心拍出量減少とは何か
心拍出量減少とは、心臓が全身に送り出す血液の量が低下し、身体の組織や臓器に必要な酸素と栄養素が十分に届かなくなっている状態を指す看護診断のひとつです。
心拍出量とは、心臓が1分間に送り出す血液の量のことを指し、健康な成人では1分間におよそ4〜8リットルとされています。
この量が低下すると、全身の臓器に供給される血液と酸素が不足し、さまざまな症状と合併症を引き起こします。
心拍出量減少は、心不全・心筋梗塞・重篤な不整脈・心筋症・弁膜症など、さまざまな心臓疾患において生じる病態であり、看護師がその変化を早期に把握し適切に対応することが患者さんの命に直結します。
心拍出量は、一回拍出量(心臓が1回の収縮で送り出す血液量)と心拍数(1分間の心拍数)の積で決まります。
一回拍出量は、前負荷(心臓に戻ってくる血液量)・後負荷(心臓が血液を送り出す際に抵抗となる圧力)・心筋収縮力の3つの要素によって影響を受けます。
看護師がこれらの概念を理解したうえでアセスメントを行うことが、心拍出量減少への適切な看護実践の基盤となります。
心拍出量減少の原因
心拍出量減少は、以下のようなさまざまな原因によって生じます。
心筋の収縮力低下は、心拍出量減少の最も代表的な原因のひとつです。
急性心筋梗塞・心筋炎・拡張型心筋症などによって心筋が障害を受けると、心臓が十分な力で収縮できなくなり、一回拍出量が低下します。
不整脈も心拍出量減少の重要な原因です。
心拍数が極端に速い頻脈性不整脈(心室頻拍・心房細動など)や、極端に遅い徐脈性不整脈(完全房室ブロックなど)は、いずれも心拍出量を低下させます。
前負荷の低下は、大量出血・脱水・利尿薬の過剰投与などによって循環血液量が減少することで生じます。
後負荷の増大は、高血圧・大動脈狭窄症などによって心臓が血液を送り出す際の抵抗が増すことで生じます。
弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症・大動脈弁狭窄症など)も、弁の機能障害によって心拍出量の低下をもたらします。
心タンポナーデ(心膜腔に液体が貯留して心臓を圧迫する状態)も、心臓の収縮を妨げることで急激な心拍出量減少を引き起こします。
心拍出量減少が全身に与える影響
心拍出量が低下すると、全身の組織・臓器への血流が不足し、さまざまな症状が生じます。
脳への影響としては、血流低下による意識障害・混乱・めまい・失神などが生じることがあります。
腎臓への影響としては、尿量の減少・腎前性腎不全が生じることがあります。
尿量が1時間あたり0.5ミリリットル毎キログラムを下回る状態は、腎血流の低下を示すサインとして重要です。
皮膚・末梢への影響としては、皮膚の蒼白・冷感・冷汗・チアノーゼ・毛細血管再充満時間の延長などが見られます。
肺への影響としては、心臓の左心系に問題がある場合、肺に血液がうっ滞して肺水腫・呼吸困難・起座呼吸などが生じることがあります。
全身への影響としては、易疲労感・活動耐容能の低下・浮腫(特に下肢の浮腫)などが生じます。
これらの症状を総合的に評価し、心拍出量減少の程度と全身への影響を把握することが、看護師のアセスメントの核心です。
アセスメントのポイント
心拍出量減少の看護計画を立てるにあたり、患者さんの循環動態を多角的にアセスメントすることが出発点です。
まず、バイタルサインを丁寧に評価します。
血圧・心拍数・呼吸数・体温・酸素飽和度を測定し、基準値からの逸脱を確認します。
血圧が低下している・心拍数が著しく増加または減少している・酸素飽和度が低下しているなどの変化は、心拍出量減少のサインとして受け止めます。
心電図モニタリングを評価します。
不整脈の有無・心拍数・ST変化などを確認し、循環動態に影響する異常がないかを把握します。
尿量を評価します。
1時間ごとの尿量を把握し、腎血流の状態を評価します。
尿量の減少は、心拍出量低下による腎血流の減少を示すサインとして重要です。
皮膚の状態を評価します。
皮膚の色調(蒼白・チアノーゼ)・皮膚温・冷汗・毛細血管再充満時間を確認します。
浮腫の有無と程度を評価します。
下肢・仙骨部・顔面などの浮腫の有無・程度・左右差を確認します。
呼吸状態を評価します。
呼吸数・呼吸様式・副雑音(湿性ラ音など)・起座呼吸・労作時の呼吸困難を確認します。
精神状態・意識状態を評価します。
意識レベル・混乱・不安・易興奮性などを確認します。
水分出納バランスを評価します。
輸液量・経口摂取量と尿量・ドレーン排液量・不感蒸泄を合わせたバランスを確認します。
看護目標
長期目標
患者さんが安定した循環動態を維持しながら、心拍出量減少による合併症を予防し、日常生活における活動を安全に行うことができる
短期目標
バイタルサインと尿量が安定した範囲で維持され、循環動態の悪化のサインを早期に把握することができる
心拍出量減少に伴う症状(息切れ・浮腫・倦怠感など)が軽減し、安楽に過ごすことができる
心拍出量減少の悪化を防ぐための日常生活上の注意点を理解し、実践することができる
具体的な看護計画
観察計画
バイタルサインを定期的に測定・記録します。
血圧・心拍数・呼吸数・体温・酸素飽和度を医師の指示に基づいた間隔で測定します。
血圧の低下(収縮期血圧90mmHg以下)・心拍数の著しい増加(1分間に100回以上)または減少(1分間に60回以下)・酸素飽和度の低下(95パーセント以下)は、速やかに医師に報告が必要なサインとして把握します。
心電図モニタリングの波形を継続的に確認します。
新たな不整脈の出現・ST変化・心拍数の急激な変動を確認し、異常があれば速やかに医師に報告します。
尿量を1時間ごとに測定・記録します。
尿量が1時間あたり0.5ミリリットル毎キログラムを下回る状態が続く場合は、医師に報告します。
浮腫の有無・程度・部位を評価します。
下肢浮腫は毎日同じ時間に左右の下腿周囲径を測定して記録することで、変化を客観的に把握できます。
体重を毎日同じ時間・同じ条件で測定します。
1〜2日で1〜2キログラム以上の体重増加は、体液の貯留(浮腫の悪化)のサインとして受け止め、医師に報告します。
呼吸状態を観察します。
呼吸数・呼吸様式・副雑音の有無・起座呼吸・夜間の発作性呼吸困難の有無を確認します。
皮膚の状態を観察します。
皮膚の色調・温度・冷汗・チアノーゼの有無を確認します。
毛細血管再充満時間(爪を押して離してから赤みが戻るまでの時間が2秒以内かどうか)を確認します。
精神状態・意識状態を観察します。
突然の意識レベルの低下・混乱・強い不安・興奮は循環動態の悪化のサインとして受け止めます。
水分出納バランスを計算・記録します。
輸液・経口摂取量と尿量・その他の排液量のバランスを確認し、過剰な水分貯留や脱水がないかを評価します。
ケア計画
安静の保持と活動制限を行います。
心拍出量が低下している急性期には、心臓への負担を減らすために安静が重要です。
患者さんに安静の必要性をわかりやすく説明し、日常生活動作(トイレ・洗面・体位変換など)への支援を行います。
ベッド上での安静中は、褥瘡予防のための体位変換を定期的に行いますが、体位変換時の循環動態への影響を確認しながら慎重に行います。
体位の工夫を行います。


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呼吸困難がある場合は、ファウラー位(上体を30〜60度起こした姿勢)をとることで、横隔膜が下がり呼吸が楽になります。
下肢浮腫がある場合は、下肢を心臓より高く挙上することで静脈還流を促し、浮腫の軽減を図ります。
酸素療法を適切に管理します。
医師の指示に基づいた酸素流量・投与方法を守り、酸素飽和度を目標値の範囲に保ちます。
酸素マスクや鼻カニューレが正しく装着されているかを確認し、患者さんが外してしまわないよう声掛けを行います。
水分・塩分管理を行います。
医師の指示に基づいた水分摂取量の制限を守るよう、患者さんへの説明と支援を行います。
飲水量・食事からの水分量・輸液量の合計が指示量を超えないよう管理します。
薬物療法の管理を行います。
強心薬(ジゴキシン・ドブタミンなど)・利尿薬・血管拡張薬・抗不整脈薬などが正確に投与されているかを確認します。
薬の効果(バイタルサインの改善・尿量の増加・浮腫の軽減)と副作用(電解質異常・低血圧・不整脈など)を継続的に観察します。
患者さんの精神的なサポートを行います。
心拍出量減少による身体的な苦痛・活動制限・病状への不安は、患者さんの精神的な負担を高めます。
「今どんなことが一番つらいですか」という問いかけから、患者さんの気持ちを引き出し、丁寧に受け止めます。
急変時の対応準備を整えます。
除細動器・救急カート・吸引装置などが使用できる状態にあることを確認し、急変時に迅速に対応できる体制を整えます。
異常の早期発見・報告のための連絡体制を確認し、チームで共有します。
日常生活動作の支援を段階的に行います。
病状が安定してきたら、リハビリテーションチームと連携しながら、段階的な活動拡大を支援します。
活動時の心拍数・血圧・酸素飽和度・自覚症状を確認しながら、無理のない範囲での活動を促します。
教育・指導計画
心拍出量減少の原因となっている疾患について、患者さんと家族にわかりやすく説明します。
「心臓の働きが低下しているため、全身に血液を十分に送れていない状態です。そのため、息切れ・むくみ・疲れやすさなどの症状が出ています」というように、専門用語を使わずに説明します。
悪化のサインについて説明します。
「体重が2日で2キログラム以上増えた」「足のむくみが急に増した」「横になると息苦しい」「急に息が苦しくなる」「動悸がひどくなった」などのサインが出たときは、すぐに医療者に連絡するよう伝えます。
水分・塩分制限について具体的に説明します。
水分制限がある場合は、1日に飲んでいい量を具体的に伝え、どのように管理するかを一緒に考えます。
塩分制限については、1日の摂取量の目安・控えるべき食品・外食時の注意点などを具体的にお伝えします。
内服薬の管理について説明します。
処方された薬を決められた時間に確実に内服すること・自己判断で中断しないこと・副作用が気になる場合は医師や薬剤師に相談することを伝えます。
特に利尿薬を内服している患者さんには、体重測定・尿量の確認・電解質異常のサイン(筋肉のけいれん・脱力感など)について説明します。
活動と休息のバランスについて説明します。
息切れ・動悸・疲労感が出る前に休息をとること・無理な活動を避けること・症状に合わせた生活ペースを守ることの大切さをお伝えします。
定期受診の重要性について説明します。
「症状が落ち着いていても、定期的な受診と検査が病状の管理に欠かせません」というメッセージを具体的に伝えます。
体重測定・血圧測定を自宅で毎日行い、記録する習慣をつけることを勧めます。
急性心不全における看護の実際
急性心不全は、心拍出量が急激に低下し、緊急の対応が必要な状態です。
突然の重篤な呼吸困難・起座呼吸・チアノーゼ・大量の泡沫状の痰(ピンク色の痰)・著しい低血圧などが見られる場合は、急性肺水腫の可能性があり、速やかな対応が必要です。
急性心不全が疑われる場合は、直ちに医師に報告し、酸素投与・体位調整・静脈路確保・心電図モニタリングなど、指示に基づいた対応を迅速に行います。
患者さんは強い恐怖と苦痛の中にあるため、落ち着いた声で「今すぐ対応します。そばにいますからね」と声をかけながら処置を進めます。
急性期の対応とともに、患者さんの精神的な安定を支えることも看護師の重要な役割です。
慢性心不全における看護の実際
慢性心不全は、長期にわたる病気との付き合いが必要な状態です。
慢性心不全の患者さんは、急性増悪と安定した状態を繰り返しながら生活しています。
急性増悪を防ぐための自己管理の支援が、慢性心不全の看護において最も重要な取り組みのひとつです。
毎日の体重測定・塩分・水分管理・内服の継続・適度な運動・定期受診の継続が、急性増悪の予防につながります。
患者さんが自己管理を継続できるよう、看護師が定期的に支援状況を確認し、困っていることを一緒に解決する姿勢で関わります。
心不全手帳(体重・血圧・症状を記録するノート)の活用を勧め、自己管理の記録を可視化することで患者さんの意欲を支えます。
不整脈を伴う心拍出量減少への対応
心拍出量減少に不整脈が関与している場合は、不整脈のコントロールが循環動態の安定に直結します。
心電図モニタリングを継続し、不整脈の種類・頻度・持続時間を把握します。
新たな不整脈の出現・既存の不整脈の悪化・不整脈に伴う症状(動悸・胸痛・失神・意識障害)は、速やかに医師に報告します。
抗不整脈薬が処方されている場合は、薬の効果と副作用を継続して観察します。
除細動器の使用が必要な緊急事態に備え、機器の準備と使用手順についてチームで確認しておきます。
植え込み型除細動器(ICD)・ペースメーカーが装着されている患者さんへは、デバイスの作動状況の確認と、患者さんへの日常生活上の注意点の説明を行います。
心拍出量減少に関連した合併症の予防
心拍出量減少が続くと、さまざまな合併症が生じることがあります。
腎機能障害は、腎血流の低下によって生じます。
尿量・クレアチニン・血中尿素窒素などの検査値を継続的に確認し、腎機能の悪化を早期に把握します。
血栓塞栓症は、心房細動などの不整脈がある場合や、長期臥床によって血流がうっ滞することで生じるリスクがあります。
弾性ストッキングの着用・下肢の運動の励行・抗凝固薬の適切な管理が予防につながります。
褥瘡は、循環不全による組織の血流低下と安静臥床が重なることで生じやすくなります。
定期的な体位変換・皮膚の保湿・圧力分散マットレスの使用などの予防的ケアを行います。
感染症は、心拍出量減少による免疫機能の低下によってリスクが高まります。
手洗い・口腔ケア・カテーテル管理など、感染予防の基本的なケアを徹底します。
多職種連携での支援
心拍出量減少への対応は、看護師だけで担うものではありません。
循環器内科医・心臓外科医・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・医療ソーシャルワーカーなど、多職種が連携して患者さんを支えることが欠かせません。
薬剤師との連携では、薬の効果・副作用・相互作用について情報を共有し、適切な薬物療法が行われるよう協力します。
管理栄養士との連携では、塩分・水分制限を守りながらも必要な栄養が確保できる食事内容についての指導を依頼します。
理学療法士との連携では、心臓リハビリテーションの計画を共有し、病棟での活動拡大を安全に進めます。
医療ソーシャルワーカーとの連携では、退院後の在宅療養に向けた社会資源の活用・介護保険申請・訪問看護の導入などについて調整します。
まとめ
心拍出量減少の看護計画は、循環動態の変化を早期に把握し、合併症を予防しながら患者さんが安全に療養生活を送れるよう支えるための看護の方向性を示すものです。
心拍出量減少は、患者さんの生命に直結する重篤な状態であり、看護師の継続した観察と迅速な対応が患者さんの転帰を大きく左右します。
バイタルサイン・尿量・体重・症状の変化を見逃さず、異常を早期に把握して医師に報告することが、看護師の最も重要な役割のひとつです。
心拍出量減少の看護計画は、患者さんの命を守る最前線に立つ看護師として、循環動態の変化に敏感に気づき、迅速に対応し続けることを意味しています。
急性期の対応から慢性期の自己管理支援まで、患者さんの状態の変化に合わせた継続した関わりを積み重ねることが、この看護計画の実践の中心です。
患者さんとその家族が、心臓の病気と向き合いながらも安心して療養生活を送れるよう、チームで支え続けていきましょう。








