倦怠感は患者さんの日常生活に大きな影響を与える症状です。
単に疲れているという状態ではなく、休息をとっても改善しにくい持続的な疲労感や気力の低下を指します。
この倦怠感が過剰になると、患者さんの生活の質は著しく低下し、治療への意欲や回復力にも悪影響を及ぼすことがあります。
看護師として、患者さんの倦怠感を適切に評価し、個別性のある看護を提供することが大切です。
倦怠感負担過剰とは
倦怠感負担過剰とは、身体的・精神的な疲労が蓄積し、通常の休息では回復できない状態を指します。
がん患者さんや慢性疾患を抱える方に多く見られる症状であり、病気そのものだけでなく、治療の副作用や心理的ストレス、栄養状態の悪化などさまざまな要因が絡み合って生じます。
患者さんは起き上がることさえ困難に感じたり、簡単な日常動作でも疲れ果ててしまったりします。
このような状態が続くと、患者さんは自分の身体をコントロールできないという無力感を抱き、精神的にも追い詰められていきます。
倦怠感は主観的な症状であるため、客観的な評価が難しいという特徴があります。
そのため、看護師は患者さんの訴えに耳を傾け、細やかな観察を行うことが重要です。
倦怠感が生じる主な原因
倦怠感が生じる原因は多岐にわたります。
身体的な要因としては、貧血や電解質バランスの乱れ、栄養不足、脱水、感染症などが挙げられます。
貧血があると酸素の運搬能力が低下し、全身の組織が酸素不足に陥るため、強い疲労感を覚えます。
また、電解質のバランスが崩れると、筋肉の機能や神経伝達に影響が出て、身体のだるさや脱力感が現れます。
がん患者さんの場合、化学療法や放射線療法といった治療そのものが倦怠感の原因になることも少なくありません。
化学療法は正常な細胞にもダメージを与えるため、身体全体が疲弊した状態になります。
放射線療法も同様に、照射部位だけでなく全身に疲労感をもたらすことがあります。
精神的な要因も倦怠感に深く関わっています。
不安や抑うつ、恐怖、孤独感などの心理的ストレスは、身体的な疲労感を増幅させます。
患者さんが病気の予後や治療の効果について悩んでいたり、家族や仕事のことで心配を抱えていたりすると、心身ともに疲れ果ててしまいます。
睡眠障害も倦怠感の大きな要因です。
痛みや不安、環境の変化などによって十分な睡眠がとれないと、身体は休息できず、疲労が蓄積していきます。
夜間に何度も目が覚めてしまったり、眠りが浅かったりすると、朝起きても疲れが取れていないと感じることが多くなります。
活動量の低下も倦怠感を悪化させる要因の一つです。
倦怠感があるからといって安静にしすぎると、筋力が低下し、ますます動くことが億劫になります。
この悪循環に陥ると、患者さんはベッドから離れることさえ困難になり、日常生活動作の自立度が著しく低下します。
倦怠感が患者さんに与える影響
倦怠感は患者さんの生活のあらゆる側面に影響を与えます。
身体的には、セルフケア能力が低下し、入浴や食事、トイレといった基本的な日常動作さえ困難になることがあります。
患者さんは自分で身の回りのことができないことに無力感を覚え、自尊心が傷つきます。
家族に世話をかけることへの申し訳なさや、自分が役に立たない存在だという思いが募り、精神的な負担も増していきます。
社会的な影響も大きいです。
倦怠感が強いと、仕事や学業を続けることが難しくなり、社会的な役割を果たせなくなります。
友人との交流や趣味の活動も制限され、社会とのつながりが薄れていきます。
このような社会的孤立は、患者さんの心理状態をさらに悪化させ、倦怠感を増強させる悪循環を生み出します。
治療への影響も見逃せません。
倦怠感が強いと、治療を受ける意欲が低下し、予定された治療を中断したり、拒否したりすることもあります。
また、リハビリテーションへの参加意欲も減退し、回復が遅れる可能性があります。
倦怠感の評価方法
倦怠感は主観的な症状であるため、評価には患者さん自身の訴えが最も重要です。
看護師は患者さんとの対話を通じて、倦怠感の程度や性質、いつから始まったのか、どのような時に悪化するのかなどを丁寧に聞き取ります。
視覚的評価スケールを用いることも有効です。
0から10までの数値で倦怠感の程度を表してもらうことで、経時的な変化を追うことができます。
今日の倦怠感はどのくらいですかと尋ね、患者さんに数値で答えてもらいます。
0が全く倦怠感がない状態、10が想像できる最悪の倦怠感とします。
この評価を毎日同じ時間に行うことで、倦怠感のパターンや変動を把握できます。
身体的な観察も重要です。
患者さんの表情や姿勢、動作のスピード、会話の内容などから、倦怠感の程度を推測します。
表情が乏しかったり、動作が緩慢だったり、会話が億劫そうだったりする場合は、倦怠感が強い可能性があります。
バイタルサインや血液検査の結果も参考にします。
貧血の有無や電解質のバランス、栄養状態などを確認することで、倦怠感の原因を特定する手がかりが得られます。
看護目標
長期目標
患者さんが日常生活動作を自立して行えるレベルまで倦怠感が軽減し、生活の質が向上する。
短期目標
患者さんが倦怠感の原因や対処方法を理解し、自分で実践できるようになる。
患者さんが十分な休息と適度な活動のバランスを取り、倦怠感の悪化を防ぐことができる。
患者さんが倦怠感について医療者に正確に伝えることができ、必要な支援を受けられるようになる。
観察計画
倦怠感の程度を毎日評価し、記録します。
視覚的評価スケールを用いて、患者さんに倦怠感の数値を報告してもらいます。
倦怠感がどのような時に強くなるのか、軽くなるのかを観察します。
活動後や食事後、朝と夕方など、時間帯による変化も記録します。
バイタルサインを定期的に測定します。
血圧や脈拍、体温、呼吸数を確認し、異常がないかチェックします。
貧血や感染症などの身体的な問題が倦怠感の原因になっていないか評価します。
睡眠の状態を観察します。
夜間の睡眠時間や睡眠の質、日中の仮眠の有無などを確認します。
患者さんに睡眠について尋ね、よく眠れているか、夜中に目が覚めることはないかなどを聞き取ります。
食事の摂取状況を観察します。
食事量や食事内容、食欲の有無を確認します。
栄養状態が倦怠感に影響していないか評価します。
体重の変化も記録します。
排泄の状況を観察します。
便秘や下痢がないか、排尿の回数や量は適切かを確認します。
排泄の問題が倦怠感を悪化させることもあるため、注意深く観察します。
日常生活動作の自立度を評価します。
入浴や着替え、トイレ、食事などの動作をどの程度自分でできているかを観察します。
介助が必要な場合は、どの部分に介助が必要かを具体的に把握します。
精神状態を観察します。
患者さんの表情や言動から、不安や抑うつ、無力感などの心理的問題がないかを評価します。
患者さんとの会話を通じて、心配事や悩みがないか聞き取ります。
血液検査の結果を確認します。
ヘモグロビン値や電解質、アルブミン値などをチェックし、貧血や栄養不良、電解質異常がないかを評価します。
ケア計画
患者さんの倦怠感の原因を特定し、それに応じたケアを提供します。
貧血がある場合は、医師の指示のもとで輸血や鉄剤の投与を行います。
栄養不足が原因の場合は、栄養士と連携して食事内容を見直します。
患者さんが食べやすい形態や好みの食べ物を提供し、少量ずつでも摂取できるよう工夫します。
休息と活動のバランスを調整します。
患者さんに無理のない範囲で活動を促し、適度な運動を取り入れます。
ベッドから離れて椅子に座る時間を増やしたり、病室内を歩いたりすることで、筋力の低下を防ぎます。
活動後は十分な休息を取るよう声をかけ、疲労が蓄積しないようにします。
睡眠環境を整えます。
病室の照明や温度、騒音などを調整し、患者さんが快適に眠れる環境を作ります。
夜間は照明を暗くし、日中は明るくすることで、体内時計を整えます。
痛みや不安が睡眠を妨げている場合は、医師と相談して鎮痛剤や睡眠薬の使用を検討します。
エネルギーの節約を支援します。
患者さんが日常生活動作を行う際に、エネルギーを無駄にしないよう工夫します。
例えば、入浴はシャワー浴にしたり、椅子に座って行ったりします。
ベッドサイドに必要な物品を置いて、移動の負担を減らします。
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心理的な支援を行います。
患者さんの話をじっくり聞き、不安や悩みを受け止めます。
倦怠感は治療の一部であり、時間とともに改善する可能性があることを伝え、希望を持ってもらいます。
家族や友人との面会を調整し、心の支えとなる人とのつながりを大切にします。
家族への支援も行います。
家族に対して、倦怠感の特徴や患者さんへの接し方を説明します。
患者さんを励ましすぎず、無理に活動させないよう伝えます。
患者さんのペースを尊重し、できることは自分でやってもらうよう促すことが大切だと説明します。
教育計画
倦怠感についての正しい知識を提供します。
倦怠感は単なる怠けではなく、病気や治療による身体的な症状であることを説明します。
患者さんが自分を責めたり、罪悪感を持ったりしないよう配慮します。
倦怠感の原因や悪化要因について教えます。
貧血や栄養不足、睡眠不足、活動量の低下などが倦怠感を引き起こすことを説明します。
患者さんが自分の状態を理解し、対処できるよう支援します。
倦怠感への対処方法を具体的に伝えます。
休息と活動のバランスを取ることの大切さを説明します。
活動の優先順位をつけ、重要なことから行うよう勧めます。
一度にたくさんのことをしようとせず、こまめに休憩を取りながら進めるよう助言します。
栄養摂取の重要性を教えます。
バランスの取れた食事が倦怠感の軽減につながることを説明します。
食欲がない時でも、少量ずつでも栄養価の高い食べ物を摂取するよう勧めます。
水分補給も大切であることを伝えます。
睡眠の質を高める方法を教えます。
規則正しい生活リズムを保つこと、日中の仮眠は短時間にすること、寝る前のカフェインやアルコールを避けることなどを説明します。
リラックスできる方法を見つけることも勧めます。
倦怠感の記録方法を教えます。
日記やメモに倦怠感の程度や時間帯、活動内容などを記録することで、パターンを把握できることを説明します。
この記録を医療者に見せることで、より適切なケアが受けられることを伝えます。
必要時には医療者に相談することの大切さを教えます。
倦怠感が急に悪化したり、日常生活に大きな支障が出たりする場合は、遠慮せずに看護師や医師に伝えるよう勧めます。
倦怠感は我慢する必要はなく、適切な治療やケアで改善できる可能性があることを説明します。
倦怠感軽減のための日常生活の工夫
患者さんが自宅で実践できる倦怠感軽減の方法を紹介します。
朝起きた時に、ベッドの中でゆっくりストレッチをすることから始めます。
急に起き上がると立ちくらみを起こすことがあるため、数分かけて身体を慣らします。
朝食はしっかり摂るようにします。
エネルギー源となる炭水化物やタンパク質を含む食事を取ることで、午前中の活動がしやすくなります。
食欲がない時は、果物やヨーグルトなど食べやすいものから始めます。
活動のスケジュールを立てます。
その日にやるべきことをリストアップし、優先順位をつけます。
すべてを一度にやろうとせず、午前中に一つ、午後に一つというように分けて計画します。
疲れたら無理せず休むことを心がけます。
家事は効率的に行います。
座ってできる作業は座って行い、重い物は無理に持たないようにします。
掃除や洗濯は毎日完璧にやる必要はなく、できる範囲で行います。
家族に協力を求めることも大切です。
外出時は疲れないよう工夫します。
買い物は短時間で済ませ、重い荷物は宅配サービスを利用します。
外出先では休憩できる場所を事前に確認しておきます。
友人との約束も、無理のない範囲で楽しむようにします。
趣味や楽しみを持つことも倦怠感の軽減に役立ちます。
読書や音楽鑑賞、手芸など、座ったままできる趣味を見つけます。
好きなことをする時間は、心のリフレッシュにもなり、生活の質を高めます。
ただし、無理をして疲れてしまわないよう、短時間から始めます。
医療チームとの連携
倦怠感のケアには多職種の連携が欠かせません。
医師は倦怠感の原因を診断し、必要な治療を行います。
貧血があれば輸血や鉄剤の処方、感染症があれば抗生剤の投与など、医学的な介入を行います。
看護師は患者さんの日々の状態を観察し、倦怠感の変化を医師に報告します。
栄養士は患者さんの栄養状態を評価し、適切な食事を提案します。
倦怠感がある患者さんは食欲が低下していることが多いため、栄養価が高く食べやすい食事を提供します。
必要に応じて栄養補助食品の使用も検討します。
理学療法士は患者さんの体力や筋力を評価し、適切な運動プログラムを作成します。
無理のない範囲で身体を動かすことで、筋力の低下を防ぎ、倦怠感の軽減につながります。
運動の強度や時間は患者さんの状態に合わせて調整します。
作業療法士は日常生活動作の自立を支援します。
エネルギーを節約しながら効率的に動作を行う方法を教えたり、補助具の使用を提案したりします。
患者さんが自分でできることを増やすことで、自信や自尊心の回復にもつながります。
臨床心理士や精神科医は、患者さんの心理的な問題に対応します。
不安や抑うつが強い場合は、カウンセリングや薬物療法を行います。
心の健康が保たれることで、倦怠感も軽減されることがあります。
薬剤師は患者さんが服用している薬の副作用を確認します。
倦怠感を引き起こす可能性のある薬がないか評価し、必要に応じて医師に代替薬の提案を行います。
患者さんに薬の正しい使い方を説明し、服薬アドヒアランスを高めます。
ソーシャルワーカーは患者さんの社会的な支援を調整します。
経済的な問題や家庭環境の調整、社会資源の活用などをサポートします。
患者さんが安心して療養できる環境を整えることで、心身の負担を軽減します。
これらの専門職が情報を共有し、協力してケアを提供することで、患者さんの倦怠感を効果的に軽減できます。
定期的にカンファレンスを開き、患者さんの状態や今後の方針について話し合います。
倦怠感と向き合う患者さんへのメッセージ
倦怠感は多くの患者さんが経験する症状です。
一人で抱え込まず、医療者や家族に相談することが大切です。
倦怠感を感じることは決して恥ずかしいことではなく、治療の過程で当然起こりうることです。
自分を責めたり、無理をしたりせず、身体の声に耳を傾けてください。
休むことも治療の一部です。
疲れた時は無理せず休息を取り、できることから少しずつ始めましょう。
小さな成功体験を積み重ねることで、徐々に自信を取り戻すことができます。
倦怠感は必ず改善します。
時間はかかるかもしれませんが、適切なケアとサポートによって、生活の質は向上していきます。
希望を持ち続け、前向きに治療に取り組んでいきましょう。
まとめ
倦怠感負担過剰は患者さんの生活に大きな影響を与える症状です。
看護師は患者さんの倦怠感を正確に評価し、個別性のあるケアを提供することが重要です。
身体的な原因だけでなく、精神的・社会的な要因にも目を向け、多職種と連携しながら包括的なケアを行います。
患者さんが倦怠感と上手に付き合い、日常生活の質を高められるよう支援することが看護の役割です。
倦怠感は適切なケアによって軽減できる症状であり、患者さんと一緒に取り組んでいくことが大切です。
患者さんの訴えに耳を傾け、共感し、希望を持ってもらえるような関わりを心がけましょう。
一人ひとりの患者さんに合ったケアを提供することで、倦怠感の軽減と生活の質の向上を実現できます。
倦怠感のケアは長期的な取り組みであり、継続的なサポートが求められます。
患者さんが自分らしい生活を取り戻せるよう、看護師として最善のケアを提供していきましょう。








