関連する要因

この看護診断に関連する要因として、以下のようなものが挙げられます。

感情調整能力の低さが、自傷行動の主要な関連要因として挙げられます。

過去のトラウマ体験(虐待・ネグレクト・性的外傷・喪失体験)が、自傷行動と深く関わることがあります。

精神疾患の既往や現在の精神的健康の問題が関連します。

社会的サポートの乏しさ・孤立・対人関係の困難が背景にあることがあります。

自己評価の低さ・強い罪悪感・恥の感覚が、自傷行動を引き起こすことがあります。

感情を言語化する力が育っていないことが、感情の出口として自傷行動を選ぶことにつながります。

物質(アルコール・薬物)の使用が、自傷行動のリスクを高めることがあります。


看護目標

長期目標

患者さんが自分の感情的な苦痛を自傷以外の方法で表現・調整できるようになり、自傷行動の頻度が減少しながら安全な生活を送れるようになる。

短期目標

患者さんが自傷行動を行ってしまった後、そのときの気持ちや状況を看護師に話せるようになる。

患者さんが自傷行動を行いたくなるときの引き金となる状況や感情をひとつ以上言語化できるようになる。

患者さんが自傷行動の代わりに試せる対処方法をひとつ以上選び、実際に使ってみることができるようになる。


観察項目(観察計画)

観察項目では、患者さんの自傷行動の状態・心理的な背景・安全に関わるリスクを幅広く把握することが出発点になります。

自傷行動の部位・方法・頻度・深さを確認します。創部の状態(出血量・感染の有無・瘢痕の程度)を観察し、医療的な処置が必要かどうかを判断します。

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自傷行動が起きる前後の状況を把握します。どんな場面で・どんな気持ちのときに・何がきっかけになって自傷行動が生じるかを、患者さんと一緒に振り返ります。

自傷行動の目的を把握します。感情を和らげるため・現実感を取り戻すため・自己罰のため・他者への訴えのためなど、その患者さんにとって自傷行動がどのような役割を果たしているかを理解します。

自死の意図がないかを確認します。非自殺性自傷行動と自殺企図は区別されますが、慎重にアセスメントすることが必要です。「死にたいという気持ちはありますか」と直接確認することが大切です。

患者さんの感情の状態を確認します。強い不安・絶望感・怒り・解離症状・感情の麻痺などが見られないかを観察します。

患者さんの社会的サポートの状況と、対人関係のパターンを把握します。

精神疾患の既往・現在の治療状況・服薬の状況を確認します。

トラウマ体験の有無についても、信頼関係が形成された段階で丁寧に把握します。

アルコール・薬物の使用状況についても確認します。


ケア項目(ケア計画)

ケアの基本は、自傷行動を責めず・驚かず・説教せず、その背景にある苦しさをそのまま受け止めることです。

自傷行動を発見したとき・告白されたとき、動揺した表情や強い言葉での反応をしないよう意識します。「また傷つけたんですか」「なんでそんなことを」という言葉は、患者さんが次から隠すようになることにつながります。

まず創部の処置を落ち着いて行います。処置をしながら「痛かったね」「辛かったんですね」と声をかけることで、患者さんが責められていないと感じられる関わりをします。

処置後に、そのときの気持ちについて話せる時間をつくります。「もしよければ、どんな気持ちだったか聞かせてもらえますか」という問いかけが、患者さんの言語化を助けます。急かさず、話せる範囲で話してもらうことが大切です。

患者さんが自傷行動を行いたくなるときの引き金を一緒に整理します。特定の場面・感情・対人関係のパターンが引き金になっていることが多く、それを一緒に見つけることで、早めの対処につなげられます。

自傷行動の代わりに使える対処方法を患者さんと一緒に考えます。氷を握る・輪ゴムを手首に当てて弾く・激しく運動する・大声で歌う・絵を描く・気持ちを紙に書き出すなど、その患者さんに合った方法を一緒に探します。ただし、痛みや不快感を代替手段として使う方法については、その患者さんの状態や治療方針に合わせてチームで検討します。

患者さんが自傷衝動を感じたときに連絡できる体制を整えます。「辛くなったらナースコールしてください」「一人で抱えなくていいですよ」という言葉が、患者さんの安全を守る力になります。

安全管理として、病室内に自傷に使用できるものがないかを確認します。刃物・鋭利なもの・紐類などの管理を、患者さんのプライバシーへの配慮と安全のバランスを保ちながら行います。

精神科医・公認心理師・臨床心理士と連携し、心理療法(弁証法的行動療法・認知行動療法などの専門的な治療)につなぎます。看護師の関わりと専門的な心理療法が並行して進むことが、回復を支えます。

家族に対しても、自傷行動についての理解を深めてもらうための関わりを行います。家族の関わり方が患者さんの回復に深く関わることを伝えながら、家族自身の不安や戸惑いも受け止めます。


教育項目(教育計画)

患者さんが自傷行動についての理解を深め、自分に合った感情の対処方法を身につけていけるよう、教育的な関わりを行います。

自傷行動が感情調整の手段として機能していることを、責めるのではなく事実として伝えます。「自傷することで気持ちが楽になる感覚があるんですよね。それはその方法が今のあなたにとって機能しているからです。でも、身体への影響があるので、別の方法を一緒に探していきましょう」という伝え方が、患者さんの自己否定を和らげながら前向きな変化につながります。

感情を言語化することの大切さを伝えます。気持ちを言葉や文字にすることが、感情の苦痛を和らげる力になることを伝え、日記を書く・気持ちをメモする習慣を提案します。

自傷衝動を感じたときのセーフティプランを一緒につくります。衝動を感じたときにどうするか、誰に連絡するかを事前に決めておくことで、衝動的な行動に移る前に対処できることを伝えます。

自傷行動は意志の弱さや性格の問題ではなく、感情調整の困難さから生じていることを伝えます。「あなたが弱いのではなく、それだけ辛い状況にいるということです」というメッセージを届けます。

回復は直線的ではなく、自傷行動が再び起きることがあっても、それは失敗ではないことを伝えます。「また傷つけてしまった」と自分を責めすぎないよう、再発したときの対処も含めて一緒に考えておきます。

利用できる支援機関(精神科外来・思春期外来・精神保健福祉センター・よりそいホットライン・地域の相談窓口)について情報を提供します。

家族に対しては、自傷行動を見つけたときにどう対応すればよいかを具体的に伝えます。パニックにならず、落ち着いて医療者に連絡することの大切さを伝えます。


看護師として意識したいこと

非自殺性自傷行動の看護計画を実践するうえで、看護師自身の姿勢がとても大切な意味を持ちます。

自傷行動を目の当たりにするとき、看護師の中に驚き・嫌悪・無力感・怒りなどの感情が生じることがあります。その感情を持つこと自体は自然なことですが、その感情を患者さんへの関わりに持ち込まないよう意識することが大切です。

自傷行動を「かまってほしいだけ」と捉える見方は、患者さんの苦しさを見誤ることにつながります。たとえ対人関係的な訴えの要素があったとしても、その背景には必ず感情的な苦痛があることを忘れないことが大切です。

非自殺性自傷行動への関わりは、精神的に負荷がかかる支援です。チームで情報を共有し、一人の看護師が抱え込まない体制をつくることが、長期的な支援を続けるうえでとても大切です。定期的なカンファレンスとスタッフ間の感情の共有が、チームの安定につながります。

自死のリスクについての評価を定期的に行うことも欠かせません。非自殺性自傷行動と自殺企図は区別されますが、状況によってはリスクが重なることがあります。変化を見逃さないよう、継続的な観察と精神科医との連携が必要です。

患者さんが自傷行動を打ち明けてくれたとき、それはその患者さんが看護師を信頼している証です。その信頼を大切にしながら、長期的な視点で回復を支える関わりを続けることが、看護師にできるとても大切なことのひとつです。


まとめ

非自殺性自傷行動の看護計画は、感情的な苦痛と向き合いながら自傷行動を繰り返している患者さんが、自傷以外の方法で感情と向き合えるようになり、安全な生活を取り戻していけるよう支えるための計画です。

観察・ケア・教育の三つの視点を持ちながら、患者さんの自傷行動の背景にある苦しさをありのままに受け止め、その人に合った感情の対処方法を一緒に探していく関わりが、看護師にできるとても大切な支援です。

自傷行動は、変えることができます。

しかしそれには時間がかかります。

患者さんの回復のペースに合わせて、焦らず、責めず、ともに歩み続ける看護を目指してください。

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