健康を維持するための行動が取れなくなるリスクは、特定の疾患を持つ患者さんだけに起こることではありません。
退院後の生活環境の変化や、慢性疾患を抱えながらの日常生活の中で、誰もが陥る可能性がある状態です。
看護師はこの「健康維持行動不良リスク状態」を早期に察知し、患者さんが自分自身の健康を守る行動を継続できるよう支援することが大切です。
今回は、この看護診断の概要から看護目標、具体的な看護計画まで、実習でも活用できる形で詳しく解説していきます。
健康維持行動不良リスク状態とはどういう状態か
健康維持行動不良リスク状態とは、患者さんが現時点では健康管理に取り組めているものの、今後その行動が継続できなくなるリスクがある状態を指します。
NANDA-I看護診断では、この診断は「現在は問題が起きていないが、将来的にリスクが高い」という予防的な視点から立案されます。
つまり、今すぐ問題が起きているわけではなく、放置するとやがて健康を損なう行動パターンに陥る可能性がある、という段階での介入が目的となります。
健康維持行動とは、定期的な受診、内服薬の自己管理、食事・運動・睡眠の習慣化、禁煙・節酒、定期検診の受診などを指します。
これらの行動が崩れると、慢性疾患の悪化、再入院、生活習慣病の発症・進行など、患者さんの生活の質に大きく影響する問題が生じます。
看護師は患者さんの背景にある要因を丁寧に把握しながら、健康行動を維持・継続できる環境と知識を整えていく役割を担います。
どのような患者さんに立案されやすいか
この看護診断は、以下のような状況にある患者さんに立案されることが多いです。
退院を控えており、今後の自己管理が必要な慢性疾患(糖尿病・高血圧・心疾患・慢性閉塞性肺疾患など)を持つ患者さんに多く見られます。
生活環境の変化(転居・就職・家族構成の変化など)によって、これまでの健康習慣が崩れる可能性がある場合も該当します。
経済的な理由から定期受診が難しくなる可能性がある場合や、一人暮らしでサポートが乏しい場合にもリスクが高くなります。
また、疾患や治療に対する理解が十分でなく、「自分はもう大丈夫」「薬はやめても平気」といった誤った認識を持っている患者さんにも注意が必要です。
精神的なストレスや抑うつ傾向がある患者さんも、健康行動を維持しにくい状況に置かれやすいです。
こうした要因が一つでもある場合、今後の健康行動の継続が難しくなるリスクがあると判断し、予防的に看護計画を立案することが大切です。
健康行動が崩れる背景にある要因
健康維持行動が崩れやすい背景には、複数の要因が絡み合っていることが多いです。
まず、疾患や治療に対する知識の不足があります。
「なぜこの薬を飲み続けなければならないのか」「食事制限をしないとどうなるのか」という理解が不十分だと、患者さんの行動変容につながりにくくなります。
次に、自己効力感の低さが挙げられます。
「自分にはどうせできない」「続けても意味がない」という気持ちがあると、健康行動を始めること自体が難しくなります。
社会的サポートの不足も大きな要因です。
家族や友人からの声掛けや支援がない環境では、孤独感の中で健康行動を維持し続けることは難しくなります。
さらに、経済的な困難や仕事・育児との両立など、生活上の制約が重なると、受診や薬の継続が後回しになりやすくなります。
看護目標
長期目標
退院後も自分の疾患に合った健康維持行動を継続し、疾患の悪化や再入院を防ぐことができる。
短期目標
自分の疾患の特徴と、健康行動を継続しないことで起こりうる影響について説明できる。
内服・食事・運動・受診などの自己管理項目を確認し、自分なりの管理方法を言葉にできる。
退院後に困ったときの相談先と受診のタイミングについて把握できる。
観察計画(オーピー)
現在の健康管理行動の実施状況(内服の自己管理、食事・運動習慣、定期受診の継続状況)を確認します。
疾患や治療に対する患者さんの理解度・認識を把握します。
健康行動に対する意欲・自信・関心の程度を観察します。
生活習慣(睡眠・飲酒・喫煙・食事内容)の現状を把握します。
家族や周囲のサポート状況、患者さんの社会的背景(仕事・経済状況・居住環境)を確認します。


圧倒的に早い
プロが作った参考例があれば、それを見て学べます
✓ 一から考える時間がない → 見本で時短
✓ 完成形の見本で理解したい → プロの実例
✓ 自分の事例に合わせた例が欲しい → カスタマイズ可
参考資料提供|料金19,800円〜|5年の実績|提出可能なクオリティ
精神的な状態(不安・抑うつ・ストレスの有無)を観察します。
バイタルサインの変動や、疾患に関連した身体症状の変化を確認します。
退院後の生活環境の変化(独居・転居・介護負担など)についても把握します。
自己管理の記録(血糖値・血圧・体重など)がある場合は、その記録状況と正確さを確認します。
ケア計画(ティーピー)
患者さんの現在の生活リズムや価値観を尊重しながら、実行可能な自己管理方法を一緒に考えます。
内服管理が難しい場合は、薬の一包化やお薬カレンダーの活用など、生活に合った工夫を提案します。
食事管理が必要な患者さんには、管理栄養士と連携し、実際の生活に合った食事指導が受けられるよう調整します。
運動習慣の形成に向けて、理学療法士と連携しながら、無理のない身体活動の計画を立てます。
患者さんが抱える不安や悩みを傾聴し、自己管理に向けた気持ちの整理ができるよう関わります。
退院後の定期受診の予約確認・交通手段の確認など、受診継続に向けた環境整備を行います。
必要に応じてソーシャルワーカーと連携し、経済的支援や地域サービスの利用につなぎます。
家族への説明を行い、退院後のサポート体制を一緒に考えます。
教育計画(イーピー)
患者さんの疾患の病態生理と、なぜ継続的な自己管理が必要なのかを分かりやすく説明します。
内服の目的・用法・用量・飲み忘れたときの対応について丁寧に伝えます。
食事管理が必要な場合は、具体的な食品の選び方や外食時の工夫について説明します。
血圧・血糖・体重などの自己測定の方法と、記録の付け方を実際に練習しながら指導します。
症状が悪化したときのサインと、受診が必要なタイミングを具体的に伝えます。
禁煙・節酒が必要な患者さんには、その理由と継続のコツについて説明します。
健康行動を継続するためのセルフモニタリングの方法(手帳・アプリの活用など)を紹介します。
退院後に利用できる地域の医療・介護・保健サービスの情報を提供し、一人で抱え込まない環境づくりを促します。
看護師として意識したいこと
健康維持行動不良リスク状態に対する看護で最も大切なのは、患者さんを「指導される側」として一方的に関わらないことです。
患者さんには、これまでの生活の中で積み上げてきた価値観や習慣があります。
その人らしい生活を尊重しながら、「どうすれば無理なく健康行動を続けられるか」を一緒に考える姿勢が、本当の意味での自己管理支援につながります。
また、この診断は「今は問題がない」という段階での立案です。
そのため、患者さん自身が危機感を感じにくく、支援に対して消極的な反応を示すこともあります。
そういったときこそ、無理に動機づけを押しつけるのではなく、患者さんの言葉に耳を傾けながら、小さな変化を一緒に喜べるような関わりが大切です。
退院後の生活は、病院という安全な環境から離れた中で続いていきます。
看護師が関われる時間は限られていますが、その時間の中で患者さんが「自分でできる」という自信を持てるよう支援することが、退院後の健康維持につながります。
実習で使うときのポイント
実習でこの看護診断を立案する際は、「なぜこの患者さんにこの診断が必要なのか」という根拠を明確にすることが大切です。
患者さんの情報収集の段階で、現在の自己管理の状況・生活環境・疾患理解・家族サポートの有無などをしっかり把握しておきましょう。
アセスメントの段階では、単に「自己管理できていない」と書くのではなく、「なぜ管理が難しい状況にあるのか」という背景要因を掘り下げて記載することが、個別性のある看護計画につながります。
観察計画・ケア計画・教育計画を立てる際は、それぞれが連動するように意識し、根拠を持って記載するようにしましょう。
指導者から「なぜこの介入をするのか」と問われた際に、病態や患者さんの背景に基づいた説明ができると、実習評価も上がります。
健康維持行動不良リスク状態の看護計画は、慢性疾患を抱える患者さんへの関わりの中で特によく立案される診断です。
ぜひ今回の内容を参考に、患者さんの生活全体を見渡した視点で看護計画を作成してみてください。








