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ゴードンの考えによる看護の展開看護過程

【ゴードン】役割−関係パターンのアセスメント|終末期がん事例でわかりやすく解説

この記事は約9分で読めます。

ゴードンの11パターンの中で、「役割−関係パターン」は「独居の患者さんだと何を書けばいいかわからない」と悩む学生さんが特に多いパターンです。

「家族がいないから家庭内の役割はない」……と片づけてしまいがちですが、実はそうではありません。独居であっても、友人・親戚・地域の支援者との関係性がどう機能しているかを丁寧に評価することが、このパターンの核になりますよ。

この記事では、80歳・膵臓がんステージIVで在宅療養中のAさんの事例を使って、家庭・職業・地域という3つの領域からアセスメントを書く方法を解説していきます。

※ 事例の全体像やゴードン11パターンの概要については、こちらのまとめ記事をご覧ください。


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事例のおさらい(簡易版)

Aさん 80歳 女性 膵臓がん(ステージIV)

3年前に診断。在宅療養中。要介護5。独居(市営住宅1階)。40代で離婚、一人息子は30歳で病気により他界。婚姻期間中は専業主婦。車で約40分の距離に住む義理の弟家族と行き来があるが、他の親族との付き合いはほぼない。甥(義理の弟の長男)が紹介してくれた教会の神父との語り合いを精神的な拠り所としている。離婚後は市営住宅に単身で暮らし、清掃業のパート勤務をしていた。職場で知り合った友人(2人)との関係が深く、退職後は3人で旅行や外食を楽しんでいた。発病後も友人が代わる代わる訪ね、食事の差し入れ・洗濯・掃除を連携して支援。同じ棟に住む元介護福祉士の民生委員が合鍵を管理し、毎朝7時半に解錠、夜20時半に施錠、ごみ出しを担当。近隣住民との交流はそれほど多くない。


そもそも「役割−関係パターン」って何を見るの?

このパターンでは、大きく分けて3つの領域から評価します。

① 家庭内の役割と関係

家族構成、家庭の中での役割、家族との関係性を評価します。独居の場合は、家族に代わって支援を提供している人々との関係がここに含まれます。

② 職業上の役割と関係

現在の就労状況と、職業を通じて築いた人間関係がどうなっているかを評価します。退職している場合は、退職後もその関係が継続しているかどうかがポイントです。

③ 地域・社会での役割と関係

近隣住民との付き合い、地域の支援者との関係、社会参加の状況を評価します。特に在宅療養では、民生委員や地域のボランティアとの関係が重要になりますよね。

つまり、「家庭」+「仕事(退職後の人間関係を含む)」+「地域・社会」という3つの場面で、その人がどんな役割を担い、どんな関係を築いているかを見ていくパターンです。


ステップ① 事例から情報を抜き出す

S情報(Aさんの言葉)

※ 役割−関係パターンに直接関連するAさんの発言は事例中に限定的ですが、「甥や友人に負担をかけたくない」「迷惑がかかるのではないか」という思いは、人間関係に対する意識の表れとして活用できます。

O情報(客観的な事実・観察情報)

  • 80歳、女性、膵臓がんステージIV
  • 独居(市営住宅1階)
  • 40代の頃に離婚、一人息子は30歳のときに病気で他界
  • 婚姻期間中は専業主婦
  • 車で約40分の距離にある隣接市に住む義理の弟家族と行き来がある
  • 他の親族との付き合いはほぼない
  • 甥(義理の弟の長男)が紹介してくれた教会の神父との語り合いを精神的な拠り所としている
  • 離婚後は清掃業のパート勤務をしていた
  • パート先で知り合った友人(2人)との関係が深い
  • 退職後は友人と3人で旅行や外食を楽しんでいた
  • 発病後も友人が代わる代わる訪問し、食事の差し入れ・洗濯・掃除を連携して支援
  • 同じ棟に住む元介護福祉士の民生委員が合鍵を管理
  • 民生委員が毎朝7時半に解錠、夜20時半に施錠、朝のごみ出しも担当
  • 近隣住民との交流はそれほど多くない

ステップ② アセスメントを書く

役割−関係パターンでは、「家庭内 → 職業(退職後の関係)→ 地域・社会 → 総合的な人間関係の評価 → 結論」の順に書いていくと整理しやすいですよ。


アセスメント例:役割−関係パターン

【家庭内の役割と関係】

 Aさんは独居であり、40代の頃に離婚している。一人息子は30歳のときに病気で他界しており、同居する家族はいない。婚姻期間中は専業主婦として家庭を支える役割を担っていたが、離婚後は自立して生活を営んできた。現在、血縁関係で交流があるのは義理の弟家族(車で約40分の隣接市に在住)のみであり、他の親族との付き合いはほぼない。

 家族が不在の状況ではあるが、その代わりに友人2人が交代で日常的に訪問し、食事の差し入れ(おかゆやポタージュ)、洗濯、掃除などの家事を分担して行っている。朝に訪れた友人が洗濯物を干し、夕方に来た友人がそれを取り込んでたたむといった具合に、友人同士が連携しながらAさんの生活を支えている。このように、同居の家族がいないAさんにとって、友人が家族に代わる実質的な生活支援者としての役割を果たしており、家庭内の生活維持に関する役割は適切に補完されている。

【職業上の役割と退職後の関係】

 Aさんは離婚後、清掃業のパート勤務をしていた。80歳であるため、すでに退職しており、病気や治療による職場での役割への直接的な影響はない。

 しかし注目すべきは、パート先で築いた友人関係が退職後も維持されていることである。Aさんと深い関係にある友人2人はいずれもパート先で知り合った仲間であり、体調が良かった頃には3人で旅行に出かけたり、外食を楽しんだりしていた。そして発病後も、この友人たちが変わらず支援を続けてくれている。職場を通じて築かれた人間関係が、退職後も生き続け、さらに療養生活を支えるインフォーマルサポートとして機能している点は、Aさんの人間関係の大きな強みである。

【地域・社会での役割と関係】

 Aさんは近隣住民との交流はそれほど多くないが、同じ棟に住む元介護福祉士の民生委員がAさんの生活を支えるうえで重要な役割を担っている。民生委員はAさんの住居の合鍵を預かり、毎朝7時半に解錠して夜20時半に施錠するほか、朝のごみ出しも行っている。在宅療養が開始されてからは積極的に声をかけ、生活面の世話を引き受けてくれるようになった。元介護福祉士という専門的な背景を持つ民生委員が身近にいることは、Aさんの在宅療養において心強い存在である。

 広い意味での社会的なつながりとしては、甥が紹介してくれた教会の神父との語り合いもある。これは直接的な生活支援ではないが、Aさんの精神的な支えとなっており、社会的な孤立を防ぐ役割を果たしている。

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【人間関係の総合的な評価】

 Aさんは離婚後、一人暮らしを長年続けてきたが、その中で友人、甥、民生委員、神父という複数の支援者との関係を築いてきた。現在も友人が交代で訪問して日常生活を支え、民生委員が安全管理を担い、甥が療養方針について「好きなようにすればいい」と見守り、神父がスピリチュアルな支えを提供するなど、それぞれが異なる役割を果たしながらAさんの生活を支える関係性が成り立っている。

 独居かつ血縁の家族による直接的な介護が得られない状況であるにもかかわらず、これらのインフォーマルサポートが有機的に機能していることから、Aさんの人間関係は孤立した状態ではなく、むしろ多様な支援者に支えられた関係性が構築されている。

【結論】

 以上のことから、Aさんは独居であり同居の家族はいないが、パート先で知り合った友人2人が家族に代わる生活支援者として家事や食事の差し入れを連携して行っており、家庭内の役割は適切に補完されている。退職後も職場で築いた友人関係が維持され、療養生活を支えるインフォーマルサポートとして機能している。地域においても、元介護福祉士の民生委員が合鍵の管理や施錠・解錠、ごみ出しなどの日常的な支援を担い、甥や神父との交流も精神的な支えとなっている。これらの関係性により、Aさんは社会的に孤立することなく在宅療養を継続できている。このことから、役割−関係パターンは機能的パターンであると判断する。

 ただし、Aさんの生活を支える友人、民生委員、甥はいずれもボランタリーな支援であり、制度的に保障されたものではない。今後、Aさんの病状がさらに進行し、ケアの頻度や負担が増した場合には、これらの支援者への負担が過大になる可能性がある。支援者の負担状況を継続的に把握し、必要に応じてフォーマルサービスの増強や、支援者自身のレスパイト(休息)への配慮を行っていくことが重要である。


アセスメントの書き方のコツ:ここを押さえよう

コツ① 独居でも「役割がない」と書かない

独居の患者さんの場合、「家族がいないから家庭内の役割はない」と書いてしまう学生さんがいます。でもそれは違いますよね。

独居であっても、家族に代わって生活を支えている人がいるなら、その人との関係を「家庭内の役割」の代替として評価することが大切です。Aさんの場合、友人2人が事実上の家族的支援者として機能しています。

コツ② 支援者の「役割分担」を具体的に書く

「友人が支援している」だけでは漠然としています。誰が・何を・いつ・どのように支援しているかを具体的に書きましょう。

Aさんを支えるインフォーマルサポートの役割分担

友人2人 → 食事の差し入れ、洗濯(干す/取り込む)、掃除を交代・連携で実施
→ 療養方針の見守り、経済面の安心感の提供、神父の紹介
民生委員 → 合鍵管理、施錠/解錠、ごみ出し、生活面の声かけ
神父 → スピリチュアルな語り合い、精神的な支え

こうして整理すると、それぞれが異なる領域で支援を担っていることが一目瞭然ですよね。

コツ③ 「退職後の人間関係」を忘れない

高齢の患者さんの場合、職業上の役割は「退職しているため直接的な影響はない」で終わりがちです。しかし、職場を通じて築いた人間関係が退職後も続いているかどうかは重要な評価ポイントです。

Aさんの場合、友人2人はまさにパート先で知り合った仲間であり、退職後の関係維持どころか、療養生活の中心的な支援者になっています。この事実を書くことで、「職場での人間関係が退職後も生き続け、インフォーマルサポートとして機能している」という厚みのある評価ができますよ。

コツ④ 機能的でも「今後のリスク」を添える

役割−関係パターンが「機能的」と判断された場合でも、終末期の事例では今後の変化に備えた記述を加えることが重要です。

Aさんの場合、友人や民生委員の支援はすべてボランタリー(善意による自発的な支援)です。制度的に保障されているわけではないので、支援者が疲弊したり、状況が変わったりすれば支援体制が崩れる可能性があります。「今は機能しているが、支援者の負担にも注意が必要」と書くことで、現実的な視点を示せますね。


よくある間違い・つまずきポイント

❌ 「独居なので家庭の役割はない」で終わる

独居=役割がない、ではありません。家族に代わる支援者との関係を評価することが、このパターンの重要なポイントです。

❌ フォーマルサービス(訪問看護など)をここに書いてしまう

訪問看護や訪問介護などの制度的なサービスは、パターン1(健康知覚−健康管理)で評価済みです。このパターンでは、友人・甥・民生委員・神父など、インフォーマルな人間関係に焦点を当てましょう。

❌ 支援者を列挙するだけで関係性の「質」を書かない

「友人がいる、甥がいる、民生委員がいる」と並べるだけでは不十分です。それぞれがAさんとどのような関係にあり、どんな支援を提供しているかを具体的に記述することがアセスメントです。

❌ 「機能的」と結論づけて3行で終わる

パターン6(認知−知覚)のコツでもお伝えしましたが、機能的パターンこそ「なぜ機能的なのか」の根拠を丁寧に書くことが大切です。特にこのパターンは独居の事例で機能的と判断する場合、その根拠となる支援体制を詳細に記述する必要がありますよ。


まとめ

役割−関係パターンでは、以下の3つの領域が軸になります。

  • 家庭内の役割と関係:家族構成と、家族に代わる支援者の存在
  • 職業上の役割と関係:退職後も職場の人間関係が維持されているか
  • 地域・社会での役割と関係:民生委員や地域の支援者、スピリチュアルなつながり

Aさんの場合、独居で同居家族はいないものの、友人・甥・民生委員・神父がそれぞれ異なる役割でAさんの生活を支えており、社会的に孤立した状態ではないことから機能的パターンと判断しました。ただし、支援者の負担増加への注意は必要です。

次の記事では、パターン9:セクシュアリティ−生殖パターンを解説します。終末期の事例ではどう書けばよいのか、具体的な対処法をお伝えしますよ。


ゴードン11パターン|記事一覧

No. パターン
1 健康知覚−健康管理
2 栄養−代謝
3 排泄
4 活動−運動
5 睡眠−休息
6 認知−知覚
7 自己知覚−自己概念
8 役割−関係(この記事)
9 セクシュアリティ−生殖
10 コーピング−ストレス耐性
11 価値−信念

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