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看護計画

血栓症リスク状態の看護計画|深部静脈血栓症・肺塞栓症を予防するための観察・ケア・指導のポイント

この記事は約9分で読めます。

入院中の患者さんや手術後の患者さんと関わる中で、「この人、足がむくんでいるな」「なんとなく呼吸が苦しそうだな」と感じた経験はないでしょうか。

こうした変化の背景に、血栓症が潜んでいることがあります。

血栓症は、適切な予防と早期発見ができれば防げる合併症の一つです。

しかし、発症してしまうと深部静脈血栓症(DVT)から肺塞栓症(PE)へと進展し、最悪の場合は命に関わる事態になることもあります。

だからこそ、リスクのある患者さんを早期に把握し、予防的な看護を実践することが大切です。

この記事では、血栓症リスク状態の看護計画について、看護目標から観察・ケア・指導の内容まで、わかりやすく解説していきます。


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血栓症リスク状態とはどのような状態か

血栓症リスク状態とは、血管内に血栓(血の塊)が形成されやすい状態にあることを指します。

血栓が静脈内に生じたものを静脈血栓塞栓症(VTE)と呼び、代表的なものとして深部静脈血栓症肺塞栓症があります。

深部静脈血栓症とは、下肢や骨盤内の深部静脈に血栓が生じた状態です。 下肢の腫脹・発赤・熱感・疼痛が見られることがあり、ふくらはぎを背屈させたときに痛みが出るホーマンズ徴候が診断の参考になることがあります。

肺塞栓症とは、深部静脈血栓症で生じた血栓が剥がれて肺動脈に詰まった状態です。 突然の呼吸困難・胸痛・血圧低下・頻脈・SpO2の低下などが見られ、重篤化すると心停止に至ることもあります。

血栓が形成されやすい条件として、ウィルヒョウの三徴がよく知られています。

血流の停滞・血管壁の損傷・血液凝固能の亢進の三つが重なるほど、血栓リスクが高まります。


血栓症リスクが高くなる状況

血栓症リスク状態の看護計画を立てるにあたり、どのような患者さんがリスクの高い状態にあるかを把握することが大切です。

手術後・長期臥床の患者さんは血流が停滞しやすく、血栓症リスクが高まります。 整形外科手術(人工膝関節置換術・人工股関節置換術)や腹部・骨盤内の手術後は特に注意が必要です。

**悪性腫瘍(がん)**の患者さんは、腫瘍細胞が産生する物質によって血液凝固能が高まることがあり、血栓症のリスクが高い状態にあります。

妊娠・産後の女性も血液凝固能が高まる時期にあり、長時間の安静と合わさることでリスクが上がります。

脱水状態では血液が濃縮されて粘稠度が高まり、血栓が生じやすくなります。

心不全・心房細動などの循環器疾患では、血流の乱れや停滞が生じやすく、血栓形成のリスクがあります。

そのほか、**肥満・長時間の同一体位(エコノミークラス症候群)・経口避妊薬の使用・血栓性素因(抗リン脂質抗体症候群など)**もリスク因子として挙げられます。


血栓症リスク状態の関連因子

血栓症リスクに関連する因子を整理しておくことで、看護アセスメントの精度が高まります。

血流の停滞に関連する因子としては、長期臥床・術後の安静・下肢麻痺・心不全・肥満・長時間の座位姿勢などが挙げられます。

血管壁の損傷に関連する因子としては、手術・外傷・血管内カテーテル留置・静脈炎などが挙げられます。

血液凝固能の亢進に関連する因子としては、悪性腫瘍・妊娠・産後・脱水・経口避妊薬・ステロイド投与・血栓性素因などが挙げられます。


血栓症リスク状態の看護目標

長期目標

患者さんが血栓症を発症することなく、安全に療養生活を送ることができる。

短期目標

①患者さんが血栓症のリスク因子と予防の大切さを理解し、指導された予防行動を実践できる。

②下肢の腫脹・疼痛・発赤・熱感・呼吸困難など、血栓症を疑う症状が見られたとき、速やかに医療スタッフへ伝えることができる。

③医師の指示に基づく予防策(弾性ストッキングの着用・抗凝固療法・早期離床)を適切に実施できる。


血栓症リスク状態の具体的な看護計画

観察計画(オーピー)

観察計画では、血栓症の早期発見と悪化防止のために、患者さんの状態を継続的に観察することを目的とします。

下肢の状態を観察します。 左右の下肢の太さ・色・温度・浮腫の有無を観察します。 左右差がある場合は血栓症の可能性を念頭に置き、速やかに医師へ報告します。 ホーマンズ徴候(足首を背屈させたときにふくらはぎに痛みが出る)の有無も確認します。 ただし、ホーマンズ徴候は陽性でも血栓症でないこともあるため、あくまでも参考所見として扱います。

バイタルサインを観察します。 血圧・脈拍・呼吸数・体温・SpO2を定期的に測定します。 肺塞栓症が生じた場合、突然のSpO2低下・頻脈・血圧低下・呼吸困難が見られることがあるため、変化に素早く気づくことが大切です。

呼吸状態を観察します。 呼吸困難感・胸痛・咳嗽・血痰の有無を確認します。 これらの症状は肺塞栓症を疑うサインであり、発見した場合は速やかに医師へ報告します。

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活動量と安静の程度を確認します。 患者さんがどの程度動けているか、長時間の安静が続いていないかを把握します。

水分摂取量と排泄量(インアウトバランス)を確認します。 脱水状態は血液の粘稠度を高めて血栓リスクを上げるため、水分バランスの把握が大切です。

使用中の薬剤を確認します。 抗凝固薬(ヘパリン・ワルファリン・直接経口抗凝固薬など)を使用している場合は、効果と出血傾向の有無を観察します。 経口避妊薬・ステロイド・利尿薬なども血栓リスクに関わるため、内服薬の確認が大切です。

血液検査データを確認します。 Dダイマー(血栓形成の指標となる)・フィブリノゲン・凝固検査(PT・APTT)・ヘモグロビン・ヘマトクリットなどを確認します。 Dダイマーの上昇は血栓症の可能性を示す指標の一つですが、炎症や術後でも上昇することがあるため、他の所見と合わせて判断します。

弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置(フットポンプ)の使用状況を確認します。 正しく装着されているか・皮膚トラブルが生じていないかを確認します。


ケア計画(ティーピー)

ケア計画では、血栓の形成を予防するための直接的なケアを実施します。

早期離床の促しを行います。 手術後や長期臥床の患者さんに対して、医師の指示のもと、できる限り早い時期からベッドサイドでの立位・歩行練習を進めます。 早期離床は下肢の血流を促し、血栓予防に役立ちます。 患者さんの状態に合わせて、理学療法士と連携しながら進めることが大切です。

下肢の運動を促します。 離床が難しい患者さんには、ベッド上での足首の屈伸運動(足首を上下に動かすポンプ運動)を定期的に促します。 この運動はふくらはぎの筋ポンプ作用を活性化し、静脈還流を促す効果があります。

弾性ストッキングの正しい着用を支援します。 弾性ストッキングは下肢の静脈を圧迫することで、血液の停滞を防ぎます。 しわが寄らないよう正しく装着し、皮膚の発赤・潰瘍・かぶれがないか定期的に確認します。 特に、感覚障害のある患者さんや皮膚が脆弱な高齢者では、皮膚トラブルに注意が必要です。

間欠的空気圧迫装置(フットポンプ)の使用管理を行います。 医師の指示に基づき、装置が正常に作動しているかを確認します。 患者さんが不快感を訴えている場合は、固定位置の調整や一時的な休止を検討します。

医師の指示に基づく抗凝固療法の管理を行います。 ヘパリンの持続静脈注射・低分子ヘパリンの皮下注射・直接経口抗凝固薬の内服管理を行います。 抗凝固療法中は出血リスクが高まるため、皮下出血・歯肉出血・血尿・消化管出血の有無を観察します。 採血時や注射後は十分に圧迫止血することも大切です。

十分な水分摂取を促します。 経口摂取が可能な患者さんには、脱水予防のためにこまめな水分摂取を促します。 輸液管理中の患者さんは、点滴の滴下速度と水分バランスを確認します。

体位変換と安楽な体位の保持を行います。 長時間の同一体位を避け、定期的な体位変換を実施します。 下肢を心臓より高く挙上することで、静脈還流が促されることもあります。

血栓症の症状が見られた際の迅速な対応を行います。 下肢の腫脹・疼痛・発赤・呼吸困難・胸痛・SpO2の低下などを発見した場合は、速やかに医師へ報告し、指示に従って対応します。


指導計画(イーピー)

指導計画では、患者さんとその家族が血栓症の予防について理解し、退院後も自分で予防行動を続けられるよう支援します。

血栓症のリスクとその危険性についてわかりやすく説明します。 「血の塊が血管に詰まる病気で、特に足の静脈から肺に飛ぶと命に関わることがある」という点を、患者さんの理解度に合わせて説明します。 恐怖心をあおるのではなく、「予防できる合併症である」というポジティブな視点で伝えることが大切です。

下肢の運動の方法を指導します。 足首の屈伸運動(つま先を上に向けたり下に向けたりするポンプ運動)を、ベッド上で実践できるよう指導します。 「テレビを見ながらでもできる運動です」など、日常生活に取り入れやすい形で伝えます。

早期離床・適度な歩行の大切さを伝えます。 「動くと傷口が開く」「痛いから動けない」と感じている患者さんも多いため、早期離床が回復を促すことをわかりやすく説明します。

弾性ストッキングの正しい着脱方法を指導します。 しわが寄らないように着用する方法・着用時間・皮膚トラブルがあった際の対処法を丁寧に説明します。 退院後も継続が必要な場合は、家族にも方法を伝えます。

水分補給の大切さを伝えます。 「水分をしっかり摂ることで血液がさらさらの状態を保ちやすくなる」ということをわかりやすく説明します。 特に夏場や発熱時・下痢時は脱水になりやすいことも伝えます。

抗凝固薬を内服中の患者さんへの指導を行います。 自己判断で薬を中止しないこと・定期的な血液検査の必要性・出血しやすい状態になることへの注意点(怪我・歯科治療時の申告など)を説明します。 ワルファリンを内服中の場合は、納豆・クロレラ・青汁などビタミンKを多く含む食品を控えるよう指導します。

受診のタイミングについて説明します。 退院後に下肢の腫れ・痛み・息苦しさ・胸の痛みが出た場合は、速やかに受診するよう伝えます。 「様子を見ればいいか」と思わず、早めに医療機関を受診することの大切さを強調します。


血栓症リスク状態の看護計画を立てる際の注意点

血栓症リスク状態の看護計画を立てる際、いくつか気をつけたい点があります。

まず、リスクアセスメントを入院時から行うことです。 血栓症は発症してからでは手遅れになることもあるため、入院時にリスク因子を評価し、予防策を早期に開始することが大切です。 ウェルズスコアなどのリスク評価ツールを活用することも有用です。

次に、弾性ストッキングが全員に適応となるわけではないという点を理解しておくことが大切です。 末梢動脈疾患・重度の皮膚疾患・心不全による高度の浮腫がある患者さんには、弾性ストッキングが禁忌となることがあります。 必ず医師の指示を確認してから使用します。

また、抗凝固療法中の出血リスク管理も看護師の重要な役割です。 血栓を防ぐための薬が、同時に出血リスクを高めます。 採血・注射・処置の際の丁寧な止血・皮膚の観察・患者さんへの注意点の説明を怠らないようにします。

さらに、肺塞栓症は突然発症するという点を常に意識しておくことが大切です。 「少し前まで元気だったのに」という状況で急変することがあるため、バイタルサインの変化や患者さんの訴えに敏感に対応できる観察力が必要です。


まとめ

血栓症リスク状態の看護計画は、発症前の予防的な介入と、異常の早期発見・早期対応を両立させることが大切です。

深部静脈血栓症から肺塞栓症への進展を防ぐためには、リスクアセスメント・予防ケアの実施・患者さんへの指導・多職種との連携が欠かせません。

「この患者さんはリスクがあるかもしれない」という視点を常に持ちながら、日々の看護の中で丁寧な観察とケアを実践していきましょう。

血栓症リスク状態の看護計画を作成する際は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

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