家事や家政行動は、毎日の生活を成り立たせるうえでとても大切な活動です。
料理・掃除・洗濯・買い物・金銭管理など、これらの行動がスムーズに行えなくなると、生活の質が大きく低下し、健康状態にも影響を与えます。
今回取り上げる「家事家政行動促進準備状態」は、現時点では家事や家政行動に何らかの制限や困難がある状態ではあるものの、本人に改善への意欲や動機づけがあり、適切な支援によってより良い状態に向かうことができると判断されるケースに用いる看護診断です。
病気や手術、加齢による身体機能の低下、精神的な落ち込みなどを経験した後に、「また自分でできるようになりたい」と感じている患者さんに対して、看護師がどのようにかかわるべきかを、具体的な看護計画とともにまとめました。
家事家政行動促進準備状態とはどういう状態か
NANDA-Iの看護診断において、「家事家政行動促進準備状態」は、個人や家族が日常の家事・家政行動をより効果的に行える状態に向かおうとしており、そのための支援が有効に働く可能性が高い状態を指します。
重要なのは、この診断が「できていない」という問題の指摘ではなく、「もっとできるようになろうとしている」という前向きな準備状態を対象にしているという点です。
たとえば、入院治療を終えて退院を控えた患者さんが、「家に帰ったら自分で料理をしたい」「掃除が自分でできるようになりたい」と話している場面、あるいはリハビリを進めながら在宅生活への移行を目指している高齢の方が、日常動作の回復に積極的に取り組んでいる場面などが、この診断が当てはまる状況として考えられます。
看護師は、その意欲を大切にしながら、患者さんが現実的な目標に向かって歩めるよう支援する役割を担います。
家事家政行動が難しくなる背景
家事や家政行動が制限される背景には、様々な要因があります。
身体的な要因としては、手術後の疼痛・筋力低下・関節可動域の制限・易疲労性などが挙げられます。
脳卒中後の麻痺や骨折後のリハビリ中など、身体機能の回復が途中の段階にある患者さんでは、以前と同じように動けないもどかしさを感じながら日常生活を送っていることが少なくありません。
心理的な要因としては、病気や入院による意欲の低下・気分の落ち込み・自己効力感の低下などが挙げられます。
「どうせ自分にはできない」「また失敗したらどうしよう」という気持ちが、行動を起こす力を弱めてしまうことがあります。
環境的な要因としては、住環境の問題(段差・収納の高さ・動線の複雑さ)や、家族からの支援が得にくい状況、経済的な余裕のなさなども関わります。
これらの要因を丁寧にアセスメントしたうえで、患者さんの強みや意欲を活かした看護介入を計画することが大切です。


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アセスメントの視点
身体機能の評価
- 上肢・下肢の筋力と関節可動域の状態
- 歩行能力・移動動作の自立度
- 手先の細かい動作(把持力・巧緻性)の程度
- 疲れやすさの程度と休息をとることで回復するかどうか
- 痛みの有無と日常動作への影響
認知・精神機能の評価
- 記憶力・判断力・注意力の状態
- 気分の落ち込みや意欲低下の程度
- 家事を行うことへの自信の程度
- 生活リズム(睡眠・食事・活動)の整い具合
生活環境の評価
- 住居の構造(バリアフリーかどうか・台所の使いやすさ)
- 使用している補助具・福祉用具の状況
- 家族や介護者のサポート体制
- 地域の福祉サービスの利用状況
患者さんの意欲・目標の確認
- 「どんな家事から始めたいか」という具体的な希望
- 「どの程度自立したいか」という目標の水準
- 過去の生活でどのような役割を担っていたか
看護目標
長期目標
退院後の在宅生活において、自分のペースで料理・掃除・洗濯などの家事行動を安全に行うことができる。
短期目標
- 自分の身体機能の現状と、家事を行ううえで気をつけるべき点を正しく理解することができる。
- 簡単な家事(食事の準備・部屋の片付けなど)を疲労感や痛みに注意しながら、段階的に行うことができる。
- 困ったときに周囲に助けを求めたり、福祉サービスを活用したりするための方法を説明することができる。
看護介入
観察項目(観察計画)
患者さんの状態を把握するために、以下の項目を丁寧に観察します。
- バイタルサイン(血圧・脈拍・体温・呼吸数)の変化
- 日常動作(食事・更衣・整容・入浴・移動)の自立度の変化
- 疲労感・倦怠感・疼痛の出現状況と程度
- 家事に取り組む様子と達成できたときの反応
- 気分・意欲の変化(落ち込み・不安・やる気の波など)
- 睡眠の質と日中の活動量のバランス
- 家族や支援者との関係性とサポートの実際
- 退院後の生活環境に関する情報の収集状況
直接的な看護ケア(ケア計画)
観察をもとに、以下のケアを実施します。
- 段階的な家事動作の練習支援 いきなり全ての家事を行おうとするのではなく、簡単な動作から少しずつ始めることを一緒に計画します。 たとえば、最初は「お茶を自分で入れる」「テーブルを拭く」など、短時間で終わる動作から始め、成功体験を積み重ねることで自信につなげます。
- 疲労と痛みのコントロール 家事を行う前後の疲労感や痛みを確認し、無理のないペース配分を一緒に考えます。 疲れたらすぐに休む・一度に多くのことをやろうとしないという習慣をつけるよう支援します。
- リハビリテーションスタッフとの連携 理学療法士・作業療法士と情報を共有し、家事動作の練習を日常のリハビリにも組み込んでもらえるよう調整します。 作業療法士による台所での動作確認や、実際の家事動作を想定した練習が有効です。
- 住環境の調整支援 退院後の住居について、危険な箇所がないかを確認し、手すりの設置・段差の解消・よく使うものを取り出しやすい位置に置く工夫などを提案します。 必要に応じて、社会福祉士やケアマネジャーと連携して、住宅改修や福祉用具の導入を調整します。
- 意欲の維持と心理的なサポート 「できた」という小さな成功を言葉にして伝え、患者さんの自己効力感を高めます。 「まだこれだけしかできない」という否定的な見方ではなく、「ここまでできるようになった」という視点で一緒に振り返る時間を大切にします。
患者教育(教育計画)
患者さん自身が安心して家事に取り組めるよう、以下の内容を伝えます。
- 自分の体のサインを知ることの大切さ 疲れ・痛み・めまいなどの体のサインを無視して無理をすると、転倒や症状の悪化につながる可能性があります。 「少し休んでから続ける」「今日はここまでにする」という判断ができることが、長く家事を続けるうえでとても大切だと伝えます。
- 家事動作の工夫と省エネの方法 重いものを持つときの正しい姿勢・膝を曲げて腰への負担を減らす動き方・椅子に座って行える家事の工夫など、身体への負担を減らしながら家事を行う方法を具体的に説明します。 調理器具や掃除道具の選び方(軽量のもの・長柄のもの・電動タイプなど)についても情報を提供します。
- 一人で抱え込まないことの大切さ 家族やヘルパー・デイサービスなどの福祉サービスをうまく使いながら、全部を自分一人でやろうとしないことが大切だと伝えます。 助けを求めることは「できない人」ではなく、「賢く生活している人」だという見方を一緒に話し合います。
- 地域のサービスや制度の活用 介護保険サービス・訪問介護・配食サービス・家事援助サービスなど、在宅での生活を支える制度やサービスについて情報を提供します。 ケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談方法も伝えておくと、退院後に安心して生活できます。
- 緊急時の対応方法 体調が急に悪化したとき・家の中で転んだとき・家事中に痛みが強くなったときなど、緊急時にどう対応するかをあらかじめ考えておくよう促します。 緊急連絡先・かかりつけ医への連絡方法・救急車の呼び方なども、退院前に一緒に確認します。
家族へのかかわり
患者さんが家事家政行動の回復を目指しているとき、家族の理解と協力がとても大きな力になります。
「全部やってあげる」という関わり方は、一見やさしいように見えますが、患者さんの自立への意欲を削いでしまうこともあります。
看護師は家族に対して、患者さんが自分でできることはできるだけ自分でやってもらう・見守りながら必要なときだけ手を差し伸べるという関わり方の大切さを伝えます。
また、家族自身も「どこまで手伝えばいいのか」と迷っていることが多いため、具体的な場面を例に挙げながら、サポートの仕方を一緒に考える機会をつくることが大切です。
退院後の生活を見据えた支援
この看護診断では、入院中のかかわりだけで終わらせず、退院後の生活にどうつなげるかという視点が欠かせません。
退院前カンファレンスを活用し、医師・看護師・リハビリスタッフ・ケアマネジャー・訪問看護師・家族が一堂に集まって、退院後の生活プランを具体的に話し合う場をつくります。
患者さん自身も「自分の生活をどうしたいか」という希望をしっかり伝えられるよう、カンファレンス前に気持ちや目標を整理するサポートを行います。
退院後も定期的なフォローアップが受けられるよう、外来・訪問看護・地域の支援者とのつながりを整えておくことが、長期的な生活の安定につながります。
まとめ
家事家政行動促進準備状態の看護計画では、患者さんの「またできるようになりたい」という気持ちを中心に置いたかかわりが大切です。
できないことへの対処だけでなく、できることを一緒に見つけ、少しずつ広げていくという視点が、患者さんの自信と生活の質を高めます。
身体・心理・環境の三つの側面からしっかりとアセスメントを行い、多職種と連携しながら退院後の生活を見据えた支援を続けていきましょう。
看護師が「一緒に考えてくれる人」として寄り添い続けることが、患者さんの自立への大きな後押しになります。








