意思決定というのは、病気を抱えながら生きていくうえでとても大切なプロセスです。
「自分でちゃんと決めたい」「でも何が正しいのかわからない」と悩む患者さんは、病棟でも外来でも本当にたくさんいます。
看護師としてそういった場面に立ち会うとき、ただ「先生に聞いてください」で終わらせてしまっていないでしょうか。
解放的意思決定促進準備状態という看護診断は、患者さんが自分の意思で治療や生活の方針を選び取れるよう、看護師として積体的に関わるための診断名です。
この記事では、解放的意思決定促進準備状態の看護計画について、看護目標から観察項目・ケア・教育まで幅広くまとめていきます。
解放的意思決定促進準備状態とは
解放的意思決定促進準備状態は、NANDA-I看護診断のひとつで、英語では Readiness for Enhanced Emancipated Decision-Making と表現されます。
この診断が適用されるのは、患者さんがすでにある程度自分で意思決定しようとする力を持っていて、さらにそれを伸ばしていける状態にあるときです。
つまり、意思決定能力がまったくないとか、判断が困難という状態ではなく、「もっとよい意思決定ができるように支援が欲しい」という準備ができている状態を指しています。
慢性疾患の患者さん、がん患者さん、手術を앞にした患者さん、退院後の生活を考えなければならない患者さんなど、意思決定を求められる場面は入院中にも外来でも日常的に生じています。
こういった患者さんに対して、看護師が計画的に関わることで、患者さん自身の意思決定の質を高めていくことができます。
この看護診断が適用されやすい患者さんの特徴
解放的意思決定促進準備状態が適用されやすいのは、次のような特徴を持つ患者さんです。
治療の選択肢が複数あり、どれを選ぶか自分でも考えようとしている患者さんに多く見られます。
また、家族や医師との関係の中で「自分の意見を言いにくい」と感じているけれど、本当は自分で決めたいという気持ちがある患者さんにも当てはまることがあります。
慢性疾患で長期にわたり療養している患者さんは、これまでの治療経過から自分なりの価値観を持っていることが多く、その価値観を尊重した意思決定の支援がとても大切になります。
さらに、インフォームドコンセント後に「やっぱりよく理解できなかった」「もう少し詳しく知りたい」と感じている患者さんも、この診断が適用される場面が多いです。
解放的意思決定促進準備状態に関連する要因
この看護診断に関連する要因として、以下のようなものが挙げられます。
情報量の不足や情報の理解不足は、意思決定の妨げになります。
医師や家族からのプレッシャーを感じていると、自分の本心から離れた選択をしてしまうことがあります。
文化的背景や宗教的価値観が意思決定に大きく関わることもあります。
過去に意思決定の失敗経験があると、自信をなくして決めることを避けるようになる患者さんもいます。
身体的な苦痛や疲労が強い時期は、じっくり考える余裕が生まれにくく、意思決定の質が下がることがあります。
看護目標
長期目標
患者さんが自分の価値観と希望を整理したうえで、治療や生活に関する意思決定を自分の言葉で表明できるようになる。
短期目標
患者さんが意思決定に必要な情報を理解できたと自分で言えるようになる。
患者さんが自分の気持ちや不安を看護師に話せるようになる。
患者さんが選択肢のメリットとデメリットを自分なりに整理し、言語化できるようになる。
観察項目(観察計画)
観察項目では、患者さんの意思決定能力や情報の理解度、心理的な状態を幅広く確認していきます。
患者さんが自分の疾患や治療についてどのくらい理解しているかを確認することが出発点になります。
意思決定に際して患者さんが感じている不安や迷いの内容を把握することも大切です。
家族や医療者との関係性がどのようなもので、患者さんが周囲から意見や誘導を受けていないかを見ていくことも必要です。
患者さんの文化的背景、宗教的価値観、これまでの生活信条についても把握しておくと、支援の方向性が明確になります。
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意思決定を行うための認知機能の状態も確認が必要です。認知症や せん妄が疑われる場合は、意思決定能力そのものの評価が先になります。
身体的な苦痛の程度を確認することも大切です。痛みや呼吸困難が強い状態では、ゆっくり考えることが難しくなります。
患者さんが過去にどのような意思決定を行ってきたか、その経緯についても情報収集しておくことで、患者さんの意思決定のスタイルを理解しやすくなります。
非言語的なコミュニケーション、たとえば表情や視線、うなずきの様子なども丁寧に見ていきます。
ケア項目(ケア計画)
ケアの基本は、患者さんが安心して自分の気持ちを話せる環境をつくることです。
面談の場所と時間を工夫し、プライバシーが守られる静かな空間で話せるよう調整します。
患者さんの話を途中でさえぎらず、最後まで聴くことを意識します。
患者さんが「こんなことを言っていいのか」と迷わないよう、どんな気持ちや考えも受け止める姿勢を伝えることが大切です。
患者さんが選択肢を整理できるよう、それぞれの治療や対応策について、わかりやすい言葉でメリットとデメリットを整理して伝えます。医療用語をそのまま使うのではなく、患者さんの理解度に合わせた言葉に変えて説明することが大切です。
患者さんが意思決定をするうえで「もっと知りたい」と感じている情報があれば、医師や他の医療職者と連携して情報提供できるよう橋渡しをします。
患者さんが「自分には決める力がある」と感じられるよう、過去にうまく対処できた経験を一緒に振り返ることも効果的です。
家族が患者さんの意思決定に過度に干渉していると感じる場合は、家族への働きかけも並行して行います。家族の思いも丁寧に聴きながら、患者さん本人の意思が尊重される環境をつくることが大切です。
患者さんが一度決めた意思を後から変えることも権利であることを伝え、決定に対するプレッシャーを和らげます。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の考え方を踏まえ、患者さんが将来の医療についての希望を持てるよう、継続的に関わっていきます。
教育項目(教育計画)
患者さん自身が意思決定のプロセスを理解できるよう、教育的な関わりも大切にします。
意思決定とは何か、どのようなステップで考えていくとよいかを、患者さんに伝えます。たとえば、「情報を集める→自分の価値観と照らし合わせる→選択肢を比べる→決める→振り返る」というステップを一緒に確認することで、患者さんが意思決定を整理しやすくなります。
自分の権利として、治療を断ることや、セカンドオピニオンを求めることができることを、患者さんに知ってもらうことも大切です。
インフォームドコンセントの意味や、医師からの説明に対して質問してよいことを伝えることで、患者さんが受動的にならず積体的に医療に参加できるようになります。
患者さんが「よくわからないまま同意してしまった」とならないよう、説明後に理解度を確認する習慣を身につけてもらいます。
家族や身近な人と自分の希望を話し合うことの大切さについても、患者さんに伝えていきます。
看護師として意識したいこと
解放的意思決定促進準備状態の看護計画を実践するうえで、看護師自身の姿勢がとても大切になります。
まず、患者さんの価値観を否定しないことが出発点です。看護師の価値観や「こうすべき」という考えを押しつけないよう、常に意識することが必要です。
また、患者さんが沈黙しているときや「わからない」と言っているときも、それ自体が患者さんの状態を表していると受け止め、焦らず待つことが大切です。
多忙な業務の中でも、意思決定に関わる場面では時間を確保する努力をすることが、患者さんへの誠意になります。
チームとして関わることも重要です。医師、薬剤師、ソーシャルワーカー、リハビリテーションスタッフなど、多職種が一致した情報を患者さんに伝えることで、患者さんの混乱を防ぐことができます。
患者さんが意思決定した後も、「本当にそれでよかったのか」という迷いが生じることがあります。そのタイミングでも声をかけ、感情を受け止める関わりを続けることで、患者さんの満足度と信頼感が高まります。
まとめ
解放的意思決定促進準備状態の看護計画は、患者さんが自分らしい選択をするためのプロセスを支えるものです。
観察・ケア・教育という三つの視点から関わりながら、患者さんの意思が尊重される医療環境をつくっていくことが、看護師としての大切な役割のひとつです。
看護学生のうちから「意思決定を支えること」を意識して患者さんと向き合うことで、臨床でも自信を持って実践できるようになります。
ぜひこの看護計画を参考に、患者さんの声に耳を傾ける看護を目指してください。








