病棟で患者さんのケアをしていると、「この方の皮膚、赤くなってきた」「傷の治りが遅い気がする」と感じる場面があります。
組織統合性障害リスク状態とは、皮膚・粘膜・皮下組織・筋肉・骨などの身体組織が損傷を受ける可能性がある状態のことです。
褥瘡(じょくそう)・手術創の離開・皮膚炎・粘膜潰瘍など、さまざまな形で組織の損傷が生じることがあります。
一度組織が損傷すると、回復に時間がかかるだけでなく、感染・敗血症・機能障害など、患者さんの全身状態に深刻な影響を与えることがあります。
だからこそ、損傷が起きる前に予防的な看護計画を立て、患者さんの組織を守り続けることが、看護師としての大切な役割です。
今回は、組織統合性障害リスク状態の看護計画について、看護目標・観察項目・直接ケア・患者教育まで幅広くまとめました。
実習中の看護学生さんから現場の看護師さんまで、ぜひ参考にしてください。
組織統合性障害リスク状態とは何か
組織統合性障害リスク状態とは、NANDA-I(北米看護診断協会)の看護診断のひとつです。
皮膚・粘膜・皮下組織・筋層・骨など、身体を構成する組織が何らかの要因によって損傷を受けるリスクがある状態をさします。
組織統合性の維持とは、皮膚や粘膜などのバリア機能が正常に保たれ、外界からの細菌・物理的刺激・化学的刺激から身体を守れている状態のことです。
このバリア機能が低下した状態、あるいは損傷が生じやすい状態にある患者さんに対して、この看護診断が適用されます。
褥瘡・手術創の感染・皮膚炎・粘膜潰瘍・放射線皮膚炎・失禁関連皮膚炎(IAD)など、さまざまな組織損傷がこの診断の対象となります。
組織統合性障害リスク状態が生じやすい患者さんの特徴
組織統合性障害リスク状態は、特定の患者層に多く見られます。
長期臥床・身体可動性の低下がある患者さんは、同じ体位が続くことで骨突出部への圧迫が持続し、褥瘡が生じやすい状態です。
脊髄損傷・意識障害・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・重篤な疾患で安静が必要な方が該当します。
低栄養状態にある患者さんは、皮下脂肪・筋肉量の減少・皮膚のターンオーバーの低下・免疫機能の低下が見られ、組織が損傷しやすく治りにくい状態です。
血清アルブミン値の低下・体重減少・食事摂取量の低下がある患者さんはとくに注意が必要です。
糖尿病患者さんは、末梢神経障害・末梢循環障害・免疫機能の低下が重なることで、皮膚損傷が生じやすく、いったん傷ができると治癒が遅れやすい状態です。
糖尿病性足潰瘍は、重症化すると下肢切断につながることもある重大な合併症です。
浮腫(むくみ)のある患者さんは、皮膚が引き伸ばされて菲薄化(ひはくか)し、わずかな摩擦や圧迫でも皮膚損傷が生じやすくなります。
高齢者は、皮膚の菲薄化・皮脂分泌の低下・皮膚の弾力性の低下・ターンオーバーの遅延などにより、皮膚バリア機能が低下しています。
失禁がある患者さんは、尿・便による皮膚への化学的刺激が続くことで、失禁関連皮膚炎(IAD)が生じやすい状態です。
放射線治療・化学療法を受けている患者さんは、放射線皮膚炎・粘膜炎・皮膚の脆弱化が見られることがあります。
組織統合性障害に関連する主な要因
看護診断を立てる際には、関連因子と危険因子を整理することが大切です。
機械的要因として、圧迫・ずれ力・摩擦が挙げられます。
長時間同じ体位でいることによる持続的な圧迫や、体位変換時のずれ力が皮膚・皮下組織の血流を妨げます。
化学的要因としては、尿・便・汗・消化液・薬剤による皮膚への刺激があります。
血流障害として、末梢循環不全・浮腫・低血圧・貧血などが挙げられます。
組織への酸素・栄養の供給が低下すると、組織の修復能力が落ちます。
栄養障害として、低タンパク血症・ビタミン不足・微量元素の不足などがあります。
免疫機能の低下として、ステロイド薬の長期使用・免疫抑制薬の使用・悪性腫瘍・感染症などが挙げられます。
感覚障害として、糖尿病性末梢神経障害・脊髄損傷による感覚消失があります。
感覚がないと、圧迫や痛みを感じられないため、損傷が進行しても気づかないことがあります。
看護目標
長期目標
入院期間中および退院後も、患者さんの皮膚・粘膜の統合性が保たれ、新たな組織損傷を起こさない状態を維持できる。
短期目標
患者さんの骨突出部・皮膚脆弱部位に発赤・びらん・潰瘍などの皮膚変化が見られない状態を維持できる。
患者さんおよび家族が、皮膚トラブルの予防方法と異常の早期発見について説明できる。
栄養状態の改善に向けた食事摂取が継続でき、皮膚の修復に必要な栄養が確保できる。
観察項目(観察計画)
患者さんの状態を正確に把握するために、以下の点を日々丁寧に確認します。
皮膚の状態観察
骨突出部(仙骨部・尾骨部・踵部・大転子部・肘・肩甲骨部・後頭部など)の皮膚の発赤・熱感・腫脹・びらん・潰瘍の有無を毎日観察します。
発赤がある場合は、指で押したときに白くなるか(可逆性発赤)、白くならないか(不可逆性発赤=褥瘡カテゴリーⅠ以上)を確認します。
皮膚の乾燥・亀裂・落屑・浮腫の有無を観察します。
失禁がある患者さんは、陰部・臀部・鼠径部の皮膚状態を確認します。
医療機器(酸素マスク・血圧計カフ・ギプス・チューブ類)が接触している部位の皮膚状態を確認します。
創傷がある場合の観察
創の大きさ・深さ・色調・浸出液の量と性状・臭気・周囲の皮膚の状態を観察します。
感染サイン(発赤・腫脹・熱感・疼痛・膿性浸出液・臭気)の有無を確認します。
栄養状態の観察
血清アルブミン値・総タンパク値・ヘモグロビン値・体重の推移を確認し、低栄養の有無をアセスメントします。
食事摂取量・摂取内容・食欲の変化を毎食確認します。
浮腫の有無と程度を観察します。
循環・感覚の観察
末梢の皮膚色・皮膚温・毛細血管再充満時間を確認します。
下肢の浮腫・静脈瘤・皮膚の色素沈着の有無を観察します。
糖尿病患者さんには、足趾・足底・踵の皮膚状態・爪の状態・感覚障害の程度を確認します。
可動性・体位の観察
自力での体位変換が可能かどうかを確認します。
ベッド上での身体のずれ・摩擦が生じていないかを観察します。
直接ケア項目(直接ケア計画)
観察で得た情報をもとに、以下のケアを実施します。
体位変換と圧迫分散
自力体位変換が困難な患者さんには、原則として2時間ごとの体位変換を実施します。
ただし、患者さんの状態・使用するマットレスの種類によって、体位変換の間隔は個別に調整します。
体位変換の際は、ずれ力・摩擦を最小限にするため、スライディングシートやリフトを活用します。
褥瘡予防マットレスの使用
ブレーデンスケールのスコアをもとに、体圧分散マットレス(静止型・交互圧迫型)を選択します。
マットレスはあくまでも補助的な手段であり、体位変換と組み合わせて使用することが大切です。
皮膚の保護と保湿
皮膚の乾燥がある部位には、保湿剤を塗布して皮膚バリア機能を補います。
失禁がある患者さんには、陰部・臀部の清潔を保ち、撥水性の皮膚保護クリームを塗布して化学的刺激から皮膚を守ります。
骨突出部のパッドや保護材の使用
仙骨部・踵部など圧力がかかりやすい部位には、ポリウレタンフォームドレッシング材などの保護材を貼付して、圧迫・摩擦から皮膚を守ります。
医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)の予防
酸素マスク・経鼻胃管・血圧計カフ・ギプス・副木など、医療機器が皮膚に当たっている部位を定期的に確認します。
医療機器と皮膚の間に保護材を挿入し、接触部位の皮膚状態を観察します。
機器の位置を定期的にずらし、同じ部位への圧迫が続かないよう工夫します。
栄養管理の支援
管理栄養士と連携し、患者さんの必要カロリー・タンパク質量・微量元素を充足する食事内容を調整します。
皮膚の修復には、タンパク質・亜鉛・ビタミンCが大切な役割を持っています。
経口摂取が不十分な場合は、医師と相談の上、経腸栄養・補助栄養食品の活用を検討します。
創傷ケアの実施
褥瘡・皮膚潰瘍が生じた場合は、創傷の状態をアセスメントし、適切なドレッシング材を選択して湿潤環境を維持します。
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感染が疑われる場合は、医師に報告し、培養検査・抗菌薬の使用について確認します。
創傷ケアは、創傷・ストーマ・失禁看護認定看護師や皮膚科医・形成外科医と連携して進めることが望ましいです。
フットケアの実施
糖尿病患者さんには、毎日の足の観察と保湿ケアを実施します。
爪は深爪にならないよう、まっすぐに切るスクエアカットを指導します。
足底にたこ・魚の目・水疱・傷がないかを確認し、異常があれば早期に対応します。
患者・家族への教育項目(教育計画)
患者さんと家族が組織損傷のリスクを理解し、退院後も自宅でケアを継続できるよう支援します。
組織統合性障害のリスクについての説明
なぜ皮膚トラブルが生じやすい状態にあるのか、患者さんの状態に合わせてわかりやすく説明します。
糖尿病・低栄養・長期臥床・浮腫など、それぞれの患者さんが持つリスク要因を具体的に伝えます。
皮膚観察の方法についての指導
毎日の入浴・清拭の際に、骨突出部・足底・足趾の間などを自分で確認する習慣をつけるよう指導します。
自分で見えにくい部位は、手鏡や家族の助けを借りて確認するよう伝えます。
発赤・腫れ・水疱・傷・白っぽい変色などの変化があれば、すぐに医療機関に相談するよう説明します。
体位変換・除圧の方法についての指導
長時間同じ体位でいないよう、定期的に体位を変える習慣をつけることを伝えます。
車椅子使用者には、15〜30分ごとに臀部を浮かせる除圧動作(プッシュアップ)を行うよう指導します。
自力での体位変換が難しい場合は、家族への体位変換の方法を実際に見せながら指導します。
スキンケアの方法についての指導
保湿剤の塗り方・使用するタイミング・適切な製品の選び方を指導します。
失禁がある場合は、皮膚を清潔に保つ方法と保護クリームの使い方を具体的に説明します。
皮膚をこするような強い摩擦は避け、やさしく押さえるように拭くよう伝えます。
栄養についての指導
タンパク質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂ることが、皮膚の健康維持に大切です。
食欲がないときも、少量ずつでも食べ続けることの大切さを伝えます。
必要に応じて、管理栄養士による栄養指導と連携します。
履き物・衣類についての指導
糖尿病患者さんには、足に合った靴を選ぶことの大切さを説明します。
締め付けが強い靴下・靴は血流を妨げることがあるため、幅にゆとりがあるものを選ぶよう伝えます。
裸足での歩行は足底の損傷につながることがあるため、屋内でも靴下や室内履きを使用するよう説明します。
ブレーデンスケールを活用した褥瘡リスクのアセスメント
組織統合性障害リスクのアセスメントには、ブレーデンスケールが広く使われています。
ブレーデンスケールは、知覚の認知・湿潤・活動性・可動性・栄養状態・摩擦とずれの6項目をそれぞれ点数化し、褥瘡発生リスクを評価するツールです。
合計点が低いほどリスクが高く、一般的に14点以下でリスクありと評価されることが多いです。
ただし、スケールのスコアだけでなく、患者さんの全身状態・疾患・治療内容などを合わせて総合的にアセスメントすることが大切です。
ブレーデンスケールは入院時だけでなく、定期的に再評価し、状態変化に合わせて看護計画を見直すことが望ましいです。
失禁関連皮膚炎への対応
失禁関連皮膚炎(IAD)は、尿や便が皮膚に繰り返し触れることで生じる皮膚炎です。
尿・便に含まれるアンモニア・消化酵素・細菌が皮膚を刺激し、発赤・びらん・疼痛を引き起こします。
IADと褥瘡は混同されやすいですが、発生メカニズムが異なるため、対応方法も異なります。
IADの予防には、排泄後すぐに皮膚を清潔にすること・皮膚保護クリームで化学的刺激を防ぐこと・皮膚への過度な摩擦を避けることが大切です。
排泄ケアの計画を立て、定時排泄誘導・おむつの適切な選択・パッドの交換頻度の調整を行います。
皮膚洗浄は、弱酸性の洗浄剤を使用し、泡で包み込むようにやさしく洗うことが基本です。
糖尿病性足潰瘍の予防と対応
糖尿病患者さんの足は、末梢神経障害・末梢循環障害・免疫機能の低下という三つの要因が重なり、傷ができやすく、治りにくい状態です。
糖尿病性足潰瘍は、重症化すると壊疽(えそ)・下肢切断につながることがあり、患者さんの生活の質に大きな影響を与えます。
毎日のフットチェックの習慣化が、最も大切な予防策です。
足底・足趾の間・踵・爪周囲に傷・水疱・白癬(はくせん)・爪の変形がないかを確認します。
感覚障害がある患者さんは痛みを感じにくいため、傷があっても気づかないことがあります。
視力低下がある場合は、家族や医療者が代わりに確認する体制を整えます。
足洗いの後はしっかり水分を拭き取り、足趾の間も乾燥させます。
保湿剤は足底・踵に塗布しますが、足趾の間には塗布しません(白癬のリスクが高まるため)。
放射線皮膚炎への対応
頭頸部がん・乳がん・肺がんなどの放射線治療を受けている患者さんは、照射野の皮膚に放射線皮膚炎が生じることがあります。
放射線皮膚炎は、乾性落屑・湿性落屑・びらん・潰瘍と段階的に進行することがあり、照射線量・照射範囲・患者さんの皮膚状態によって重症度が異なります。
予防・ケアの基本は、照射野の皮膚への刺激を避けること・保湿を保つこと・感染を防ぐことです。
照射野への直射日光・強い摩擦・テープの貼付・制汗剤・香料入りのローションの使用は避けます。
皮膚洗浄はぬるま湯と低刺激の洗浄剤で行い、やさしく洗います。
湿性落屑が生じた場合は、滲出液の管理・感染予防・疼痛コントロールのために、適切なドレッシング材を選択して管理します。
手術創の管理と縫合不全の予防
術後の患者さんには、手術創の統合性を守ることも重要な看護の役割です。
縫合不全とは、手術で縫い合わせた創が術後に離開・感染することをさします。
低栄養・糖尿病・免疫抑制状態・肥満・喫煙習慣がある患者さんは、縫合不全のリスクが高いとされています。
術後の創観察では、発赤・腫脹・熱感・疼痛・浸出液の増加・創の離開・膿性分泌物の有無を毎日確認します。
ドレーンが留置されている場合は、排液の量・色・性状を観察し、異常があれば医師に報告します。
術後の早期離床・適切な栄養管理・血糖コントロール・禁煙も、創の治癒を促すために大切です。
看護記録への記載ポイント
組織統合性障害リスク状態に関する看護記録は、客観的かつ経時的な記載が大切です。
皮膚の状態は、部位・大きさ・色調・浸出液の有無・周囲皮膚の状態を具体的な数値や言葉で記録します。
褥瘡については、日本褥瘡学会のDESIGN-Rスケールを用いて経時的に評価・記録します。
実施したスキンケア・体位変換の内容・使用した保護材・患者さんの反応を記録します。
患者・家族への指導内容・指導に対する理解度・次回の課題を記録し、チームで情報を共有します。
多職種連携の大切さ
組織統合性障害リスク状態への対応は、看護師だけで完結するものではありません。
皮膚・排泄ケア認定看護師や皮膚科医・形成外科医との連携
難治性の創傷・褥瘡・IAD・放射線皮膚炎などは、専門的な知識と技術が必要です。
認定看護師や専門医と連携し、適切なケアと治療を提供することが大切です。
管理栄養士との連携
低栄養は組織損傷の主要な要因のひとつです。
栄養状態の評価・食事内容の調整・補助栄養食品の活用について、管理栄養士と連携して取り組みます。
理学療法士・作業療法士との連携
体位変換の方法・補助具の選択・車椅子のクッション選定・自立度の向上に向けたリハビリの取り組みを連携して進めます。
歯科衛生士との連携
口腔粘膜の組織統合性を守るためにも、口腔ケアの専門的支援が大切です。
まとめ
組織統合性障害リスク状態の看護計画は、皮膚・粘膜・創傷などの状態を日々丁寧に観察し、患者さんの疾患・栄養状態・可動性・使用薬剤・治療内容などを総合的に踏まえて立案することが大切です。
組織の損傷は、一度起きてしまうと回復に時間がかかり、患者さんの苦痛・入院期間の延長・感染リスクの上昇につながります。
だからこそ、損傷が生じる前に予防的なケアを徹底することが、看護師として最も大切な取り組みです。
体圧分散・スキンケア・栄養管理・患者教育・多職種連携という視点を組み合わせながら、患者さん一人ひとりに合った個別性の高い看護計画を立て、継続的に見直していきましょう。
この記事が、実習や臨床の現場で少しでもお役に立てれば、とてもうれしいです。








