家事行動不良は、日常生活の中で食事の準備や掃除・洗濯・買い物といった家事全般を自力で行うことが難しくなっている状態を指します。
NANDA-I看護診断のひとつとして位置づけられており、身体的・精神的・認知的な要因が複雑に絡み合って生じることが多いです。
看護学生にとっては実習先で出会う機会も少なくなく、どのようにアセスメントして計画を立てればよいか迷うことも多い診断のひとつです。
この記事では、家事行動不良の看護計画について、目標設定から具体的なケア内容まで詳しく解説していきます。
家事行動不良とはどのような状態か
家事行動不良とは、食事の用意・掃除・洗濯・買い物・ゴミ出しといった、生活を維持するために必要な家事動作を自分ひとりで行うことが困難になっている状態です。
身体機能の低下や疾患による体力消耗、認知機能の衰え、精神的な落ち込みや意欲の低下、社会的な孤立など、さまざまな背景からこの状態が引き起こされます。
高齢者に多く見られる印象がありますが、脳卒中後の後遺症を抱える中高年の方、統合失調症やうつ病などの精神疾患を持つ方、慢性疾患による体力低下が著しい方など、幅広い年齢層で生じます。
家事が行えないことは単なる不便にとどまらず、栄養不足・衛生状態の悪化・転倒リスクの上昇・社会的孤立といった二次的な問題に発展することがあるため、早期からの介入がとても大切です。
なぜ看護師がこの診断に関わるのか
在宅医療や地域包括ケアが進む今日、入院中の治療だけでなく退院後の生活を見据えた看護が重視されています。
患者さんが退院後に安全で安定した生活を送れるかどうかを判断するためには、家事動作の遂行能力をしっかりとアセスメントすることが欠かせません。
たとえば、脳梗塞後に片麻痺が残った患者さんであれば、利き手が使えなくなることで包丁を持つ・鍋をかき混ぜるといった調理動作が難しくなります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)を抱える患者さんでは、少し動くだけで息切れが強くなるため、買い物や掃除機がけといった中程度の体力を要する家事が困難になりがちです。
認知症が進んだ患者さんでは、手順を踏まえた調理や計画的な買い物が難しくなる場面が多く見られます。
看護師はこれらの背景を丁寧に読み取り、その人の生活スタイルに合った支援計画を立てることが求められます。
アセスメントのポイント
家事行動不良のアセスメントでは、以下の視点から患者さんの状態を把握します。
身体機能の評価
筋力・関節可動域・歩行能力・上肢の巧緻性(細かい動きができるか)などを確認します。
家事動作には立位保持・移動・手先の操作など、複数の身体機能が必要です。
ADL(日常生活動作)評価スケールを活用しながら、具体的にどの動作が難しいかを把握します。
認知機能の評価
買い物リストを作る・料理の手順を考える・ガスの消し忘れに気づくといった動作には、認知機能が深く関わります。
MMSEや長谷川式簡易知能評価スケールを参考にしながら、記憶・判断・遂行機能の状態を確認します。
精神・心理面の評価
うつ状態や意欲の低下、不安感が強い場合は、体が動いても家事に取り組む気力が湧かないことがあります。
患者さんの表情・言葉・生活リズムから、精神的な状態を読み取ることが大切です。
社会的背景の評価
独居か家族と同居か、近くに頼れる人がいるか、介護サービスの利用状況はどうかを確認します。
経済的な問題が食料の確保や家電・道具の利用に影響していることもあります。
住環境の評価
キッチンの広さや段差の有無、家電の使いやすさなど、住環境が家事の難しさに関係していることも少なくありません。
看護目標
長期目標
身体状況や生活環境に合わせた家事の方法を身につけ、安全で安定した日常生活を自分のペースで維持できる。
短期目標
自分が家事のどの部分に困難を感じているかを言葉で説明できる。
体力や身体機能に合わせた家事動作の工夫を、看護師やリハビリスタッフと一緒に実践できる。
必要なときに介護サービスや家族・地域の支援を活用することへの抵抗感が和らぐ。
具体的な看護計画
観察項目(観察計画)
家事動作(調理・掃除・洗濯・買い物など)のどの部分に困難があるかを具体的に確認する。
筋力・歩行能力・上肢機能・バランス能力など、身体機能の状態を観察する。
認知機能の状態(手順を追って動けるか、判断が適切にできるかなど)を確認する。
意欲・表情・睡眠状況・食欲など、精神的な状態を日々観察する。
栄養状態(体重の変化、食事内容の偏りなど)を確認する。
住環境や家族構成、現在利用しているサービスについて情報を収集する。


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転倒や事故のリスク(コンロの消し忘れ、段差での転倒など)を確認する。
ケア項目(直接ケア・援助計画)
患者さんが安心して困りごとを話せるよう、傾聴を心がけながら関わる。
作業療法士・理学療法士・管理栄養士・医療ソーシャルワーカーと連携し、多職種で支援体制を整える。
家事動作の練習が必要な場合は、リハビリスタッフと協力しながら実際の動作訓練を進める。
調理・掃除・買い物などの負担を軽減するための道具(自助具・家電の工夫など)の活用を一緒に検討する。
意欲低下や抑うつが見られる場合は、精神科医や心理士との連携を検討し、医師への報告を速やかに行う。
退院後の生活を見据えて、訪問介護・デイサービス・配食サービスなど、必要な介護サービスの導入を調整する。
指導項目(患者・家族への教育計画)
現在の身体状況や認知機能の状態に合わせて、無理のない家事の方法を具体的に説明する。
片手でできる調理の工夫、軽量の調理器具の活用、電子レンジや宅配食の利用など、生活の中でできる工夫を伝える。
疲れやすい場合は、家事を細かく分けて休憩をはさみながら行う「分割法」について説明する。
転倒や事故を防ぐための住環境の整え方(滑り止めマットの設置、コンロのセンサー機能の活用など)を伝える。
介護保険サービスの利用方法や、地域の相談窓口(地域包括支援センターなど)について情報を提供する。
家族に対して、過度な手助けではなく「できることは自分でしてもらう」という自立支援の考え方を伝える。
家事行動不良に関連しやすい疾患・状態
家事行動不良が生じやすい代表的な疾患・状態をいくつか紹介します。
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血)後遺症
片麻痺や高次脳機能障害により、調理・掃除・買い物といった複合的な動作が難しくなります。
利き手の麻痺があれば、食材を切る・瓶のふたを開けるといった細かい作業が特に困難です。
認知症
アルツハイマー型認知症では、料理の手順を覚えていられない、買い物で何を買うか忘れる、ガスを消し忘れるといった問題が起こりやすくなります。
進行するにつれて、家事全般の遂行が難しくなっていきます。
うつ病・精神疾患
意欲の低下・倦怠感・集中力の低下により、身体は動けても家事に取り組む気力が持てない状態になることがあります。
部屋が片付けられない、食事を作れないといった状態が続く場合は、精神的なケアとあわせた支援が大切です。
慢性疾患(COPD・心不全・関節リウマチなど)
体を動かすだけで強い息切れや疼痛、倦怠感が生じるため、日常的な家事動作が体力的に難しくなります。
エネルギーの温存を意識した生活の組み立て方を一緒に考えることが大切です。
整形外科的疾患(骨折後・人工関節置換術後など)
術後の可動域制限や荷重制限により、掃除機がけや重い荷物を持つ動作が一定期間できなくなります。
リハビリの進捗に合わせて、段階的に家事動作を再開していく計画を立てます。
多職種連携と社会資源の活用
家事行動不良への対応は、看護師ひとりで行うものではありません。
作業療法士は、日常生活動作の評価と訓練の専門家として、家事動作の回復や代償手段の獲得をサポートします。
管理栄養士は、調理が難しい患者さんの栄養状態を評価し、食事内容の工夫や配食サービスの活用について助言します。
医療ソーシャルワーカーは、介護保険の申請支援・地域サービスとの調整・退院後の生活環境の整備を担います。
これらの職種と連携しながら、患者さんが退院後も安全に生活できる体制を整えることが、看護師の重要な役割です。
また、訪問介護・配食サービス・地域のボランティア活動など、社会資源を積極的に活用することで、患者さんの生活の質を守ることができます。
まとめ
家事行動不良の看護計画では、患者さんが「なぜ家事が難しくなっているのか」という背景をしっかりとアセスメントすることが出発点になります。
身体機能・認知機能・精神状態・社会的背景・住環境のすべてを視野に入れて情報を集め、その人の生活全体を支える計画を立てることが大切です。
長期目標として「自分のペースで安定した生活を維持できる」という姿をめざしながら、短期目標では「困りごとを言葉にする」「一緒に工夫を実践する」「支援を受け入れる」という段階的なステップを踏んでいきます。
多職種と連携しながら、患者さんとその家族を丸ごと支える視点を持って関わることが、家事行動不良の看護における大切な姿勢です。
実習や日々の学習の中で、ぜひこの記事を参考にしてみてください。








