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ゴードンの考えによる看護の展開看護過程

【ゴードン】睡眠−休息パターンのアセスメント|終末期がん事例でわかりやすく解説

この記事は約9分で読めます。

ゴードンの11パターンの中で、「睡眠−休息パターン」は一見シンプルに見えて、実は原因分析の深さで大きく差がつくパターンです。

「眠れていない→睡眠障害→機能障害」……これだけだと、アセスメントとしては物足りないですよね。大事なのは、なぜ眠れないのかを身体面・心理面・環境面から多角的に分析することです。

この記事では、80歳・膵臓がんステージIVで在宅療養中のAさんの事例を使って、睡眠パターンの評価の仕方からアセスメントの書き方まで具体的に解説していきます。

※ 事例の全体像やゴードン11パターンの概要については、こちらのまとめ記事をご覧ください。


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事例のおさらい(簡易版)

Aさん 80歳 女性 膵臓がん(ステージIV)

3年前に診断。在宅療養中。要介護5。独居(市営住宅1階、周囲に畑や空き地が広がるのどかな環境)。一日のほぼすべてをベッド上で過ごす。腹水貯留による腹部膨満感あり。腹部の痛みはオピオイドにより自制内で、レスキュー薬は1日2〜3回使用。夜中の2時頃にようやくうとうとし始めるが眠りは浅く、朝は4時半頃には目が覚めてしまう。入眠困難があるが睡眠導入剤は希望せず服用していない。一人でいる時間帯や日中にうたた寝をすることがある。自宅での最期に迷いがあり、甥や友人への負担や経済面の不安を抱えている。


そもそも「睡眠−休息パターン」って何を見るの?

このパターンでは、大きく分けて2つの視点から評価します。

① 睡眠の状況

入眠時刻、覚醒時刻、睡眠の深さ、中途覚醒の有無、睡眠の質に対する本人の満足度などを評価します。睡眠に問題がある場合は、その原因を身体面・心理面・環境面から分析することが重要です。

② 休息・リラクゼーションの状況

日中にどのように休息をとっているか、リラックスできる環境が整っているか、休息を妨げる要因はないかを評価します。睡眠だけでなく、日中の過ごし方や住環境もこのパターンの評価対象ですよ。

つまり、「夜ちゃんと眠れているか」+「日中ちゃんと休めているか」の両方を見るパターンです。


ステップ① 事例から情報を抜き出す

S情報(Aさんの言葉)

❶「もうそんなに長くはないだろうから、通帳のお金を引き出して準備しておかないと」

※ 睡眠そのものについてのAさんの直接的な発言は事例中に明示されていませんが、上記の発言は心理的な不安の根拠として活用できます。

O情報(客観的な事実・観察情報)

  • 80歳、女性、膵臓がんステージIV
  • 腹水貯留による腹部膨満感あり
  • 腹部の痛みはオピオイドにより自制内、レスキュー薬は1日2〜3回使用
  • 両下肢の浮腫は高度、全身の倦怠感が顕著
  • 一日のほぼすべてをベッド上で過ごしている
  • 夜中の2時頃にようやくうとうとし始めるが、眠りは浅い
  • 朝は4時半頃には目が覚めてしまう
  • 入眠困難があるが、睡眠導入剤は希望しておらず服用していない
  • 一人でいる時間帯や日中にうたた寝をすることがある
  • 住まいは市営住宅の1階、周囲に畑や空き地が広がるのどかな環境
  • 自宅で最期まで過ごすことに迷いがある
  • 甥や友人に負担をかけたくないという気持ちがある
  • 経済的なゆとりがなく、再入院した場合の費用が不安

ステップ② アセスメントを書く

睡眠−休息パターンでは、「睡眠の実態 → 睡眠障害の原因分析 → 休息の状況 → 結論」の順に書いていくとまとまりやすいですよ。


アセスメント例:睡眠−休息パターン

【睡眠の状況】

 Aさんは夜中の2時頃にようやくうとうとし始めるが、眠りは浅く、朝は4時半頃には目が覚めてしまう状態である。入眠までに長時間を要しており(入眠困難)、実質的な睡眠時間はおよそ2時間半程度と非常に短い。また、眠りの深さも不十分であることから、睡眠の量・質ともに確保できていないと判断される。

 なお、Aさんは入眠困難を自覚しているものの、睡眠導入剤の使用は希望しておらず、服用していない。薬剤を使用しないというAさん自身の意向は尊重すべきであるが、睡眠が確保できていない現状は身体的・精神的な回復の妨げとなっており、睡眠支援のあり方について検討の余地がある。

【睡眠障害の原因分析】

 Aさんの入眠困難および睡眠の質の低下には、以下の複数の要因が関与していると考えられる。

 第一に、がんに伴う身体的な苦痛である。Aさんは腹水貯留による腹部膨満感が持続しており、腹部の疼痛もある。オピオイドの使用により痛みは自制内に抑えられているものの、レスキュー薬を1日2〜3回使用していることから、日中にも疼痛の増強が生じていることがうかがえる。夜間においても、腹部膨満による不快感や体位による圧迫感が入眠を妨げている可能性がある。加えて、両下肢の高度な浮腫や全身の倦怠感といった不快症状も、安楽な体位の確保を困難にし、睡眠の質を低下させる要因となっている。

 第二に、心理的な不安やストレスである。Aさんは自宅で最期まで過ごすことに迷いを抱えており、甥や友人に負担をかけているのではないかという気がかりがある。また、「もうそんなに長くはないだろうから、通帳のお金を引き出して準備しておかないと」という発言にみられるように、経済面での不安も抱えている。さらに、余命が限られていることを自覚していることから、死に対する思いが夜間の静かな時間帯に意識されやすく、入眠を困難にしていることが推測される。このように、療養の場の選択、周囲への負担感、経済的な心配、死への意識といった複数の心理的要因が重なり、精神的な安寧が得られにくい状況にある。

 第三に、日中の活動不足である。Aさんは一日のほぼすべてをベッド上で過ごしており、身体活動量が極めて少ない。日中の覚醒と活動が不十分であると、体内の覚醒−睡眠リズム(サーカディアンリズム)が乱れやすくなり、夜間の入眠が困難になることが知られている。実際にAさんは日中にうたた寝をすることがあり、このことが夜間の入眠をさらに遅らせる悪循環に陥っている可能性がある。

 第四に、睡眠導入剤を使用していないことである。Aさんは入眠困難があるにもかかわらず、睡眠導入剤を希望せず服用していない。本人の意向は尊重されるべきであるが、薬物以外の睡眠支援策(環境調整、リラクゼーション技法など)も含め、何らかの対策が講じられなければ、睡眠の確保は引き続き困難であると考えられる。

【休息・リラクゼーションの状況】

 Aさんの住まいは市営住宅の1階で、周囲に畑や空き地が広がるのどかな環境にある。騒音や光害といった外的な睡眠阻害要因は見受けられず、住環境としては休息に適していると考えられる。

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 しかし、Aさんは一日のほぼすべてをベッド上で過ごしているにもかかわらず、十分に休息をとれているとはいえない状態にある。日中の活動量が極めて少ないために「身体は休んでいるが、深い休息が得られていない」という状況であり、日中にうたた寝をすることがあるのもこの反映である。また、前述のとおり心理的な不安やストレスが多く、精神的なリラクゼーションが妨げられている。心配事や将来への不安を抱えた状態では、たとえ身体は横になっていても心が休まらないため、真の意味での休息が確保されているとはいいがたい。

【結論】

 以上のことから、Aさんの住環境は静穏で休息に適しているものの、がんに伴う腹部膨満感や疼痛などの身体的苦痛、療養の場の選択や周囲への負担感・経済面に関する心理的な不安やストレス、日中の活動不足による覚醒−睡眠リズムの乱れが複合的に作用し、夜中の2時頃まで入眠できず、眠りは浅く、朝4時半には覚醒してしまう状態にある。実質的な睡眠時間はおよそ2時間半程度と著しく短く、日中にうたた寝をすることでさらに夜間の睡眠が妨げられる悪循環に陥っている。睡眠導入剤は本人が希望しておらず使用していないが、薬物に頼らない睡眠支援策の検討も十分に行われていない現状がある。このことから、睡眠−休息パターンは機能障害的パターンであると判断する。

 看護上の問題として、がんによる疼痛や不快症状、日中の活動不足、心理的な不安やストレスが重なり、十分な睡眠が確保できず睡眠パターンが乱れていることが挙げられる。今後の対応としては、夜間の安楽な体位の工夫(ポジショニング、クッションの活用)、日中の覚醒時間を意識的に確保するための生活リズムの調整、就寝前のリラクゼーション(手浴・足浴、アロマテラピーなど)の導入、不安や心配事を傾聴する機会の確保、また本人の同意が得られた場合には主治医と相談のうえ睡眠導入剤の使用も選択肢として検討することが考えられる。


アセスメントの書き方のコツ:ここを押さえよう

コツ① 睡眠時間を具体的に計算する

「眠れていない」とだけ書くのではなく、具体的な数字で示しましょう。

Aさんの睡眠時間

入眠:夜中2時頃
覚醒:朝4時半頃
→ 実質的な睡眠時間:約2時間半(しかも浅い眠り)

この数字があるだけで、「十分な睡眠が確保できていない」という判断に客観性が増しますよね。高齢者の推奨睡眠時間は個人差がありますが、一般的に6〜7時間程度とされており、2時間半は明らかに不足しています。

コツ② 睡眠障害の原因を「身体面・心理面・生活面」で整理する

「なぜ眠れないのか」を分析するとき、3つのカテゴリに分けて考えると漏れがなくなります。

Aさんの不眠の原因

【身体面】腹部膨満感、疼痛、浮腫、倦怠感 → 安楽な体位がとれない
【心理面】療養の場への迷い、周囲への負担感、経済的不安、死への意識
【生活面】日中の活動不足、うたた寝による睡眠リズムの乱れ、睡眠薬の不使用

このように整理すると、原因が多層的であることが明確になり、それぞれに対するケアの方向性も見えてきますよ。

コツ③ 「悪循環」を描く

Aさんの睡眠パターンには典型的な悪循環が見られます。この悪循環をアセスメントの中で示せると、分析の深さが伝わります。

Aさんの睡眠の悪循環

日中の活動不足 → 日中にうたた寝
 ↓
夜間の入眠困難(2時頃まで眠れない)
 ↓
睡眠時間が短い・浅い(2時間半程度)
 ↓
翌日の倦怠感が増す → さらに活動できない
 ↓
日中にうたた寝 → ……(繰り返し)

この循環構造を意識して書くことで、「なぜ問題が改善しないのか」が論理的に説明できますよね。

コツ④ 本人の意向を書いたうえで看護の視点を添える

Aさんは睡眠導入剤を希望していません。この事実はそのまま記載しつつ、「本人の意向は尊重すべきだが、薬物以外の方法も含めて支援策を検討する必要がある」という看護の視点を添えることが大切です。

「本人が望まないから何もしない」ではなく、「薬以外にできることは何か」を考える姿勢が看護のアセスメントですよ。


よくある間違い・つまずきポイント

❌ 「眠れていない」で原因分析をしない

「夜中2時まで眠れず、朝4時半に起きるので睡眠不足である」……これはO情報のまとめです。なぜ2時まで眠れないのかを分析しなければアセスメントにはなりません。

❌ 身体面の原因だけ書いて心理面に触れない

「腹痛や腹部膨満感で眠れない」だけでは不十分です。特に終末期の事例では、心理的な不安やストレスが睡眠に大きく影響します。Aさんの場合、療養の場への迷い、経済的不安、死への意識など、心理面の要因が複数あります。必ず言及しましょう。

❌ 日中のうたた寝と夜間の不眠を関連づけない

「日中にうたた寝をしている」という情報と「夜間に眠れない」という情報を別々に書いて、関連づけないケースが多いです。この2つは悪循環の関係にあるので、セットで論じましょう。

❌ 休息・リラクゼーションの評価を省略する

このパターンは「睡眠」だけでなく「休息」も含みます。住環境がどうか、日中に心身ともに休めているかについても、必ず触れてくださいね。


まとめ

睡眠−休息パターンでは、以下の2つの視点が軸になります。

  • 睡眠の状況:入眠・覚醒の時刻、睡眠の量と質、障害の原因分析
  • 休息・リラクゼーション:住環境、日中の休息の質、心身のリラックス度

Aさんの場合、住環境は良好であるものの、身体的苦痛・心理的不安・日中の活動不足が複合的に影響し、実質2時間半程度の浅い睡眠しかとれていません。日中のうたた寝との悪循環も生じていることから、機能障害的パターンと判断しました。

次の記事では、パターン6:認知−知覚パターンを解説します。Aさんの疼痛管理(オピオイドの使用状況)や感覚機能、意思疎通能力をどう評価するか、見ていきましょう。


ゴードン11パターン|記事一覧

No. パターン
1 健康知覚−健康管理
2 栄養−代謝
3 排泄
4 活動−運動
5 睡眠−休息(この記事)
6 認知−知覚
7 自己知覚−自己概念
8 役割−関係
9 セクシュアリティ−生殖
10 コーピング−ストレス耐性
11 価値−信念

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