医療の現場では、患者さんに説明をしたあとで「わかりました」と言ってもらえても、退院後に正しく行動できていないというケースが少なくありません。
「薬の飲み方を説明したはずなのに、自己判断でやめてしまっていた」「次の受診日を間違えて覚えていた」こうした場面は、実習や臨床でもよく目にすることがあります。
こうした状況の背景にあるのが、ヘルスリテラシーの不足です。
ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を正しく読み取り、理解し、活用して自分の健康管理に役立てる力のことをいいます。
この力が十分でない状態、あるいは今後不足するリスクがある状態が、ヘルスリテラシー不足リスク状態です。
この記事では、ヘルスリテラシー不足リスク状態の看護計画を、看護目標・観察計画・ケア計画・教育計画に分けてまとめました。
ヘルスリテラシー不足リスク状態とはどういう状態か
ヘルスリテラシーとは、単に医療の知識があるかどうかという話ではありません。
病院からもらった説明書を読んで内容を理解できるか、医師や看護師の説明を聞いてわからない点を質問できるか、インターネットで調べた情報の信頼性を判断できるか、こうした総合的な力を指しています。
この力が不足していると、治療や療養に関する誤解が生じやすく、服薬の自己中断、症状悪化時の受診遅れ、誤った民間療法への傾倒といった問題が起きることがあります。
高齢者、教育歴が低い方、日本語が母語でない方、認知機能に変化がある方などは、ヘルスリテラシーが低下しやすい状況にありますが、若い方や学歴が高い方でも、病気に対する不安やストレスが高い状況では情報の理解力が落ちることがあります。
看護師は、患者さんの理解力や情報活用の力をアセスメントし、その人に合った説明や支援を行うことが大切です。
なぜヘルスリテラシーに着目するのか
医療技術がどれだけ進歩しても、患者さん自身が治療や療養行動を正しく理解して実践できなければ、その効果は十分に発揮されません。
たとえば、退院後に降圧薬を飲み忘れたり、食事制限の意味を理解しないまま守れなかったりすることで、再入院につながるケースもあります。
こうした問題は、患者さんの「やる気がない」「言うことを聞かない」という問題ではなく、情報を理解して行動に移すための力が十分に育っていないことが背景にある場合が多いです。
看護師がヘルスリテラシーの視点を持つことで、患者さんの行動を責めるのではなく、どこでつまずいているのかを一緒に考える関わり方ができるようになります。
ヘルスリテラシー不足リスク状態に関連する要因
ヘルスリテラシーが不足するリスクを高める要因はさまざまです。
認知機能の低下や変化がある場合、新しい情報を記憶したり、複数の情報を整理して判断したりすることが難しくなります。
高齢者だけでなく、術後せん妄や強い不安状態にある患者さんも該当することがあります。
言語・文化的な背景の違いも大きな要因です。
日本語での読み書きが苦手な患者さんや、医療文化に馴染みのない背景を持つ方は、医療用語が並んだ説明書を読んでも内容が伝わりにくい状況があります。
視力・聴力などの感覚機能の低下も影響します。
説明書の文字が読めない、医師の説明が聞き取りにくいという状況では、情報を正しく受け取ることが難しくなります。
心理的な要因も無視できません。
診断後の強いショック、治療への恐怖、抑うつ状態などがあると、説明を受けても内容が頭に入りにくくなります。
社会的な要因として、一人暮らしで確認できる家族がいない、経済的な問題で受診や服薬を続けることが難しいといった状況も、ヘルスリテラシーの活用を妨げる要因になります。
看護目標
長期目標
退院後も自分の病気や療養方法について正しく理解し、必要な健康管理行動を継続して実践することができる。
短期目標
自分の病気・治療・療養上の注意点について、自分の言葉で説明することができる。
わからないことがあったときに、医療者に質問したり、信頼できる情報源を使って調べたりすることができる。
服薬・食事・運動・受診などの療養行動について、退院後の生活に合わせた具体的な計画を立てることができる。
観察計画|何を観察するか
患者さんが説明内容を正しく理解できているかどうかを、質問や言葉での確認を通じて把握する。
説明書や同意書などの文書を読んだときの反応(理解できているか、困惑しているか)を観察する。
医師や看護師への質問の有無と、質問の内容から理解度を把握する。
服薬状況(飲み忘れ・自己中断・用量の誤りなど)を確認する。


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受診歴・通院状況(予約通りに来院できているか)を確認する。
患者さんが健康情報をどこから得ているか(インターネット・家族・テレビなど)を把握する。
視力・聴力・認知機能など、情報を受け取る力に影響する身体機能を確認する。
家族や周囲のサポート状況・一人暮らしかどうかを把握する。
患者さんの病気に対する認識(正しく理解しているか、誤解がないか)を確認する。
説明後に患者さんが実際に行動できているかどうかを次の関わりで確認する。
ケア計画|看護師が行うケア
説明は専門用語を避け、平易な言葉で行う。
一度に大量の情報を伝えず、重要なポイントに絞って説明し、患者さんのペースに合わせて進める。
説明後に患者さんが内容を自分の言葉で言えるかどうかを確認し、理解度を把握する(ティーチバック法)。
図・イラスト・実物を使った説明を取り入れ、視覚的に理解しやすい工夫をする。
視力低下がある場合は大きな文字の資料を用意し、聴力低下がある場合は筆談や補聴器の活用を検討する。
患者さんが質問しやすい雰囲気をつくり、「どんな小さなことでも聞いてほしい」と伝える。
家族が同席できる場合は、家族への説明も合わせて行い、サポート体制を整える。
療養行動の実践状況を毎回の関わりで確認し、うまくできていることを積極的に伝えて自己効力感を高める。
多職種(医師・薬剤師・栄養士・社会福祉士など)と情報を共有し、患者さんの理解を多方面から支える。
教育計画|患者さんへの説明と指導
病気の原因・症状・治療の目的について、患者さんが理解できる言葉でわかりやすく説明する。
服薬の方法(いつ・何を・どれだけ飲むか)と、自己判断でやめてはいけない理由を説明する。
症状が悪化したときや、いつもと違う変化があったときは、速やかに受診してほしいことを伝える。
インターネットや口コミの情報には信頼性に差があることを説明し、わからないときは医療者に確認するよう伝える。
退院後の生活における注意点(食事・運動・入浴・仕事復帰の目安など)を、生活の実態に合わせて説明する。
次回受診の日時・目的・持ち物を文書で渡し、口頭でも確認する。
緊急時の連絡先(受診すべき症状・救急受診の目安)を伝え、患者さんが安心して自宅療養できるよう支援する。
ヘルスリテラシー不足リスク状態のアセスメントで押さえておきたいこと
ヘルスリテラシーのアセスメントで大切なのは、「この患者さんはなぜ情報を活用しにくいのか」を多角的に考えることです。
知識の問題なのか、言語の問題なのか、認知機能の問題なのか、心理的な問題なのか。
原因によって関わり方はまったく変わってきます。
また、患者さんが「わかりました」と言っても、本当に理解できているとは限りません。
日本の文化的な背景として、医療者に対して「わからない」と言いにくい患者さんは多くいます。
だからこそ、説明したあとに「では、ご自身の言葉でもう一度教えてもらえますか」と確認する習慣が、看護師には大切です。
患者さんの理解を確認することは、患者さんを試すことではなく、看護師側の説明が伝わっていたかどうかを確かめる行為です。
この視点を持つだけで、患者さんとの関わり方は大きく変わります。
まとめ
ヘルスリテラシー不足リスク状態の看護計画は、患者さんが自分の健康について正しく理解し、退院後も自律的に療養行動を続けられるよう支援するための計画です。
観察計画では理解度・服薬状況・情報収集の方法を把握し、ケア計画では平易な言葉と視覚的な工夫を使った説明と確認を行い、教育計画では生活に即した具体的な指導を行うことが大切です。
患者さんが「自分にもできる」と感じられる関わりを積み重ねることが、長期的な健康管理の継続につながります。
実習でヘルスリテラシーの視点を持って患者さんと関わることで、より個別性の高い看護計画を立てる力が身についていきます。








