ゴードンの11パターンの中で、「認知−知覚パターン」は「何を書けばいいのかわからない」という声が特に多いパターンです。
実はこのパターンで見るべきことは結構はっきりしていて、感覚機能・認知機能・疼痛の管理の3つが柱になります。「機能的」と判断されることも多いパターンですが、だからこそなぜ機能的なのかを論理的に説明する力が問われますよ。
この記事では、80歳・膵臓がんステージIVで在宅療養中のAさんの事例を使って、認知−知覚パターンのアセスメントの書き方を具体的に解説していきます。
※ 事例の全体像やゴードン11パターンの概要については、こちらのまとめ記事をご覧ください。
事例のおさらい(簡易版)
Aさん 80歳 女性 膵臓がん(ステージIV)
3年前に診断。在宅療養中。余命6週間〜3ヶ月と告知済み。輸液による対症療法のみ。「病院にいたって治るわけじゃないし、お金ばかりかかって申し訳ない」と述べ自ら退院を決断。オキシコドン徐放錠30mg/日、レスキュー用モルヒネ10mg/回(1日6回まで)を自己管理で服用。腹部の痛みは自制内、レスキューは1日2〜3回使用。腹水貯留による腹部膨満感、両下肢の高度な浮腫、全身倦怠感あり。意思疎通は明瞭、聴力・視力に大きな支障なし。覚醒時はラジオをつけている。「音がないとどうにも落ち着かなくてね」と発言。甥や友人への負担を気にかけている。
そもそも「認知−知覚パターン」って何を見るの?
このパターンでは、大きく分けて3つの視点から評価します。
① 感覚機能(知覚)
視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった五感に障害がないかを評価します。日常生活に支障をきたすような感覚機能の低下がないかを確認しましょう。
② 認知機能
記憶力・注意力・判断力・言語能力・意思決定能力・学習能力など、頭の働きに問題がないかを評価します。会話ができるか、自分で判断できているかといった点がポイントです。
③ 疼痛・不快症状の知覚と管理
痛みやその他の不快な症状(膨満感、倦怠感など)をどう知覚し、どう管理しているかを評価します。特にがん患者さんの場合、疼痛管理は非常に重要な項目ですよね。
つまり、「感じる力は保たれているか」+「考える力は保たれているか」+「痛みはコントロールできているか」を総合的に見るパターンです。
ステップ① 事例から情報を抜き出す
S情報(Aさんの言葉)
❶「病院にいたって治るわけじゃないし、お金ばかりかかって申し訳ない」
❷「特に聴きたい番組があるってわけじゃないんだけど、音がないとどうにも落ち着かなくてね」
O情報(客観的な事実・観察情報)
- 80歳、女性、膵臓がんステージIV
- 現在は輸液による対症療法のみ
- 本人の意思により退院を決断
- オキシコドン徐放錠 30mg/日(1日2回)、レスキュー用モルヒネ 10mg/回(1日6回まで)を自己管理で服用
- 腹部の痛みは自制内、レスキュー薬は1日2〜3回使用
- 腹水貯留による腹部膨満感あり、食欲消失
- 両下肢の浮腫は高度、全身の倦怠感が顕著
- 歩行不可能
- 意思疎通は明瞭に行える
- 聴力や視力に大きな支障はない
- 自宅で最期まで過ごすことに迷いがあり、甥や友人への負担を気にかけている
- 経済面での不安もある
ステップ② アセスメントを書く
認知−知覚パターンでは、「感覚機能 → 認知機能 → 疼痛・不快症状の管理 → 結論」の順に書いていくとスムーズです。このパターンは「機能的」と判断されることも多いですが、その根拠をきちんと書くことが大切ですよ。
アセスメント例:認知−知覚パターン
【感覚機能の状況】
Aさんには聴力や視力に大きな支障はなく、日常生活においてコミュニケーションや情報の受け取りに大きな不便を感じることなく過ごすことができている。覚醒時にはラジオをつけて聴いていることから、聴覚は保たれていることがうかがえる。また、訪問看護師や友人との会話も問題なく成立しており、感覚機能に関して日常生活上の支障は認められない。
【認知機能の状況】
Aさんは80歳と高齢であるが、意思疎通は明瞭に行うことができており、会話の内容も理にかなっている。このことから、記憶力・注意力を含む基本的な認知機能は維持されていると考えられる。
言語能力については、「特に聴きたい番組があるってわけじゃないんだけど、音がないとどうにも落ち着かなくてね」という発言に見られるように、自分の感情や内面の状態を適切な言葉で表現することができている。このような繊細な感情表現が可能であることは、言語機能に問題がないことを示している。
意思決定能力については、Aさんは在宅療養を希望する一方で甥や友人への負担を気にかけ、経済面の問題にも配慮するなど、複数の要素を考慮したうえで自らの療養方針について判断を行っている。「病院にいたって治るわけじゃないし、お金ばかりかかって申し訳ない」という発言からも、自分の状況を現実的に把握し、合理的な意思決定ができていることがわかる。
学習能力・知識については、オキシコドン徐放錠30mg/日とレスキュー用モルヒネ10mg/回の服薬を自己管理できており、薬剤の使い分け(定時薬とレスキュー薬)を理解して適切に対応している。また、訪問看護や訪問診療、介護保険サービスなど複数の医療・介護サービスの利用にも適切に対応していることから、必要な知識の習得と活用に問題は見られない。
【疼痛および不快症状の知覚と管理】


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Aさんは腹部に疼痛を抱えているが、オキシコドン徐放錠(定時薬)を1日2回服用し、疼痛が増強した際にはレスキュー用モルヒネを1日2〜3回使用することで、痛みを自制内にコントロールできている。定時薬による基本的な疼痛管理に加え、レスキュー薬を自分の判断で適切に使用できていることから、疼痛の自己管理は適切に行われていると評価できる。
その他の不快症状として、腹水貯留による腹部膨満感、両下肢の高度な浮腫、全身の倦怠感が生じている。これらの症状は膵臓がんの進行に伴うものであり、根本的な改善は困難であるが、輸液による対症療法が行われており、訪問看護や訪問診療を通じた症状の観察とケアが継続されている。不快症状に対して完全な除去は難しいものの、現在の支援体制のもとで可能な範囲での対症的な管理が行われていると判断する。
【結論】
以上のことから、Aさんは聴力・視力に大きな支障がなく、感覚機能は保たれている。認知機能についても、会話が明瞭に行え、適切な感情表現や意思決定が可能であり、服薬の自己管理や医療サービスの利用にも問題なく対応できている。疼痛についても、オピオイドの定時薬とレスキュー薬を適切に使い分け、自制内に管理できている。その他の不快症状に対しても対症療法が実施されている。これらのことから、認知−知覚パターンは機能的パターンであると判断する。
ただし、今後のがんの進行に伴い、疼痛が増強してレスキュー薬の使用頻度がさらに増加したり、現在の投与量では十分なコントロールが得られなくなったりする可能性がある。また、全身状態の悪化に伴い認知機能に変化が生じる可能性も否定できない。これらの変化に対して、継続的な疼痛評価とオピオイドの用量調整、認知機能の観察を行っていくことが重要である。
アセスメントの書き方のコツ:ここを押さえよう
コツ① 「機能的」でも根拠をしっかり書く
認知−知覚パターンは「機能的」と判断されることが多いパターンです。でも、「問題ないです。以上。」では不十分ですよね。
「なぜ問題がないと判断したのか」を、感覚機能・認知機能・疼痛管理のそれぞれについて根拠を示して書くことが大切です。むしろ、機能的と判断するパターンほど、根拠の説明力が問われると思っておきましょう。
コツ② 認知機能は「能力別」に分けて評価する
「認知機能は保たれている」と一言で済ませず、以下のように能力ごとに分けて評価すると説得力が増します。
認知機能の評価項目と、Aさんの場合の根拠
・記憶力・注意力 → 意思疎通が明瞭で会話に支障がない
・言語能力 → 感情を適切な言葉で表現できている
・意思決定能力 → 複数の要素を考慮して療養方針を判断できている
・学習能力 → 服薬の自己管理、サービスの適切な利用ができている
それぞれの根拠として事例の具体的な情報やAさんの発言を紐づけると、説得力のあるアセスメントになりますよ。
コツ③ 疼痛管理は「定時薬+レスキュー」の構造を意識する
がん性疼痛の管理では、定時薬(ベースの痛み止め)とレスキュー薬(突発痛への対応)の2段構えが基本です。
Aさんの場合:
- 定時薬:オキシコドン徐放錠 30mg/日(1日2回)→ 基本的な疼痛コントロール
- レスキュー:モルヒネ速放製剤 10mg/回(1日6回まで)→ 実際は1日2〜3回使用
「レスキューを1日2〜3回使っている」ということは、定時薬だけでは完全にカバーできない突発的な痛みがあるということです。ただし、最大6回まで使用可能なところ2〜3回に留まっていることから、疼痛は自制内にコントロールされていると評価できます。この分析ができると、アセスメントの精度が上がりますよ。
コツ④ 「今後のリスク」を添える
機能的パターンであっても、特に終末期の事例では今後の変化を見据えた記述を加えることが重要です。
- 疼痛が増強して現在の薬剤量では不十分になる可能性
- 全身状態の悪化に伴い認知機能に変化が生じる可能性
「今は問題ないが、こういう変化が起こりうる」と書くことで、継続的な観察の必要性を示すことができますね。
よくある間違い・つまずきポイント
❌ 「問題なし」で3行で終わる
機能的パターンだからといって、アセスメントを極端に短く済ませてしまうケースが多いです。感覚機能・認知機能・疼痛管理の各項目について根拠を示して「だから問題がない」と説明することが求められます。
❌ 疼痛を他のパターンに書いてしまう
疼痛の管理はこのパターンの重要な評価項目です。「疼痛があるから活動できない」は活動−運動パターンで書きますが、「疼痛がどの程度あって、どう管理されているか」はこのパターンで書きましょう。パターンごとに視点を変えることが大切ですよ。
❌ 感覚機能の評価を省略する
「特に問題ないから書かなくていい」と思いがちですが、問題がないこと自体が重要な情報です。「聴力・視力に支障なし」と明記することで、このパターンの評価をきちんと行ったことが伝わります。
❌ 不快症状(膨満感・浮腫・倦怠感)に触れない
疼痛だけでなく、腹部膨満感・浮腫・倦怠感といった不快症状もこのパターンの「知覚」に含まれます。痛みだけ書いて他の症状を無視しないようにしましょう。
まとめ
認知−知覚パターンでは、以下の3つの視点が軸になります。
- 感覚機能:視覚・聴覚などの五感に障害がないか
- 認知機能:記憶・言語・判断・学習の各能力が保たれているか
- 疼痛・不快症状:痛みや不快な症状がどう管理されているか
Aさんの場合、感覚機能は保たれ、認知機能も良好で、疼痛もオピオイドの自己管理により自制内にコントロールされていることから、機能的パターンと判断しました。ただし、今後の病状進行に伴う疼痛増強や認知機能の変化には注意が必要です。
次の記事では、パターン7:自己知覚−自己概念パターンを解説します。Aさんの「迷惑をかけている」という思いやボディイメージの変化をどうアセスメントするか、見ていきましょう。
ゴードン11パターン|記事一覧
| No. | パターン |
| 1 | 健康知覚−健康管理 |
| 2 | 栄養−代謝 |
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