皮膚のトラブルは、入院中の患者さんに起きやすい問題のひとつです。
病棟で働いていると、長期臥床の患者さんの仙骨部に発赤を見つけたり、浮腫のある患者さんの下腿に亀裂が入っていたり、おむつ使用中の患者さんに失禁関連皮膚炎が起きていたりと、さまざまな皮膚トラブルに出会います。
皮膚の損傷は一度起きると治癒に時間がかかり、患者さんの苦痛や入院期間の延長につながることがあります。
この記事では、皮膚完全性障害リスク状態の看護計画について、看護目標・観察項目・ケア内容・患者指導に分けてまとめました。
実習中の看護学生さんにも、臨床で復習したい看護師さんにも役立てていただけたら嬉しいです。
皮膚完全性障害リスク状態とはどういう状態か
まず基本をおさえておきましょう。
皮膚完全性障害リスク状態とは、皮膚が損傷を受けやすい状態にあり、びらん・潰瘍・裂傷・感染などが起きる可能性が高い状態のことをいいます。
皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3層からなり、外部からの刺激を防ぐバリア機能・体温調節・感覚受容などの役割を担っています。
このバリア機能が低下すると、わずかな摩擦や圧迫・湿潤でも皮膚が損傷を受けやすくなります。
臨床でよく見られる皮膚完全性障害には、以下のものがあります。
褥瘡(圧迫・ずれによる皮膚・軟部組織の損傷)、失禁関連皮膚炎(尿・便による湿潤と刺激)、医療関連機器圧迫創傷(チューブ・マスク・ギプスなどによる圧迫)、皮膚裂傷(スキン-テア)、浮腫による皮膚菲薄化・亀裂などが代表的です。
なぜ看護計画が大切なのか
皮膚の損傷は、一度起きてしまうと治癒に時間がかかります。
特に褥瘡は、深達度によっては骨・腱まで達することがあり、壊死組織の除去・植皮などの外科的処置が必要になることもあります。
感染が加わると蜂窩織炎・骨髄炎・敗血症へと進行するリスクもあります。
だからこそ、損傷が起きる前にリスクを評価し、予防的な看護計画を立てることが看護師として果たすべき大切な役割です。
高齢者・低栄養状態の患者さん・糖尿病患者さん・浮腫のある患者さん・長期臥床の患者さんは、皮膚完全性障害のリスクが高い状態にあります。
看護目標
長期目標
入院期間を通して皮膚の損傷を発生させることなく、良好な皮膚状態を保ったまま退院することができる。
短期目標
皮膚完全性障害のリスク因子(低栄養・浮腫・失禁・長期臥床・感覚障害など)について理解し、自分の状態を言葉で説明できる。
医療スタッフと協力しながら、体位変換・スキンケア・栄養管理などの予防的ケアを毎日継続して受けることができる。
皮膚の異常(発赤・腫脹・びらん・亀裂・水疱など)を早期に発見し、医療者へ報告できる。
観察項目
患者さんの状態を広く把握することが大切です。
以下の点をしっかり観察しましょう。
皮膚の状態の観察
全身の皮膚を毎日観察し、発赤・腫脹・びらん・潰瘍・水疱・亀裂・色調変化の有無を確認します。
骨突出部(仙骨・踵骨・坐骨・大転子・後頭部・外果など)は、圧迫を受けやすく褥瘡が起きやすい部位です。
皮膚の乾燥・落屑・菲薄化・弾力低下も、損傷リスクを高める所見として記録します。
褥瘡リスクの評価
ブレーデンスケールを用いて褥瘡リスクを定期的に評価します。
ブレーデンスケールは、知覚の認知・湿潤・活動性・可動性・栄養・摩擦とずれの6項目で評価し、合計点が低いほどリスクが高い状態です。
合計点が14点以下ではリスクありと判断し、予防的ケアを開始します。
栄養状態の評価
血清アルブミン値(3.5g/dL以下で低栄養)・総蛋白・体重変化・食事摂取量を確認します。
低栄養状態では皮膚の再生能力が低下し、わずかな圧迫でも皮膚が損傷を受けやすくなります。
栄養サポートチームと連携して、患者さんの栄養状態を総合的に評価することも大切です。
浮腫の状態の観察
下腿・足背・仙骨部などの浮腫の程度を観察します。
浮腫があると皮膚が引き伸ばされて菲薄化し、わずかな摩擦で皮膚裂傷が起きやすくなります。
圧痕性浮腫の程度(ピッティング)を指で押して確認し、記録に残します。
失禁・湿潤の状態の観察
尿・便失禁の有無と頻度、おむつ使用の状況を確認します。
失禁による湿潤と皮膚への化学的刺激が重なると、失禁関連皮膚炎(IAD)が起きやすくなります。
陰部・殿部・大腿内側の皮膚状態を観察し、発赤・びらんの有無を毎日確認します。
医療関連機器の圧迫状況の確認
酸素マスク・経鼻胃管・気管切開チューブ・末梢静脈ライン・弾性ストッキングなど、皮膚に接触する医療機器の圧迫状況を確認します。
チューブやライン固定部位の皮膚に発赤・びらんが起きていないかを毎日観察します。
自覚症状の確認
意識のある患者さんには、皮膚の違和感・疼痛・かゆみ・熱感がないかを毎日確認します。
感覚障害のある患者さんは自覚症状が出にくいため、観察による発見が大切です。
ケア項目
体位変換・ポジショニング
長時間同一体位による圧迫とずれが、褥瘡発生の主な原因です。
自力体位変換が難しい患者さんには、2時間ごとの体位変換を実施します。
体位変換の際は、皮膚を引きずらず持ち上げて移動させ、摩擦・ずれを最小限にします。
骨突出部にはウレタンフォームパッドやジェルパッドを使用し、圧力を分散させます。
体圧分散マットレス(エアマットレス・ウレタンマットレスなど)の導入も、リスクに応じて検討します。
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スキンケア
皮膚の清潔と保湿を保つことが、バリア機能を維持するうえで大切です。
入浴・清拭後は皮膚が乾燥しやすいため、保湿剤(ヒルドイドローション・白色ワセリンなど)を全身に塗布します。
洗浄の際はゴシゴシこすらず、泡立てた石鹸を使って優しく洗い流します。
高齢者や菲薄化した皮膚には、粘着力の強いテープや固定材を避け、シリコン系の低刺激テープを使用します。
失禁関連皮膚炎の予防ケア
失禁後は速やかに洗浄し、皮膚に尿・便が長時間付着しないようにします。
洗浄後は撥水性のある皮膚保護クリーム(3Mキャビロンなど)を塗布し、次の失禁に備えます。
おむつはあてる際にしわができないよう注意し、サイズが合っているかも確認します。
医療関連機器圧迫創傷の予防
酸素マスク・気管切開チューブなどの固定部位には、定期的に固定位置をずらしたり、クッション材を挟んだりして圧迫を分散させます。
弾性ストッキングは正しいサイズを選択し、装着後にしわや折り返しがないかを確認します。
チューブ・ライン固定のテープ交換時は、剥離剤を使用して皮膚への刺激を最小限にします。
皮膚裂傷(スキン-テア)の予防
四肢のスキン-テアは、皮膚が菲薄化した高齢者や浮腫のある患者さんに起きやすいです。
移動介助の際は、腕をつかまず広い面積で支えるよう意識します。
ベッド柵・車椅子のフレームに露出部位が当たらないよう、カバーやクッションを取り付けます。
栄養管理との連携
低栄養状態は皮膚の再生能力を低下させるため、栄養状態の改善も予防の大切な柱です。
食事摂取量が少ない場合は、栄養補助食品の使用や、栄養サポートチームへの相談を検討します。
タンパク質・ビタミンC・亜鉛など、皮膚の再生に必要な栄養素が不足していないかも確認します。
患者・家族への指導項目
皮膚完全性障害リスクについての説明
栄養状態の低下・長期臥床・浮腫・失禁などが重なると、皮膚が損傷を受けやすい状態になることを、わかりやすい言葉で説明します。
自覚症状が出にくい場合でも、知らないうちに皮膚が傷ついていることがあると伝えることが大切です。
体位変換・自己管理の指導
自分で体位変換が可能な患者さんには、定期的に体の向きを変えることの大切さを説明します。
同じ姿勢で長時間過ごさないよう、1〜2時間ごとに姿勢を変える意識を持ってもらいましょう。
ベッド上での背抜き(腰を浮かせて圧迫を解除する動作)の方法も、可能な範囲で練習します。
スキンケアの方法の指導
退院後も継続して保湿ケアを行う必要がある場合、保湿剤の塗り方・タイミング・使用量を指導します。
入浴後は皮膚が乾燥しやすいため、15分以内に保湿剤を塗るよう伝えると効果的です。
皮膚をこすらず優しく押さえるように拭く方法も、退院指導で伝えます。
セルフチェックの方法
毎日の入浴・清拭のタイミングで、仙骨・踵・肘など骨が出ている部分を確認する習慣をつけるよう指導します。
鏡や家族の協力を使って、自分では見えない部位も観察できるようにします。
発赤・腫れ・びらん・亀裂を発見したら、自己判断せず早めに医療機関を受診するよう伝えます。
家族への協力依頼
自己管理が難しい患者さんの場合、家族にも皮膚観察の方法と、異常を発見した際の対応を説明します。
おむつ交換・体位変換・保湿ケアの手技を一緒に練習しておくと、退院後の生活に安心してつながります。
看護計画を立てる際のポイント
皮膚完全性障害リスク状態の看護計画は、患者さんの栄養状態・活動性・失禁の有無・医療機器の使用状況・基礎疾患を総合的に評価したうえで立案することが大切です。
ブレーデンスケールなどのアセスメントツールを活用しながら、リスクの高い患者さんを見逃さないようにします。
また、看護計画は患者さんの状態が変わるたびに見直す必要があります。
入院時・術後・病状変化時など、リスクが変わるタイミングで必ず再評価することを習慣にしましょう。
よくある臨床場面での注意点
手術後の患者さんへの対応
長時間の手術では、術中の同一体位と低血圧による組織灌流低下が重なり、術後に褥瘡が発見されることがあります。
術後帰室直後から全身の皮膚を観察し、術中の体位固定部位を重点的に確認します。
術後は疼痛・倦怠感から自力体位変換が難しくなるため、積極的な体位変換の介助が大切です。
集中治療室での管理
集中治療室では、多数の医療機器が装着されており、医療関連機器圧迫創傷のリスクが高い状態です。
毎日のケアの中で、チューブ・ライン・マスクの固定部位を必ず確認し、圧迫が続いている部位がないかをチェックします。
鎮静中の患者さんは自分で体を動かせないため、看護師が主体となって体位変換とスキンケアを実施します。
在宅療養への移行時の注意
在宅療養に移行する患者さんには、家族や訪問看護師と連携して、退院後も予防的ケアが継続できる環境を整えます。
体圧分散マットレスや撥水性スキンケア用品の使用が必要な場合は、退院前に入手方法と使い方を説明しておきます。
まとめ
皮膚完全性障害リスク状態の看護計画は、患者さんの栄養状態・活動性・失禁・浮腫・医療機器の使用状況を丁寧に評価したうえで立案することが大切です。
観察項目では皮膚状態・褥瘡リスク・栄養状態・失禁状況を継続的に確認し、ケアでは体位変換・スキンケア・失禁管理・医療機器圧迫の予防を確実に実施します。
指導では、患者さんと家族が退院後も皮膚の異常を早期に発見して行動できるよう、具体的でわかりやすい言葉で伝えることが大切です。
看護計画の目的は、皮膚の損傷をひとつも起こさないことです。
リスクのある患者さんを見逃さず、チームで連携しながら毎日のケアを丁寧に続けていきましょう。
この記事が、看護計画を立てる際の参考になれば嬉しいです。








