せん妄は入院患者さん、特に高齢者や術後患者さんに高頻度で発症する急性の意識障害であり、適切な対応が遅れると重篤な転帰につながる可能性があります。
本記事では、せん妄の早期発見から予防的ケア、具体的な看護計画まで、臨床現場で即実践できる内容を詳しく解説していきます。
せん妄とは何か
せん妄とは、急激に発症する意識障害の一種で、注意力の低下、思考の混乱、見当識障害などを特徴とする精神症状です。
数時間から数日の短期間で発症し、症状は一日の中でも変動することが多く、特に夜間に悪化する傾向があります。
認知症とは異なり、せん妄は適切な治療により回復可能な可逆性の状態ですが、放置すると長期的な認知機能低下や死亡率の上昇につながります。
せん妄の主な症状
せん妄の症状は大きく分けて、過活動型、低活動型、混合型の三つのタイプに分類されます。
過活動型せん妄では、興奮、落ち着きのなさ、幻覚、妄想などが見られ、ベッドから離れようとしたり、点滴を抜去しようとするなどの行動が特徴的です。
低活動型せん妄は、活動性の低下、傾眠傾向、反応の鈍化が主な症状で、見逃されやすいため注意が必要です。
混合型は過活動型と低活動型の症状が交互に現れるタイプで、症状の変動が激しいのが特徴です。
せん妄の危険因子
せん妄を発症しやすい危険因子を理解することは、予防的ケアの第一歩となります。
高齢者は最も重要な危険因子であり、65歳以上では発症リスクが著しく上昇し、75歳以上ではさらに高くなります。
術後患者さんは、麻酔の影響、疼痛、脱水、電解質異常などが重なり、せん妄発症のリスクが非常に高い状態です。
認知症や軽度認知障害を持つ患者さんは、せん妄を発症しやすく、また発症した場合の症状も重症化しやすい傾向があります。
脱水、電解質異常、感染症、低酸素血症、薬剤の副作用などの身体的要因もせん妄の重要な誘因となります。
環境的要因として、入院による環境の変化、睡眠不足、感覚遮断、身体拘束なども発症リスクを高めます。
早期発見のための観察ポイント
せん妄の早期発見には、継続的かつ系統的な観察が不可欠です。
意識レベルの変化を注意深く観察し、いつもと違う様子、呼びかけへの反応の遅れ、会話のつじつまが合わないなどのサインを見逃さないことが重要です。
見当識障害の有無を確認するため、日付、時間、場所、人物の認識について定期的に評価します。
注意力の評価として、簡単な質問への集中力、会話の途中で話題が変わる、同じことを繰り返し尋ねるなどの症状に注目します。
睡眠覚醒リズムの乱れ、特に昼夜逆転や夜間の不穏状態は、せん妄の重要な初期症状です。
予防的ケアの重要性
せん妄は発症してからの対応よりも、予防的なケアの方が効果的であることが多くの研究で示されています。
早期離床を促進し、日中の活動性を高めることで、睡眠覚醒リズムを整え、せん妄のリスクを減少させます。
十分な水分摂取と栄養管理を行い、脱水や電解質異常を予防することが大切です。
感覚刺激の適切な提供として、眼鏡や補聴器の使用を促し、患者さんが環境を正しく認識できるよう支援します。
安全な療養環境の整備
せん妄患者さんの安全を守るため、環境整備は極めて重要な看護介入となります。
転倒や転落のリスクを最小限にするため、ベッドの高さを最低位に設定し、必要に応じてベッド柵を使用します。
周辺の障害物を除去し、移動経路を確保することで、夜間のトイレ移動時などの事故を予防します。
点滴スタンド、車椅子、床頭台などの配置を工夫し、つまずきやすい物品は患者さんの動線から離します。
ナースコールは患者さんが容易に押せる位置に設置し、使用方法を繰り返し説明します。
照明の調整も重要で、夜間は常夜灯を使用し、完全な暗闇を避けることで見当識の維持を助けます。
看護目標の設定
せん妄患者さんに対する看護を計画的に実施するためには、明確な看護目標の設定が不可欠です。
長期目標
せん妄症状が改善し、見当識が回復して安全に日常生活を送ることができる
短期目標
原因となる身体的要因が改善され、バイタルサインや検査データが正常範囲内に安定する
昼夜の睡眠覚醒リズムが整い、夜間の良質な睡眠が確保できる
転倒や転落などの事故なく安全に療養生活を送ることができる
具体的な看護介入
看護目標を達成するためには、観察項目、ケア項目、教育項目を明確にして実践することが重要です。
OP 観察項目
意識レベルの評価として、ジャパンコーマスケールやグラスゴーコーマスケールを用いて定期的に測定します。
見当識の状態を確認し、時間、場所、人物への認識が保たれているかを評価します。
注意力と集中力の観察では、会話の一貫性、質問への適切な応答、簡単な指示の理解度を確認します。
バイタルサインの測定として、体温、血圧、脈拍、呼吸数、SpO2を定期的にチェックし、異常の早期発見に努めます。
睡眠状態の観察では、入眠時刻、中途覚醒の有無、総睡眠時間、日中の傾眠状態を記録します。
圧倒的に早い
プロが作った参考例があれば、それを見て学べます
✓ 一から考える時間がない → 見本で時短
✓ 完成形の見本で理解したい → プロの実例
✓ 自分の事例に合わせた例が欲しい → カスタマイズ可
参考資料提供|料金19,800円〜|15年の実績|提出可能なクオリティ
活動性の評価として、日中の活動量、離床時間、歩行状態、ADLの自立度を観察します。
水分摂取量と尿量のバランス、食事摂取量を正確に記録し、脱水や栄養不足を早期に発見します。
薬剤の使用状況と副作用の有無を確認し、せん妄を誘発しやすい薬剤については特に注意深く観察します。
検査データとして、電解質、血糖値、肝機能、腎機能、感染症マーカーなどを確認します。
TP ケア項目
見当識を保つための関わりとして、患者さんに積極的に声をかけ、日付、時間、場所を繰り返し伝えます。
環境調整では、カレンダーや時計を見やすい位置に設置し、家族の写真など馴染みのある物品を配置します。
早期離床を促進し、可能な範囲で日中の活動性を高め、散歩やリハビリテーションを実施します。
睡眠環境を整えるため、夜間は照明を暗くし、日中は明るく保ち、睡眠覚醒リズムを調整します。
水分摂取を積極的に促し、脱水を予防するため、好みの飲み物を提供し、摂取量を記録します。
栄養状態の改善として、食事の工夫や食事介助を行い、十分なカロリーとタンパク質の摂取を支援します。
疼痛管理を適切に行い、痛みによる不眠や不穏を予防します。
排泄ケアでは、定時のトイレ誘導を実施し、尿意や便意を我慢させないよう配慮します。
安全管理として、転倒転落のリスクアセスメントを行い、必要な安全対策を講じます。
周辺の障害物除去では、ベッド周囲や移動経路の整理整頓を徹底し、つまずきやすい物品を片付けます。
身体拘束は最小限とし、やむを得ず実施する場合も定期的に解除し、皮膚状態や循環状態を観察します。
EP 教育項目
家族への説明として、せん妄の症状、原因、経過について分かりやすく伝え、理解を促します。
家族の協力を得るため、面会時の関わり方、声かけの方法、見当識を保つための工夫を具体的に指導します。
患者さんの安全を守るための注意点を家族に伝え、危険な行動が見られた時の対応方法を説明します。
退院後の生活環境について助言し、自宅での転倒予防策、生活リズムの整え方を指導します。
薬剤管理の重要性を説明し、処方された薬を確実に服用することの必要性を伝えます。
せん妄の再発予防として、水分摂取、規則正しい生活、適度な運動の重要性を指導します。
薬物療法との連携
せん妄の治療には、原因疾患の治療とともに、症状に応じた薬物療法が行われることがあります。
抗精神病薬の使用時は、効果と副作用を慎重に観察し、過鎮静や錐体外路症状の出現に注意します。
睡眠薬の使用については、せん妄を悪化させる可能性があるため、医師と相談しながら慎重に対応します。
多職種連携の実践
せん妄患者さんのケアには、医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、栄養士など多職種との連携が不可欠です。
医師との情報共有により、原因疾患の治療方針や薬物療法の調整を適切に行います。
薬剤師と協力して、せん妄を誘発しやすい薬剤の確認と代替薬の検討を行います。
理学療法士や作業療法士と連携し、早期離床とリハビリテーションを効果的に実施します。
家族支援の重要性
せん妄患者さんの家族は、突然の変化に戸惑い、不安を抱えていることが多いため、適切な支援が必要です。
家族の心理的負担を軽減するため、せん妄の特徴と回復の見込みについて丁寧に説明します。
面会時の過ごし方や声かけの工夫を提案し、家族が患者さんのケアに参加できるよう支援します。
せん妄からの回復期のケア
せん妄症状が改善してきた段階でも、継続的な観察とケアが必要です。
症状の再燃を予防するため、生活リズムの維持、環境の安定性の確保を継続します。
認知機能の回復状況を評価し、必要に応じて認知リハビリテーションを導入します。
まとめ
せん妄は高齢者や術後患者さんに多く見られる急性の意識障害であり、早期発見と予防的ケアが患者さんの予後を大きく左右します。
看護師は、危険因子を持つ患者さんを特定し、継続的な観察を通じて初期症状を見逃さないことが求められます。
安全な療養環境の整備、特に周辺の障害物除去や転倒転落予防は、患者さんの生命を守る上で極めて重要です。
明確な看護目標を設定し、OP、TP、EPの各項目を確実に実施することで、質の高い看護ケアが実現します。
見当識を保つための関わり、睡眠覚醒リズムの調整、早期離床の促進など、多角的なアプローチがせん妄の予防と改善につながります。
認知症患者さんではせん妄のリスクがさらに高まるため、より慎重な観察と予防的介入が必要です。
家族への適切な説明と支援も、せん妄患者さんのケアにおいて欠かせない要素です。
日々の観察力を磨き、科学的根拠に基づいた看護実践を積み重ねることが、せん妄患者さんへの最良のケアにつながります。








