角膜損傷は、一見すると見落とされやすいリスクのひとつです。
病棟で働いていると、意識障害のある患者さんや全身麻酔後の患者さん、顔面神経麻痺のある患者さんなど、まばたきがうまくできない状態の方に出会う場面が多くあります。
そういった患者さんは、自分で目の異常を訴えることが難しく、気づいたときには角膜びらんや角膜潰瘍が起きていた、というケースも少なくありません。
この記事では、角膜損傷リスク状態の看護計画について、看護目標・観察項目・ケア内容・患者指導に分けてまとめました。
実習中の看護学生さんにも、臨床で復習したい看護師さんにも役立てていただけたら嬉しいです。
角膜損傷とはどういう状態か
まず基本をおさえておきましょう。
角膜とは、眼球の前面を覆う透明な組織で、光を屈折させて視力を保つ重要な役割を担っています。
角膜は5層構造(上皮層・ボウマン膜・実質層・デスメ膜・内皮層)からなり、外部からの刺激に対して非常に敏感です。
角膜上皮は再生能力がありますが、実質層まで損傷が及ぶと混濁が残り、視力低下につながることがあります。
角膜損傷とは、この角膜に傷・びらん・潰瘍・感染などが生じた状態のことをいいます。
医療現場では、眼瞼閉鎖不全(目が完全に閉じられない状態)や涙液分泌低下(ドライアイ)、異物接触などが主な原因として挙げられます。
全身麻酔中や意識障害時には瞬目反射が消失し、角膜が乾燥・露出しやすくなるため、特に注意が必要です。
なぜ看護計画が大切なのか
角膜損傷は、一度起きてしまうと治療に時間がかかり、視力に影響が残るケースもあります。
感染が加わると角膜潰瘍・角膜穿孔へと進行し、最悪の場合は失明につながる可能性もあります。
だからこそ、リスクがある段階で予防的な看護計画を立てることが、看護師として果たすべき大切な役割です。
眼瞼閉鎖不全のある患者さん、意識障害のある患者さん、顔面神経麻痺のある患者さん、長時間の全身麻酔を受ける患者さんは、角膜損傷のリスクが高い状態にあります。
また、涙液分泌が低下しているシェーグレン症候群の患者さんや、コンタクトレンズの不適切な使用がある患者さんも注意が必要です。
看護目標
長期目標
入院中を通して角膜損傷を発生させることなく、視機能を保った状態で退院することができる。
短期目標
角膜損傷のリスク因子(眼瞼閉鎖不全・涙液分泌低下・瞬目反射の消失など)について理解し、自分の状態を言葉で説明できる。
医療スタッフと協力しながら、点眼・眼瞼テープ固定・眼軟膏塗布などのケアを毎日継続して受けることができる。
眼の異常(充血・眼脂・疼痛・羞明・視力変化など)を早期に発見し、医療者へ報告できる。
観察項目
患者さんの状態を広く把握することが大切です。
以下の点をしっかり観察しましょう。
眼瞼の閉鎖状態の観察
安静時・睡眠時に眼瞼が完全に閉じているかを観察します。
眼瞼閉鎖不全がある場合、角膜下部が露出しやすく、乾燥による損傷が起きやすい状態です。
顔面神経麻痺(末梢性・中枢性)の程度も合わせて把握しておきましょう。
角膜・結膜の状態の観察
充血・眼脂・浮腫・混濁・びらんの有無を観察します。
フルオレセイン染色検査の結果が記録されている場合は、損傷部位と範囲を確認します。
羞明(光をまぶしく感じる症状)や流涙の有無も、角膜刺激の指標になります。
涙液分泌・瞬目の観察
自発的なまばたきの回数と、まばたきが完全に行われているかを観察します。
シルマーテスト(涙液分泌量の検査)の結果が得られている場合は参考にします。
ドライアイの既往・シェーグレン症候群・抗コリン薬の使用歴なども確認しておきます。
意識レベル・神経学的状態の評価
グラスゴー・コーマ・スケールやジャパン・コーマ・スケールを用いて意識レベルを把握します。
意識レベルが低下している患者さんは、瞬目反射が消失していることが多く、角膜が露出したままになりやすい状態です。
脳卒中後遺症・頭部外傷・薬剤性意識障害など、原因疾患も合わせて確認します。
使用中の薬剤・医療機器の確認
抗コリン薬・抗ヒスタミン薬・利尿薬など、涙液分泌を低下させる薬剤の使用状況を確認します。
人工呼吸器装着中の患者さんは、鎮静薬により瞬目反射が消失していることが多いため、特に注意が必要です。
コンタクトレンズを装着したまま入院している患者さんがいないかも確認しましょう。
自覚症状の確認
意識がある患者さんには、眼の違和感・異物感・乾燥感・疼痛・視力の変化がないかを毎日確認します。
自覚症状が出にくい患者さんほど、観察による早期発見が大切になります。
ケア項目
眼瞼テープ固定・閉眼保持
眼瞼閉鎖不全のある患者さんには、医師の指示のもとで眼瞼テープを用いて閉眼を保持します。
テープの貼付は角膜・結膜を直接刺激しないよう、眼瞼縁より外側に貼るのが基本です。
皮膚トラブルが起きていないか、テープ貼付部位の状態も毎回確認します。
点眼・眼軟膏の塗布
医師の処方に従い、人工涙液(ヒアレイン点眼液など)や眼軟膏(ビタミンA製剤・抗菌薬含有など)を定期的に使用します。
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点眼の際は、結膜嚢(下眼瞼を軽く引いた部分)に滴下し、角膜を直接刺激しないようにします。
点眼後は軽く眼瞼を閉じるよう介助し、薬液が均一に広がるよう促します。
眼の保湿・保護
乾燥した環境では涙液の蒸発が早まり、角膜が乾燥しやすくなります。
必要に応じて湿潤チャンバー(モイスチャーチャンバー)を使用し、角膜周囲の湿度を保ちます。
人工呼吸器装着中や長時間の手術を受ける患者さんには、眼軟膏の塗布後に閉眼テープを使用することが多いです。
術中・術後の角膜保護
全身麻酔中は瞬目反射が消失するため、術前に患者さんの眼瞼閉鎖の状態を確認しておきます。
術中は眼軟膏の塗布・テープ固定を行い、術野から遮断された後も定期的に閉眼状態を確認します。
術後は麻酔覚醒に時間がかかることがあるため、病棟帰室後も継続した観察が必要です。
異物・刺激の除去
眼脂が多い場合は、滅菌生理食塩水を用いた眼洗浄や、清潔なガーゼで外眼角から内眼角へ向けて拭き取ります。
コンタクトレンズを装着したままの患者さんには、速やかに取り外すよう対応します。
感染予防
眼のケアを行う前後には手洗い・手指消毒を徹底します。
点眼薬の容器が角膜・睫毛に触れないよう注意し、開封後の使用期限も管理します。
患者・家族への指導項目
角膜損傷のリスクについての説明
目が十分に閉じられていない状態や、まばたきが少ない状態が続くと、角膜が乾燥して傷つきやすくなることを説明します。
自覚症状が出にくい場合でも、知らないうちに損傷が進んでいることがあると伝えることが大切です。
点眼・眼ケアの正しい方法の指導
退院後も点眼が続く場合は、正しい点眼方法(清潔な手で行う・容器が目に触れないようにする・点眼後は軽く目を閉じる)を指導します。
点眼の間隔や回数を守ることの大切さも、あわせて説明しましょう。
眼軟膏の塗布が必要な場合は、実際に手技を見せながら練習してもらいます。
コンタクトレンズの管理指導
入院中はコンタクトレンズの使用を避けるよう説明します。
退院後も、眼瞼閉鎖不全や涙液分泌低下がある間は、医師の許可が出るまでコンタクトレンズの使用を控えるよう伝えます。
レンズの洗浄・保管方法についても、改めて確認しておくと安心です。
セルフチェックの方法
毎朝・毎晩、鏡を見て充血・眼脂・腫れがないかを確認する習慣をつけるよう指導します。
眼の違和感・異物感・羞明・視力の変化を感じたら、早めに医療機関を受診するよう伝えます。
家族への協力依頼
意識障害がある患者さんや高齢で自己管理が難しい患者さんの場合、家族に眼の状態の観察方法を伝えます。
閉眼できていない・眼脂が多い・目が充血しているなどの変化に気づいたら、医療者に伝えてもらうよう説明しましょう。
看護計画を立てる際のポイント
角膜損傷リスク状態の看護計画は、患者さんの眼瞼閉鎖の状態・意識レベル・涙液分泌量・使用薬剤・基礎疾患を総合的に評価したうえで立案することが大切です。
意識障害のある患者さんは自分で訴えられないため、観察の頻度を上げることと、ケアの確実な実施が特に重要です。
また、看護計画は患者さんの状態が変わるたびに見直す必要があります。
意識レベルが改善した・顔面神経麻痺が軽快した・鎮静薬が減量されたなど、状態の変化に合わせてケア内容を調整することが大切です。
よくある臨床場面での注意点
集中治療室での管理
集中治療室では、人工呼吸器管理中の患者さんへの鎮静薬使用により、眼瞼閉鎖不全が起きやすい状態が続きます。
眼のケアがルーティンの処置として組み込まれているかを確認し、実施漏れがないよう注意します。
1日複数回の点眼・眼軟膏塗布・眼瞼テープ確認を記録として残しておくことも大切です。
脳卒中・顔面神経麻痺患者さんへのケア
脳卒中後の顔面神経麻痺では、麻痺側の眼瞼が完全に閉じられないことがあります。
麻痺の程度によってはウサギ目(兎眼)の状態になり、睡眠中も角膜が露出したままになります。
夜間の眼瞼テープ固定と眼軟膏塗布を忘れずに実施することが、夜間の角膜乾燥予防につながります。
術後管理での注意点
全身麻酔後は麻酔覚醒が不完全なまま病棟に帰室することがあります。
帰室直後から眼瞼の状態を確認し、閉眼できていない場合は速やかにケアを開始します。
術後に眼の充血・眼脂・疼痛の訴えがあった場合は、角膜損傷の可能性を考えて眼科への診察依頼を検討します。
まとめ
角膜損傷リスク状態の看護計画は、患者さんの眼瞼閉鎖の状態・意識レベル・涙液分泌・使用薬剤・基礎疾患を丁寧に評価したうえで立案することが大切です。
観察項目では眼瞼閉鎖・角膜状態・瞬目の有無・自覚症状を継続的に確認し、ケアでは点眼・眼軟膏・眼瞼テープ固定を確実に実施します。
指導では、患者さんと家族が退院後も眼の異常を早期に発見して行動できるよう、わかりやすく伝えることが大切です。
看護計画の目的は、角膜損傷を一度も起こさないことです。
自分で訴えられない患者さんほど、看護師による観察とケアが視機能を守る力になります。
チームで連携しながら、毎日の眼のケアを丁寧に続けていきましょう。
この記事が、看護計画を立てる際の参考になれば嬉しいです。








