睡眠は人間の基本的欲求の一つであり、心身の回復や健康維持に欠かせない生理的機能です。
医療現場では疾患や治療、環境の変化などにより睡眠パターンが乱れる患者さんが多く見られます。
睡眠パターンの不良は身体的回復を遅らせるだけでなく、精神的な苦痛や日中の活動性低下にもつながるため、看護師による適切なアセスメントと介入が重要です。
本記事では睡眠パターン不良リスク状態にある患者さんへの看護計画について、睡眠の生理学的メカニズムから具体的な看護介入まで詳しく解説します。
睡眠パターン不良リスク状態とは
睡眠パターン不良リスク状態とは、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などにより質の良い睡眠が得られていない、または得られなくなる可能性が高い状態を指します。
入院患者さんの多くは慣れない環境や身体的苦痛、心理的ストレスなどにより睡眠障害を経験します。
睡眠の質が低下すると免疫機能の低下や創傷治癒の遅延、疼痛閾値の低下などが起こり、疾患からの回復に悪影響を与えます。
また、認知機能の低下やせん妄のリスクも高まるため、早期からの予防的介入が大切です。
睡眠パターンの評価では入眠までの時間、総睡眠時間、中途覚醒の回数、起床時の爽快感などを総合的に判断します。
個人差が大きいため、患者さん本人の主観的な評価と客観的な観察データの両方を参考にすることが重要です。
睡眠の生理学的メカニズム
正常な睡眠は浅い眠りであるレム睡眠と深い眠りであるノンレム睡眠が約90分周期で繰り返されます。
ノンレム睡眠はさらに4段階に分けられ、段階3と4は徐波睡眠と呼ばれる深い睡眠状態です。
この深い睡眠中に成長ホルモンが分泌され、組織の修復や免疫機能の強化が行われます。
レム睡眠中は脳が活発に働き、記憶の整理や情緒の安定化が図られます。
睡眠と覚醒のリズムは体内時計により調節されており、光や食事、運動などの外部刺激が体内時計の同調因子として働きます。
メラトニンは睡眠を促すホルモンであり、暗くなると分泌が増加し眠気をもたらします。
逆に明るい光はメラトニンの分泌を抑制し覚醒を促すため、病院の照明環境は睡眠に大きく影響します。
加齢により睡眠の構造は変化し、深い睡眠が減少して浅い睡眠や中途覚醒が増加します。
高齢者では若年者に比べて総睡眠時間が短くなり、睡眠の質も低下する傾向があります。
睡眠パターン不良の原因とリスク因子
入院患者さんの睡眠パターン不良には様々な原因があります。
身体的要因として疼痛や呼吸困難、頻尿、掻痒感などの身体症状が睡眠を妨げます。
疼痛は入眠を困難にし、体動時の痛みにより中途覚醒の原因となります。
呼吸器疾患による呼吸困難は臥床時に増悪することが多く、睡眠の質を著しく低下させます。
心理的要因としては疾患に対する不安や治療への恐怖、家族への心配などがあります。
入院という環境の変化自体がストレスとなり、精神的緊張により入眠が妨げられることもあります。
環境的要因では病室の照明や騒音、温度湿度などが影響します。
夜間の巡視や処置、他患者さんの物音や話し声などにより睡眠が中断されることがあります。
医療機器のアラーム音や廊下の足音なども睡眠を妨げる要因となります。
治療関連要因として薬剤の副作用や点滴による夜間トイレの回数増加などがあります。
利尿薬や気管支拡張薬、ステロイド薬などは睡眠に影響を与えることが知られています。
生活リズムの変化も重要な要因であり、入院により日中の活動量が減少し昼寝が増えることで夜間の睡眠が浅くなります。
睡眠パターン不良の看護目標
睡眠パターン不良リスク状態にある患者さんへの看護では、明確な目標設定が重要です。
長期目標として、患者さんが質の良い睡眠を得られ心身の回復が促進されることを設定します。
短期目標としては、まず睡眠を妨げる要因が軽減または除去されることを目指します。
次に、患者さんが入眠しやすい環境が整い、夜間の中途覚醒が減少することを目標とします。
さらに、患者さん自身が睡眠の重要性を理解し、良質な睡眠を得るための行動を実践できることも短期目標として設定します。
これらの目標を達成するために、観察項目、治療的援助、教育的援助の3つの視点から具体的な看護計画を立案します。
観察項目
睡眠パターン不良リスク状態の患者さんに対する観察は、睡眠の質を評価し介入の効果を判定するために重要です。
睡眠状況の観察では入眠時刻、起床時刻、総睡眠時間、中途覚醒の回数と時刻を記録します。
夜間巡視時には患者さんの睡眠状態を確認し、眠れているか、覚醒しているか、うとうとしているかなどを観察します。
起床時には睡眠の質について患者さんに直接尋ね、よく眠れたか、疲れは取れたか、日中の眠気はあるかなどを確認します。
主観的な睡眠の質を評価するため、ピッツバーグ睡眠質問票などのスケールを用いることも有効です。
睡眠を妨げる要因の観察では、疼痛や呼吸困難、頻尿などの身体症状の有無と程度を評価します。
疼痛の評価ではビジュアルアナログスケールや数値評価スケールを用いて、痛みの強さと睡眠への影響を確認します。
呼吸状態では呼吸数や呼吸パターン、酸素飽和度を観察し、夜間の酸素化が保たれているかを確認します。
排尿状況では夜間の排尿回数や尿量を記録し、頻尿が睡眠を妨げていないか評価します。
心理状態の観察では表情や言動から不安や緊張の程度を判断します。
疾患や治療に対する心配事や家族への気がかりなどを傾聴し、精神的ストレスの内容を把握します。
環境面では病室の照明の明るさ、騒音レベル、室温、湿度を確認します。
夜間の巡視や処置の頻度、同室患者さんの状況なども睡眠環境に影響する要因として観察します。
日中の活動状況では離床時間や活動内容、日中の睡眠時間を記録します。
日中の過度な睡眠は夜間の睡眠を妨げる要因となるため、昼寝の時間や回数を把握します。
服用薬剤では睡眠に影響を与える可能性のある薬剤の種類と服用時間を確認します。
睡眠薬が処方されている場合は、その効果と副作用の有無を観察します。
生活習慣では入院前の就寝時刻や起床時刻、睡眠時間などを情報収集し、入院後の変化を評価します。
就寝前の習慣として読書や音楽鑑賞などがあれば、それを継続できているかも確認します。
治療的援助
睡眠パターン不良リスク状態の患者さんへの治療的援助は、睡眠を妨げる要因の除去と睡眠を促進する環境づくりが中心となります。
疼痛管理では患者さんの痛みの訴えに耳を傾け、適切な鎮痛薬の使用により疼痛をコントロールします。
痛みで眠れない場合は我慢せず早めに伝えるよう患者さんに説明し、定時の鎮痛薬に加えて頓用薬の使用も検討します。
非薬物的疼痛緩和として体位の工夫やマッサージ、温罨法なども効果的です。
呼吸困難への対応では酸素療法や体位の調整により呼吸を楽にします。
起座位や半座位など患者さんが楽に感じる体位を見つけ、クッションや枕を使って安楽な姿勢を保ちます。
必要に応じて医師と相談し、気管支拡張薬の使用時間を調整することもあります。
排泄援助では夜間の排尿回数を減らすため、就寝前の水分摂取量を調整します。
ただし脱水にならないよう日中に十分な水分を摂取できるよう配慮します。
利尿薬を服用している患者さんでは、可能であれば服用時間を午前中に変更することで夜間の頻尿を軽減できます。
ポータブルトイレを設置することで、トイレまでの移動による覚醒を最小限にすることも有効です。
環境調整では夜間の照明を暗くし、メラトニンの分泌を促します。
消灯後は必要最小限の明るさにとどめ、巡視時も懐中電灯などを使用して患者さんへの光刺激を減らします。
日中は可能な限りカーテンを開けて自然光を取り入れ、体内時計のリズムを整えます。
騒音対策では夜間の会話や足音を小さくするよう病棟スタッフ全体で意識します。
医療機器のアラーム音量を必要最小限に設定し、不要なアラームが鳴らないよう機器を適切に管理します。
耳栓の使用も効果的ですが、緊急時の呼びかけが聞こえないリスクがあるため、患者さんの状態に応じて判断します。
室温と湿度の調整では、季節や個人の好みに応じて快適な環境を整えます。
一般的に睡眠に適した室温は18度から22度程度とされますが、患者さんの感じ方を確認しながら調整します。
乾燥は咳や掻痒感の原因となるため、加湿器の使用も検討します。
寝具の調整では枕の高さや掛け物の重さなどを患者さんの好みに合わせます。
可能であれば使い慣れた枕やパジャマの持参を勧めることも、安眠につながります。
活動と休息のバランス調整では日中の活動量を増やし、夜間の睡眠を促進します。
病状が許す範囲で離床を促し、散歩やリハビリテーションなど適度な運動を取り入れます。
日中の長時間の睡眠は避け、昼寝をする場合は30分以内の短時間にとどめるよう助言します。
規則正しい生活リズムを整えるため、起床時刻と就寝時刻をできるだけ一定にします。
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リラクゼーション技法の提供では、就寝前に心身の緊張を緩和する方法を紹介します。
深呼吸法や筋弛緩法、イメージ法などを患者さんと一緒に実践し、効果を確認します。
好きな音楽を聴くことや軽い読書なども、入眠前のリラックスに効果的です。
ただし、テレビやスマートフォンの画面から発せられる光は覚醒を促すため、就寝前の使用は控えるよう助言します。
夜間のケアスケジュールの調整では、処置や検温の時間をまとめ、睡眠の中断を最小限にします。
医師と相談し、緊急性のない処置や検査は日中に実施できるよう調整します。
点滴の更新時間も睡眠時間を考慮して設定し、可能であれば中断回数を減らせるよう工夫します。
薬物療法では医師と連携し、睡眠に影響を与える薬剤の種類や投与時間を検討します。
睡眠薬が必要な場合は、患者さんの睡眠障害のタイプに応じて適切な薬剤を選択します。
入眠困難には超短時間作用型や短時間作用型の睡眠薬が、中途覚醒には中時間作用型の睡眠薬が適しています。
睡眠薬の効果と副作用を観察し、転倒やふらつきなどの有害事象に注意します。
教育的援助
患者さんや家族への教育的援助では、睡眠の重要性と良質な睡眠を得るための方法について説明します。
睡眠は身体の回復や免疫機能の維持に欠かせないものであり、治療効果を高めるためにも大切であることを伝えます。
入院中の睡眠環境が自宅とは異なることで眠りにくくなることは自然な反応であり、改善のための対策があることを説明します。
睡眠衛生指導として、就寝前のカフェイン摂取を避けることや寝酒の問題点について説明します。
カフェインは覚醒作用があるため、午後からは摂取を控えるよう助言します。
アルコールは一時的に入眠を促しますが、睡眠の質を低下させ中途覚醒の原因となるため、睡眠薬代わりの飲酒は勧められません。
就寝前の過度な水分摂取は夜間の頻尿につながるため、適量にとどめることを説明します。
就寝前の習慣として、リラックスできる活動を取り入れることを提案します。
軽い読書や静かな音楽鑑賞、ぬるめのお風呂などが効果的です。
逆に、激しい運動や興奮するような活動は避けるよう助言します。
眠れないときの対処法として、無理に眠ろうとせず一度起きて落ち着く活動をすることを勧めます。
ベッドの中で長時間眠れずにいると、ベッドと不眠が結びつき、さらに眠れなくなる悪循環に陥ります。
眠気が来るまで静かに過ごし、眠くなってから再びベッドに入ることで、入眠しやすくなります。
症状や不安がある場合は我慢せずにナースコールを押すよう説明します。
痛みや息苦しさなどの身体症状は早めに対処することで、睡眠への影響を最小限にできます。
心配事がある場合も、看護師に話すことで気持ちが楽になることがあると伝えます。
退院後の睡眠管理についても指導します。
入院中に睡眠薬を使用していた場合、自己判断で急に中止すると反跳性不眠が起こる可能性があるため、医師の指示に従って徐々に減量することを説明します。
在宅でも規則正しい生活リズムを保つことや、日中の適度な活動が大切であることを伝えます。
睡眠障害のタイプ別看護
入眠障害では寝つきが悪く入眠までに30分以上かかる状態です。
就寝前の環境調整やリラクゼーション技法の実施により、心身の緊張を緩和します。
日中の活動量を増やし、適度な疲労感を得ることも入眠を促進します。
就寝時刻を一定にし、体内時計のリズムを整えることが大切です。
中途覚醒では夜間に何度も目が覚めてしまい、再入眠が困難な状態です。
疼痛や呼吸困難などの身体症状が原因の場合は、症状のコントロールを優先します。
夜間の処置や巡視の回数を減らし、睡眠の中断を最小限にします。
トイレが近い場合は、就寝前の水分摂取を調整したり、ポータブルトイレを設置したりします。
早朝覚醒では予定より2時間以上早く目が覚め、その後眠れなくなる状態です。
高齢者に多く見られ、体内時計の前進が関与していると考えられます。
日中に明るい光を浴びることで体内時計をリセットし、就寝時刻と起床時刻を遅らせることができます。
夕方以降の昼寝は避け、夜間の睡眠時間を確保します。
熟眠障害では睡眠時間は十分でも眠りが浅く、疲労感が残る状態です。
睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群などの睡眠関連疾患が隠れている可能性があります。
いびきの有無や夜間の無呼吸、日中の強い眠気などを観察し、必要に応じて専門的な検査を勧めます。
特殊な状況における睡眠への配慮
集中治療室での看護では、重症患者さんの睡眠は著しく障害されます。
24時間体制での観察や処置により、睡眠が細切れになりがちです。
可能な限り処置の時間をまとめ、まとまった睡眠時間を確保できるよう工夫します。
昼夜のメリハリをつけるため、日中はカーテンを開けて自然光を取り入れ、夜間は照明を暗くします。
せん妄のリスクが高い患者さんでは、睡眠不足がせん妄の誘因となるため、特に注意が必要です。
術後患者さんでは疼痛や創部の違和感により睡眠が妨げられます。
適切な鎮痛薬の使用により疼痛をコントロールし、安楽な体位を工夫します。
ドレーンやカテーテル類が睡眠の妨げとならないよう固定方法を工夫します。
終末期の患者さんでは、身体的苦痛や精神的不安により睡眠障害が生じやすくなります。
症状緩和を最優先とし、患者さんが安楽に過ごせるよう支援します。
家族の面会時間を柔軟に対応し、患者さんが安心できる環境を整えます。
認知症の患者さんでは昼夜逆転や夜間の徘徊などが見られることがあります。
日中の活動を促し、生活リズムを整えることが大切です。
馴染みのある物を身近に置くことで、安心感を得られることもあります。
睡眠パターン改善の評価
看護介入の効果を評価するため、患者さんの睡眠状況の変化を継続的に観察します。
入眠までの時間が短縮されたか、中途覚醒の回数が減少したか、総睡眠時間が増加したかを確認します。
患者さん自身の主観的な評価として、睡眠の質が改善したと感じているか、日中の眠気が減少したかを尋ねます。
起床時の表情や言動から、疲労感が軽減されているかを観察します。
身体的な変化として、バイタルサインの安定や疼痛の軽減、食欲の改善などが見られることもあります。
精神的な変化として、不安や焦燥感の軽減、表情の明るさなどを評価します。
介入の効果が不十分な場合は、睡眠を妨げている要因を再度アセスメントし、計画を修正します。
新たな要因が見つかった場合は、それに対する介入を追加します。
多職種連携による睡眠支援
睡眠パターンの改善には多職種の連携が重要です。
医師とは薬剤の種類や投与時間の調整、睡眠に影響を与える疾患の治療について相談します。
薬剤師には睡眠薬の適切な使用方法や副作用、他の薬剤との相互作用について助言を求めます。
理学療法士や作業療法士には日中の活動プログラムの立案を依頼し、適度な運動により夜間の睡眠を促進します。
栄養士には就寝前の食事内容や摂取時間について相談し、睡眠に影響しない食事計画を立てます。
臨床心理士には不安や抑うつなどの心理的問題へのカウンセリングを依頼します。
医療ソーシャルワーカーには経済的な心配事や退院後の生活への不安など、社会的な問題の解決を支援してもらいます。
それぞれの専門性を活かし、チーム全体で患者さんの睡眠パターン改善に取り組むことが大切です。
まとめ
睡眠パターン不良リスク状態は入院患者さんに多く見られる看護問題であり、身体的回復を遅らせる要因となります。
疼痛や呼吸困難などの身体症状、不安や心配事などの心理的要因、照明や騒音などの環境要因が複雑に絡み合って睡眠障害を引き起こします。
看護師は患者さんの睡眠状況を丁寧に観察し、睡眠を妨げている要因を的確にアセスメントすることが重要です。
身体症状のコントロール、睡眠環境の調整、生活リズムの確立、リラクゼーション技法の提供など、多角的なアプローチにより睡眠パターンの改善を図ります。
患者さんや家族への睡眠衛生指導により、自己管理能力を高めることも大切です。
多職種と連携しながら、それぞれの専門性を活かした睡眠支援を提供することで、患者さんの質の良い睡眠と心身の回復を促進することができます。
看護師一人ひとりが睡眠の重要性を認識し、患者さんの睡眠を守る意識を持って日々のケアに取り組むことが求められます。








