床上可動性障害は、ベッド上での体位変換や移動が自力でできない、または困難な状態を指します。
この状態は、患者さんの生活の質に大きく影響し、さまざまな合併症のリスクを高めます。
適切な看護計画を立てることで、患者さんの残存機能を最大限に活かし、安全で快適な療養生活を支援することができます。
今回は、床上可動性障害を持つ患者さんに対する看護計画について、実践的な内容を詳しくお伝えしていきます。
床上可動性障害とは
床上可動性障害は、ベッド上で自由に動くことができない状態です。
寝返りを打つ、起き上がる、ベッド上で移動するといった基本的な動作が制限されます。
この障害は、脳血管疾患、脊髄損傷、骨折、筋力低下、意識障害など、さまざまな原因によって起こります。
長期間ベッド上での生活を余儀なくされると、筋力の低下や関節の拘縮が進行し、さらに可動性が制限される悪循環に陥ることがあります。
褥瘡や肺炎などの合併症のリスクも高まるため、早期からの適切な介入が重要です。
患者さん本人だけでなく、介護する家族の負担も大きくなるため、包括的な支援が求められます。
床上可動性障害の原因と影響
床上可動性障害の原因は多様です。
脳卒中による片麻痺では、身体の半分が動かせなくなり、寝返りや起き上がりが困難になります。
脊髄損傷の場合は、損傷部位より下の運動機能が失われ、ベッド上での移動が大きく制限されます。
骨折後の安静指示により、一時的に床上可動性が障害されることもあります。
高齢による筋力低下や関節の変形も、可動性を妨げる要因です。
意識レベルの低下や認知機能の障害がある場合、自発的な体動が減少します。
疼痛があると、痛みを避けるために動きを最小限にしようとし、可動性が低下します。
この障害がもたらす影響は広範囲に及びます。
褥瘡が発生しやすくなり、一度できると治癒に時間がかかります。
筋力の低下が加速し、関節が固まって拘縮が進行します。
肺炎や無気肺などの呼吸器合併症のリスクが高まります。
血栓形成のリスクも増加し、深部静脈血栓症や肺塞栓症を引き起こす可能性があります。
消化機能が低下し、便秘になりやすくなります。
精神的にも影響があり、抑うつや意欲の低下が見られることがあります。
看護アセスメントの視点
床上可動性障害の患者さんを看護する際、多角的なアセスメントが必要です。
可動性のレベルを評価します。
完全に自力では動けないのか、部分的に介助があれば動けるのかを確認します。
寝返りはできるか、起き上がりはどの程度できるか、ベッド上での移動はどうかを細かく観察します。
筋力の状態を把握します。
上肢と下肢それぞれの筋力を評価し、左右差がないかもチェックします。
関節の可動域を確認します。
各関節がどの程度動くか、拘縮の有無や程度を評価します。
感覚機能の状態も重要です。
痛みや触覚、温度感覚が正常かどうかを確認します。
皮膚の状態を詳しく観察します。
発赤、腫れ、傷、褥瘡の兆候がないかを全身くまなくチェックします。
意識レベルと認知機能を評価します。
指示が理解できるか、協力動作が可能かを確認します。
疼痛の有無と程度を把握します。
痛みがあると可動性がさらに制限されるため、痛みの評価は欠かせません。
患者さんの意欲やリハビリへの意識も確認します。
回復への意欲があるか、前向きに取り組めているかを観察します。
看護目標の設定
床上可動性障害の看護では、現実的で達成可能な目標を設定することが大切です。
長期目標
ベッド上での基本動作が安全に行え、合併症を起こすことなく、可能な限り自立した生活が送れるようになる。
短期目標
体位変換を定期的に行い、褥瘡の発生を予防できる。
残存機能を活用して、部分的にでも自力での体動ができるようになる。
関節の可動域を維持し、拘縮の進行を防ぐことができる。
これらの目標は、患者さんの状態や回復の見込み、本人の希望に応じて柔軟に調整していきます。
観察項目
観察項目では、患者さんの状態を継続的に把握します。
自力での体動の程度を毎日確認します。
どの動作がどの程度できるか、前日と比べて変化はないかを観察します。
皮膚の状態を全身にわたって観察します。
骨突出部である仙骨部、肩甲骨部、踵部、肘部などを入念にチェックします。
発赤がある場合は、指で押して白くなるかどうかを確認します。
筋力と関節可動域の変化を見ます。
日々の状態を記録し、低下や改善の傾向を把握します。
呼吸状態を観察します。
呼吸数、呼吸音、痰の有無や性状、酸素飽和度を確認します。
循環状態もチェックします。
下肢の腫れ、色の変化、痛みなど、血栓形成の兆候がないかを観察します。
排泄の状態を確認します。
便秘の有無、排尿状態、失禁の有無などを把握します。
栄養状態を評価します。
食事摂取量、体重の変化、血液検査の結果などを確認します。
精神状態の変化にも注意を払います。
表情、発言内容、意欲の程度などから、心理状態を読み取ります。
疼痛の有無と程度を定期的に確認します。
痛みがある場合は、部位、性質、強さ、持続時間などを詳しく聞き取ります。
体温や脈拍などのバイタルサインも測定します。
発熱や頻脈は、感染症などの合併症の兆候かもしれません。
具体的なケアの実践
具体的なケアでは、患者さんの安全と快適さを最優先に考えます。
体位変換を定期的に実施します。
2時間ごとを基本として、仰臥位、右側臥位、左側臥位を順番に行います。
体位変換の際は、必ず声をかけてから行い、患者さんの協力を得られる場合は一緒に動いてもらいます。
クッションや枕を使って、体圧を分散させます。
骨突出部には柔らかいクッションを当て、圧迫を軽減します。
関節可動域訓練を実施します。
全ての関節を、痛みのない範囲でゆっくりと動かします。
1日に2回から3回、各関節を10回程度動かすことを目安にします。
患者さんが自分でできる部分は、できるだけ自分で行ってもらいます。
筋力維持のための運動を取り入れます。
ベッド上でできる簡単な運動を指導し、実施を促します。
手足を上げる、握る、足首を動かすなど、無理のない範囲で行います。
呼吸訓練を行います。
深呼吸や咳の練習をして、肺炎の予防に努めます。
必要に応じて、吸引や体位ドレナージを実施します。
清潔ケアを丁寧に行います。
毎日の清拭や入浴介助を通じて、皮膚を清潔に保ちます。
特に汗や尿で湿った部分は、速やかに清潔にし、よく乾燥させます。
マッサージを取り入れます。
圧迫されやすい部位を優しくマッサージし、血行を促進します。
摩擦や圧迫を避けるため、力を入れすぎないように注意します。
適切な寝具を選択します。
体圧分散マットレスやエアマットを使用し、褥瘡予防に努めます。
シーツのしわや異物がないかを確認し、平らな状態を保ちます。
栄養管理を行います。
高タンパク質で栄養バランスの取れた食事を提供します。
水分摂取も十分に行い、脱水を予防します。
排泄の援助をします。
定期的なトイレ誘導や、必要に応じてオムツ交換を行います。
便秘予防のために、水分や食物繊維の摂取を促します。
疼痛管理を適切に行います。
痛みがある場合は、医師と相談して鎮痛剤の使用を検討します。
体位の工夫や温罨法なども活用します。
教育的支援の内容
教育的支援では、患者さんと家族への情報提供と指導を行います。
床上可動性障害について説明します。
なぜ動けないのか、どのような影響があるのかを分かりやすく伝えます。
体位変換の重要性を理解してもらいます。
圧倒的に早い
プロが作った参考例があれば、それを見て学べます
✓ 一から考える時間がない → 見本で時短
✓ 完成形の見本で理解したい → プロの実例
✓ 自分の事例に合わせた例が欲しい → カスタマイズ可
参考資料提供|料金19,800円〜|15年の実績|提出可能なクオリティ
褥瘡予防のために、定期的な体位変換が欠かせないことを説明します。
自分でできる運動を指導します。
ベッド上でできる簡単な運動方法を、実際にやって見せながら教えます。
毎日続けることの大切さを伝えます。
呼吸法を教えます。
深呼吸の方法や、痰を出しやすくする咳の仕方を指導します。
褥瘡予防のポイントを伝えます。
皮膚を清潔に保つこと、栄養をしっかり取ること、圧迫を避けることの重要性を説明します。
自分でできる皮膚観察の方法を教えます。
鏡を使って、見えにくい部分もチェックする方法を伝えます。
発赤や痛みがあったらすぐに看護師に知らせるよう伝えます。
家族にも介助方法を指導します。
安全な体位変換の方法、関節を動かす方法などを実技で教えます。
患者さんの力を活かす介助の仕方を伝えます。
リハビリの計画について説明します。
今後の見通しや、目標とする状態について共有します。
安全面への配慮
床上可動性障害のある患者さんのケアでは、安全面への配慮が欠かせません。
転落防止の対策をします。
ベッド柵を適切に使用し、必要に応じてベッドを低くします。
ただし、ベッド柵は身体拘束にならないよう、必要最小限の使用にとどめます。
体位変換時の安全を確保します。
複数人で行う場合は、声を掛け合って息を合わせます。
患者さんの体格や状態に応じて、適切な人数で介助します。
皮膚損傷を防ぎます。
引きずったり、摩擦を起こしたりしないよう、持ち上げて移動します。
爪を短く切り、装飾品は外してもらいます。
関節を痛めないよう注意します。
関節可動域訓練の際は、無理に動かさず、痛みのない範囲で行います。
特に拘縮がある場合は、ゆっくりと慎重に動かします。
呼吸状態の急変に備えます。
吸引器などの必要物品を準備しておきます。
異常があれば、すぐに対応できる体制を整えます。
合併症予防の取り組み
床上可動性障害では、さまざまな合併症のリスクがあります。
褥瘡予防は最優先事項です。
体位変換、皮膚の清潔保持、栄養管理、体圧分散マットの使用など、多角的な予防策を講じます。
肺炎予防にも力を入れます。
体位変換、深呼吸の促し、口腔ケア、適切な体位の保持などを行います。
血栓予防のための対策をします。
足首の運動、弾性ストッキングの着用、適切な水分摂取などを実施します。
必要に応じて、医師の指示のもと抗凝固薬を使用します。
拘縮予防に努めます。
関節可動域訓練を定期的に行い、関節が固まらないようにします。
便秘予防を行います。
水分摂取、食物繊維の摂取、腹部マッサージ、適度な運動などを促します。
必要に応じて、緩下剤の使用を検討します。
筋力低下の予防に取り組みます。
ベッド上でできる運動を継続的に行い、筋力の維持に努めます。
心理的サポートの提供
床上可動性障害は、患者さんの精神面にも大きく影響します。
自立心の喪失による落ち込みに対応します。
できることに焦点を当て、小さな進歩も認めて励まします。
無力感や孤独感を和らげます。
定期的に声をかけ、話を聞く時間を作ります。
患者さんの思いや不安を受け止め、共感的に接します。
将来への不安に寄り添います。
回復の見通しや、今後のリハビリ計画について、丁寧に説明します。
希望を持てるよう、前向きな言葉をかけます。
自己決定の機会を作ります。
体位変換のタイミングや、食事の内容など、選択できる場面を設けます。
趣味や楽しみを継続できるよう支援します。
読書、音楽鑑賞、テレビ視聴など、ベッド上でできる活動を勧めます。
家族や友人との交流を促します。
面会を歓迎し、電話やビデオ通話などの手段も活用します。
家族への支援
家族も大きな負担を抱えているため、支援が必要です。
介護方法を具体的に指導します。
実際に一緒に行いながら、安全な方法を教えます。
家族の疲労に配慮します。
無理をしないよう声をかけ、必要に応じて介護サービスの利用を勧めます。
家族の不安や悩みを聞きます。
定期的に面談の機会を設け、思いを吐き出せる場を作ります。
在宅移行に向けた準備を支援します。
自宅での介護に必要な物品や環境整備について、情報を提供します。
介護負担の軽減方法を提案します。
福祉用具の活用、介護保険サービスの利用など、利用できる制度を紹介します。
多職種連携の重要性
床上可動性障害のケアには、多職種の協力が欠かせません。
医師と情報を共有します。
患者さんの状態の変化や、治療方針について密に連絡を取り合います。
理学療法士と協働します。
リハビリの内容や進捗状況を共有し、看護ケアに活かします。
作業療法士からの助言を受けます。
日常生活動作の訓練方法や、補助具の使用について相談します。
栄養士と連携します。
患者さんに適した栄養計画を立て、実施します。
医療ソーシャルワーカーと協力します。
退院後の生活や、利用できる社会資源について相談します。
リハビリテーションとの統合
看護ケアとリハビリテーションを統合的に進めることが重要です。
リハビリの時間以外でも、学んだ動作を実践してもらいます。
日常生活の中で、できることは自分で行うよう促します。
リハビリの成果を看護ケアに反映させます。
新しくできるようになった動作は、日常のケアに取り入れます。
一貫したアプローチを心がけます。
リハビリスタッフと同じ方法で介助することで、患者さんの混乱を防ぎます。
評価と計画の見直し
看護計画は、定期的に評価し、見直すことが大切です。
目標の達成度を確認します。
短期目標が達成できたか、できなかった場合はその理由を分析します。
患者さんの状態の変化に応じて、計画を修正します。
改善が見られれば、より高い目標を設定します。
逆に状態が悪化した場合は、目標を現実的なものに変更します。
効果のあったケアは継続し、効果が乏しいケアは見直します。
新しい方法を取り入れることも検討します。
患者さんや家族の意見も取り入れます。
ケアに対する満足度や、希望する変更点などを聞き取ります。
まとめ
床上可動性障害の看護計画は、合併症予防と機能維持を両立させる包括的なものです。
観察項目では、可動性のレベル、皮膚の状態、呼吸状態、循環状態、精神状態などを継続的に把握します。
具体的なケアでは、定期的な体位変換、関節可動域訓練、呼吸訓練、清潔ケア、栄養管理などを丁寧に実施します。
教育的支援では、患者さんと家族に適切な情報を提供し、自己管理能力を高めます。
安全面への配慮と合併症予防は、常に念頭に置いて行動します。
心理的サポートも欠かせない要素であり、患者さんの尊厳を守りながら、希望を持てるよう支援します。
多職種と連携し、それぞれの専門性を活かした総合的なケアを提供することが重要です。
看護師は、患者さんに最も近い存在として、細やかな観察とケアを行い、その人らしい生活を支えていく役割を担っています。
患者さんの残存機能を最大限に活用し、少しでも自立度を高められるよう、根気強く支援していくことが大切なのです。








