ゴードンの11パターンのなかでも、「栄養−代謝パターン」は書くべき内容が多く、ボリュームが膨らみがちなパターンですよね。
「BMIの計算はしたけど、その先に何を書けば?」「褥瘡リスクはこのパターンで書くの?」といった疑問を持つ学生さんが多いです。
この記事では、80歳・膵臓がんステージIVで在宅療養中のAさんの事例を使って、栄養状態の評価から褥瘡リスク・感染リスクまで、アセスメントの書き方を具体的に解説していきます。
※ 事例の全体像やゴードン11パターンの概要については、こちらのまとめ記事をご覧ください。
事例のおさらい(簡易版)
Aさん 80歳 女性 膵臓がん(ステージIV)
3年前に診断。今年春から経口摂取困難となり入院、現在は輸液による対症療法のみ。本人の意思で退院し在宅療養中。余命6週間〜3ヶ月と告知。要介護5。独居。身長148cm、体重32kg。腹水貯留による腹部膨満感あり。食事は友人が届けるおかゆやポタージュをわずかに口にする程度。部分義歯使用。小柄で痩せが著しく、尾骨部に骨突出あり。両下肢の浮腫は高度。一日のほぼすべてをベッド上で過ごしている。オキシコドン徐放錠30mg/日、レスキュー用モルヒネ10mg/回を服用中。
そもそも「栄養−代謝パターン」って何を見るの?
このパターンでは、大きく分けて3つの視点からアセスメントしていきます。
① 食習慣・食事摂取の状況
何をどのくらい食べているか、水分は摂れているか、食欲はあるか、嚥下に問題はないか、といった「口から入るもの」全般を評価します。
② 栄養状態の評価
BMIや体重変化、検査データ(あれば)などから、実際の栄養状態がどうなっているかを客観的に評価します。低栄養の原因分析もここに含まれます。
③ 皮膚・組織の状態
栄養状態の悪化は皮膚にも影響しますよね。褥瘡リスク、浮腫、皮膚の脆弱性なども、このパターンで評価する重要な項目です。
つまり「食べる→体の中で使われる→皮膚や組織の状態に現れる」という流れを一貫して見ていくパターンだと覚えておくとわかりやすいですよ。
ステップ① 事例から情報を抜き出す
S情報(Aさんの言葉)
※ 栄養−代謝パターンに直接関連するAさんの発言は事例中に明示されていません。ただし、食欲消失の状態や食事に対する意欲について、訪問時の会話から情報を補足できる可能性があります。
S情報が見当たらない場合は、「S情報なし」と記載するか、関連しうる発言を補足的に記載すればOKです。「S情報がないから書けない」ではなく、O情報を中心にアセスメントを組み立てることもできますよ。
O情報(客観的な事実・観察情報)
- 80歳、女性、膵臓がんステージIV
- 今年春頃から経口摂取が困難となり入院
- 現在は輸液による対症療法のみ
- 身長 148cm、体重 32kg
- 腹水貯留による腹部膨満感あり、食欲消失
- 食事は友人が毎日届けるおかゆやポタージュをわずかに口にする程度
- 部分義歯を使用
- 小柄で痩せが著しい
- 尾骨部に骨突出が確認される
- 両下肢の浮腫は高度
- 一日のほぼすべてをベッド上で過ごしている
- オキシコドン徐放錠 30mg/日、レスキュー用モルヒネ 10mg/回を服用中
- 全身の倦怠感が顕著
- 介護用電動ベッド・エアマットレスを導入済み
ステップ② アセスメントを書く
情報が整理できたら、アセスメントの構造に沿って書いていきましょう。パターン1と同じく、「一般論 → この患者さんの場合 → 結論」の流れです。
アセスメント例:栄養−代謝パターン
【食習慣・食事摂取の状況】
Aさんは現在、友人が毎日昼と夕方に届けてくれるおかゆやポタージュをわずかに口にする程度であり、十分な栄養を摂取できていない。身長148cmに対して体重は32kgであり、BMIは14.6と著しく低い値を示している(148cmに対する適正体重は約48.2kg前後)。このことから、必要なカロリーや栄養素の摂取量が大幅に不足しており、低栄養状態にあると判断できる。
食欲低下の原因としては、複数の要因が複合的に関与していると考えられる。まず、膵臓がんの進行に伴うがん悪液質が大きく影響している。次に、腹水の貯留による腹部膨満感が持続しており、これが食欲をさらに妨げている。加えて、Aさんが服用しているオキシコドンやモルヒネといったオピオイド鎮痛薬の副作用として、悪心や食欲不振が生じやすい状況にある。
水分摂取についても注意が必要である。おかゆやポタージュに含まれる水分以外の摂取状況についての詳細な情報はないが、食事摂取量がごくわずかであることを踏まえると、水分摂取も不足していると推測される。現在、輸液による補液は行われているが、経口からの水分補給は十分とはいえない。
また、摂食・嚥下機能についての詳細な評価は行われていないが、経口摂取量がごくわずかであること、部分義歯を使用していること、食欲が消失していることを総合すると、嚥下機能についても何らかの低下が生じている可能性を考慮しておく必要がある。
【栄養状態の評価とがん悪液質について】
Aさんは低栄養状態にあり、体重の著しい低下がみられる。この低体重の主な原因として、がん悪液質(cancer cachexia)が考えられる。
がん悪液質とは、通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害を伴う骨格筋量の持続的な減少を特徴とする多因子性の症候群である。その発生機序の一つとして、がん細胞から分泌されるサイトカインの過剰産生がある。サイトカインは本来、免疫システムにおいて情報伝達を担う物質であるが、がんに罹患するとIL-1、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインが過剰に産生される。これにより全身性の炎症反応が惹起され、タンパク質や脂肪の異化(分解)が亢進する。骨格筋はタンパク質で構成されているため、この分解の進行に伴って筋肉量が減少し、全身の痩せが進行していく。
Aさんの場合も、膵臓がんの進行に伴う悪液質によって筋肉量や脂肪量の減少が著しく進んでいると考えられ、BMI 14.6という数値はこの病態を反映している。
【皮膚・組織の状態と褥瘡リスク】
Aさんは小柄で痩せが著しく、尾骨部には骨突出が確認されている。一日のほぼすべてをベッド上で過ごしており、自力での体位変換は困難な状態にある。これらの条件、すなわち①著しい低栄養、②骨突出、③長時間の臥床、④自力体位変換困難が重なっていることから、褥瘡の発生リスクは非常に高いと評価できる。
現在、エアマットレスが導入されており、体圧分散の対策はとられている。しかし、低栄養状態の持続により皮膚の再生力・修復力は低下しており、わずかな圧迫や摩擦であっても皮膚損傷が生じやすい状態にあるため、マットレスの使用だけでは十分な予防策とはいえない。


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さらに、両下肢には高度な浮腫がみられる。浮腫のある皮膚は張りが強い一方で脆弱であり、損傷しやすく治癒しにくいという特徴がある。浮腫部位のスキンケアについても注意が求められる。
【免疫機能と感染リスク】
低栄養状態が持続していることにより、Aさんの免疫機能は低下していると考えられる。栄養不足は免疫細胞の産生や機能維持に直接影響し、感染に対する抵抗力を弱める。特に在宅で療養しているAさんの場合、口腔内の清潔保持が不十分になれば誤嚥性肺炎のリスクが高まり、また、皮膚の損傷があればそこから感染が起こる可能性もある。訪問看護時に口腔ケアや全身清拭が実施されているが、それ以外の時間帯における清潔保持の状況についても留意しておく必要がある。
【結論】
以上のことから、Aさんは膵臓がんの進行に伴うがん悪液質、腹水貯留による腹部膨満感、オピオイド鎮痛薬の副作用という複数の要因が重なり、食欲が著しく低下しており、必要な栄養摂取量を確保できていない。BMIは14.6と著しく低く、低栄養状態にある。この低栄養の持続により、皮膚の脆弱化と免疫機能の低下が進んでおり、褥瘡の発生リスクおよび感染症のリスクが高まっている。エアマットレスの導入や訪問看護による保清ケアが行われているものの、栄養状態の改善が見込めない現状においては十分な予防策とはいえず、栄養−代謝パターンは機能障害的パターンであると判断する。
看護上の問題として、がん悪液質・腹水による腹部膨満・薬剤の副作用によって必要な栄養が摂取できておらず、全身状態の悪化を招いていることが挙げられる。今後は、Aさんが少しでも口にできるものの工夫(食形態・温度・量・タイミングの調整)、褥瘡予防のためのポジショニングと皮膚観察の強化、感染予防のための口腔ケアの継続が求められる。
アセスメントの書き方のコツ:ここを押さえよう
コツ① BMIは「計算して終わり」にしない
BMIの計算自体は簡単ですよね。でも大事なのはその先です。
Aさんの場合:
BMI = 32 ÷(1.48 × 1.48)= 14.6
適正体重 = 1.48 × 1.48 × 22 ≒ 48.2kg
→ 適正体重と比べて16kg以上少ない
「BMIが14.6です」と書くだけではアセスメントになりません。「だから低栄養状態にある」「その原因はがん悪液質と腹部膨満感と薬剤の副作用である」と、数値の「意味」と「原因」まで踏み込んで書きましょう。
コツ② 食欲低下の「原因」を複数挙げる
終末期がん患者さんの食欲低下は、一つの原因だけで説明できないことがほとんどです。Aさんの場合は……
- がん悪液質:がんそのものが引き起こす代謝異常
- 腹水による腹部膨満感:物理的に胃が圧迫される
- オピオイドの副作用:悪心・食欲不振を起こしやすい
このように複数の原因を挙げて、それぞれがどう影響しているかを説明することで、アセスメントに深みが出ます。「食欲がないから食べられない」で終わると薄っぺらくなってしまうので要注意ですよ。
コツ③ がん悪液質の説明は「仕組み」を書く
「がん悪液質により低栄養になっている」だけだと、教員から「悪液質のメカニズムを理解していますか?」と突っ込まれることがあります。
アセスメント例で書いたように、サイトカインの過剰産生→全身性の炎症→タンパク質・脂肪の分解亢進→筋肉量の減少という一連の流れを簡潔に説明できると、理解の深さが伝わりますよね。
コツ④ 低栄養から派生するリスクを展開する
低栄養は「食べられない」で終わりではなく、そこから連鎖的にいろいろな問題につながります。
低栄養
→ 皮膚の脆弱化 → 褥瘡リスク↑
→ 免疫機能の低下 → 感染リスク↑
→ 筋肉量の減少 → ADLのさらなる低下(※これは活動−運動パターンとも関連)
このような「低栄養→〇〇→△△のリスク」という因果関係を意識して書くと、パターン間のつながりも見えてきますよ。
よくある間違い・つまずきポイント
❌ BMIの数値だけ書いて満足してしまう
BMI14.6はあくまで「客観的な数値」です。アセスメントでは「その数値が何を意味するのか」「なぜその数値になったのか」まで書かないと評価にはなりません。
❌ 褥瘡リスクを活動−運動パターンに書いてしまう
褥瘡リスクは皮膚・組織の問題なので、栄養−代謝パターンで評価します。活動−運動パターンでは「長時間臥床している」という事実を書きますが、それによって皮膚にどんな影響があるかは、このパターンの領域ですよ。
❌ 「終末期だから低栄養は仕方ない」で片づけてしまう
確かに終末期がん患者さんの栄養改善は難しいです。でも、だからといって「仕方ない」でアセスメントを終えてはいけません。栄養状態を改善できなくても、褥瘡予防や口腔ケア、少しでも食べやすい工夫など、看護としてできることは何かを考えるのがアセスメントの目的ですよね。
❌ 浮腫の記載を忘れる
Aさんには高度な下肢浮腫がありますが、これを書き忘れる学生さんが意外と多いです。浮腫は栄養状態の低下(低アルブミン血症)やがんの進行とも関連する所見であり、皮膚の脆弱性にも影響します。見落とさずにアセスメントに含めましょう。
まとめ
栄養−代謝パターンでは、以下の3つの視点が軸になります。
- 食習慣・食事摂取の状況:何をどれだけ食べているか、食欲低下の原因は何か
- 栄養状態の評価:BMI・体重変化・がん悪液質のメカニズム
- 皮膚・組織の状態:褥瘡リスク、浮腫、感染リスク
Aさんの場合、BMI 14.6と著しい低栄養状態にあり、がん悪液質・腹部膨満・薬剤の副作用が複合的に影響しています。褥瘡や感染症のリスクも高いことから、機能障害的パターンと判断しました。
次の記事では、パターン3:排泄パターンを解説します。Aさんのリハビリパンツの使用、排便コントロール、浣腸・摘便の管理などをどうアセスメントするか、見ていきましょう。
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