集中治療室(ICU)や救急病棟で働いていると、必ずといっていいほど出会うのが人工換気からの離脱がうまくいかない患者さんです。
「もうそろそろ抜管できるはず…」と医師が判断しても、なぜかうまく呼吸が安定しない。 そんな場面は、臨床ではよく起きます。
この記事では、人工換気離脱困難反応について、看護学生や若手看護師にもわかりやすく解説しながら、実際に使える看護計画まで詳しく書いていきます。
人工換気離脱困難反応とは何か
まず、基礎知識として確認しておきましょう。
人工換気離脱(ウィーニング)とは、人工呼吸器を徐々に外していくプロセスのことです。 医学的には、人工呼吸器を使って補助していた呼吸機能を、患者さん自身の力に戻していく作業とも言えます。
ところが、この離脱がスムーズにいかないことがあります。 こうした状態を「離脱困難反応」(ウィーニング失敗または離脱不全)と呼びます。
具体的には、自発呼吸試験(SBT:Spontaneous Breathing Trial)を行ったとき、患者さんが以下のような反応を示します。
- 呼吸数が増える(頻呼吸:1分間に30回以上)
- 酸素飽和度(SpO2)が低下する
- 血圧や脈拍が乱れる
- 補助呼吸筋(首や肩の筋肉)を使って必死に息をしている
- 不安や興奮状態が強くなる
- 呼吸困難感を訴える
これらの反応が出たとき、ただ「再挿管しよう」と動くのではなく、なぜ離脱できないのかを考えることが看護師として必要です。
離脱困難が起きやすい原因
人工換気の離脱がうまくいかない背景には、様々な原因が絡み合っています。
呼吸器系の問題として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪、肺炎の残存、胸水貯留などが挙げられます。 肺の機能がまだ十分に回復していない状態では、自分の力だけで呼吸を維持するのは難しいです。
心臓・循環器系の問題もよく見られます。 心不全による肺水腫、心機能の低下などが呼吸に余計な負荷をかけることがあります。
筋力低下や神経筋疾患も大きな原因のひとつです。 ICU入院中の長期臥床によって、呼吸に使う横隔膜の力が著しく落ちていることがあります。 これはICU関連筋力低下(ICU-AW:ICU-Acquired Weakness)とも呼ばれており、近年とても注目されています。
代謝・栄養状態の問題も見逃せません。 低栄養状態では、筋力が維持できず、呼吸筋の疲労が起きやすくなります。
心理的な要因として、不安や恐怖から呼吸パターンが乱れることもあります。 特に長期挿管の患者さんは、人工呼吸器への依存度が高くなり、「自分では息ができないのではないか」という不安を持ちやすいです。
看護師として何を見ればよいか
離脱困難反応を早期に察知するためには、患者さんの状態をしっかりと観察することが大切です。
呼吸に関する観察では、呼吸数・呼吸パターン・胸郭の動き・補助呼吸筋の使用・シーソー呼吸(胸と腹が逆に動く状態)の有無を見ます。 これらは呼吸困難の早期サインとして重要です。
循環動態の観察では、血圧・脈拍・末梢循環(手足の冷感・色調)を注意深くチェックします。 呼吸の負荷が上がると、心臓にも影響が出てきます。
意識レベルと精神状態の観察も外せません。 Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)などを使って、患者さんの覚醒度と興奮状態を定期的に確認します。
検査データの確認として、動脈血ガス分析(ABG)の値、特にPaCO2(二酸化炭素分圧)とPaO2(酸素分圧)の変化を把握します。 PaCO2が上昇してきた場合、呼吸筋疲労や換気不全のサインと考えられます。
看護目標
長期目標
患者さんが安全に人工呼吸器から離脱し、自発呼吸のみで安定した呼吸機能を維持できる。
短期目標
呼吸数が1分間20回以下に保たれ、補助呼吸筋の過剰な使用が見られない。
自発呼吸試験(SBT)中に、SpO2が90%以上・血圧と脈拍が安定した状態で30分以上耐えられる。
患者さんが呼吸困難感に対して適切に声掛けを受け、不安や恐怖が軽減した状態でリハビリに取り組める。
圧倒的に早い
プロが作った参考例があれば、それを見て学べます
✓ 一から考える時間がない → 見本で時短
✓ 完成形の見本で理解したい → プロの実例
✓ 自分の事例に合わせた例が欲しい → カスタマイズ可
参考資料提供|料金19,800円〜|15年の実績|提出可能なクオリティ
看護計画の具体策
観察計画(OP)
患者さんの状態を正確につかむための観察項目を整理します。
呼吸数・呼吸パターン(規則性、リズム、深さ)を1〜2時間ごとに確認します。 SpO2・心拍数・血圧を継続的にモニタリングします。 胸郭の動き、補助呼吸筋(胸鎖乳突筋・斜角筋)の使用状況を視診で確認します。 シーソー呼吸や奇異性呼吸の有無も必ず観察します。 動脈血ガス分析(ABG)の結果を定期的に確認します。 PaO2 / FiO2比(P/F比)の変化を把握します。 意識レベル(GCS・RASS)を定時で評価します。 発汗、顔色、末梢冷感などの循環不全サインを確認します。 栄養状態(アルブミン値・体重・カロリー摂取量)を把握します。 不安・恐怖・疼痛の有無を、表情や訴えから確認します。
ケア計画(TP)
患者さんへの直接的なケアを計画します。
自発呼吸試験(SBT)の実施補助を行います。 SBT中は患者さんのそばに付き添い、呼吸状態の変化をリアルタイムで確認します。 異常の早期発見ができるよう、判断基準を医師や担当チームで事前に共有します。
呼吸リハビリの支援を行います。 早期離床(ベッドアップ・端座位・立位)を医師・理学療法士と協力しながら進めます。 横隔膜を使った腹式呼吸の練習を補助します。 口すぼめ呼吸など、呼吸コントロールの方法を患者さんと一緒に練習します。
体位管理を適切に行います。 ベッドヘッドアップ30〜45度を基本姿勢として保ちます。 腹臥位療法が有効な場合は、指示に従い安全に行います。
疼痛・不安・睡眠の管理を行います。 疼痛評価スケール(NRS・FPSなど)を使って疼痛を評価し、鎮痛薬の投与を医師に提案します。 ケアの前には必ず声をかけ、患者さんが見通しを持って受け入れられるよう関わります。 夜間の睡眠環境を整え、不必要な処置は日中にまとめるよう調整します。
栄養管理の補助を行います。 経腸栄養が開始されている場合は、投与速度・量・合併症の有無を確認します。 必要に応じて管理栄養士と連携し、カロリー・たんぱく質量の見直しを提案します。
教育計画(EP)
患者さんとご家族への説明・教育に関する計画です。
患者さんへの説明を丁寧に行います。 人工呼吸器を外していくプロセスについて、わかりやすい言葉で説明します。 「怖いのは当然のこと」という気持ちに寄り添いながら、一つひとつの試みを一緒に確認します。 筆談ボードや文字盤など、挿管中でも意思が伝えられるツールを提供します。
ご家族への情報提供を行います。 離脱の見通しや、家族ができる声掛けの方法をお伝えします。 回復過程には波があることを事前に説明し、焦りや不安を軽減できるよう関わります。
実際の臨床での気づきポイント
離脱困難に直面したとき、看護師として特に大事にしたいのが「なぜ今、離脱できないのか」を考える習慣です。
患者さんの全身状態を改めて確認してみます。 熱はないか、感染の兆候はないか、水分バランスはどうか。 こうした視点からアセスメントを積み上げることで、医師への提案につながる情報を整理できます。
また、患者さんの不安が離脱の妨げになっていることも少なくありません。 呼吸リハビリに取り組む気持ちが持てない、動くのが怖いという訴えがあれば、心理的なサポートを優先することも大切です。
臨床心理士や精神科リエゾンナースとの連携も視野に入れながら、チームとして動くことが患者さんの回復につながります。
よく使われる評価スケールと指標
離脱の可否を判断するうえで参考にされる指標を整理します。
Rapid Shallow Breathing Index(RSBI)は、呼吸数÷1回換気量(リットル)で計算します。 RSBIが105未満であれば離脱成功の可能性が高いと考えられており、臨床でよく使われます。
P-SILI(Patient Self-Inflicted Lung Injury)という概念も近年注目されています。 これは、自発呼吸の強すぎる努力が、かえって肺に傷をつけてしまうという考え方です。 離脱の際に過剰な呼吸努力が見られた場合は、無理に離脱を進めず、一段階戻ることも検討されます。
まとめ:離脱困難に向き合う看護師のあり方
人工換気離脱困難反応は、呼吸器・循環器・神経筋・栄養・心理など、さまざまな要素が絡んだ複雑な状態です。
看護師の役割は、医師の指示を受けながらも、患者さんの状態を最も近くで見守り、小さな変化を逃さず伝えることです。
離脱がうまくいかない日があっても、それは失敗ではありません。 身体の準備が整うのを、チーム全員で根気よく支えていくことが、患者さんの回復を後押しします。
この記事が、看護計画を立てる際の参考になれば嬉しいです。
現場で悩んでいる看護師さんや、実習中の看護学生さんに少しでも役に立てますように。








