「来月の看護研究発表でパワポを作らないといけないけど、何から手をつければいいかわからない」
「データはあるけど、スライドにどう落とし込めばいいかわからない」
そんな現役看護師さんのために、この記事では病棟看護師の手指衛生遵守率向上をテーマにした研究を題材に、実際のスライド例を13枚すべて画像付きで公開します。
院内発表でも看護学会発表でも、この記事の構成をそのまま参考にすれば形になります。
結論:看護研究の発表スライドは12〜15枚・10〜15分が標準
院内研究発表会や看護学会の一般演題では、スライド枚数は12〜15枚、発表時間は10〜15分が一般的な目安です。
1枚あたり約1分で説明する計算になります。学生のケーススタディ発表(7〜8分)よりも長く、量的データや統計検定を含めるため、結果セクションが厚くなる傾向があります。
迷ったら13枚で組み立てるのが一番安定します。
看護研究発表で必要なスライド構成(全13枚)
看護研究のパワポは、次の13枚で組み立てるのが王道です。
| 枚数 | スライドタイトル | 役割 |
|---|---|---|
| 1枚目 | 表紙 | タイトルと発表者を伝える |
| 2枚目 | はじめに(背景) | 研究の必要性と現状 |
| 3枚目 | 研究目的 | 何を明らかにするか |
| 4枚目 | 研究方法 | デザイン・対象・分析 |
| 5枚目 | 倫理的配慮 | 審査承認と参加者保護 |
| 6枚目 | 結果① 対象者属性 | 基本統計を提示 |
| 7枚目 | 結果② 主要結果 | メインの統計検定結果 |
| 8枚目 | 結果③ サブ分析1 | 項目別の詳細結果 |
| 9枚目 | 結果④ サブ分析2 | 属性別の比較 |
| 10枚目 | 考察① 結果の解釈 | 先行研究と比較した解釈 |
| 11枚目 | 考察② 限界と示唆 | 研究の限界と臨床への示唆 |
| 12枚目 | 結論 | 研究の核心メッセージ |
| 13枚目 | 引用・参考文献 | 出典と謝辞 |
この順番には根拠があります。研究発表は「なぜ研究が必要か→何を明らかにするか→どう調べたか→何がわかったか→それは何を意味するか」という科学的論証の流れに沿って組み立てるのが原則です。
順番を入れ替えると論理の連続性が崩れ、聴き手が「今どこの話をしているのか」を見失います。
各スライドに何を書くか|手指衛生研究の事例で解説
ここからは実際のスライド例を使って、各スライドに何を書けばいいかを具体的に説明します。
事例設定は次の通りです。
- 研究テーマ:病棟看護師の手指衛生遵守率向上に向けた啓発介入の効果
- 研究デザイン:介入前後比較研究(準実験的研究)
- 対象:A病院内科病棟の看護師32名
- 研究期間:6か月間
1枚目:表紙
表紙には次の情報を入れます。
- 研究タイトル
- 所属(病院名・部署)
- 発表者氏名
- 共同研究者氏名
- 発表日
- 発表会の名称(院内発表会名・学会名など)
タイトルは40字以内が目安です。「○○の効果」「○○の取り組み」のように、研究の介入と結果を端的に表す形にします。
看護学会で発表する場合は、抄録のタイトルとスライドのタイトルを完全に一致させてください。微妙に違うと、座長や聴衆の混乱を招きます。
2枚目:はじめに(研究背景)
「はじめに」では、なぜこの研究を行うのかを論理的に示します。
書く順番は3段階。
- 大きな課題(その分野で何が問題になっているか)
- 当院・当病棟の現状(なぜ自分たちにとって重要か)
- 先行研究の到達点(既に何が明らかになっているか)
ここで重要なのは、必ず数値データと文献引用を入れることです。「手指衛生は重要だと言われている」だけでは説得力がゼロです。WHOの推奨値、当院の現状値、先行研究の知見を具体的に示します。
引用文献は2〜3件にとどめます。多すぎると論点がぼやけます。
3枚目:研究目的
研究目的は1文で簡潔に書きます。
「○○を対象に、○○の効果を明らかにする」という型にはめると失敗しません。
リサーチクエスチョン(RQ)を3つ程度に絞って明示すると、後の結果スライドとの対応関係が明確になります。聴き手も「何を調べた研究なのか」が一発で伝わります。
目的とRQが曖昧な研究は、結果の解釈も曖昧になります。ここでビシッと決めることが、発表全体の質を左右します。
4枚目:研究方法
研究方法は、第三者が同じ研究を再現できる詳細さで書きます。
必須項目は次の6つ。
- 研究デザイン(横断研究・前後比較・無作為化比較試験など)
- 対象(誰を、何人、どう選んだか)
- 期間
- 介入内容(介入研究の場合)
- 測定方法・データ収集方法
- 分析方法(統計手法・有意水準・使用ソフト)
院内発表では細かすぎるくらいで丁度いいです。質疑応答で「対象は何人ですか?」「分析ソフトは?」と聞かれて即答できないと、研究の信頼性に疑問を持たれます。
5枚目:倫理的配慮
倫理的配慮は看護研究で必須のスライドです。省略すると審査で必ず指摘されます。
記載すべき項目は次の通り。
- 倫理審査委員会の承認(承認番号・承認日)
- 参加者への説明と同意取得方法
- 参加の自由意思の保証
- 匿名化の方法
- データの保管・廃棄方法
院内発表では1行ずつ簡潔に箇条書きでOKです。学会発表ではもう少し詳しく書く必要があります。
倫理審査を受けていない研究は発表できません。これから研究を始める方は必ず最初に倫理審査を申請してください。
6枚目:結果① 対象者の属性
結果セクションの最初は、対象者の属性を提示します。
記載項目は次の通り。
- 対象者数(回収率・有効回答率)
- 性別
- 年齢(平均±SD)
- 経験年数・職位など研究に関連する属性
表形式で提示すると一覧性が高まります。文章で羅列すると読みにくく、聴き手が情報を整理できません。
欠損値があった場合は正直に書きます。「欠損なし」「○名から無回答あり」など、データの透明性を示すことで研究の信頼性が高まります。
7枚目:結果② 主要結果
結果セクションの中心。最も伝えたい数値を、グラフと統計検定の結果で示します。
必須要素は次の3つ。
- グラフ(変化が一目でわかる形)
- 統計検定の結果(p値・95%信頼区間)
- 主要メッセージを文字で強調
グラフは2D・色は2〜3色までに絞ります。3Dグラフは数値が読み取りにくいので使ってはいけません。
p値は「p < 0.05」ではなく「p < 0.001」のように具体的に書く方が望ましいです。論文水準ではt値や自由度も併記します。
8枚目:結果③ タイミング別の詳細
主要結果に続いて、サブ分析の結果を提示します。
項目別、群別、時期別など、研究目的に応じた詳細データを示すスライドです。
表形式が読みやすいですが、行数が多くなる場合は重要な行を太字や色付きで強調します。すべての行を均等に並べると、どこが重要なのかわからなくなります。
有意差があった項目には「*」や「p < 0.05」を明記します。慣例に従えば、聴き手も統計の専門家もすぐに理解できます。
9枚目:結果④ 経験年数別の比較
属性別のサブ分析もあれば提示します。
看護研究では「経験年数別」「部署別」「年齢別」など、看護師の特性で層別化する分析が定番です。


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ここで意外な結果が出たら、それは考察の良いネタになります。「予想と違う結果」こそが研究の面白さです。隠さず正直に提示してください。
ただし、サブ分析を増やしすぎると検定の多重性問題が生じます。研究計画の段階で分析項目を決めておくのが望ましいです。
10枚目:考察① 結果の解釈
考察は研究の質を決める最重要セクションです。
書き方の基本構造は次の通り。
- 結果の要約(1〜2文)
- なぜその結果になったか(自分の解釈)
- 先行研究との比較(一致点・相違点)
- 看護学的な意味づけ
必ず文献を引用してください。「私はこう思います」だけでは感想文です。「Pittet(2020)も同様に報告している」のように、自分の解釈を文献で裏付けることで考察になります。
結果セクションの内容を繰り返さないことも重要です。考察は「結果が何を意味するか」を書く場所であり、結果の再掲ではありません。
11枚目:考察② 研究の限界と示唆
研究には必ず限界があります。それを正直に示すのが研究者の誠実さです。
典型的な限界は次の通り。
- サンプルサイズ・施設数の限界
- 研究デザインの限界(選択バイアス・観察者効果など)
- 未測定の交絡因子
- 結果の一般化可能性の限界
限界を書いた上で、看護実践への示唆を提示します。「この研究から何が言えるか」「臨床現場でどう活かせるか」を具体的に書くと、発表に深みが出ます。
限界を隠す研究は信頼されません。逆に、限界を明確に書く研究は質疑応答でも評価されます。
12枚目:結論
結論は研究の核心メッセージを1〜2文で示します。
研究目的に対応する形で書くのが鉄則です。「○○を明らかにすることを目的とした。その結果、○○が明らかになった」という対応関係を作ります。
本研究で明らかになったことを箇条書きで3つ程度示すと、聴き手が要点を把握しやすくなります。
結論で新しい話題を出してはいけません。本論で議論していない内容を結論に書くと、論理の飛躍と判断されます。
13枚目:引用・参考文献
最後のスライドには引用文献をまとめます。
参考文献の書き方は学会・雑誌によって異なります。
- 看護系学会の多くはバンクーバー方式(番号順)
- 論文によってはAPA方式(著者名・年順)
- 院内発表では学会の慣例に合わせる
5件程度が目安です。多すぎると見にくく、少なすぎると文献検討の不足を疑われます。
「ご清聴ありがとうございました」のメッセージを最後に入れると、発表の終わりがきれいに締まります。
看護研究スライドのデザインルール
看護学生のケーススタディ発表と異なり、看護研究では統計データやグラフを扱うため、デザイン上の注意点があります。
文字サイズ
| 要素 | サイズ |
|---|---|
| 表紙のタイトル | 36〜44pt |
| 各スライドの見出し | 32〜36pt |
| 本文・箇条書き | 22〜26pt |
| 表の中の文字 | 18〜22pt |
| 参考文献・脚注 | 14〜18pt |
表の中の文字は本文より小さくしても構いませんが、18pt以下にすると後ろの席から読めません。表が大きくなる場合は、列を減らすか、複数のスライドに分けます。
グラフの作り方
看護研究で頻出するグラフタイプと使い分けは次の通りです。
- 棒グラフ:群間比較、Before/After比較
- 折れ線グラフ:時系列の変化
- 箱ひげ図:分布の比較(分散も示す)
- 散布図:2変数の相関
- 円グラフ:構成比(項目が3〜5個までの時のみ)
3D効果は絶対に使わないでください。視認性が下がるだけで、データの理解を妨げます。
軸ラベルと単位は必ず明記します。「%」「mg/dL」「人」など、何の数値なのかが一目で分かるようにします。
統計値の書き方
統計値は学会の慣例に従います。一般的には次の通り。
- 平均値は「Mean ± SD」または「平均 ± SD」
- p値は「p < 0.05」「p < 0.001」のように記述
- 有意差ありは「*」(p<0.05)、「**」(p<0.01)で表記する慣例も
- 95%信頼区間(95%CI)を併記すると論文水準
発表時間10〜15分の時間配分
10分発表を13枚に割り振る場合の目安です。
| セクション | 時間 | 配分 |
|---|---|---|
| 表紙〜はじめに | 1分30秒 | 15% |
| 目的〜方法〜倫理 | 2分 | 20% |
| 結果(4枚) | 4分 | 40% |
| 考察(2枚) | 1分30秒 | 15% |
| 結論〜文献 | 1分 | 10% |
結果セクションが全体の40%を占めるのが研究発表の特徴です。学生のケーススタディ発表よりも結果が重視されます。
原稿は1分あたり300〜350文字を目安に作ります。専門用語が多いと早口になりがちなので、ゆっくり話すことを意識してください。
看護研究発表でよくある失敗例
失敗例①:結果と考察が混ざっている
結果のスライドに「○○と考えられる」と書いてしまうパターン。結果は事実、考察は解釈です。明確に分けてください。
結果セクションには「○○であった」「○○の差があった(p<0.05)」と事実だけ書きます。「なぜそうなったか」は考察セクションで書きます。
失敗例②:先行研究の引用がない
はじめにと考察に文献引用がないパターン。看護研究としての体裁が整いません。
はじめにで2〜3件、考察で2〜3件は最低でも引用してください。文献検討が不足している研究は審査で必ず指摘されます。
失敗例③:研究の限界を書いていない
「結果は完璧でした」という発表は逆に信頼されません。研究には必ず限界があります。
サンプル数の少なさ、単一施設研究の限界、選択バイアスなど、自分の研究のウィークポイントを正直に書きます。誠実さが評価されます。
失敗例④:統計検定なしで「効果があった」と主張
「介入前は40%、介入後は60%だった。介入は効果があった」という結論はNGです。
差があるかどうかは統計検定で確認します。看護研究では量的データを扱う場合、t検定・カイ二乗検定・分散分析などを最低限実施してください。
発表前のチェックリスト
発表前に必ず次の項目を確認してください。
- 研究目的とRQが明確に書かれているか
- 研究方法が再現可能なレベルで記述されているか
- 倫理審査の承認情報を記載しているか
- 結果はグラフ・表で視覚的に提示されているか
- 統計検定の結果(p値・95%CI)を明記しているか
- 考察に文献引用が3件以上あるか
- 研究の限界を明示しているか
- 結論が研究目的に対応しているか
- 発表時間内に収まっているか(リハーサル済み)
- 共同研究者の名前を表紙に記載しているか
このチェックリストを通過すれば、院内発表会で恥ずかしくないレベルに到達しています。
看護研究のパワポ作成で詰まったら
「データはあるけどスライドにまとめる時間がない」「統計検定の結果をどう示せばいいかわからない」「忙しすぎて研究発表の準備が進まない」
そんな現役看護師さんのために、NCS看護キャリアサポートセンター(カンサポ)では看護研究の発表資料作成を専門的にサポートしています。
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- 研究計画の整理
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- グラフ・表の作成
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まとめ
看護研究の発表パワーポイントは、次の3点を押さえれば形になります。
- 13枚構成で「背景→目的→方法→結果→考察→結論」の論理を作る
- 結果セクションには必ず統計検定の結果(p値)を明記する
- 考察には文献引用を入れて、研究の限界も正直に書く
この記事のスライド例をそのまま参考にして、自分の研究に置き換えれば、院内発表会でも看護学会でも通用するレベルの発表資料が作れます。
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