熱傷は、皮膚や粘膜が熱・化学物質・電気・放射線などによってダメージを受ける外傷です。
重症度によっては生命に関わることもあり、看護師として正確なアセスメントと計画的な介入が重要になります。
今回は熱傷リスク状態にある患者さんへの看護計画について、看護学生や新人看護師の方にも分かりやすく解説していきます。
熱傷リスク状態とは
熱傷リスク状態とは、まだ熱傷を発症していないものの、何らかの要因によって熱傷を負う可能性が高いと判断される状態のことです。
高齢者や認知機能が低下した患者さん、感覚障害のある患者さん、乳幼児などがこのリスクに当てはまります。
日常生活の中で熱いものに触れたり火を扱ったりする機会がある場合に、その危険性を予測して予防的にケアを行うことが看護師の大切な役割です。
熱傷の分類と重症度
看護計画を立てるうえで、まず熱傷の基本的な分類を押さえておくことが大切です。
熱傷深度はⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3段階に分けられます。
Ⅰ度熱傷は表皮のみのダメージで、発赤・熱感・疼痛が見られます。
Ⅱ度熱傷は真皮に達するもので、浅達性と深達性に分かれます。
浅達性Ⅱ度では水疱形成と強い疼痛が見られ、深達性Ⅱ度では疼痛が比較的少なく、皮膚の色調変化が認められます。
Ⅲ度熱傷は皮下組織にまで達する最も重いもので、皮膚は白色や褐色・黒色となり、神経も障害されるため疼痛を感じにくいという特徴があります。
熱傷面積の評価には「9の法則」が用いられます。
成人では頭部・頸部が9%、上肢が各9%、体幹前面・後面が各18%、下肢が各18%、会陰部が1%とされています。
熱傷面積が体表面積の15〜20%を超えると、循環血液量の減少によるバーンショックが起こりやすくなります。
熱傷リスク状態になりやすい人の特徴
どのような患者さんが熱傷リスク状態になりやすいのかを理解しておくと、アセスメントの精度が上がります。
高齢者は皮膚の菲薄化・感覚機能の低下・反応速度の遅れから、熱傷を負いやすい状態にあります。
認知症の患者さんは危険認識が低下しているため、暖房器具や調理中の火に接触してしまうことがあります。
糖尿病性神経障害がある患者さんは末梢の感覚が低下しているため、熱さを感じにくく、気づいたときにはすでに熱傷を負っていることも少なくありません。
脊髄損傷や脳卒中後遺症で感覚障害がある患者さんも同様のリスクがあります。
乳幼児は皮膚が薄く体表面積に対して体重が少ないため、少ない熱量でも重篤な熱傷になりやすい特徴があります。
また、意識障害や鎮静中の患者さんは自ら危険を回避できないため、医療現場でのケア中にも熱傷が起きる可能性があります。
低温熱傷は44〜50℃程度の比較的低い温度でも長時間接触することで発生し、見た目より深部へのダメージが大きいことが特徴です。
電気毛布・湯たんぽ・カイロなどの使用時には、低温熱傷が生じるケースが見られます。
看護目標
長期目標
療養期間を通じて、患者さんが熱傷を発症することなく安全な日常生活を送ることができる。
短期目標
短期目標① 患者さんおよびご家族が熱傷リスクとなる要因を理解し、日常生活の中で危険を予防する行動をとることができる。
短期目標② 皮膚の状態・感覚機能・日常生活動作に応じた環境整備が整い、危険な熱源との接触が防がれている。
短期目標③ 担当看護師が定期的に皮膚の状態を確認し、熱傷の早期発見・早期対処ができる体制が整っている。
観察計画
観察計画では、患者さんの状態を丁寧にアセスメントするために必要な項目を挙げます。
皮膚の状態の観察
発赤・水疱・びらん・潰瘍・色調の変化・乾燥・浮腫などの有無を毎日確認します。
とりわけ骨突出部・踵・仙骨部・下腿などは接触しやすい部位のため、重点的に見るようにします。
感覚機能の評価
触覚・痛覚・温度覚の低下がないかを確認します。
糖尿病や末梢神経障害がある患者さんでは、感覚の状態を定期的に評価することが大切です。
認知機能・判断能力の評価
長谷川式簡易知能評価スケールなどを活用し、危険認識の程度を把握します。
日常生活動作の評価
自分でお湯を沸かす・調理をする・入浴するなどの動作がどの程度自立しているかを確認します。
介助が必要な場面を洗い出し、危険が生じやすい場面を把握します。
使用している器具・環境の確認
電気毛布・湯たんぽ・カイロ・ホットパック・赤外線ランプなど、熱源となりうる器具の使用状況を確認します。
療養環境の中に危険な熱源がないかも合わせて見ておきます。
バイタルサインの確認
体温・脈拍・血圧・呼吸数を定期的に確認し、全身状態の変化を早期にとらえます。


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ケア計画
ケア計画では、熱傷リスクを下げるために看護師が行う直接的なケアの内容を整理します。
安全な療養環境の整備
患者さんの手の届く範囲に熱源となるものを置かないよう、環境を整えます。
暖房器具との距離を確保し、直接皮膚に触れないよう工夫します。
湯たんぽ・カイロ使用時の適切な管理
湯たんぽを使用する場合は、お湯の温度を60℃以下に設定し、必ずカバーをかけた状態で使用します。
皮膚との間にタオルなどを挟み、30分ごとに皮膚の状態を確認します。
カイロを使用する場合は、直接皮膚に当てず、衣類の上から使用するよう徹底します。
入浴・清拭時の温度管理
入浴時のお湯の温度は38〜40℃を目安とし、看護師が温度計で確認してから患者さんが入るようにします。
感覚障害がある患者さんでは、必ず看護師が温度を確認してから清拭を行います。
皮膚の保湿ケア
乾燥した皮膚は外部刺激に対する抵抗力が低くなるため、保湿剤を用いたスキンケアを日課として行います。
体位変換・圧迫予防
長時間同じ姿勢でいると、皮膚が圧迫されて血流が悪くなり、熱傷リスクが高くなります。
定期的な体位変換を行い、骨突出部や皮膚の色調を確認するようにします。
認知機能が低下した患者さんへの見守りの強化
一人での調理や暖房器具の操作が危険と判断される場合は、家族と連携して見守りの体制を整えます。
教育計画
教育計画では、患者さん本人やご家族に対して行う説明・指導の内容を整理します。
熱傷リスクについての説明
患者さんの状態(感覚障害・認知機能低下など)によって、熱傷が起きやすいことを分かりやすく説明します。
なぜ注意が必要なのかを理解してもらうことで、ご家族の協力を得やすくなります。
低温熱傷の怖さを伝える
低温熱傷は痛みが少なく気づきにくいこと、気づいたときには皮下組織まで障害が及んでいることがあると伝えます。
湯たんぽ・カイロの正しい使い方の指導
使用する際の温度の目安・皮膚への直接接触を避ける方法・定期的な確認の必要性について丁寧に説明します。
入浴時の注意点の指導
お湯の温度を必ず確認してから入ること、感覚が鈍い部位は目で確認しながら入浴することを伝えます。
受診の目安を伝える
皮膚に発赤・水疱・色調の変化が見られた場合は、すぐに医療機関を受診するよう説明します。
痛みがないからといって放置せず、少しでも皮膚の変化に気づいたら早めに相談するよう伝えます。
熱傷リスクの高い患者さんへの看護で大切にしたいこと
熱傷リスク状態の患者さんへの看護では、リスクを予測して先手を打つ姿勢がとても大切です。
熱傷は発症してしまうと治癒までに時間がかかり、患者さんの苦痛も大きくなります。
感染リスクも高くなり、長期的な治療が必要になることも少なくありません。
だからこそ、発症前の段階でしっかりとアセスメントを行い、個別性のある看護計画を立てることが重要です。
患者さんの感覚機能・認知機能・日常生活動作・生活環境をトータルに評価したうえで、その患者さんに合ったケアを考えていく必要があります。
また、看護師だけで抱え込まず、ご家族・介護士・理学療法士・作業療法士・医師など多職種と連携することで、より安全な療養環境を整えることができます。
患者さんが安心して療養生活を送れるよう、熱傷予防の視点を日々のケアの中に意識的に取り入れていきましょう。
まとめ
熱傷リスク状態の看護計画では、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
熱傷深度・面積・原因を理解し、どの患者さんがリスクが高いかを正確にアセスメントすること。
感覚障害・認知機能低下・高齢・乳幼児・意識障害など、リスク因子を丁寧に評価すること。
観察計画・ケア計画・教育計画をバランスよく立て、予防的なケアを実践すること。
低温熱傷への注意を忘れず、湯たんぽやカイロの使用時には皮膚の状態を定期的に確認すること。
患者さんやご家族への丁寧な説明と指導を行い、自己管理の力を育てること。
熱傷は予防できる外傷です。
看護師として予防の意識を高く持ち、患者さんの安全を守るケアを続けていきましょう。








