「赤ちゃんの後頭部が赤くなってきた」「医療機器を当てている部分の皮膚が心配」——こうした声は、小児病棟やNICU(新生児集中治療室)でよく聞かれます。
子どもの皮膚は、大人と比べてとても薄く、外からの刺激や圧力に対してはるかに脆弱です。
特に新生児・乳幼児の皮膚は、表皮と真皮のつながりが弱く、わずかな摩擦や圧迫でも簡単に傷ついてしまいます。
小児褥瘡リスク状態とは、北米看護診断協会が定める看護診断のひとつで、小児患者さんが褥瘡を発生するリスクがある状態を指します。
まだ褥瘡が生じているわけではないものの、このまま何もしなければ皮膚損傷につながる可能性が高いと判断されるときに用いられます。
この記事では、小児褥瘡リスク状態の看護計画について、看護目標から観察・ケア・指導の内容まで、看護学生にもわかりやすく解説していきます。
小児褥瘡リスク状態とはどんな状態か
褥瘡とは、身体の一部に持続的な圧迫が加わることで、皮膚や皮下組織への血流が途絶え、組織が損傷した状態のことです。
成人の褥瘡と比較して、小児の褥瘡には以下のような特徴があります。
好発部位が異なります。
成人では仙骨部・踵部が最も多いのに対して、小児では後頭部が最も多い好発部位です。
これは小児、特に乳幼児では頭部が身体全体に占める割合が大きく、仰臥位で後頭部に体重が集中しやすいためです。
他にも耳介部・鼻・口唇・顎部・肩甲骨部など、頭頸部に好発することが多いです。
医療機器関連褥瘡(MDRPU)のリスクが高いです。
小児は体格が小さいため、酸素マスク・経鼻カニューレ・気管チューブ・経鼻胃管・血圧計カフ・固定具など、医療機器が皮膚に当たることで生じる褥瘡(医療機器関連褥瘡)のリスクが特に高くなります。
皮膚が薄く脆弱なため、短時間の圧迫でも損傷が生じやすいです。
特に早期産児・新生児・乳幼児では、皮膚のバリア機能が未熟なため、成人よりも低い圧力・短い時間でも褥瘡が生じます。
自分で体位変換できないことが多いです。
年齢・発達段階・疾患の重篤度により、自力体位変換ができない子どもが多く、外からのケアが欠かせません。
小児褥瘡が生じやすい状況
小児褥瘡リスクが高まる状況には、以下のようなものがあります。
新生児・早期産児で、皮膚のバリア機能が未熟な状態にあるとき。
長期臥床・鎮静・筋弛緩薬使用などにより、自力体位変換ができない状態にあるとき。
先天性心疾患・重症感染症・多臓器不全など、重篤な疾患で全身状態が不安定なとき。
酸素マスク・気管チューブ・経鼻胃管・血圧計カフ・パルスオキシメーター・固定具など、医療機器が皮膚に長時間当たっているとき。
低栄養・脱水・浮腫がある状態のとき。
神経疾患・脊髄損傷・重度の脳性麻痺などにより、感覚障害・運動障害がある子どものとき。
手術後・外傷後で、長時間の安静が必要なとき。
おむつ着用により、皮膚が湿潤・汚染される状態が続いているとき。
ギプス・副子・シーネなど、整形外科的固定具を使用しているとき。
小児の皮膚の特徴を理解する
小児褥瘡ケアでは、子どもの皮膚の特徴を十分に理解することが大切です。
新生児・乳幼児の皮膚は、表皮の厚さが成人の約60〜70%しかなく、表皮と真皮をつなぐ構造(ヘミデスモゾーム)が少ないため、ずれや摩擦に対してとても弱い状態です。
皮脂腺・汗腺の機能が未熟なため、皮膚の自己保護機能(皮脂膜・皮膚常在菌の保護作用)が十分に機能していません。
体表面積に対する体重の比率が成人より大きく、皮膚からの水分蒸散量が多いため、皮膚の乾燥・脆弱化が生じやすいです。
早期産児では、皮膚のバリア機能がさらに未熟で、外部からの刺激に対して特に脆弱です。
「子どもの皮膚は大人より弱い」という前提で、すべての皮膚ケアを行うことが大切です。
小児褥瘡のリスクアセスメントツール
小児褥瘡のリスクを客観的に評価するために、小児向けのアセスメントツールが使われます。
ブレーデンQスケールは、成人用ブレーデンスケールを小児用に改変したもので、可動性・活動性・知覚の認知・湿潤・摩擦とずれ・栄養・組織灌流と酸素化の7項目を評価します。
ノートンスケールや他の成人向けツールは、小児への適用には限界があるため、小児専用のアセスメントツールを活用することが望ましいです。
入院時・状態変化時に定期的にアセスメントを行い、リスクに応じた予防策を講じることが大切です。
看護目標
長期目標
子どもの皮膚の完全性が保たれ、褥瘡の新たな発生および医療機器による皮膚損傷が防がれ、安全に療養生活を続けられるようになる。
短期目標
子どもの褥瘡好発部位(後頭部・耳介部・医療機器接触部位など)を毎日観察し、皮膚の発赤・損傷を早期に発見できるようになる。
定期的な体位変換・除圧・適切な体圧分散用具の活用により、皮膚への持続的な圧迫を防ぐことができるようになる。
医療機器が皮膚に当たる部位に適切な保護を行い、医療機器関連褥瘡の発生を防ぐことができるようになる。
具体的なケアの内容
観察計画(何を観察するか)
皮膚の状態を全身にわたって観察します。
小児の褥瘡好発部位(後頭部・耳介部・鼻・口唇・顎部・肩甲骨部・仙骨部・踵部・内果・外果など)を重点的に観察します。
医療機器が接触している部位の皮膚を毎日確認します。
酸素マスク・経鼻カニューレ・気管チューブ・経鼻胃管の固定部位・血圧計カフ・パルスオキシメーター・点滴固定テープ部位など、機器が皮膚に当たっている場所を確認します。
皮膚の発赤・腫脹・浸軟・水疱・損傷の有無を確認します。
発赤がある場合、指で押して白くなるか(ブランチング)を確認します。
DESIGN-Rを用いた褥瘡評価を定期的に行います。
皮膚の湿潤状態を観察します。
おむつ着用部位・発汗・浸出液による皮膚の湿潤・浸軟がないかを確認します。
栄養状態を観察します。
体重・哺乳量・食事摂取量・血清アルブミン値・総タンパク値を確認します。
特に早期産児・重症疾患児では、低栄養が皮膚の脆弱化につながるため注意が必要です。
体位変換の実施状況・自力体位変換能力を確認します。
使用している体圧分散用具・クッションの状態と位置を確認します。
浮腫の有無・程度を観察します。
浮腫がある皮膚は特に脆弱で、軽い圧迫でも損傷しやすいため、特に注意が必要です。
医療用テープ・固定具の貼付部位の皮膚を観察します。
テープを剥がす際の皮膚剥離(スキンテア)が生じていないかを確認します。
ケア計画(直接的なかかわり)
体位変換を定期的に行います。
小児、特に自力体位変換ができない乳幼児・重症児では、2時間ごとを目安に体位変換を行い、同一部位への持続的な圧迫を解除します。
後頭部の褥瘡予防として、仰臥位・側臥位を交互に変換します。
体位変換時は、皮膚の摩擦・ずれを最小限にするため、スライディングシート・スライディンググローブなどを活用します。
体位変換後は、皮膚の圧迫が解除されているかを必ず確認します。
体圧分散用具を適切に使用します。
小児の体格・体重・疾患に合った体圧分散マットレス・ゲルパッド・ウレタンフォームクッションを選択・使用します。
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後頭部の保護のために、ゲルパッド・ドーナツ型クッションの活用を検討します。
ただし、ドーナツ型クッションは使い方によって周囲の皮膚の圧力が増大することがあるため、適切な使用方法を確認します。
踵部の浮上を保つために、踵浮上用クッション・やわらかいタオルのロール巻きなどを活用します。
医療機器関連褥瘡の予防を行います。
医療機器が皮膚に当たる部位に、ポリウレタンフォームドレッシング材・ハイドロコロイドドレッシング材などの保護材を適用します。
酸素マスク・経鼻カニューレ・気管チューブの固定部位は定期的に観察し、可能な範囲で固定位置を変更します。
医療機器のサイズが子どもの体格に合っているかを確認します。
サイズが合っていない機器は、皮膚への圧力が集中しやすいため、適切なサイズへの変更を医師・臨床工学技士と相談します。
テープ・固定具の使用に注意します。
小児の皮膚はテープ剥離による皮膚損傷(スキンテア)が生じやすいため、皮膚に優しいシリコン系テープや低刺激性テープを使用します。
テープを剥がすときは、皮膚をおさえながらゆっくりと角度を小さく保って剥がします。
テープの剥離を助けるリムーバー(剥離剤)の活用も検討します。
皮膚の清潔と保湿を保ちます。
おむつ交換のたびに皮膚を清潔にし、撥水性の皮膚保護クリームを使用します。
入浴・清拭時は、皮膚を強くこすらず、低刺激性の洗浄料を使用します。
入浴・清拭後は、保湿クリームを優しく塗布します。
特に早期産児・新生児では、皮膚からの水分蒸散を防ぐために、皮膚の保湿管理が重要です。
既存の褥瘡がある場合の処置を行います。
医師・WOCナースの指示に基づき、創部の洗浄・適切なドレッシング材の選択・交換を行います。
小児に適したドレッシング材の種類・交換頻度を確認した上で処置を行います。
処置時の疼痛管理を行います。
創部の処置は痛みを伴うことがあるため、処置前の適切な鎮痛・鎮静を医師と相談し、子どもの苦痛を最小限にします。
ご家族が処置中にそばにいられるよう、付き添いの環境を整えます。
教育・指導計画(患者さん・家族への説明や指導)
子どもの皮膚がなぜ褥瘡になりやすいのかを、家族にわかりやすく説明します。
「お子さんの皮膚は大人よりも薄く、少しの圧力でも傷つきやすい状態です。こまめに皮膚を確認し、体の向きを変えることがとても大切です」というように伝えます。
体位変換の重要性と方法を家族に伝えます。
入院中、家族が付き添っている時間帯の体位変換の方法を一緒に練習します。
「2〜3時間に一度、体の向きを変えてあげましょう」と具体的な目標を伝えます。
家族が「自分にもできることがある」と感じられるよう、具体的で実践しやすい方法を伝えることが大切です。
皮膚の観察方法を指導します。
後頭部・耳介部・医療機器接触部位など、特に注意して見てほしい部位を具体的に伝えます。
「皮膚が赤くなっている・水ぶくれがある・傷ができているときは、すぐに看護師に知らせてください」と伝えます。
医療機器の扱い方について伝えます。
酸素マスクや経鼻カニューレが皮膚に食い込んでいるように見えるとき、固定テープの下の皮膚が赤くなっているときは、家族が気づいたらすぐに看護師に伝えるよう説明します。
おむつケアの方法を指導します。
排泄後はすみやかにおむつを交換し、皮膚を優しく拭き取ってから保護クリームを塗布することを伝えます。
皮膚を強くこすると損傷の原因になるため、「優しく押さえるように拭く」方法を伝えます。
栄養の大切さを伝えます。
「皮膚の回復と保護には、十分な栄養が必要です。哺乳量・食事量が減っているときは遠慮なく相談してください」と伝えます。
退院後の皮膚ケアについて指導します。
在宅でも使用する医療機器(在宅酸素・経管栄養など)がある場合、機器が皮膚に当たる部位のケア方法・観察方法・異常時の対応を具体的に伝えます。
医療機器関連褥瘡(MDRPU)への対応
小児の褥瘡ケアにおいて、医療機器関連褥瘡への対応は特に重要です。
医療機器関連褥瘡とは、医療機器が皮膚に持続的に接触することで生じる褥瘡・皮膚損傷のことです。
小児では体格が小さく、医療機器が皮膚に占める相対的な接触面積が大きくなるため、成人よりも医療機器関連褥瘡のリスクが高くなります。
予防のポイントとして、以下のことを意識します。
機器のサイズが子どもの体格に合っているかを定期的に確認します。
接触部位に保護用ドレッシング材を適用します。
可能な範囲で機器の固定位置を定期的に変更します。
接触部位の皮膚を毎回観察し、発赤・損傷の早期発見に努めます。
小さな発赤も見逃さずに観察し続けることが、医療機器関連褥瘡の予防で最も大切なことのひとつです。
皮膚・排泄ケア認定看護師との連携
小児褥瘡リスク状態のケアでは、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)との連携がとても大切です。
WOCナースは、褥瘡の予防・治療・ドレッシング材の選択に関する高度な専門知識を持ちます。
特に早期産児・重症の小児患者さんでは、皮膚の脆弱性が高く、専門的なアセスメントとケア計画が必要です。
難治性褥瘡・医療機器関連褥瘡・複雑な皮膚損傷がある場合には、WOCナース・皮膚科医・形成外科医へのコンサルトを積極的に行います。
家族を巻き込んだケアの重要性
小児褥瘡リスク状態のケアでは、家族の参加がとても大切な意味を持ちます。
入院中に常に付き添っている家族は、子どもの皮膚の変化にいち早く気づくことができる大切なパートナーです。
家族が「皮膚のことを一緒に守っていける」という自信を持てるよう、観察方法・ケア方法を丁寧に伝えることが看護師の役割です。
また、家族が不安を感じているときには、その気持ちを受け止め、「一緒に守っていきましょう」という言葉かけが、家族の安心につながります。
看護師として意識したいこと
小児褥瘡リスク状態のケアで最も大切なのは、「子どもの皮膚は大人と違う」という視点を常に持ちながら、予防的なかかわりを継続することです。
成人と同じ感覚でケアをしていると、あっという間に皮膚損傷が進んでしまいます。
「今日も皮膚に変化はないか」という目で、毎回のケアのたびに皮膚を観察する習慣を持つことが大切です。
また、小児の褥瘡は、子どもだけでなく、家族にとっても大きな心理的負担になります。
「なぜこうなってしまったのか」と自分を責める家族に対して、看護師が「一緒に対処していきましょう」という姿勢で関わることが、家族を支える上でとても大切です。
まとめ
小児褥瘡リスク状態の看護計画は、皮膚が脆弱な小児患者さんに対して、褥瘡の発生を予防するための早期からの観察・体位変換・体圧分散用具の活用・医療機器関連褥瘡への対応・皮膚の清潔保湿管理を通じて、皮膚の完全性を守るためのケアの診断です。
長期目標として子どもの皮膚の完全性が保たれ、褥瘡・医療機器関連褥瘡の発生が防がれることを目指し、短期目標を一歩ずつ積み上げていきます。
観察・ケア・指導の三つの視点からかかわることで、子どもの皮膚を守り、安全な療養生活を支えることができます。
WOCナース・小児科医・皮膚科医・臨床工学技士・管理栄養士をはじめとした多職種と連携しながら、子どもの皮膚を継続的に守っていくことが、看護師の大切な役割です。
看護学生のみなさんが実習や国家試験の学習でこの診断と向き合うとき、この記事が少しでも助けになれれば幸いです。








