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看護計画

成人褥瘡の看護計画|皮膚を守るケアと予防的介入の考え方

この記事は約9分で読めます。

「背中に赤みが出てきた」「仙骨部に傷ができてしまった」——こうした場面は、長期臥床が続く患者さんを担当するとき、病棟でよく経験します。

褥瘡は、一度できてしまうと治癒に長い時間がかかり、患者さんに大きな苦痛をもたらします。

しかし適切なケアと予防的な介入があれば、多くの褥瘡は防ぐことができます。

褥瘡とは、身体の一部に持続的な圧迫が加わることで、皮膚や皮下組織への血流が途絶え、組織が損傷した状態のことです。

医学的には「pressure injury(圧迫による損傷)」とも呼ばれ、皮膚の発赤から始まり、悪化すると筋肉・骨にまで達する深い傷へと進行することがあります。

この記事では、成人褥瘡の看護計画について、看護目標から観察・ケア・指導の内容まで、看護学生にもわかりやすく解説していきます。


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褥瘡とはどんな状態か

褥瘡は、圧迫・ずれ・摩擦・湿潤などの物理的な要因が皮膚に加わることで生じます。

特に骨の突出した部位(仙骨部・尾骨部・踵部・大転子部・坐骨部・肘部・後頭部など)は、圧力が集中しやすく、褥瘡が生じやすい場所です。

褥瘡の深さは、日本褥瘡学会の分類(DESIGN-R)や国際的な分類(NPUAP/EPUAP)により段階的に評価されます。

ステージ1は皮膚の発赤のみで、指で押しても白くならない(ブランチングしない)状態です。

ステージ2は真皮の一部まで及ぶ浅い潰瘍で、水疱形成が見られることもあります。

ステージ3は皮下組織までに及ぶ全層皮膚欠損で、深い潰瘍が見られます。

ステージ4は筋肉・腱・骨にまで達する最も深い褥瘡です。

判定不能な褥瘡は、壊死組織(スラフ・エスカー)に覆われており、深さの判定が難しい状態です。

深部組織損傷(DTI)は、皮膚表面の変化は軽度でも、深部の組織がすでに損傷を受けている状態であり、特に注意が必要です。


褥瘡が生じやすい患者さんの特徴

褥瘡のリスクが高まる要因には、以下のようなものがあります。

長期臥床・車椅子での長時間座位など、同一体位が続く状態。

意識障害・鎮静・麻痺などにより、自分で体位変換ができない状態。

低栄養・低タンパク血症・貧血・脱水がある状態。

浮腫・皮膚の乾燥・皮膚の脆弱化がある状態。

失禁(尿・便)による皮膚の湿潤・汚染が続いている状態。

糖尿病・末梢動脈疾患などによる末梢循環障害がある状態。

高齢であること(皮膚の菲薄化・組織の脆弱化)。

ステロイド長期使用・免疫抑制薬使用による皮膚の脆弱化。

感覚障害(脊髄損傷・糖尿病性神経障害など)により、痛みや不快感を感じにくい状態。

これらのリスク因子を早期にアセスメントし、褥瘡が生じる前から予防的なかかわりを始めることが大切です。


褥瘡のリスクアセスメントツール

褥瘡のリスクを客観的に評価するために、以下のようなアセスメントツールが広く使われています。

ブレーデンスケールは、知覚の認知・湿潤・活動性・可動性・栄養状態・摩擦とずれの6項目を評価するツールで、合計点数が低いほど褥瘡リスクが高いと判断されます。

OHスケール(大浦・堀田スケール)は、日本で開発された褥瘡リスクアセスメントツールで、自力体位変換能力・病的骨突出・浮腫・関節拘縮の4項目を評価します。

これらのツールを活用して入院時・状態変化時にアセスメントを行い、リスクに応じた予防策を講じることが大切です。

「この患者さんは褥瘡リスクがある」という意識を持つことが、予防的ケアの出発点になります。


褥瘡が患者さんに与える影響

褥瘡が生じると、患者さんにはさまざまな影響が出てきます。

疼痛・不快感が続き、患者さんのQOL(生活の質)が大きく低くなります。

創部からの浸出液・においが、患者さんの精神的な苦痛や自尊感情の低下につながります。

治癒に長期間を要し、入院期間が延びることがあります。

創部感染が進むと、蜂窩織炎・骨髄炎・敗血症など、生命に関わる合併症につながることがあります。

低栄養状態のある患者さんでは、褥瘡の治癒がさらに遅れる悪循環に陥ることがあります。


看護目標

長期目標

患者さんの皮膚の完全性が保たれ、褥瘡の新たな発生・既存の褥瘡の悪化が防がれ、現在の褥瘡が治癒に向かって回復していく。

短期目標

患者さんの褥瘡好発部位を毎日観察し、皮膚の発赤・損傷の早期発見ができるようになる。

2時間ごとの体位変換・除圧・体圧分散寝具の活用により、皮膚への持続的な圧迫を防ぐことができるようになる。

患者さんの栄養状態・皮膚の湿潤・清潔を適切に管理し、褥瘡の治癒を促進する環境を整えられるようになる。


具体的なケアの内容

観察計画(何を観察するか)

皮膚の状態を全身にわたって観察します。

特に褥瘡好発部位(仙骨部・尾骨部・踵部・大転子部・坐骨部・肩甲骨部・後頭部・肘部・耳介部など)を重点的に観察します。

皮膚の発赤がある場合、指で押して白くなるか(ブランチング)を確認します。

指で押しても白くならない発赤(ノンブランチャブル発赤)はステージ1褥瘡と判断されます。

既存の褥瘡がある場合、DESIGN-Rを用いて定期的に評価します。

創部の深さ・大きさ・浸出液の量と性状・壊死組織の有無・肉芽形成の状況・周囲皮膚の状態・感染サインを確認します。

皮膚の湿潤状態を観察します。

発汗・失禁(尿・便)・浸出液による皮膚の湿潤・浸軟がないかを確認します。

栄養状態を観察します。

食事摂取量・体重・血清アルブミン値・総タンパク値・ヘモグロビン値を確認します。

低栄養は褥瘡の発生・悪化の重要なリスク因子であり、また治癒の妨げにもなります。

体位変換の状況・自力体位変換能力を確認します。

同一体位の持続時間が長くなっていないかを観察します。

浮腫の有無・程度を観察します。

浮腫がある皮膚は脆弱で、軽い圧迫でも損傷しやすいため注意が必要です。

使用している体圧分散寝具・クッション類の状態を確認します。

寝具が適切に機能しているか・位置がずれていないかを確認します。

疼痛の状態を観察します。

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褥瘡部位の疼痛・処置時の疼痛を評価し、適切な疼痛管理が行われているかを確認します。

ケア計画(直接的なかかわり)

体位変換を定期的に行います。

原則として2時間ごとに体位変換を行い、同一部位への持続的な圧迫を解除します。

ただし、体圧分散寝具を使用している場合は、4時間ごとの体位変換が可能な場合もあります。

体位変換時は、皮膚の摩擦・ずれを最小限にするため、スライディングシート・リフトを活用します。

「2時間ごとの体位変換」は褥瘡予防の基本ですが、患者さんの状態によって個別に頻度を検討することが大切です。

体圧分散用具を適切に使用します。

褥瘡リスクがある患者さんには、体圧分散マットレス(エアマットレス・ウレタンフォームマットレスなど)の使用を検討します。

踵部は特に褥瘡が生じやすいため、踵部を完全に浮かせるためのクッション(踵浮上用クッション)を使用します。

車椅子使用患者さんには、適切な圧分散クッションを使用します。

皮膚の清潔と保湿を保ちます。

失禁がある患者さんには、排泄後すみやかに皮膚を清潔にし、撥水性の皮膚保護クリームを使用して皮膚を保護します。

皮膚の乾燥がある患者さんには、保湿クリームを定期的に塗布します。

皮膚を清潔にするときは、強くこすらず、優しく洗い流す方法を用います。

既存の褥瘡の処置を行います。

医師の指示に基づき、創部の洗浄・壊死組織の除去・適切なドレッシング材の選択・交換を行います。

創部の洗浄は、生理食塩水または水道水を用いて、創部を優しく洗い流します。

ドレッシング材は、創部の状態(滲出液の量・感染の有無・深さ)に応じて選択します。

感染が疑われる場合は、すみやかに医師へ報告し、培養検査・抗菌薬の使用を検討します。

疼痛管理を行います。

褥瘡の処置前に適切な鎮痛薬を使用するよう医師に相談し、患者さんが処置を苦痛なく受けられるよう努めます。

栄養管理を行います。

管理栄養士と連携し、褥瘡の治癒に必要な栄養(タンパク質・エネルギー・亜鉛・ビタミンC・アルギニンなど)が十分に摂取できるよう食事内容を調整します。

経口摂取が難しい場合は、経管栄養・静脈栄養の補充を医師・管理栄養士と相談します。

褥瘡対策チームへのコンサルトを行います。

難治性の褥瘡・深い褥瘡・感染を伴う褥瘡では、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)・形成外科医への相談を積極的に行います。

教育・指導計画(患者さん・家族への説明や指導)

褥瘡とは何か、なぜ生じるかを患者さんと家族にわかりやすく説明します。

「皮膚の同じ部分が長時間圧迫され続けると、血流が途絶えて皮膚が傷つきます。こまめに体の向きを変えることが大切です」というように、具体的に伝えます。

体位変換の重要性と方法を伝えます。

患者さんが自分で体を動かせる場合は、定期的に体の向きを変える・圧迫部位を浮かせるなど、できる範囲での除圧行動を促します。

「2〜3時間に一度、体の向きを変えることを習慣にしましょう」という具体的な目標を伝えることが大切です。

皮膚の観察方法を指導します。

退院後も患者さんや家族が自分で皮膚を観察できるよう、褥瘡好発部位の確認方法・異常のサイン(発赤・腫れ・水疱・破皮)・気づいたときの対応を伝えます。

栄養の大切さを伝えます。

「皮膚の回復には、たんぱく質・ビタミン・亜鉛などの栄養素が必要です」と伝え、バランスの良い食事を続けることの重要性を説明します。

皮膚の保湿・清潔の方法を指導します。

入浴・清拭時に皮膚を強くこすらないこと、入浴後の保湿クリームの塗布方法を具体的に伝えます。

失禁がある患者さんには、排泄後の皮膚ケアの方法(すみやかな清潔・撥水性クリームの使用)を伝えます。

退院後に向けて、介護用品(体圧分散マットレス・クッション・スライディングシート)の使用方法と、利用できる介護サービスについて情報を提供します。

異常を感じたとき(発赤が広がる・傷が深くなる・においが強くなるなど)はすぐに医療機関に相談することを伝えます。


皮膚・排泄ケア認定看護師との連携

褥瘡のケアでは、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)との連携がとても大切です。

WOCナースは、褥瘡・ストーマ・失禁に関する高度な専門知識と技術を持つ認定看護師です。

難治性の褥瘡・深い褥瘡・特殊なドレッシング材の選択が必要なケース・ストーマ合併例などでは、WOCナースへのコンサルトを積極的に行います。

WOCナースは創部のアセスメント・ドレッシング材の選択・処置方法の指導を専門的に行い、病棟看護師の褥瘡ケアを力強く支えます。

「困ったときは専門家につなぐ」という姿勢が、患者さんの褥瘡を早く治癒させる上でとても大切です。


褥瘡対策チームの役割

多くの病院では、褥瘡対策チームが組織されています。

褥瘡対策チームは、医師(皮膚科・形成外科・各科主治医)・WOCナース・病棟看護師・管理栄養士・理学療法士・薬剤師などで構成されます。

定期的な褥瘡回診・ケアカンファレンスを通じて、患者さんの褥瘡の状態を多職種で共有し、最適な治療・ケア計画を立てます。

病棟看護師は日々の観察で得た情報をチームに伝え、ケアの方針に沿った日常的なケアを担います。


看護師として意識したいこと

褥瘡のケアで最も大切なのは、「褥瘡は防げるもの」という意識を持ち続けることです。

「この患者さんは褥瘡になりやすい状態にある」というアセスメントができれば、予防のための行動を早めに起こすことができます。

また、褥瘡が生じてしまったとき、看護師が自分を責めすぎることなく、「今できる最善のケアは何か」に集中することが大切です。

褥瘡のケアは、処置の技術だけでなく、患者さんの痛みや苦しさに寄り添いながら、根気強く続けていく看護師の粘り強さが必要です。

小さな改善の積み重ねが、褥瘡の治癒につながります。

患者さんと一緒に回復の過程を歩む姿勢を持ち続けることが、このケアの核心です。


まとめ

成人褥瘡の看護計画は、褥瘡のリスクがある患者さんに対して、予防的なケアと早期発見・適切な処置・栄養管理・体位変換を通じて、皮膚の完全性を守り、褥瘡の発生と悪化を防ぐためのケアの診断です。

長期目標として患者さんの皮膚の完全性が保たれ、褥瘡が治癒に向かって回復していくことを目指し、短期目標を一歩ずつ積み上げていきます。

観察・ケア・指導の三つの視点からかかわることで、患者さんの皮膚を守り、その人らしい生活の質を保つことができます。

WOCナース・医師・管理栄養士・理学療法士をはじめとした多職種と連携しながら、患者さんの褥瘡ケアを継続的に支えていくことが、看護師の大切な役割です。

看護学生のみなさんが実習や国家試験の学習でこの診断と向き合うとき、この記事が少しでも助けになれれば幸いです。

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