川崎病は乳幼児に発症する急性熱性疾患で、適切な看護ケアが患児の予後に大きく影響します。
今回は3歳男児の川崎病患者を事例に、ヘンダーソン14項目を用いたアセスメント方法と幼児期の発達を考慮した看護過程について詳しく解説していきます。
川崎病の基礎知識と看護の重要性
川崎病は主に5歳以下の乳幼児に発症する急性全身血管炎症候群です。
発熱、発疹、リンパ節腫脹、眼球結膜充血、口腔粘膜の変化、手足の変化という6つの主要症状を特徴とします。
最も重要な合併症は冠動脈瘤形成で、急性期の適切な治療と看護により予防することが可能です。
乳幼児期の患児は症状を言語で表現することが困難なため、非言語的なサインの観察と適切な解釈が看護師の重要な技術となります。
事例紹介:Bちゃんの発達状況と入院経過
今回検討する事例は、3歳男児のBちゃんです。
保育園年少クラスに通い、身長88cm、体重13kgで年齢相当の発育を示しています。
発達状況は首座り4か月、歩行開始1歳3か月と正常範囲内で、現在は活発な幼児期前期の特徴を示しています。
家族構成は両親と5歳の兄の4人家族で、近隣に祖父母が住む恵まれた環境です。
性格は明るく活動的で、ブロック遊びや電車観察を好む年齢相応の興味を示しています。
幼児期の発達特徴と川崎病の影響
身体的発達への影響
3歳児は運動機能が急速に発達する時期で、跳ぶ、走る、登るなどの基本的運動パターンが確立します。
川崎病による発熱や炎症反応は、これらの活発な身体活動を制限し、一時的な発達停滞をもたらす可能性があります。
また、急性期の安静制限は筋力低下や関節可動域制限のリスクも伴います。
認知・言語発達への配慮
3歳児の言語発達は個人差が大きく、Bちゃんも喃語段階にあります。
症状の訴えが困難なため、泣き方、表情、行動変化から患児の状態を読み取る技術が必要です。
痛みや不快感を適切に評価するため、小児用疼痛スケールの活用が重要となります。
心理社会的発達の支援
幼児期は自律性の発達時期で、基本的生活習慣の自立に向かう重要な段階です。
入院による環境変化と活動制限は、獲得した自立性に一時的な後退をもたらすことがあります。
可能な範囲での自己決定の機会提供と、達成感を味わえる活動の工夫が必要です。
ヘンダーソン14項目による包括的アセスメント
正常な呼吸
川崎病の心血管系合併症を考慮した呼吸状態の評価が重要です。
急性期には心筋炎や心膜炎による呼吸困難の可能性があります。
呼吸数、呼吸パターン、呼吸音、チアノーゼの有無を定期的に観察します。
3歳児は呼吸困難を言語で表現できないため、鼻翼呼吸、陥没呼吸、不機嫌などの間接的徴候に注意します。
適切な栄養と水分摂取
発熱による代謝亢進と食欲不振への対応が必要です。
川崎病の口腔粘膜症状により、摂食が困難になることがあります。
Bちゃんの普段の食事形態を考慮し、スプーンやフォークで食べやすい形態で提供します。
高カロリー・高蛋白食品の使用と、十分な水分摂取による脱水予防が重要です。
身体の老廃物の排泄
トイレトレーニング中の排泄習慣への配慮が必要です。
入院による環境変化とストレスにより、一時的な排泄の後退が生じることがあります。
普段の排泄パターンを把握し、変化を観察します。
夜間おむつ使用の習慣を尊重し、無理な自立を強要しない配慮が大切です。
体位の変換と良肢位の保持
急性期の安静制限と関節拘縮予防のバランスが重要です。
心血管系合併症のリスクを考慮し、医師の指示に従った活動制限を実施します。
長期臥床による廃用症候群予防のため、可能な範囲での体位変換と関節可動域訓練を行います。
ブロック遊びなど、座位でできる活動を取り入れて筋力維持を図ります。
睡眠と休息
入院環境での睡眠リズム維持が重要な課題です。
普段の生活リズムをできるだけ維持します。
発熱や不快症状による睡眠障害に対して、環境調整と症状緩和を行います。
病院での音や光による刺激を最小限にし、安眠できる環境を整備します。
適切な衣類の選択
発熱時の体温調節と皮膚症状への配慮が必要です。
川崎病の皮疹に対して、刺激の少ない綿素材の衣類を選択します。
発熱時は吸湿性・通気性に優れた衣類で体温調節を支援します。
着脱しやすい前開きの衣類で、診察や処置時の負担を軽減します。
体温の正常範囲での維持
川崎病の主症状である発熱管理が最重要項目です。
持続する高熱は患児の体力消耗と脱水を招きます。
解熱剤の適切な使用と物理的冷却法により体温コントロールを行います。
熱性痙攣の既往がある場合は、特に慎重な体温管理が必要です。
身体の清潔と皮膚の保護
川崎病特有の皮膚症状への対応が重要です。
急性期の発疹、回復期の落屑に対する適切なスキンケアを実施します。
入浴は医師の許可のもと、短時間で実施し、皮膚への刺激を最小限にします。
口腔ケアでは口唇の亀裂や口内炎に配慮した優しいケアが必要です。
環境の危険因子の回避と他者への危害防止
小児病棟での安全管理が重要な課題です。
3歳児の好奇心と活動性を考慮し、転落や誤嚥などの事故防止策を講じます。
川崎病の急性期には感染予防も重要で、適切な隔離対策を実施します。
点滴やモニター類の安全な管理と、患児の動きを妨げない工夫が必要です。
他者とのコミュニケーション
言語発達段階に応じたコミュニケーション支援が重要です。
喃語段階のBちゃんに対して、非言語的コミュニケーションを重視します。
家族との面会制限がある場合は、電話やビデオ通話での交流を支援します。
医療スタッフとの信頼関係構築のため、一貫したケア担当者の配置が効果的です。
信仰
家族の価値観と信念の尊重が重要です。
治療方針について家族の理解と同意を得るため、丁寧な説明を行います。
宗教的配慮が必要な場合は、適切な対応を提供します。
家族の育児方針や教育観を理解し、可能な限り尊重します。
生産的な仕事
3歳児にとっての仕事は遊びと学習です。
発達段階に応じた遊びの提供により、認知機能の発達を促進します。
ブロック遊びやプラレールなど、Bちゃんの興味に合わせた活動を取り入れます。
病気による活動制限の中でも、創造性や想像力を育む機会を提供します。
娯楽とレクリエーション
入院中のストレス軽減と発達促進を目的とした活動提供が重要です。
年齢に適した玩具や絵本、音楽などを活用します。
他の患児との交流機会があれば、社会性の発達も促進できます。
家族との遊び時間を大切にし、愛着関係の維持を支援します。
学習と発見
幼児期の知的好奇心を満たす環境の提供が重要です。
病院生活の中でも新しい体験や学習機会を創出します。
医療処置についても、年齢に応じた説明により理解を促進します。
退院後の保育園復帰に向けた準備も含めて支援します。
看護診断と看護計画
主要な看護診断
高体温:川崎病による炎症反応に関連した持続的発熱。
感染リスク状態:免疫機能低下と医療処置による感染の可能性。
皮膚統合性障害リスク状態:川崎病の皮膚症状による皮膚トラブルの可能性。
成長発達遅延リスク状態:入院による環境変化と活動制限による発達への影響。
看護目標と介入
短期目標として、発熱の管理、合併症の予防、苦痛の軽減を設定します。
長期目標として、正常な成長発達の促進、家族関係の維持、社会復帰の支援を目指します。
具体的介入として、症状観察、環境調整、遊び療法、家族支援を実施します。
家族支援と患児への関わり
両親への支援
川崎病に対する正しい知識の提供と不安軽減が重要です。
治療経過や予後について分かりやすく説明し、家族の理解を促進します。
面会制限がある場合の心理的支援と、コミュニケーション手段の確保を行います。
兄弟児への配慮
5歳の兄への配慮も重要な要素です。
家族の注意がBちゃんに集中することによる心理的影響を考慮します。
年齢に応じた説明と、兄なりの役割を認める関わりが効果的です。
退院に向けた準備
継続看護の計画
外来での継続的な経過観察が重要です。
冠動脈瘤の有無や心機能の評価を定期的に実施します。
予防接種スケジュールの調整や感染予防指導も必要です。
保育園復帰支援
保育園との連携による円滑な復帰支援を行います。
活動制限の必要性や観察ポイントについて情報共有します。
集団生活での感染予防策についても指導します。
まとめ
川崎病患児の看護においては、ヘンダーソン14項目を基盤とした包括的アセスメントが極めて有効です。
幼児期の発達特徴を理解し、疾患特有の症状と合併症リスクを考慮した個別的な看護計画の立案が重要です。
非言語的コミュニケーションを重視し、家族との連携を密にした支援により、患児の最良のアウトカムを目指します。
急性期の症状管理から退院後の継続支援まで、一貫した看護の提供が患児の健やかな成長発達を支える基盤となります。
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